2009年2月号
物流IT解剖
物流IT解剖
事業再編に先行してIT部門を分社化40億円を投じて物流システムも刷新
FEBRUARY 2009 60
事業再編と持株会社化で IT活用の体制も再構築
五年ほど前まで、ニチレイの低温
物流事業は多くの難題を抱えていた。
本社を中心に展開していた冷蔵倉庫 事業と、グループ会社が手掛けてい た輸配送事業やセンター事業が相乗 効果を発揮しきれず、物流事業全体 の業績も伸び悩んでいた。
こうした課題を解消するため二〇 〇四年四月、低温物流事業の抜本的 な組織再編を実施した。
保管事業を 本体から切り離し、既存会社を含む 八つの地域事業会社に再編。
同時に 低温物流事業に携わる国内の組織全 体を「地域保管」と「物流ネットワ ーク」の二つの事業に大きく括りな おした。
現在、低温物流分野の事業持株会 社であるニチレイロジグループ本社で 取締役常務執行役員を務め、ロジグ ループのCIO(情報最高責任者) も兼務している山室達雄氏は、この ときの組織改革をこう振り返る。
「全国の事業を一つにまとめて管理 する構造が?親方日の丸?のような 意識を生んでいた。
たとえば北海道 支社の業績が悪くても、どこかが良 ければ全体としては何とかなる。
そ うした甘えがどうしてもぬぐえなか った。
そこで地域ごとに事業を分割 した。
危機意識を醸成すると同時に、 会社を小さくすることによって経営 を身近にして、社員のモチベーション を高めようという狙いだった」 続いて翌〇五年四月には、それま で社内カンパニーとして本体内に置 いてきた五つの主力事業(加工食品、 低温物流、水産・畜産、バイオサイ エンス、シェアードサービス)につい て、それぞれ基幹会社を設立して分 社化した。
これによってニチレイ本 体は持株会社としてグループ全体に 関わるコーポレート機能を担い、事業 レベルの意志決定は基幹五社に任せ る体制へと移行した。
現在の低温物流事業の組織を改め て整理すると、まず最上位にグルー プ持株会社としてのニチレイ。
その 下に一〇〇%子会社の中間持株会社 であるニチレイロジグループ本社。
さ らにその傘下に「地域保管事業」を 担う国内二五社(各地のニチレイ・ ロジスティクスなど)と、「物流ネッ トワーク事業」を担う国内五社(ロ ジスティクス・ネットワークやロジス ティクス・プランナーなど)、海外事 業やエンジニアリング事業を担う企業 群がぶら下がる構図になっている。
一連の組織の見直しに伴い、IT 活用のあり方も変化してきた。
まず 事業分野の組織改革に先立ち、〇三 年一月にニチレイ本体のIT部門を 分社化。
その後、〇四年の低温物流 事業の組織改革と、〇五年の持株会 社制への移行を機に、コーポレートレ ベルのIT活用と、事業レベルのI 事業再編に先行してIT部門を分社化 40億円を投じて物流システムも刷新 ニチレイロジグループ 2005年にニチレイ本体を持株会社化し、低温物流事業部門をニチレ イロジグループとして完全に分離した。
この組織改革に先立ち、03年 にはIT部門の分社化、04年には物流事業の大規模な再編を行っている。
約40億円を投じて開発した物流システムと、強力な低温物流ネットワ ークを武器に、物流業界で存在感を高めていこうとしている。
ニチレイロジグループ本社 で取締役常務執行役員と CIOを兼ねる山室達雄氏 組織改革 第23 回 ◆本社組織 中間持株会社であるニチレイロジグループ本 社の「情報企画部」に3人が所属 ◆情報子会社 日立フーズ&ロジスティクスシステムズ、 2003年1月にニチレイのIT部門を分社化し日立製作所の出 資を迎え入れて発足、資本金3億円(日立製作所51%、ニチ レイ44%、日本ユニシス5%)、従業員84人(08年10月現在) 《概要》 03 年1月にニチレイのIT 部門(本社組織の情報システム部および低温物流事 業部内のシステム担当部署)を分社化し、日立製作所との共同出資会社、日立フーズ &ロジスティクスシステムズ(日立F&L)を発足。
同社はニチレイと10 年間・総額約 250 億円の長期アウトソーシング契約を締結した。
このときニチレイ本体のIT 部門は一時的に消滅した。
だが05 年の持株会社化への 移行に伴い、ニチレイと基幹5 社それぞれに情報企画部門を設置し、ここで決定した IT 戦略の実務を日立F&L が実行する体制へと移行。
現在、日立F&L の社員のうち約 20人が物流システムを担当している。
ニチレイロジグループの中にはIT 専任者が10 数人、および「ITキーマン」と呼ぶ他 業務と兼任の担当者が30人程度いる。
この40人余りが、ロジグループ本社の「情報 企画部」を中心としながらIT 活用を遂行。
