2009年1月号
ケース
ケース
3PL 日本ミシュランタイヤ
JANUARY 2009 46
3PL
日本ミシュランタイヤ
全国64カ所のデポ運営を日梱に委託
商物分離して物流コストを20 %削減
七〇カ所の営業所を全廃し商物分離
日本ミシュランタイヤ(以下、ミシュラン)
は二〇〇〇年まで?商物一体?の営業体制を
敷いていた。
全国七〇カ所の営業所それぞれ に倉庫を併設し、顧客に製品を届けるところ までを営業活動と位置付けていた。
配送専門 の担当者の手が回らなければ、営業マンがハ ンドルを握って納品していた。
同社に限らずタイヤ業界では、ときに?ピ ザ・デリバリー?と揶揄されるほど、製品を 短いリードタイムで納品することが慣習とな っている。
とりわけ国内の大手タイヤメーカ ーは、系列の販売網を使った手厚い物流サー ビスを一つの強みとしながら高い販売シェア を確保してきた。
外資系のミシュランにとっ ても、これが日本市場でビジネスを展開する うえでの前提条件だった。
フランスに本社を置くミシュラングループ は、世界のタイヤ市場で二割近いシェアを握 る屈指のタイヤメーカーだ。
グループの連結売 上高は一六八億ユーロ(一ユーロ=一二〇円 換算で約二兆円・〇七年十二月期)。
世界一 七〇カ国で事業を展開し、十二万人以上の従 業員を抱えている。
だが日本市場では、参入から四〇年以上経 つ現在も思うようにシェアを伸ばせずにいる。
むしろミシュランの名は、レストランのガイド ブックによる知名度のほうが高いかも知れな い。
〇七年十一月に日本版が発売されて話題 を呼んだ「ミシュランガイド」は、タイヤメー カーとしての同社が「ドライブ文化をより安 全で楽しいものにする」ために一九〇〇年か ら発行しているものだ。
本業のタイヤ販売におけるシェア拡大を目 指して、ミシュランは二〇〇〇年から日本で の営業体制の刷新に着手した。
それまでの営 業のあり方を抜本的に見直し、全国に約七〇 カ所あった営業所をすべて閉鎖。
これに合わ せて営業担当者全員に携帯パソコンを支給し、 システムで活動をフォローしながら、ほとん どの営業担当者の就業スタイルを自宅から営 業先への直行直帰にするという大胆な改革を 行ったのである。
それまでの?御用聞き?的 な営業活動を、提案型のコンサルティング営 業に変える狙いがあった。
営業所ごとに手掛けていた「受注・営業事 務」も見直した。
新たな受注窓口として「カ スタマーサービスセンター」を設置し、オペレ ーターが受注した内容を、そのまま営業担当 者へのフィードバックや業務処理に使える仕 組みを構築した。
一方、物流業務は3PLパ かつては全国各地に70カ所あった営業所に倉庫を 併設し受注から製品配送までをこなしていた。
2000 年からこの体制の見直しに着手し、すべての営業所 を段階的に閉鎖。
営業マンの就業スタイルを直行直 帰に改めた。
同時に日本梱包運輸倉庫を3PLパート ナーとする商物分離を断行。
以後、03年から06年 にかけて物流コストを20 %削減している。
日本ミシュランタイヤの 秋山寧ディレクター 47 JANUARY 2009 ートナーに一任した。
現在、ミシュランで販売部門の後方支援を 統括しているコマーシャルプランニング&オペ レーション部門の秋山寧ディレクターは、この ときのビジネスモデルの変革をこう振り返る。
「それ以前は、製品を届けることも営業活 動の一環という意識がすごく強かった。
営業 所をすべて閉鎖したことによって、配送行為 は営業活動ではなく、プロの物流業者がやる べき仕事。
営業はプロの営業の仕事をしてく ださい、というメッセージが明確に社内に浸 透していった」 納品リードタイムは維持 日本市場におけるミシュランの販売チャネ ルは「直需」と「市販用」の二つに分けられ る。
「直需」は自動車メーカー向けで、新車を 生産する工場にタイヤを直接納品する。
この サプライチェーンの管理は基本的に自動車メ ーカーが主導しており、ミシュランをはじめ とするサプライヤーは自動車メーカーの内示に 沿ってJIT納品を行う。
タイヤメーカー同 士の物流共同化も広く実施されている。
