ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年3号
ケース
SCM セブン─イレブン・ジャパン

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2009  44 SCM セブン─イレブン・ジャパン 大手飲料メーカー6社と共同デポを展開 垂直統合を進めて物流コスト削減を図る 共同デポで物流費を二五%削減  セブン─イレブン・ジャパンは昨年から、大 手飲料メーカー六社(日本コカ・コーラ、サ ントリー、伊藤園、キリンビバレッジ、アサヒ 飲料、カルピス)と共同で「メーカー共同デ ポ」と呼ぶ拠点を全国に設置しはじめている。
セブンイレブンの共配センターに納品するため の専用拠点だ。
メーカー各社は自社の物流拠 点を経由せず、工場からここに製品を直送し て共同で在庫。
必要に応じてセブンイレブン の共配センターへと出荷する。
 工場から大型トラックで「共同デポ」に直 送することで、メーカーの物流拠点で発生し ていた物流コストを削減。
最終的にはセブン イレブンの仕入れ価格の抑制につなげていこ うという狙いだ。
二〇〇六年十一月から東北 地方でスタートした取り組みを、〇七年に拡 大して効果を検証。
年間物流費の二五%程度 の削減を確認できたことから、今秋までに全 国九カ所に拠点を設置する作業を進めている。
 セブンイレブンの物流管理本部で本部長を 務める佐藤和久執行役員は、「メーカーの在 庫を当社の共配センターまでどう持ってくる かという部分は、まだ試行錯誤の段階にある。
今回はその第一弾になる」と説明する。
 実は同社は過去にもフローズン(アイスク リームなど冷凍温度帯の商品)の分野で同様 のスキームを実現している。
ただし、フロー ズンはアイテム数が少なく、物流上の特性も 他の商品とは異なる。
膨大なアイテムがあり ボリュームも大きい常温の加工食品の中から、 一部の製品の物流だけを分離しようとする今 回の取り組みとは意味合いが違う。
 飲料メーカー六社がセブンイレブンに供給 している商品には、在庫型で回転が早く、物 量が大きいうえに荷扱いが単純といった特徴 がある。
単独で動かしても十分に物流の効率 化を図れることが、今回のスキームに乗せる ための前提条件だった。
 この取り組みで飲料メーカーは、工場出荷 の段階でセブンイレブンのための在庫を用意 することになる。
だが「共同デポ」にある商 品の所有権はあくまでもメーカーにある。
こ れが共同デポから出荷され、共配センターに 納品された時点で、はじめて所有権がベンダ ー(卸など)に移転する。
セブンイレブン側 の資産となるのは、最終的に店舗に納品され てからだ。
 セブンイレブンの商品調達における所有権 の移転は、常温品とフローズンについてもほ ぼこれと同様になされている。
これに対して  店舗への一括納品を担う共配センターの集約を進め ている。
6年前には全国に300カ所近くあった拠点を 現在までに153カ所に減らした。
さらに昨年は調達先 の飲料メーカー6社が参加する「メーカー共同デポ」も 設置。
今秋までに全国9カ所に展開する計画だ。
セブン-イレブン・ジャパン で物流管理本部長を務める 佐藤和久執行役員 45  MARCH 2009 弁当や惣菜などのチルド・米飯ついては、共 配センターが通過型のため、店舗に入るまで ベンダーやメーカーの資産のまま商品が移動 することになる。
 工場出荷の段階にまで及んできたセブンイ レブンの物流改革には、メーカー側も神経質に ならざるを得ない。
今回の取り組みでも「ソ フトドリンクメーカーも最初は半信半疑だっ た。
だが実際に東北でやってみたらコストが 下がったため、全国で展開してもらえること になった。
他のカテゴリーでもテストしようと している商品はあるが、まだ検討中だ」と佐 藤執行役員はいう。
原料の調達物流まで管理領域を拡大  同社が創業以来、物流の効率化に熱心に取 り組んできたことは広く知られている。
まず はチェーン本部として、店舗に提供するサー ビスレベルの改善とコスト効率の向上に軸足 が置かれた。