61 FEBRUARY 2009 に日立フーズ&ロジスティクスシステ ムズ(以下、日立F&L)を設立し、 それまで本体内に本社機能として抱 えていた情報システム部と、同じく 本体の低温物流事業部のなかでシス テムを担当していた部署をまとめて 移管した。
日立F&Lの発足時の出資比率は、 日立製作所が五一%で、ニチレイが 四九%(その後、日本ユニシスが五% 出資したため、現在のニチレイの持 株は四四%)。
資本系列からすると日 立グループの会社ということになる が、実質的にはニチレイの情報子会 社としての役割を担っている。
IT部門の分社化には、コアビジネ スへの経営資源の集中と並んで、I Tコストを削減する狙いがあった。
シ ステムを外販して情報部門を事業化 し、内向きになりがちだったシステ ム部門を社外に出すことで先進技術 を取り込むきっかけにしたいという 思惑も持っていた。
そのために単なる子会社化ではな く、日立製作所と共同出資で会社を 新設するというスキームを選択した。
当時、日立は「戦略アウトソーシング 事業」の強化に乗り出しており、そ の一環としてユーザー企業と共同出 資会社を設置する動きを本格化して いた。
ユーザーのIT部門を丸ごと 日立グループに受け入れる代わりに、 長期にわたるアウトソーシング契約を 締結するというものだ。
実際、両社はこのとき、向こう一 〇年・総額およそ二五〇億円におよ ぶ大規模なアウトソーシング契約を 交わしている。
この間にニチレイが 開発するシステムは、原則として日 立F&Lが手掛ける。
日立としては、 このスキームで長期契約を確保し、同 時に食品業界で大きな存在感を持つ ニチレイのノウハウや影響力を取り込 もうとする狙いがあった。
一方のニチレイはIT部門を事業 化していくための後ろ盾を得られる。
しかも日立は、当面は新会社での人員 削減をしないと約束してくれた。
情 報システム部員の雇用にも配慮しな がら、分社化によるコスト削減を推 進しようとしていたニチレイにとって は渡りに船の条件だった。
〇三年一月に日立F&Lが発足し た時点で、ニチレイのシステム担当者 はほぼ全員が新会社に出向した。
本 社情報システム部門と低温物流事業 部のIT部隊という編成は新会社で もそのまま踏襲された。
しかし、そ の後の二年間でニチレイが組織改革 を進めたことから、これに対応して システム部門のあり方も大きく変化 していくことになる。
IT部門に再び転機が訪れたのは 〇六年だった。
日立F&Lの発足か ら三年が経ち、ニチレイからの出向 期間が満了。
出向者はニチレイに戻 るか、転籍するかの選択を迫られた。
結果として、低温物流事業部から出 向していた三〇人弱のうち約三割が 戻る道を選んだ。
こうして戻ってきたIT担当者の 一部が、「やはりロジグループのIT を企画・管理していく部署が必要」 (越川裕文情報企画部長)という経 営サイドの考えから、〇六年七月に ロジグループ本社のなかに発足した 「情報企画部」に配属された。
現在、 この部署には派遣社員一人を含む三 人が所属しており、ロジグループの CIOを務める山室取締役とともに 物流事業全体を視野に置いたITの 企画・運営を手掛けている。
システム開発や運用の実務は日立 F&Lが担当している。
情報企画部 の役割は、ニチレイグループ全体とロ ジグループのIT活用を調整するこ とや、物流事業に特有のIT戦略を 考えることなどが中心だ。
そしてグ ループ内の各事業会社に配置された 他業務と兼任のシステム担当者、通 称「ITキーマン」を通じて、現場 レベルのITリテラシーを向上させる ことも重要な役割となっている。
T活用を明確に区別する体制を整え ていった。
そしてIT投資における?受益者 負担?の原則を徹底するため、基幹 五社すべてに情報部門を設置。
これ に伴い物流事業の内部でも、それま では傘下の事業体ごとに実施する傾 向があったIT活用を、中間持株会 社であるロジグループ本社を中心に推 進していくことになった。
〇三年にIT部門を分社 日立と戦略会社を設置 〇三年のIT部門の分社化以来、 ニチレイ本体に大規模なシステム部 門は存在しない。
このときニチレイ は、日立製作所との共同出資で新た IT関連会社 05 年の分社後のITに関する業務分担 分社前ニチレイニチレイ 基幹5 会社 経営戦略情報戦略企画業務 事業戦略 情報戦略 企画業務 開発業務 運用業務 保守業務 共通業務 IT 関連業務分社 経営戦略 経営戦略 開発業務 運用業務 保守義務 共通業務 事業戦略 情報戦略 企画提携 管理 (アウトソーシング他) 日立F&L 情報戦略、企画業 務は必要に応じて 日立F&Lが支援 FEBRUARY 2009 62 保管と輸配送の一体化へ 四〇億円で新システム開発 ニチレイの低温物流事業部は二〇 〇〇年代の初頭から、事業再編や組 織改革とは別の次元で、大規模なシ ステム開発に取り組んでいた。
