ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年2号
物流指標を読む
崖っぷちの日本経済

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流指標を読む  各シンクタンクによる二〇〇九年度の経済 成長率の予測結果が出揃った。
概ねマイナス 〇・五%からマイナス一・五%程度とみており、 今年度よりも一段の悪化を予測する向きも少 なくない。
そうしたなかで、昨年十二月に閣 議決定された政府の見通しには、いつものこ とながら驚かされた。
来年度の実質経済成長 率を〇・〇%とみている。
悪いながらもマイ ナス成長は回避できる、GDPは今年度並み の水準を維持できるということだ。
 まあ、このようなものは予測というより、 希望的観測と呼ぶ方が適当である。
政府の見 通しが常に強気である理由ははっきりしている。
経済成長率が低いと税収不足が見込まれ、歳 入の目途がたたなくなる。
また、政治家など から財政出動を迫られ、財政赤字が増えてし まう。
そのため財務省は、内閣府に現実的な 数字よりも強めの見通しを出すように圧力を かけるのだ。
 強めの見通しは、今の政府にとっても都合 がよい。
経済対策の実施を先延ばししている 手前、景気が今後さらに悪化するであろうこ とを白日のもとにさらすことは自滅行為でも あるからだ。
資金繰りの苦しい状況で、年末 を乗り切るために駆けずり回っていた中小企 業の怨嗟の声は、永田町や霞ヶ関には届かな かったようである。
 さらに不思議なことは、経済が危機的な状 況にあるにもかかわらず、財界から経済対策 の実施をせっつく声がほとんどあがらないこ とだ。
もっとも、連日マスメディアが伝えるよ うに、大手メーカーは派遣社員や期間工など 非正規労働者の大量解雇を断行している。
自 ら景気に冷水をかけるようなことをしている 手前、臆面もなく政府に助けを求めることな どできないのだろうが。
 当該企業の経営というミクロ的見地に立つ ならば、彼らの行動は、売り上げが落ちるな かで、コストを削減し、利益を確保しようと する当然の行為であり、間違ったことではない。
しかし、それが消費や投資の減退、さらには 社会不安などを招き、その結果として、経済 をさらに悪化させることになる。
これを経済 学では、「合成の誤謬」という。
 こうした「政官財の失敗」により、日本経 済はまさに崖っぷちに追い込まれてしまった と言っても過言で はなかろう。
日通 総合研究所が昨年 末に発表した予測 では、〇九年度の 日本経済の実質G DP成長率はマイ ナス〇・九%であ り、〇八年度(マ イナス〇・八%: 予測値)をさらに 下回るものとみて いる。
その概要は 以下のとおりであ る。
 〇二年一月を底 に戦後最長の景気回復を続けてきた日本経済 は、〇七年一〇〜十二月期をピークに後退局 面入りしたとみられる。
〇八年度前半に急上 昇をみせた資源価格は、年度後半に入り大幅 な下落基調に転じているものの、交易条件の 改善効果を輸出の落ち込みによるマイナス効 果が上回る状況が続くため、企業収益や業況 感の悪化に歯止めがかかる状況にはない。
世 界経済の減速に加えて、〇九年度を通じて為 替レートは九三〜九五円のレンジを軸とした円 高水準で推移することが見込まれる。
輸出環 境は一段と厳しさを増そう。
 輸出の増勢が期待できないなか、内需の柱 である個人消費の伸び悩みと設備投資の落ち 込みが続くことから、〇九年度の実質GDP は前年度に引き続きマイナス成長が予測される。
景気回復は一〇年度以降に先送りされること になる。
原油価格や輸入品価格の低下に内需 低迷が続くなか、物価下押し圧力が徐々に強 まるものと予想され、〇九年中は消費者物価 もマイナス基調で推移しよう。
 ただし、この予測を行った以降も景気はさ らに悪化の度合いを強めており、下ブレする リスクがある。
国内民需や外需の盛り上がり が見込めないなかで、当面は財政の出動に期 待するしかない。
日本の財政・金融当局は、 常に何枚かのカードを手持ちにしておき、小 出しにカードを切っていくというスタンスをと るのが常である。
ここは米国のように、やる べき対策はすべてやるというスタンスが求め られよう。
83  FEBRUARY 2009 崖っぷちの日本経済 さとう のぶひろ 1964年生まれ。
早 稲田大学大学院修了。
89年に日通総 合研究所入社。
現在、経済研究部研 究主査。
「経済と貨物輸送量の見通し」、 「日通総研短観」などを担当。
貨物輸 送の将来展望に関する著書、講演多数。
国内総支出の見通し(日通総合研究所) 注)1. 原系列、実質値は2000 暦年連鎖価格表示 2. 国内総支出=国民総支出−要素所得の純受取 単位:10 億円、()内は対前年同期比増減率(%) 名目国内 総支出 2007 年度 (確報値) 2008 年度 (速報値) 2009 年度 (予測) 250,495 256,579 247,736 255,939 515,858 507,074 503,674 (△1.5) (△1.9) (△1.1) (△0.2) (1.0) (△1.7) (△0.7) 276,922 281,254 272,995 280,175 562,811 558,175 553,171 (0.1) (△1.7) (△1.4) (△0.4) (1.9) (△0.8) (△0.9) 上期下期 2008年度 上期下期 2009年度 実質国内 総支出 第2 回 「国内総支出の見通し」日通総合研究所

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