ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年2号
特集
物流企業番付 エーアイテイー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2009  22 エーアイテイー ──中国からの輸入アパレル品に集中  中国から輸入して日本で販売するアパレル品の海上フォワー ディングに的を絞り、猛烈な営業攻勢で急拡大を遂げた。
2007 年3月には海上フォワーディング専業者としては初の上 場(東証マザーズ)も果たしている。
通関業や航空貨物事業 にも進出、国内の3PL 事業も開始する。
(聞き手・梶原幸絵) ライバルのいない市場 ││業績が急成長しています。
 「私自身は急成長とは思っていませんが、基本的に は毎年三割アップを目標にしてきて、これまでは大 体それに近いスピードできました」 ││事業の構成をみると、輸出が一〇%、輸入が九 〇%。
貨物の種類は雑貨が六〇%、繊維が四〇%。
地域別では中国が九〇%を占めています。
中国の成 長が追い風になったのでしょうか。
 「中国の経済成長とは関係ありません。
香港法人 を設立したのは一九九六年、上海は二〇〇三年です。
むしろ出遅れている。
私は元々、伊藤忠エクスプレ ス(現アイ・ロジスティクス)で海上フォワーディ ング業務をやっており、九五年にAITを作りまし た。
伊藤忠エクスプレスでのアパレルに関する知識が あったから、最初はアパレルに特化した。
アパレルは、 以前は日本から部資材を輸出し、中国で縫製加工し て日本に輸入していましたが、部資材を現地調達で きるようになったため事業の開始当初は輸出貨物も 五〇%ほどあったのが、どんどん減ってしまった」 ││その分、輸入を伸ばした。
 「営業してますからね。
繊維と中国を切り口に滑り 込んだんです。
これまで海上フォワーディングの業界 には、輸入の営業に人をどんどん投入する業者がい なかったということでしょう。
大手は自動車関連な どのメーカーを追いかけるところを、われわれは小規 模なアパレルから商社までを顧客層とした。
最初は ゼロから出発し、一つひとつ需要を掘り起こして一 四年かけて体制を作ってきました」 ││営業マンはどこの会社にもいると思いますが。
 「我々がやってきた分野においては敵がいませんで した。
誰もやっていなかった。
この業界にはまず、 一部上場しているような大手の港湾運送業者がいま す。
これらの会社では一部のセクションで海上フォ ワーダーをやっているだけです。
もう一つは通関業を メーンとして倉庫業やトラック業をやってきた乙仲と よばれる業者。
この四〜五年、海外にも出ていって いますが、知識とノウハウが少ない」  「港湾運送業者や乙仲業者は皆ハードを持っていま す。
するとハードを埋めること、フル回転させること。
作業員を一〇〇%使うことを一番先に考えるわけで す。
これに対してわれわれは顧客密着型です。
どう したら荷主に喜んでもらえて荷主のためになるのかと いうことを第一に考える。
ここの違いは大きい」  「あとは商社系のフォワーダー。
これは基本的には 商社のための物流業者で、元々自分たちの荷物をた くさん持っています。
荷主の立場でものを考えるとこ ろは我々と同じでも、我々のように大勢の営業マン を育てて、どんどん貨物をとってこなければならない ということはない」 ││海運フォワーディング専業者との違いは。
 「当社は輸入ばかりです。
輸出と輸入は全然違いま す。
輸出では、輸出先の港に着いたあとは荷主がア レンジして通関などの手配をします。
輸出すれば終 わりといってもいい。
ところが輸入は現地から国内 まで、いろいろな情報をこと細かにお客さまに提供 しなければなりません」  「われわれ自身で現地の状況を理解して、お客さま に教えられるような立場にならないとだめです。
プロ にならないと。
お客さまはほとんどプロですが、その 上をいくほどの知識がないと通用しない。
だから輸 出と違って営業マンの養成には時間がかかりますね。
人を育てるということは大変なことですよ。
当社の輸 矢倉英一 社長 注目企業トップが語る強さの秘訣総合12位 23  FEBRUARY 2009 入の営業マンは現在、四三人います。
専業大手でも 敵わない」 ││〇九年二月期の業績見通しを下方修正していま す。
景気後退の影響が出ていますか。
 「不況はあまり関係ない。
それよりも円高です。
ド ル建てで販売するので、円高になれば売り上げが減る。
しかも日本の国内経済が縮小しているため、お客さ まの個別の輸入量も減っています。
それでも、当社 はどんどん新規をとってます。
既存顧客の貨物量が 減っている分をカバーしてなお増やしている」  「攻めれば攻めるほどとれます。