それ 以前に使っていたシステムは稼働から 二〇年余りが経過し、全国に四台の ホストコンピュータを分散させなけれ ばならないほど巨大化していた。
構 造的にも複雑化し、メンテナンスや 新機能の追加も限界に達していた。
そこで日本ユニシスを開発パート ナーに、WMSとTMSを包含した 新システム「Lixxi」(リクシー)の構 築に着手した。
ハードまで含めると 総額およそ四〇億円を投じる大規模 案件だった。
〇三年に日立F&Lが 発足してからもこの開発は継続され、 低温物流事業部から新会社に出向し ていた人たちが総出で携わった。
こ の開発に絡んで、日立F&Lの株式 の五%をユニシスが保有するという 関係も生まれることになる。
新システムの最大の特徴は、WM SとTMSを高度に連携させた点だ。
従来のシステムは保管機能が中心に なっていた。
輸配送機能などを後付 けで追加していたため、幹線輸送シ ステムなどとの連携に難点があった。
これを保管から輸配送まで一貫して 管理できるようにした。
リクシーで処理したオペレーション の結果は即座に請求システムにつな がるようになっている。
これがニチ レイグループに共通する会計インフラ であるSAPのR/3にも連動。
さ らには「食品の物流に欠かせない賞 味期限管理を強化した。
製造年月日 や賞味期限など製品ごとに異なる情 報を使い、先入れ先出しを徹底しな がら最適な管理をできるようになっ ている」と越川部長は説明する。
トレーサビリティの機能も充実さ せた。
構造が複雑化していた旧シス テムでは、昨今の「食の安心・安全」 を求める社会のニーズに応えるのは 難しかった。
これを新システムでは、 商品ごとの製造年月日やロットナン バーを細かくリンクさせながら、出 荷日や配送先を管理する。
万一、ト ラブルが発生しても、製品回収など を迅速に実施できるという。
リクシーの現場への導入は〇四年 一月からスタートした。
ロジグループ が全国に展開している八〇カ所の物 流センターと、輸配送事業所二〇カ 所でシステムを更新。
約二年を費や して全拠点への導入を完了した。
今 では運用もこなれてきた。
このシステムは、顧客に製品の在 庫情報などをネット経由で提供する 「Nile2」(ナイル2)と呼ぶ機能も備 えている。
今でこそ珍しい仕組みで はないが、ニチレイはこの初期バー ジョンを二〇〇〇年という早い段階 で稼働している。
これをバージョンア ップしてリクシーに組み込んだ。
ナイル2を利用すれば、物流システ ムを持っていない中小荷主でも、製 品の在庫状況などをパソコン上で管 理できる。
利用料金は取り扱う物量 によって異なるが、一般的な中小荷 主であれば月額五〇〇〇円程度。
す でに一五〇社を超す荷主が活用して おり、「賞味期限切れや欠品、滞留 在庫などに対するアラーム機能もつ いていて、利用者の評判は非常にい い」と越川部長はアピールする。
ただし、現在のリクシーには実運 送を管理する仕組みがない。
グルー プで輸送事業を担っているロジステ ィクス・ネットワークは利用運送事業 者のため必要がなかった。
しかしそ の後、ニチレイは〇六年一〇月に初 めての実運送子会社であるNKトラ ンスを発足させている。
保管事業の業績が頭打ちになって いる現在、輸送事業で売り上げを拡 大していくことがロジグループの基本 戦略になっている。
そのために「利 用運送の知恵をつけるには、実運送 についてもっとよく知る必要がある。
NKトランスを?教育機関?的に位 置づけて人をローテーションすること も考えている」と山室取締役。
場合 によっては実運送のシステムを追加 で開発する可能性もありそうだ。
課題は高機能システムを 有効活用するための工夫 過去にはニチレイの低温物流事業 部で、外資系ITベンダーのWMS の採用を真剣に検討した時期もあっ た。
だが結局は、自ら開発した方が 納得できるシステムが組めるうえ、コ ストも安いと判断して独自開発を続 けた。
そうした判断の結果として生 まれたリクシーの機能には十分に満 足しているという。
もっともすべての案件にこのシス テムを適用しようとしているわけで はない。
リクシーは基本的に在庫型 センターの運営を想定している。
こ のため小売業などの通過型センター を管理するときには、荷主のシステ システム刷新 IT教育 ニチレイロジグループ本社・ 情報企画部の越川裕文部長 63 FEBRUARY 2009 ーション・システムなどを組み合わせ て対応した方が投資効果も高まる。