これに対して、カーディーラーやカー用品 店などを通じてタイヤを供給する「市販用」市 場では、配送サービスのリードタイムや品質を めぐってタイヤメーカー同士が激しい競争を繰 り広げてきた。
ミシュランは群馬県太田市に工場を置いて、 国内向け「直需」および「市販用」の乗用車 と小型トラックのタイヤを生産している。
そ れ以外のトラック・バス、二輪などのタイヤ はすべて輸入している。
市販用タイヤは、輸 入分も含めてすべて一度、太田工場の近くに ある「中央倉庫」に集約し、ここから必要に 応じて各地のデポに納品している。
このデポが二〇〇〇年までは営業所に併設 されていた。
前述した営業所の廃止を機に、 デポの運営も3PLパートナーにアウトソーシ ングすることになった。
ただし、デポの数を 大幅に減らそうとはしなかった。
納品リード タイムを維持する必要があったからだ。
一連の取り組みは、社内プロジェクトを発 足させた一九九九年にスタートした。
そして 二〇〇〇年九月から九州地区で新体制への移 行に着手。
九州で試験的に実施してから、他 のエリアに展開していくという計画だった。
この段階では、まだ3PLパートナーは決ま っていなかった。
中央倉庫を任せていた日本 運輸(日本梱包運輸倉庫の一〇〇%子会社) に声を掛け、九州での試行を実施した。
もっ とも群馬県を地盤とする日本運輸に、九州 全域の物流業務を処理させるには無理がある。
実質的にはこの段階から、同社の親会社であ る日梱が現場運営を担うことになった。
ほどなく新体制への手応えをつかんだミシ ュランは、この取り組みを全国展開するため、 正式に3PLパートナーを選ぶための物流コ ンペを開催した。
全国で均一のサービスを提 供できること、一日三回・二時間おきの定時 配送を実施できることなどを条件に、複数の 大手物流事業者から提案を募った。
「タイヤ業界の高い要求レベルに全国規模で 8 年前にビジネスモデルを変革した 営 業 受注・営業業務 所内物流・在庫補充 SHARED Accounts Leads Contacts Opportunities Cases Solutions Forecasts Reports Calendar and Task SFA(セールス・フォー ス・オートメーション) に支援された直行直帰 スタイルの営業部隊 カスタマーサービス &リビングセンター (受注:在庫補充) 3PLに外注 2000 年以前2002 年以降(商物分離) (営業所で商物一体) デポデポ…( 64 カ所) 工場 (海外) 工場 (太田) カスタマー サービス センター 工場 倉庫 中央倉庫(太田) トラック・バス、二輪、 建機、大型タイヤなど 乗用車、 小型トラックのタイヤ (横持ち) (輸入) (出荷指示) (発注) デポ 顧客 ……………… 国内における市販用(補修市場向け)タイヤの物流フロー JANUARY 2009 48 応じられる物流事業者はさほど多くない。
そ うした事業者の中から、コスト競争力や、改 善提案に対する姿勢などを総合的に判断して、 最終的に日梱さんに決まった」と秋山ディレ クターは説明する。
3PLパートナーに選ばれた日梱にとって、 自動車関連事業は土地勘のある分野だ。
主要 荷主のホンダの調達物流に絡んで、ミシュラ ンの輸入タイヤを扱っていた経験もある。
輸 入タイヤの関税が廃止された八〇年代以降は 直接的な付き合いは途絶えていたが、荷扱い は子会社の日本運輸が心得ている。
両社は〇一年四月に正式に契約を締結し た。
そして中四国地区で新体制を立ち上げた のに続き、同年五月に東京・関東地区、六月 に東北地区と、毎月のように新しいエリアを 手掛けていった。
新体制が立ち上がった直後 の二週間程度は「安定化委員会」を設置し、 経営トップも参加するミーティングを連日開 催して移行状況を注視した。
トラブルに関す る情報の共有や、作業手順のリスト化などを 進めて、案件を重ねるごとにスムーズに立ち ジャー)と明言している。
これが?社交辞令?ではないことは、両 社が毎年実施している「共同取組プロジェク ト」に如実にあらわれている。
このプロジェ クトは年間三、四件ずつ手掛けている物流改 善のための活動体だ。