これまで他の物流 業者に頼んでいたお客さまでも、情報の伝達、クイッ クレスポンス、輸送サービスなどの面で当社を評価 いただいている。
そうしたことをわかってもらえれば、 引っくり返せる。
船会社からの運賃・スペースの仕 入れも同業他社とは違った方法をとっています。
当 社の持つ貨物量に基づいて運賃を決めるというので はない。
これ以上は企業秘密です(笑)」 国内3PL事業に進出 ││〇七年一〇月にはIATA公認貨物代理店資格 をとり、航空貨物事業にも進出しました。
 「これまでは航空貨物輸送に関しては当社が元請け となり、他社に委託するしかありませんでしたが、航 空会社と直接、運賃・スペースの交渉ができるよう になりました。
海上貨物のあるお客さまは必ず航空 貨物も持っている。
今のところ売り上げの四%弱で すが、航空貨物も増やしていきたい」  「今年一月には3PL子会社も設立しました。
当 社は国際輸送に特化しているだけに、国内の3PL 事業でも攻め込む余地がある。
国内で3PLを運用 して、その荷主の海外からの輸入物流を取り込んで いく。
3PLを導入する企業には大手が多い。
そう した企業の国際物流を取り込むことができれば、一 気に取り扱いを拡大できます。
また現在、中国の借 庫ではラベル張りなどの簡単な作業をしていますが、 検品や検針などを含めた海外での3PLも将来的に はやりたいと考えています」 ││事業領域を拡大することで、独自の強みが薄れ るという懸念はないのでしょうか。
 「われわれはハードを持っていない。
大手の総合物 流業者とは全然違います。
そして港湾運送や倉庫を メーンにしている会社が、国際輸送に急激に人材を 投入するというのは考えにくい。
彼らには海外ネット ワークもありますが、それは長い歴史の中で培ってき た特定荷主とのつながりがあってこそです。
そうした 意味では日本の会社は世界に出遅れている」  「世界中に拠点を持っている企業でも、メーンは海 上輸送ではなく航空輸送と倉庫です。
われわれは日 本で営業をかけ、獲得した複数荷主を基盤に中国に 拠点を設立し、そこから海外拠点を広げてきた。
そ して海上輸送に特化している。
総合大学と単科大学 の違いです」 ││目指す将来像は。
 「一部上場。
あとは世界に通用するフォワーダーに なること。
日本には海上輸送で世界に通用するフォ ワーダーはいません。
日本のフォワーダーは特定荷主 に頼って海外に拠点を出しているだけで、ひ弱だと 思います。
アパレルと雑貨だけでなく、顧客層も広 げていきたい。
輸送モードや地域にしても同じです。
ただしそれには知識が必要です。
中途半端にはした くない。
そこでM&Aも考えています。
当社にない 部分を補完できるような相手、相手にとってもメリッ トがあるM&Aや資本・業務提携をしたい」 営業力を鍛え上げて荷主を開拓  1995年に前身企業のスバルを社名変更 し、AITとして国際貨物輸送を開始した。
本社は大阪市。
輸入FCL(海上コンテナ 一本分の貨物)、輸入LCL(海上コンテナ 一本に満たない貨物)の輸送を中心に、 輸出FCL / LCL、航空貨物、通関業務な どを行っている。
中国のほか、タイとベ トナムに拠点を持つ。
営業利益率は5.8%。
輸入LCLの混載業務と通関業務が貢献し ている。
 輸送手段を持たないフォワーディング業 は人材がカギになる。
営業力により業容 を拡大してきたが、輸入やアパレル・雑 貨という枠から脱皮するにはそれに応じ た人材採用と育成、知識・ノウハウの獲 得が課題のようだ。
早期に脱皮できるか にはM&Aの成否にかかっている。
本誌解説 (単位:百万円) (単位:TEU) 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 700 600 500 400 300 200 100 0 09 年 (予想) 売上高 (左軸) 経常利益 (右軸) 営業利益 (右軸) 純利益 (右軸) 05 年 2 月期 06 年07 年08 年 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 39,834 図2 コンテナ取扱量推移 07 年は8万TEU を突破した 04 年05 年06年07 年 82,434 63,696 49,593 4,641 10,386 (売上高) 5,339 7,268 8,974 591 187 (営業利益) 233 433 521 図1 連結業績の推移 特に利益面では高成長を続けてきた 物流企業番付《平成21年版》

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