グループ内で3PL事業を展開し ているロジスティクス・プランナーが 個別の案件で使うシステムもリクシー とは限らない。
この会社には独自の システム担当者が七人いて、顧客ご とに異なるシステムニーズに対応して いる。
このような個別事情にも目配 りしながら、全体のIT活用を管理 していくことがロジグループ本社の情 報企画部には求められている。
現在、ロジグループが負担してい る年間ITコストは、連結ベースの 事業売上高一三八七億円(〇八年三 月期)の一・三%程度の水準にある。
これは「冷蔵倉庫業界だけを考えれ ば突出した数字」だが、山室取締役 としてはリクシーの充実した機能など を考えれば決して過剰投資ではない と判断している。
むしろ問題は、せ っかく充実させた機能をまだ使い切 れていない点にある。
リクシーには日々の活動実績がど んどん蓄積される。
こうしたデータ を使えば、かつては紙ベースでしか入 手できなかった経営情報を簡単に出 力できる。
問題はそこから先だ。
「現 場の生データを経営の視点からどう 生かしていくか。
これを活用してサ ービスレベルを高めていったり、われ われの業績を向上させていくための 工夫が、現状ではまだ不十分だ」と 山室氏は考えている。
ITを活用して日常業務を改善し ていこうとしたら、そのための知恵 をグループ内で共有することが求め られる。
だからこそ「ITキーマン 会議」と称する会合を、四半期に一 度程度の頻度で催している。
グルー プ各社に配置された約三五人のIT キーマンを集めて、各部門で成功し た取り組みなどを共有化していこう という取り組みである。
すでに意外な発見もあった。
ある 物流現場におけるピッキングの方法 を、フォークリフトの上下動のムダに 着目して見直したところ、作業時間 が約三分の二に短縮するという劇的 な効果につながった。
従来は当たり 前のようにやっていたピッキングの順 番をリクシーの機能を使って改善し た結果だった。
この成果はさっそく 横展開された。
ロジグループの社員の意欲は現在、 物流会社として明確に独立したこと が奏功して高まっている。
業績も順 調だ。
これまで同社は冷凍倉庫を主 力としてきたことからチルドには弱 いと見られがちだったが、実は小売 業向けに提供しているサービスの大 半はチルド物流だ。
「そろそろ常温も 含む三温度帯も視野に入れたい」と 山室取締役は意気込んでいる。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) ムを使うケースが少なくない。
既存 のシステムがある場合には、それを ベースにハンディ端末を使ったオペレ ニチレイグループのIT プラットフォーム フーズ、フレッシュロジグループバイオサイエンス DWH りぼんシステム 外為システム 販売管理 保管系 主なシステム系 受注系EDI、WEB 報告系EDI、自動FAX Web 情報 ・情報提供 ・出庫依頼 輸配送系情報系 DWH 販売管理 一般会計 請求系 購買在庫管理 商品 受発注 ・受注、出庫 ・プロティアン ・発注、出庫 ・在庫転送 ・在庫管理 ・保税搬入管理 ・入庫管理 ・出庫管理 ・在庫管理 ・TC 業務 ・作業進捗管理 ・運送受注 ・配車 ・進捗管理 ・実績管理 ・運賃計算 ・傭車料計算 ・諸掛入力 ・請求書作成 ・請求書問合せ ・マスタメンテ SAP R/3 物流システム(Lixxi) 顧客インタフェース SAP R/3 外付けシステム個別システム 個別システム 業績加工配賦SFA 輸入台帳ARIS EDI 変換 Open Print CMS 外付けシステム 生 産 仕入・販売実績 主な情報名 会計 EDIPACK Notes ファイルサーバ認証サーバWeb サーバ NW 基盤/プロトコル/ NWハードウェア Oracle JP1 受発注 帳票 銀行支払 経営プラットフォーム 企業プラットフォーム 事業プラットフォーム 会計会計 一般会計共通マスタ管理 人事労務 COMPANY マスタ管理(商品、取引先、コネクション、単価) 連結会計 ・商品 ・取引先 ・勤怠管理 ・給与計算 ・福利厚生 人件費 狙 権限委譲統一・統制 効率性迅速性 メール・情報共有サーバDBMS 統合運用管理 凡例 ※事業プラットフォーム:事業単位で事業遂行上の基盤となる資源(システム群) 経営プラットフォーム:グループ経営上、共通化・標準化する経営資源(システム群) 企業プラットフォーム:グループで共通のIT 基盤 プラットフォーム連携部分:事業PFにおいて、企業PF、経営PFと密接に連携をとって、実現、運用すべき範囲 【基本的な考え方】PF=プラットフォーム ●共通部分(経営PF、企業PF)を簡素にする(特に経営PF) ●企業PFは、共通化を図りコストメリットを追求する