コストに関するものか ら、サービスレベルを高める工夫まで内容は さまざまで、互いに提案を出し合い、双方の メンバーが参加して改善活動を進めている。
荷主と協力物流事業者が情報共有のため に催す一般的な定例会合とは、位置付けがま ったく異なっている。
原則として年に二度開 催する「共同取組」のレビューと進捗報告の ための会合には、必ず両社の社長が出席する。
その場で実務担当者が直近の活動の成果など を報告し、進捗中の案件であれば中間報告を 行う。
次に手掛けようとしているテーマの内 容や数値目標なども発表され、これに対して 経営トップが承認していく。
日梱でミシュラン向け3PL事業の責任者 を務める岡本賢二取締役は、「一般にこうし 上げられるようになっていった。
ミシュランの物流部の中山哲男マネージャ ーは、「全国展開を進めていくなかで、日梱 さんに対するトレーニングや、われわれが『標 準手順作業書』と呼んでいるマニュアルの作 成を進めた。
システムがきちんとつながるの かといった懸念もあったが、夜間の実地テス トなどを事前に重ねたことで大きなトラブル とは無縁だった」という。
〇二年二月に近畿地区で運用を開始したこ とで、新体制の全国展開が完了した。
中央倉 庫から先の物流業務は全国一律で3PLパー トナーが管理し始めた。
全国六四カ所のデポ は日梱グループの拠点と、それ以外の協力物 流事業者の拠点からなるが、管理はすべて日 梱が担うことになった。
これによって従来は営業所ごとにバラバラ だった物流サービスが全国で標準化された。
一 日三回(一〇時・十三時・一六時)の締め時 間までにカスタマーセンターで受けた注文は、 それぞれ二時間以内に製品を配送できるよう になった。
社長も巻き込み「共同取組」を管理 この物流アウトソーシングの枠組みは、ミ シュランにとって新しい取り組みだったのと 同時に、日梱にとっても画期的なものだった。
ミシュランは現在、「日梱さんとは、荷主と業 者という立場ではなく、互いにパートナーと して物流改善に取り組んでいる」(中山マネー オペレーション部門の組織図 社長 コマーシャルプランニング&オペレーション ディレクター 品質管理 プロジェクト担当 直需事業サプライチェーンチーム 補修事業サプライチェーンチーム 補修需要予測担当 カスタマーサービスセンター(太田) 物流部(太田) 日本ミシュランタイヤ・物流部 の中山哲男マネージャー 49 JANUARY 2009 新たにクロスドックの処理コストが発生する が、物量をまとめることで幹線輸送のパイプ が太くなり、補充頻度を増やせる。
結果とし て在庫削減にもつながり、トータルコストが 下がる。
実際、九州地区で試行してみたとこ ろ明らかな効果を確認できたため、適用エリ アを全国に拡大している最中だ。
また「仮置き在庫」とは、季節波動のあ る商品などが顧客から返品されたとき、物流 拠点で検品待ちのまま滞留してしまう在庫を 指す。
従来は作業ルールが確立されておらず、 関係者の都合で作業が滞ってしまうことが多 かった。
これが「仮置き在庫」の滞留を招き、 スペース効率の悪化につながっていた。
実はこの問題は、ミシュランにとって長年 の懸案事項で、過去にも何度か解決を試みた ことがあった。
だが一時的に在庫を減らすこ とはできても、次のシーズンには再び元の状 態に戻ってしまっていた。
これを「共同取組」 のテーマに掲げ、「仮置き在庫を半減させる」 という活動目標を両社で設定したところ、ほ ぼ目標通りの成果につながった。
ミシュラン は在庫を減らし、日梱は倉庫でのスペース効 率を向上させることができた。
こうした地道な改善努力の積み上げによっ て、新体制が軌道に乗った〇三年以後、〇六 年までの三年間でミシュランの物流コストは 約二割減った。
トータルコストを削減できた ばかりでなく、タイヤ一本ごとの個建て契約 を日梱と交わすことによってコストの透明化 も実現した。
一連の成果は、仏ミシュランか ら社内表彰をも受けている。
日梱が管理している配送業務のサービスレ ベルも、おおむね満足のいく水準を確保して いる。
第三者機関を通じた顧客アンケートで は、誤配の少なさや、定時配送などに高い評 価が寄せられた。