そのために共配センター網を整 え、カテゴリーごとに物流を共同化して店舗 納品の頻度削減を進めてきた。
 それは結果として、メーカー優位だった流 通上のパワーバランスを揺るがすことにもつ ながった。
花王や日本コカ・コーラなど自社 物流を強みに企業規模を拡大したメーカーが、 一九九〇年代には相次いでセブンイレブンの 共同配送ネットワークに取り込まれていった。
今ではセブンイレブンの店舗に商品を直納し ているのは、たばこや雑誌などを扱うごく一 部の事業者だけだ。
 七四年に東京・豊洲に一号店ができた当時、 セブンイレブンの店舗への納品車両は一日に 約七〇台あった。
それが直近では八・五台ま で減っている。
弁当や焼きたてパンだけでも 一日四回の納品を実施し、別の温度帯の定期 便も走らせていることを考えれば、もはや大 きく減らす余地は残されていない。
実際、九 〇年代末に一日平均一〇台を切るレベルにな って以降は、ほぼ横ばいの状態にある。
 店舗の在庫負担を軽減する活動も継続して きた。
創業時に一カ月分近くあった店舗の平 均在庫日数は、九〇年代半ばには一〇日分を 切る水準になった。
これ以上減らすと店頭の 棚のボリューム感を損なってしまうことから、 店舗在庫の水準もまた約一〇日分で下げ止ま っている。
 このように店舗に提供する物流サービスの 改善という面では、すでに一〇年近く前に行 きつくところまで到達してしまった。
この状 況を受けて、セブンイレブンの物流効率化の 矛先は、どんどんサプライチェーンの上流に 向かった。
メーカーや卸の手元にある商品の 在庫を、構造的に減らしていくことに向けら れるようになったのである。
 今ではこうした管理領域が、弁当や惣菜 などの原料を調達する物流にまで及んでいる。
同社に弁当類を納めている取引企業は、品質 の均質化などを目的に日本デリカフーズ協同 組合という団体を結成している。
ここでの活 動にセブンイレブンの社員も参画し、物流の 効率化を推進している。
〇二年には調達物流 を委託する企業を決めるコンペを開催し、仕 組みそのものを再構築しながらトータルコス トを下げていった。
〇四年にはフローズンの 原料調達でも同様のことをしている。
 このように同社は、最終的に自分たちが購 入することになる商品のサプライチェーンを遡 って、その仕組みを再構築してきた。
こうし た活動は米ウォルマートやイオンなどとも共通 する。
ただし、セブンイレブンに特徴的なの は、物流上は卸の助けを必要としていないに もかかわらず、いまだにメーカーとの直接取 引を標榜していない点だ。
前述した飲料メー 1 店舗・1 日当たりの納品車両台数の推移(共同配送) セブンイレブン創業 70 台 42 台 34台 31台 26台 22台 20台 15台 12台11台10台9 台8.5台 80 70 60 50 40 30 20 10 0 車両台数(台) ’74 ’76 ’78 ’80 ’82 ’84 ’86 ’88 ’90 ’92 ’94 ’96 ’98 ’00 ’02 ’04 ’06 ’08 西暦(年) 生鮮共同配送開始 牛乳共同配送開始 加工肉共同配送開始 フローズン共同配送開始 雑貨共同配送開始 加工食品共同配送開始 米飯共同配送開始 常温混載完了 チルド 1日3回 米飯 1日4 回 常温 1日1 回 フローズン 毎日〜週3回 共配カテゴリー納品頻度の原則 MARCH 2009  46 カー六社による物流共同化の事例でも、帳合 い上は卸を通している。
六年でほぼ半減した共配センター  セブンイレブンの物流管理はすでに高い完 成度に達している。
それでも同社の佐藤執行 役員は、「事業環境の変化に伴って物量も変 わる。
お店への納品回数などは、まだまだ手 直ししていく必要がある。
在庫にしても店舗 の在庫をこれ以上減らすつもりはないが、ト ータル在庫は拠点の集約などによってまだ見 直す余地がある」と強調する。
 実際、店舗のスクラップ&ビルドや新規出 店が続いている以上、配送コースの見直しな どは常に求められる。