本社を中心に展開していた冷蔵倉庫 事業と、グループ会社が手掛けてい た輸配送事業やセンター事業が相乗 効果を発揮しきれず、物流事業全体 の業績も伸び悩んでいた。
こうした課題を解消するため二〇 〇四年四月、低温物流事業の抜本的 な組織再編を実施した。
保管事業を 本体から切り離し、既存会社を含む 八つの地域事業会社に再編。
同時に 低温物流事業に携わる国内の組織全 体を「地域保管」と「物流ネットワ ーク」の二つの事業に大きく括りな おした。
現在、低温物流分野の事業持株会 社であるニチレイロジグループ本社で 取締役常務執行役員を務め、ロジグ ループのCIO(情報最高責任者) も兼務している山室達雄氏は、この ときの組織改革をこう振り返る。
「全国の事業を一つにまとめて管理 する構造が?親方日の丸?のような 意識を生んでいた。
たとえば北海道 支社の業績が悪くても、どこかが良 ければ全体としては何とかなる。
そ うした甘えがどうしてもぬぐえなか った。
そこで地域ごとに事業を分割 した。
危機意識を醸成すると同時に、 会社を小さくすることによって経営 を身近にして、社員のモチベーション を高めようという狙いだった」 続いて翌〇五年四月には、それま で社内カンパニーとして本体内に置 いてきた五つの主力事業(加工食品、 低温物流、水産・畜産、バイオサイ エンス、シェアードサービス)につい て、それぞれ基幹会社を設立して分 社化した。
これによってニチレイ本 体は持株会社としてグループ全体に 関わるコーポレート機能を担い、事業 レベルの意志決定は基幹五社に任せ る体制へと移行した。
現在の低温物流事業の組織を改め て整理すると、まず最上位にグルー プ持株会社としてのニチレイ。
その 下に一〇〇%子会社の中間持株会社 であるニチレイロジグループ本社。
さ らにその傘下に「地域保管事業」を 担う国内二五社(各地のニチレイ・ ロジスティクスなど)と、「物流ネッ トワーク事業」を担う国内五社(ロ ジスティクス・ネットワークやロジス ティクス・プランナーなど)、海外事 業やエンジニアリング事業を担う企業 群がぶら下がる構図になっている。
一連の組織の見直しに伴い、IT 活用のあり方も変化してきた。
まず 事業分野の組織改革に先立ち、〇三 年一月にニチレイ本体のIT部門を 分社化。
その後、〇四年の低温物流 事業の組織改革と、〇五年の持株会 社制への移行を機に、コーポレートレ ベルのIT活用と、事業レベルのI 事業再編に先行してIT部門を分社化 40億円を投じて物流システムも刷新 ニチレイロジグループ 2005年にニチレイ本体を持株会社化し、低温物流事業部門をニチレ イロジグループとして完全に分離した。
この組織改革に先立ち、03年 にはIT部門の分社化、04年には物流事業の大規模な再編を行っている。
約40億円を投じて開発した物流システムと、強力な低温物流ネットワ ークを武器に、物流業界で存在感を高めていこうとしている。
ニチレイロジグループ本社 で取締役常務執行役員と CIOを兼ねる山室達雄氏 組織改革 第23 回 ◆本社組織 中間持株会社であるニチレイロジグループ本 社の「情報企画部」に3人が所属 ◆情報子会社 日立フーズ&ロジスティクスシステムズ、 2003年1月にニチレイのIT部門を分社化し日立製作所の出 資を迎え入れて発足、資本金3億円(日立製作所51%、ニチ レイ44%、日本ユニシス5%)、従業員84人(08年10月現在) 《概要》 03 年1月にニチレイのIT 部門(本社組織の情報システム部および低温物流事 業部内のシステム担当部署)を分社化し、日立製作所との共同出資会社、日立フーズ &ロジスティクスシステムズ(日立F&L)を発足。
同社はニチレイと10 年間・総額約 250 億円の長期アウトソーシング契約を締結した。
このときニチレイ本体のIT 部門は一時的に消滅した。
だが05 年の持株会社化への 移行に伴い、ニチレイと基幹5 社それぞれに情報企画部門を設置し、ここで決定した IT 戦略の実務を日立F&L が実行する体制へと移行。
現在、日立F&L の社員のうち約 20人が物流システムを担当している。
ニチレイロジグループの中にはIT 専任者が10 数人、および「ITキーマン」と呼ぶ他 業務と兼任の担当者が30人程度いる。
この40人余りが、ロジグループ本社の「情報 企画部」を中心としながらIT 活用を遂行。
61 FEBRUARY 2009 に日立フーズ&ロジスティクスシステ ムズ(以下、日立F&L)を設立し、 それまで本体内に本社機能として抱 えていた情報システム部と、同じく 本体の低温物流事業部のなかでシス テムを担当していた部署をまとめて 移管した。