受注から二時間以内という 配送リードタイムそのものは国内の競合メーカ ーに比べると必ずしも短いわけではない。
そ れでも約束した時間内に必ず届く点などが好 評価につながっているのだという。
現在、ミシュランが直面している最大の課 題は、オペレーションの効率が高まっている にもかかわらず、国内でのシェアが思うよう に拡大していない点だ。
秋山ディレクターと しては、「現状の二時間という配送リードタイ ムが、本当に顧客の望んでいるサービスなの かという疑問もある。
営業とも相談しながら 改めて検討してみたい」と考えている。
ミシ ュランの3PL活用は、すでに目先のコスト 削減の次をにらんだフェーズに入っている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) た取り組みは、生産や物流の立場からの一方 的な報告で終わってしまうことが少なくない。
こうやって同じテーマに一緒に携わり、発表 までする例は珍しい。
まして両社の社長が同 席する会合を、これほど頻繁に催している事 例は他にはない」という。
この活動は、ミシュランの担当部署が意識 的に経営トップを巻き込み「共同取組」の効 果を高めようとしてきた成果でもある。
それ が全社レベルの活動として定着した。
〇八年 には社長が自ら「頻度を上げて改善活動をフ ォローしたい」という意向を示し、この会合 を年間三回催している。
両社のパートナーシップの深さは、燃料サー チャージをいち早く導入したことからもうか がえる。
日梱は〇七年一月と〇八年一〇月の 二度にわたって輸送業務におけるサーチャー ジをミシュランに認めてもらっている。
この ときも互いにデータを持ち寄り、納得のいく 形で落とし所を決めたのだという。
新体制下で物流コストを二割削減 「中央倉庫からデポへの転送のクロスドック 化」と「仮置き在庫の削減」は、「共同取組」 の最近の成果だ。
このうちクロスドック化は、 従来はJRコンテナなどを使って個別に行っ ていた各デポへの製品補充を、まず中央倉庫 から大型トラックで基幹拠点まで運び、これ を改めて小型トラックで域内に分散させるよ うに変えるというものである。
日本梱包運輸倉庫の岡本賢二 取締役
全国七〇カ所の営業所それぞれ に倉庫を併設し、顧客に製品を届けるところ までを営業活動と位置付けていた。
配送専門 の担当者の手が回らなければ、営業マンがハ ンドルを握って納品していた。
同社に限らずタイヤ業界では、ときに?ピ ザ・デリバリー?と揶揄されるほど、製品を 短いリードタイムで納品することが慣習とな っている。
とりわけ国内の大手タイヤメーカ ーは、系列の販売網を使った手厚い物流サー ビスを一つの強みとしながら高い販売シェア を確保してきた。
外資系のミシュランにとっ ても、これが日本市場でビジネスを展開する うえでの前提条件だった。
フランスに本社を置くミシュラングループ は、世界のタイヤ市場で二割近いシェアを握 る屈指のタイヤメーカーだ。
グループの連結売 上高は一六八億ユーロ(一ユーロ=一二〇円 換算で約二兆円・〇七年十二月期)。
世界一 七〇カ国で事業を展開し、十二万人以上の従 業員を抱えている。
だが日本市場では、参入から四〇年以上経 つ現在も思うようにシェアを伸ばせずにいる。
むしろミシュランの名は、レストランのガイド ブックによる知名度のほうが高いかも知れな い。
〇七年十一月に日本版が発売されて話題 を呼んだ「ミシュランガイド」は、タイヤメー カーとしての同社が「ドライブ文化をより安 全で楽しいものにする」ために一九〇〇年か ら発行しているものだ。
本業のタイヤ販売におけるシェア拡大を目 指して、ミシュランは二〇〇〇年から日本で の営業体制の刷新に着手した。
それまでの営 業のあり方を抜本的に見直し、全国に約七〇 カ所あった営業所をすべて閉鎖。
これに合わ せて営業担当者全員に携帯パソコンを支給し、 システムで活動をフォローしながら、ほとん どの営業担当者の就業スタイルを自宅から営 業先への直行直帰にするという大胆な改革を 行ったのである。