新店を既存の配送コー スに組み込めば既存店の納品時間が変わって しまう。
これを避けるため、現場では新しい コースを設定することになりがちだ。
放って おけば次々にムダな配送コースが増えてしま う。
そこで同社は、年に二回、大きく配送コ ースを見直すことで対応している。
 規制の緩和などでも事業環境は大きく変化 する。
〇三年九月に酒類の販売免許が自由化 されたときには、大半の店舗が一斉に酒類を 扱うようになった。
結果として一店当たりの 酒の販売量が低下し、週六日だった従来の配 送体制は妥当性を問われることになった。
現 在、週三日にするためのテストを福島県の郡 山で続けており、その結果しだいでは酒類の 配送頻度を見直すことになる。
 システム上に 蓄積される情報 や、物流担当 者が関係者と重 ねるやりとりに 基づいて、配送 コースの見直し や、共配センタ ーの集約化など を進めている。
店舗に提供する サービスレベル を落とさずに、 いかに総車両台 数や走行距離を 抑制するか。
こ れを追求してき た結果、二年前 に約四〇〇〇 台あった配送車 両は、店舗が増 えているにもか かわらず三八一五台(〇八年十二月末現在) に減っている。
物流効率化を支えるドミナント戦略  セブンイレブンの物流革新を可能にしてい る要因の一つが、創業以来つづく ?ドミナン ト戦略?(特定地域への集中出店)の徹底だ。
同社は現在、全国に一万二〇〇〇店余りの店  共配センターのネットワークも固定的では ない。
六年前に三〇〇カ所近くあったセブン イレブンの共配センターは現在、計一五三カ 所まで減っている。
まだ拠点集約は続いてい るため、今後はもっと少なくなるはずだ。
 共配センターの総数がこれほど大きく減っ たのは、常温品やフローズンの一括物流を推 進してきたからだ。
常温品の配送は従来、加 工食品・酒・菓子・日雑の四カテゴリーに分 かれていた。
しかも分野別のベンダー納品が 基本で、取引先の品揃えしだいで加食と菓子 だけは一緒になるなど地域ごとにバラバラの 条件で運ばれていた。
これを〇二年から約三 年かけて、常温四カテゴリーを一括で納品す るように切り替えた。
 当然、配送コースも組み替えなければなら ない。
こうした変化に迅速に対応していくた めにセブンイレブンの物流管理本部は、シミ ュレーションに基づく配送コースの変更など を、共配センターの運営を委託している会社 に日常的に提案している。
そうすることでム ダな配送コースが増えてしまわないように常 に注視している。
 ちなみに現状で一五三カ所ある共配センタ ーの運営はすべて外注している。
委託先は約 三〇社あり、いずれもセンターの運営管理には セブン側が構築したシステムを使っている。
佐 藤執行役員は「個々のセンターの状況は、ほ とんど全部つかめるようになっている」と胸 を張る。
セブンイレブンの物流ネットワークの概要 取引先取引先のセブン共配センター※運営委託先は約30 社配送店舗 専用在庫拠点 メーカー・卸・ (工場、物流拠点など) ソフトドリンク専用 共用デポ 約9カ所 フローズン専用 メーカーデポ 7カ所 チルド共配センター 通過型 5℃ 牛乳・総菜・調理麺・調理パン 16カ所 チルド・米飯共配センター 通過型 5/20℃ 牛乳・総菜ほか+米飯・焼きたてパン 48カ所 米飯共配センター 通過型 20℃ 米飯・焼きたてパン 17カ所 常温共配センター 在庫型 常温 ソフトドリンク・加食・酒類・菓子・雑貨 47カ所 フローズン共配センター 在庫型 −20℃ アイスクリーム・冷凍食品 25カ所 配送車両 約3800 台 2009 年1月末 現在の店舗数 12,141 店 47  MARCH 2009  高い密度で小規模の店舗を多数展開するこ とによる優位性は、一般に考えられている以 上に大きい。
決済手数料に的を絞ったセブン 銀行や、セブン・ミールサービスによる弁当 の宅配事業など、他社が簡単に追随できない ビジネスも緻密な店舗網のたまものだ。
 物流面でも、たとえば店舗のスクラップ&ビ ルドなどによる配送コースの変更が、手間さ え惜しまなければいくらでも可能になる。