日立F&Lの発足時の出資比率は、 日立製作所が五一%で、ニチレイが 四九%(その後、日本ユニシスが五% 出資したため、現在のニチレイの持 株は四四%)。
資本系列からすると日 立グループの会社ということになる が、実質的にはニチレイの情報子会 社としての役割を担っている。
IT部門の分社化には、コアビジネ スへの経営資源の集中と並んで、I Tコストを削減する狙いがあった。
シ ステムを外販して情報部門を事業化 し、内向きになりがちだったシステ ム部門を社外に出すことで先進技術 を取り込むきっかけにしたいという 思惑も持っていた。
そのために単なる子会社化ではな く、日立製作所と共同出資で会社を 新設するというスキームを選択した。
当時、日立は「戦略アウトソーシング 事業」の強化に乗り出しており、そ の一環としてユーザー企業と共同出 資会社を設置する動きを本格化して いた。
ユーザーのIT部門を丸ごと 日立グループに受け入れる代わりに、 長期にわたるアウトソーシング契約を 締結するというものだ。
実際、両社はこのとき、向こう一 〇年・総額およそ二五〇億円におよ ぶ大規模なアウトソーシング契約を 交わしている。
この間にニチレイが 開発するシステムは、原則として日 立F&Lが手掛ける。
日立としては、 このスキームで長期契約を確保し、同 時に食品業界で大きな存在感を持つ ニチレイのノウハウや影響力を取り込 もうとする狙いがあった。
一方のニチレイはIT部門を事業 化していくための後ろ盾を得られる。
しかも日立は、当面は新会社での人員 削減をしないと約束してくれた。
情 報システム部員の雇用にも配慮しな がら、分社化によるコスト削減を推 進しようとしていたニチレイにとって は渡りに船の条件だった。
〇三年一月に日立F&Lが発足し た時点で、ニチレイのシステム担当者 はほぼ全員が新会社に出向した。
本 社情報システム部門と低温物流事業 部のIT部隊という編成は新会社で もそのまま踏襲された。
しかし、そ の後の二年間でニチレイが組織改革 を進めたことから、これに対応して システム部門のあり方も大きく変化 していくことになる。
IT部門に再び転機が訪れたのは 〇六年だった。
日立F&Lの発足か ら三年が経ち、ニチレイからの出向 期間が満了。
出向者はニチレイに戻 るか、転籍するかの選択を迫られた。
結果として、低温物流事業部から出 向していた三〇人弱のうち約三割が 戻る道を選んだ。
こうして戻ってきたIT担当者の 一部が、「やはりロジグループのIT を企画・管理していく部署が必要」 (越川裕文情報企画部長)という経 営サイドの考えから、〇六年七月に ロジグループ本社のなかに発足した 「情報企画部」に配属された。
現在、 この部署には派遣社員一人を含む三 人が所属しており、ロジグループの CIOを務める山室取締役とともに 物流事業全体を視野に置いたITの 企画・運営を手掛けている。
システム開発や運用の実務は日立 F&Lが担当している。
情報企画部 の役割は、ニチレイグループ全体とロ ジグループのIT活用を調整するこ とや、物流事業に特有のIT戦略を 考えることなどが中心だ。
そしてグ ループ内の各事業会社に配置された 他業務と兼任のシステム担当者、通 称「ITキーマン」を通じて、現場 レベルのITリテラシーを向上させる ことも重要な役割となっている。
T活用を明確に区別する体制を整え ていった。
そしてIT投資における?受益者 負担?の原則を徹底するため、基幹 五社すべてに情報部門を設置。
これ に伴い物流事業の内部でも、それま では傘下の事業体ごとに実施する傾 向があったIT活用を、中間持株会 社であるロジグループ本社を中心に推 進していくことになった。
〇三年にIT部門を分社 日立と戦略会社を設置 〇三年のIT部門の分社化以来、 ニチレイ本体に大規模なシステム部 門は存在しない。
このときニチレイ は、日立製作所との共同出資で新た IT関連会社 05 年の分社後のITに関する業務分担 分社前ニチレイニチレイ 基幹5 会社 経営戦略情報戦略企画業務 事業戦略 情報戦略 企画業務 開発業務 運用業務 保守業務 共通業務 IT 関連業務分社 経営戦略 経営戦略 開発業務 運用業務 保守義務 共通業務 事業戦略 情報戦略 企画提携 管理 (アウトソーシング他) 日立F&L 情報戦略、企画業 務は必要に応じて 日立F&Lが支援 FEBRUARY 2009 62 保管と輸配送の一体化へ 四〇億円で新システム開発 ニチレイの低温物流事業部は二〇 〇〇年代の初頭から、事業再編や組 織改革とは別の次元で、大規模なシ ステム開発に取り組んでいた。