それまでの?御用聞き?的 な営業活動を、提案型のコンサルティング営 業に変える狙いがあった。
営業所ごとに手掛けていた「受注・営業事 務」も見直した。
新たな受注窓口として「カ スタマーサービスセンター」を設置し、オペレ ーターが受注した内容を、そのまま営業担当 者へのフィードバックや業務処理に使える仕 組みを構築した。
一方、物流業務は3PLパ かつては全国各地に70カ所あった営業所に倉庫を 併設し受注から製品配送までをこなしていた。
2000 年からこの体制の見直しに着手し、すべての営業所 を段階的に閉鎖。
営業マンの就業スタイルを直行直 帰に改めた。
同時に日本梱包運輸倉庫を3PLパート ナーとする商物分離を断行。
以後、03年から06年 にかけて物流コストを20 %削減している。
日本ミシュランタイヤの 秋山寧ディレクター 47 JANUARY 2009 ートナーに一任した。
現在、ミシュランで販売部門の後方支援を 統括しているコマーシャルプランニング&オペ レーション部門の秋山寧ディレクターは、この ときのビジネスモデルの変革をこう振り返る。
「それ以前は、製品を届けることも営業活 動の一環という意識がすごく強かった。
営業 所をすべて閉鎖したことによって、配送行為 は営業活動ではなく、プロの物流業者がやる べき仕事。
営業はプロの営業の仕事をしてく ださい、というメッセージが明確に社内に浸 透していった」 納品リードタイムは維持 日本市場におけるミシュランの販売チャネ ルは「直需」と「市販用」の二つに分けられ る。
「直需」は自動車メーカー向けで、新車を 生産する工場にタイヤを直接納品する。
この サプライチェーンの管理は基本的に自動車メ ーカーが主導しており、ミシュランをはじめ とするサプライヤーは自動車メーカーの内示に 沿ってJIT納品を行う。
タイヤメーカー同 士の物流共同化も広く実施されている。
これに対して、カーディーラーやカー用品 店などを通じてタイヤを供給する「市販用」市 場では、配送サービスのリードタイムや品質を めぐってタイヤメーカー同士が激しい競争を繰 り広げてきた。
ミシュランは群馬県太田市に工場を置いて、 国内向け「直需」および「市販用」の乗用車 と小型トラックのタイヤを生産している。
そ れ以外のトラック・バス、二輪などのタイヤ はすべて輸入している。
市販用タイヤは、輸 入分も含めてすべて一度、太田工場の近くに ある「中央倉庫」に集約し、ここから必要に 応じて各地のデポに納品している。
このデポが二〇〇〇年までは営業所に併設 されていた。
前述した営業所の廃止を機に、 デポの運営も3PLパートナーにアウトソーシ ングすることになった。
ただし、デポの数を 大幅に減らそうとはしなかった。
納品リード タイムを維持する必要があったからだ。
一連の取り組みは、社内プロジェクトを発 足させた一九九九年にスタートした。
そして 二〇〇〇年九月から九州地区で新体制への移 行に着手。
九州で試験的に実施してから、他 のエリアに展開していくという計画だった。
この段階では、まだ3PLパートナーは決ま っていなかった。
中央倉庫を任せていた日本 運輸(日本梱包運輸倉庫の一〇〇%子会社) に声を掛け、九州での試行を実施した。
もっ とも群馬県を地盤とする日本運輸に、九州 全域の物流業務を処理させるには無理がある。
実質的にはこの段階から、同社の親会社であ る日梱が現場運営を担うことになった。
ほどなく新体制への手応えをつかんだミシ ュランは、この取り組みを全国展開するため、 正式に3PLパートナーを選ぶための物流コ ンペを開催した。
全国で均一のサービスを提 供できること、一日三回・二時間おきの定時 配送を実施できることなどを条件に、複数の 大手物流事業者から提案を募った。