大 型量販店や百貨店であれば、一つの店舗の閉 鎖や物流センターの移転が、全体の物流効率 に大きく影響してしまう。
出店密度がまばら な小売りチェーンの場合も、物流効率の低下 に直結する。
だが店舗が密集していればコー スを組み替える余地はずっと大きくなる。
 ドミナント戦略は、店舗での一日当たり平 均販売額(日販)の変動に対する耐性も高め る。
セブンイレブンの平均日販は、九三年二 月期の六八万二〇〇〇円をピークに微減傾向 がつづき、現在では六〇万円を切る水準にな っている。
他の大手コンビニチェーンと比べ ればまだ圧倒的な優位にあるが、とくに最近 五年間は落ち込みが著しい。
 商品の単価自体が下落している影響もある ため、売上高と比例して物量が落ち込んでい るわけではない。
しかし共配センターなどの 運営を受託している企業にしてみれば、取扱 金額が一割以上も減れば深刻な事態を招きか ねない。
ところが実際には、セブンイレブン の共配センターの売り上げは、多くは横ばい かもしくは微増傾向にあるという。
 前述した共配センターの集約が、センター 当たりの取扱金額が減らない一つの理由にな っている。
それに加えて、セブンイレブンの 場合は、ある共配センターの担当エリアで平 均日販が落ち込んでも、担当する店舗数その ものを増やすことが可能だ。
出店密度が高い ため、配送距離やリードタイムを犠牲にせず に担当センターを変更できる。
 残る課題は他のグループ企業との物流共同 化だ。
〇五年九月にセブン&アイホールディン グスが誕生したときから、同社はグループ企 業と相乗効果を追求できる方法を模索してい る。
持ち株会社の方針としては、イトーヨー カ堂やヨークベニマルとセブンイレブンが共同 で商品を仕入れることによるシナジーを狙っ ている。
そのためには物流面でも相乗りする 必要があるのだが、現状ではこれがまったく 実現していない。
 最大の理由は、配送や販売の形態があまり にも異なるためだ。
特売をせずに日々の物量 の平準化を図っているコンビニと、特売のある GMSや食品スーパーでは物量の波動性がま ったく違う。
無理に物流を共同化すれば、セ ブンイレブンの物流効率が大幅に悪化しかね ない。
それでも今後のグループ戦略しだいで は、セブンイレブンの物流管理はまた大きな 転換を迫られることになる。
変化に対応しつ づけるための物流管理にゴールはない。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 舗を展開し、二兆五〇〇〇億円を超す売上高 を誇っているが、いまだに出店していないエ リアが十一県ある。
店舗数で業界二位のロー ソンが九七年に、三位のファミリーマートが〇 七年に、全国四七都道府県への出店を果たし たのとは対照的だ。
 それだけに、進出済みの地域において、セ ブンイレブンは圧倒的な出店密度を持ってい る。
通常、同社が新たなエリアに進出すると きには、初期の段階では隣接する地域の共配 センターから商品を供給する。
その状態のま ま集中的な出店を行ない、進出エリアの店舗 数が一定レベルに達すると、その地域をカバ ーする共配センターを新設する。
ドミナント化を徹底した出店戦略 北海道 821 岩手 39 宮城 314 福島 377 栃木 331 茨城 507 埼玉 852 東京 1,602 千葉 743 神奈川 841 山梨 157 静岡 450 三重 25 愛知 518 奈良 55 和歌山 38 大分 55 宮崎 131 熊本 187 山口 226 福岡 651 佐賀 133 長崎 76 兵庫 358 岡山 189 広島 376 富山 3 岐阜 67 福井 3 滋賀 160 京都 178 大阪 510 山形 131 新潟 339 群馬 344 長野 355 総店舗数 12,141 店 (2009 年1月末現在) 未出店エリア 青森、秋田、石川、 島根、鳥取、香川、 徳島、愛媛、高知、 鹿児島、沖縄

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