それ 以前に使っていたシステムは稼働から 二〇年余りが経過し、全国に四台の ホストコンピュータを分散させなけれ ばならないほど巨大化していた。
構 造的にも複雑化し、メンテナンスや 新機能の追加も限界に達していた。
そこで日本ユニシスを開発パート ナーに、WMSとTMSを包含した 新システム「Lixxi」(リクシー)の構 築に着手した。
ハードまで含めると 総額およそ四〇億円を投じる大規模 案件だった。
〇三年に日立F&Lが 発足してからもこの開発は継続され、 低温物流事業部から新会社に出向し ていた人たちが総出で携わった。
こ の開発に絡んで、日立F&Lの株式 の五%をユニシスが保有するという 関係も生まれることになる。
新システムの最大の特徴は、WM SとTMSを高度に連携させた点だ。
従来のシステムは保管機能が中心に なっていた。
輸配送機能などを後付 けで追加していたため、幹線輸送シ ステムなどとの連携に難点があった。
これを保管から輸配送まで一貫して 管理できるようにした。
リクシーで処理したオペレーション の結果は即座に請求システムにつな がるようになっている。
これがニチ レイグループに共通する会計インフラ であるSAPのR/3にも連動。
さ らには「食品の物流に欠かせない賞 味期限管理を強化した。
製造年月日 や賞味期限など製品ごとに異なる情 報を使い、先入れ先出しを徹底しな がら最適な管理をできるようになっ ている」と越川部長は説明する。
トレーサビリティの機能も充実さ せた。
構造が複雑化していた旧シス テムでは、昨今の「食の安心・安全」 を求める社会のニーズに応えるのは 難しかった。
これを新システムでは、 商品ごとの製造年月日やロットナン バーを細かくリンクさせながら、出 荷日や配送先を管理する。
万一、ト ラブルが発生しても、製品回収など を迅速に実施できるという。
リクシーの現場への導入は〇四年 一月からスタートした。
ロジグループ が全国に展開している八〇カ所の物 流センターと、輸配送事業所二〇カ 所でシステムを更新。
約二年を費や して全拠点への導入を完了した。
今 では運用もこなれてきた。
このシステムは、顧客に製品の在 庫情報などをネット経由で提供する 「Nile2」(ナイル2)と呼ぶ機能も備 えている。
今でこそ珍しい仕組みで はないが、ニチレイはこの初期バー ジョンを二〇〇〇年という早い段階 で稼働している。
これをバージョンア ップしてリクシーに組み込んだ。
ナイル2を利用すれば、物流システ ムを持っていない中小荷主でも、製 品の在庫状況などをパソコン上で管 理できる。
利用料金は取り扱う物量 によって異なるが、一般的な中小荷 主であれば月額五〇〇〇円程度。
す でに一五〇社を超す荷主が活用して おり、「賞味期限切れや欠品、滞留 在庫などに対するアラーム機能もつ いていて、利用者の評判は非常にい い」と越川部長はアピールする。
ただし、現在のリクシーには実運 送を管理する仕組みがない。
グルー プで輸送事業を担っているロジステ ィクス・ネットワークは利用運送事業 者のため必要がなかった。
しかしそ の後、ニチレイは〇六年一〇月に初 めての実運送子会社であるNKトラ ンスを発足させている。
保管事業の業績が頭打ちになって いる現在、輸送事業で売り上げを拡 大していくことがロジグループの基本 戦略になっている。
そのために「利 用運送の知恵をつけるには、実運送 についてもっとよく知る必要がある。
NKトランスを?教育機関?的に位 置づけて人をローテーションすること も考えている」と山室取締役。
場合 によっては実運送のシステムを追加 で開発する可能性もありそうだ。
課題は高機能システムを 有効活用するための工夫 過去にはニチレイの低温物流事業 部で、外資系ITベンダーのWMS の採用を真剣に検討した時期もあっ た。
だが結局は、自ら開発した方が 納得できるシステムが組めるうえ、コ ストも安いと判断して独自開発を続 けた。
そうした判断の結果として生 まれたリクシーの機能には十分に満 足しているという。
もっともすべての案件にこのシス テムを適用しようとしているわけで はない。
リクシーは基本的に在庫型 センターの運営を想定している。
こ のため小売業などの通過型センター を管理するときには、荷主のシステ システム刷新 IT教育 ニチレイロジグループ本社・ 情報企画部の越川裕文部長 63 FEBRUARY 2009 ーション・システムなどを組み合わせ て対応した方が投資効果も高まる。
グループ内で3PL事業を展開し ているロジスティクス・プランナーが 個別の案件で使うシステムもリクシー とは限らない。