「タイヤ業界の高い要求レベルに全国規模で 8 年前にビジネスモデルを変革した 営 業 受注・営業業務 所内物流・在庫補充 SHARED Accounts Leads Contacts Opportunities Cases Solutions Forecasts Reports Calendar and Task SFA(セールス・フォー ス・オートメーション) に支援された直行直帰 スタイルの営業部隊 カスタマーサービス &リビングセンター (受注:在庫補充) 3PLに外注 2000 年以前2002 年以降(商物分離) (営業所で商物一体) デポデポ…( 64 カ所) 工場 (海外) 工場 (太田) カスタマー サービス センター 工場 倉庫 中央倉庫(太田) トラック・バス、二輪、 建機、大型タイヤなど 乗用車、 小型トラックのタイヤ (横持ち) (輸入) (出荷指示) (発注) デポ 顧客 ……………… 国内における市販用(補修市場向け)タイヤの物流フロー JANUARY 2009 48 応じられる物流事業者はさほど多くない。
そ うした事業者の中から、コスト競争力や、改 善提案に対する姿勢などを総合的に判断して、 最終的に日梱さんに決まった」と秋山ディレ クターは説明する。
3PLパートナーに選ばれた日梱にとって、 自動車関連事業は土地勘のある分野だ。
主要 荷主のホンダの調達物流に絡んで、ミシュラ ンの輸入タイヤを扱っていた経験もある。
輸 入タイヤの関税が廃止された八〇年代以降は 直接的な付き合いは途絶えていたが、荷扱い は子会社の日本運輸が心得ている。
両社は〇一年四月に正式に契約を締結し た。
そして中四国地区で新体制を立ち上げた のに続き、同年五月に東京・関東地区、六月 に東北地区と、毎月のように新しいエリアを 手掛けていった。
新体制が立ち上がった直後 の二週間程度は「安定化委員会」を設置し、 経営トップも参加するミーティングを連日開 催して移行状況を注視した。
トラブルに関す る情報の共有や、作業手順のリスト化などを 進めて、案件を重ねるごとにスムーズに立ち ジャー)と明言している。
これが?社交辞令?ではないことは、両 社が毎年実施している「共同取組プロジェク ト」に如実にあらわれている。
このプロジェ クトは年間三、四件ずつ手掛けている物流改 善のための活動体だ。
コストに関するものか ら、サービスレベルを高める工夫まで内容は さまざまで、互いに提案を出し合い、双方の メンバーが参加して改善活動を進めている。
荷主と協力物流事業者が情報共有のため に催す一般的な定例会合とは、位置付けがま ったく異なっている。
原則として年に二度開 催する「共同取組」のレビューと進捗報告の ための会合には、必ず両社の社長が出席する。
その場で実務担当者が直近の活動の成果など を報告し、進捗中の案件であれば中間報告を 行う。
次に手掛けようとしているテーマの内 容や数値目標なども発表され、これに対して 経営トップが承認していく。
日梱でミシュラン向け3PL事業の責任者 を務める岡本賢二取締役は、「一般にこうし 上げられるようになっていった。
ミシュランの物流部の中山哲男マネージャ ーは、「全国展開を進めていくなかで、日梱 さんに対するトレーニングや、われわれが『標 準手順作業書』と呼んでいるマニュアルの作 成を進めた。
システムがきちんとつながるの かといった懸念もあったが、夜間の実地テス トなどを事前に重ねたことで大きなトラブル とは無縁だった」という。
〇二年二月に近畿地区で運用を開始したこ とで、新体制の全国展開が完了した。
中央倉 庫から先の物流業務は全国一律で3PLパー トナーが管理し始めた。
全国六四カ所のデポ は日梱グループの拠点と、それ以外の協力物 流事業者の拠点からなるが、管理はすべて日 梱が担うことになった。
これによって従来は営業所ごとにバラバラ だった物流サービスが全国で標準化された。
一 日三回(一〇時・十三時・一六時)の締め時 間までにカスタマーセンターで受けた注文は、 それぞれ二時間以内に製品を配送できるよう になった。
社長も巻き込み「共同取組」を管理 この物流アウトソーシングの枠組みは、ミ シュランにとって新しい取り組みだったのと 同時に、日梱にとっても画期的なものだった。
ミシュランは現在、「日梱さんとは、荷主と業 者という立場ではなく、互いにパートナーと して物流改善に取り組んでいる」(中山マネー オペレーション部門の組織図 社長 コマーシャルプランニング&オペレーション ディレクター 品質管理 プロジェクト担当 直需事業サプライチェーンチーム 補修事業サプライチェーンチーム 補修需要予測担当 カスタマーサービスセンター(太田) 物流部(太田) 日本ミシュランタイヤ・物流部 の中山哲男マネージャー 49 JANUARY 2009 新たにクロスドックの処理コストが発生する が、物量をまとめることで幹線輸送のパイプ が太くなり、補充頻度を増やせる。
結果とし て在庫削減にもつながり、トータルコストが 下がる。
実際、九州地区で試行してみたとこ ろ明らかな効果を確認できたため、適用エリ アを全国に拡大している最中だ。
また「仮置き在庫」とは、季節波動のあ る商品などが顧客から返品されたとき、物流 拠点で検品待ちのまま滞留してしまう在庫を 指す。
従来は作業ルールが確立されておらず、 関係者の都合で作業が滞ってしまうことが多 かった。
これが「仮置き在庫」の滞留を招き、 スペース効率の悪化につながっていた。
実はこの問題は、ミシュランにとって長年 の懸案事項で、過去にも何度か解決を試みた ことがあった。
だが一時的に在庫を減らすこ とはできても、次のシーズンには再び元の状 態に戻ってしまっていた。
これを「共同取組」 のテーマに掲げ、「仮置き在庫を半減させる」 という活動目標を両社で設定したところ、ほ ぼ目標通りの成果につながった。
ミシュラン は在庫を減らし、日梱は倉庫でのスペース効 率を向上させることができた。
こうした地道な改善努力の積み上げによっ て、新体制が軌道に乗った〇三年以後、〇六 年までの三年間でミシュランの物流コストは 約二割減った。
トータルコストを削減できた ばかりでなく、タイヤ一本ごとの個建て契約 を日梱と交わすことによってコストの透明化 も実現した。
一連の成果は、仏ミシュランか ら社内表彰をも受けている。
日梱が管理している配送業務のサービスレ ベルも、おおむね満足のいく水準を確保して いる。
第三者機関を通じた顧客アンケートで は、誤配の少なさや、定時配送などに高い評 価が寄せられた。
受注から二時間以内という 配送リードタイムそのものは国内の競合メーカ ーに比べると必ずしも短いわけではない。
そ れでも約束した時間内に必ず届く点などが好 評価につながっているのだという。
現在、ミシュランが直面している最大の課 題は、オペレーションの効率が高まっている にもかかわらず、国内でのシェアが思うよう に拡大していない点だ。
秋山ディレクターと しては、「現状の二時間という配送リードタイ ムが、本当に顧客の望んでいるサービスなの かという疑問もある。
営業とも相談しながら 改めて検討してみたい」と考えている。
ミシ ュランの3PL活用は、すでに目先のコスト 削減の次をにらんだフェーズに入っている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) た取り組みは、生産や物流の立場からの一方 的な報告で終わってしまうことが少なくない。
こうやって同じテーマに一緒に携わり、発表 までする例は珍しい。
まして両社の社長が同 席する会合を、これほど頻繁に催している事 例は他にはない」という。
この活動は、ミシュランの担当部署が意識 的に経営トップを巻き込み「共同取組」の効 果を高めようとしてきた成果でもある。
それ が全社レベルの活動として定着した。
〇八年 には社長が自ら「頻度を上げて改善活動をフ ォローしたい」という意向を示し、この会合 を年間三回催している。
両社のパートナーシップの深さは、燃料サー チャージをいち早く導入したことからもうか がえる。
日梱は〇七年一月と〇八年一〇月の 二度にわたって輸送業務におけるサーチャー ジをミシュランに認めてもらっている。
この ときも互いにデータを持ち寄り、納得のいく 形で落とし所を決めたのだという。
新体制下で物流コストを二割削減 「中央倉庫からデポへの転送のクロスドック 化」と「仮置き在庫の削減」は、「共同取組」 の最近の成果だ。
このうちクロスドック化は、 従来はJRコンテナなどを使って個別に行っ ていた各デポへの製品補充を、まず中央倉庫 から大型トラックで基幹拠点まで運び、これ を改めて小型トラックで域内に分散させるよ うに変えるというものである。
日本梱包運輸倉庫の岡本賢二 取締役