この会社には独自の システム担当者が七人いて、顧客ご とに異なるシステムニーズに対応して いる。
このような個別事情にも目配 りしながら、全体のIT活用を管理 していくことがロジグループ本社の情 報企画部には求められている。
現在、ロジグループが負担してい る年間ITコストは、連結ベースの 事業売上高一三八七億円(〇八年三 月期)の一・三%程度の水準にある。
これは「冷蔵倉庫業界だけを考えれ ば突出した数字」だが、山室取締役 としてはリクシーの充実した機能など を考えれば決して過剰投資ではない と判断している。
むしろ問題は、せ っかく充実させた機能をまだ使い切 れていない点にある。
リクシーには日々の活動実績がど んどん蓄積される。
こうしたデータ を使えば、かつては紙ベースでしか入 手できなかった経営情報を簡単に出 力できる。
問題はそこから先だ。
「現 場の生データを経営の視点からどう 生かしていくか。
これを活用してサ ービスレベルを高めていったり、われ われの業績を向上させていくための 工夫が、現状ではまだ不十分だ」と 山室氏は考えている。
ITを活用して日常業務を改善し ていこうとしたら、そのための知恵 をグループ内で共有することが求め られる。
だからこそ「ITキーマン 会議」と称する会合を、四半期に一 度程度の頻度で催している。
グルー プ各社に配置された約三五人のIT キーマンを集めて、各部門で成功し た取り組みなどを共有化していこう という取り組みである。
すでに意外な発見もあった。
ある 物流現場におけるピッキングの方法 を、フォークリフトの上下動のムダに 着目して見直したところ、作業時間 が約三分の二に短縮するという劇的 な効果につながった。
従来は当たり 前のようにやっていたピッキングの順 番をリクシーの機能を使って改善し た結果だった。
この成果はさっそく 横展開された。
ロジグループの社員の意欲は現在、 物流会社として明確に独立したこと が奏功して高まっている。
業績も順 調だ。
これまで同社は冷凍倉庫を主 力としてきたことからチルドには弱 いと見られがちだったが、実は小売 業向けに提供しているサービスの大 半はチルド物流だ。
「そろそろ常温も 含む三温度帯も視野に入れたい」と 山室取締役は意気込んでいる。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) ムを使うケースが少なくない。
既存 のシステムがある場合には、それを ベースにハンディ端末を使ったオペレ ニチレイグループのIT プラットフォーム フーズ、フレッシュロジグループバイオサイエンス DWH りぼんシステム 外為システム 販売管理 保管系 主なシステム系 受注系EDI、WEB 報告系EDI、自動FAX Web 情報 ・情報提供 ・出庫依頼 輸配送系情報系 DWH 販売管理 一般会計 請求系 購買在庫管理 商品 受発注 ・受注、出庫 ・プロティアン ・発注、出庫 ・在庫転送 ・在庫管理 ・保税搬入管理 ・入庫管理 ・出庫管理 ・在庫管理 ・TC 業務 ・作業進捗管理 ・運送受注 ・配車 ・進捗管理 ・実績管理 ・運賃計算 ・傭車料計算 ・諸掛入力 ・請求書作成 ・請求書問合せ ・マスタメンテ SAP R/3 物流システム(Lixxi) 顧客インタフェース SAP R/3 外付けシステム個別システム 個別システム 業績加工配賦SFA 輸入台帳ARIS EDI 変換 Open Print CMS 外付けシステム 生 産 仕入・販売実績 主な情報名 会計 EDIPACK Notes ファイルサーバ認証サーバWeb サーバ NW 基盤/プロトコル/ NWハードウェア Oracle JP1 受発注 帳票 銀行支払 経営プラットフォーム 企業プラットフォーム 事業プラットフォーム 会計会計 一般会計共通マスタ管理 人事労務 COMPANY マスタ管理(商品、取引先、コネクション、単価) 連結会計 ・商品 ・取引先 ・勤怠管理 ・給与計算 ・福利厚生 人件費 狙 権限委譲統一・統制 効率性迅速性 メール・情報共有サーバDBMS 統合運用管理 凡例 ※事業プラットフォーム:事業単位で事業遂行上の基盤となる資源(システム群) 経営プラットフォーム:グループ経営上、共通化・標準化する経営資源(システム群) 企業プラットフォーム:グループで共通のIT 基盤 プラットフォーム連携部分:事業PFにおいて、企業PF、経営PFと密接に連携をとって、実現、運用すべき範囲 【基本的な考え方】PF=プラットフォーム ●共通部分(経営PF、企業PF)を簡素にする(特に経営PF) ●企業PFは、共通化を図りコストメリットを追求する
