ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年3号
特集
物流不動産ファンド 物流不動産市場アンケート

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 物流不動産市場アンケート  一五不動産情報サービスでは、物流施設の不動産市況に ついて半年ごとにアンケート調査を行っている。
2009 年1 月に第3 回アンケート調査を実施し、83 名の不動産実務家 等から回答を得た。
アンケート内容は、半年後の「土地価格」 と「賃料水準」の見通しについて。
わずかの期間に、市場 関係者の認識が一変していることが明らかになった。
土地価格「下落」が九割  まず、物流用地の半年後の土地価格の見通しであ るが、今回(二〇〇九年一月実施)の調査では「下落」 が八九%に達し、「横ばい」は八%、「上昇」はわず か二%に過ぎなかった(図1)。
第一回(〇八年一 月実施)調査では「下落」が一四%であったことを 踏まえると、この一年で不動産実務家の売買市場に 対する認識が様変わりしたことが確認できる。
 「下落」を選択した理由については「ローンの調達 が困難なため」と「買い手不在で、売買市場が停滞 しているため」の意見が主であった。
買い主の資金 調達が一層と困難になるなかで、売り主の希望売却 価格と買い主の投資可能額が折り合わず、売買市場 が停滞していると考えられる。
現在の市場環境では、 買い主が購入代金を引き上げることは期待しづらく、 売り主がどこまで売値を引き下げることができるか、 またその時期に焦点が絞られてくるだろう。
賃料水準も上昇の要素なし  次に半年後の賃料水準の見通しでは「下落」が 六六%と最多となり、「横ばい」が三一%、「上昇」 は二%であった(図2)。
前回(〇八年七月実施) の調査結果と比較すると、「横ばい」が六四%から 三一%へと減少する一方、「下落」が二八%から 六六%へと増加しており、底堅いといわれる物流セ クターにおいても、賃料水準の下落を予想する向き が市場関係者の一般的な見解となりつつある。
 それぞれの理由をみると、下落理由では「物流拠 点の新設など新たなニーズが乏しいため」と「貿易減 などが影響し、貨物量が減少しているため」が最多で、 「大型物流施設の大量供給の影響で当面は需給バラン スが改善しないため」や「日本経済の見通しが暗い ため」が続いている。
経済環境の悪化が貿易減や物 流拠点の新規開設の減少をもたらし、大型物流施設 の大量供給も相まって、当面は需給バランスの改善 が期待できないとの意見が主流となりつつある。
 次に、横ばいの理由をみると「不動産開発による 供給と物流ニーズの需要増が折り合っているため」 が最多で、「物流業界に大きな変化がなく当面は安 定しているため」が続いている。
その他、「物流コス トの削減を突き詰める過程で、物流拠点の集約・統 合の結果、一部の優良物件(立地)に需要が集中し、 立地や物件の使い勝手次第で賃料格差が拡大する」 との意見もみられた。
物流倉庫市場のパイは縮小傾向  景気悪化時には消費減退によって在庫が積み上が り、倉庫スペースに対する引き合いが増える面もあ るが、生産調整によって在庫も適正水準へと戻るた め、スペース需要増は一時的にしか期待できない。
また、世界同時不況の影響で国際貨物が急速に落ち 込んでおり、もともと緩やかに減少していた国内貨 物も、今後は減少傾向が顕著になる可能性が高い。
したがって、物流倉庫市場“全体”でみれば、残念 ながらパイは縮小せざるを得ない局面と考えられる。
 なかでも景気悪化の影響を色濃く受けるのは、急 速に生産調整を行っている自動車や電機などメーカー の併設工場、もしくは近隣に立地している物流倉庫 ではないだろうか。
一方で、もともと物流が底堅い といわれる所以でもある食料や日用品など生活必需 品の物流倉庫では、節約志向を反映し取扱商品は変 遷しても、スペース需要自体には大きな変動はない と思われる。
また、不景気を追い風に業績を拡大し MARCH 2009  28 曽田貫一 一五不動産情報サービス 社長 1975年生まれ。
99年、不動産調査会社 である生駒データサービスシステム( 現 シービー・リチャードエリス総合研究所) へ入社し、物流部門の調査業務を担当。
2007年、物流施設や工場など、工業用 不動産に特化した独立系の不動産調査会 社、一五不動産情報サービスを設立。
独 自に構築したデータベースを基に、物流不 動産や工業団地などの市場分析や各種調 査業務を行っている。
http://www.ichigo-re.co.jp 速報 寄 稿 ているインターネットを含む通信販売は、更に倉庫 スペースを拡大する可能性も否定できない。
 実際、 昨年の物流拠点の新規開設事例では、インターネッ トを活用した通信販売の物流拠点の事例が複数みら れる。
単なる節約志向を超え消費者の購買行動に構 造変化をもたらしている可能性もあり、今後の動向 に十分な留意する必要がある。
首都圏の大型施設へのニーズは堅調  アンケート結果では市場関係者の見通しは大変厳 しいが、直近の賃貸市場の需給バランスの動向はや や異なる。
弊社では延べ床面積五〇〇〇平方メー トル以上の賃貸型物流施設を対象にテナント入居 状況に関する調査を行っており、図3は首都圏の需 給バランスの動向を示したものだが、〇九年一月の 空室率は一五・三%で、前期(〇八年一〇月)の 一五・六% から〇・三ポイント改善している。
今期 (〇八年十一月〜〇九年一月)に竣工した物流施設 は六棟。
そのうち四棟がほぼ満室稼働で、既存物件 でもテナントが退去したケースはあまりなく、一部の 空室物件ではテナントの確保が進んだもようである。
 本調査は首都圏の中大型クラスを対象としている 点に留意すべきだが、急速な景気悪化にもかかわら ず、テナントが利用している稼働面積が拡大してい る点は注目に値する。
これは、対象としている中大 型クラスの賃貸市場が拡大して間もないため、賃貸 借契約の更新時期を迎えている物件が少ないこと、 インターネット販売など成長企業の物流拠点として 活用されていることなど様々な理由が考えられるが、 物流拠点の大型化や自社所有から賃貸への移行など、 大きな構造変化が景気悪化局面においても緩やかに 進んでいるためではないか。
空室率は一五%を超え、 依然として水準は高いものの、景気悪化を機にこれ まで手つかずであった物流合理化を進め、共同物流 の取り組みなど更なる拠点の集約・統合が進む可能 性もある。
その際には、進出しやすくなっている大 都市圏へ物流拠点を集約する戦略も想定できる。
今後の新規供給は激減必至か  物流施設を取り巻く事業環境は、ITバブル崩壊 後の〇一年を下回る水準にまで落ち込んでおり、資 金調達環境の機能不全も相まって、ディベロッパー 各社は現時点で抱える空室在庫の消化を優先してい る。
そのため、施設開発の着工延期もしくは中止を 相次いで決定しているもようで、少なくとも〇九年の 新規供給量は〇八年に比し大幅に抑制されそうだ。
 図3と同基準で〇九年の供給量を把握すると 五六万平方メートルとなり、〇八年の一三五万平方 メートルから半分以下に抑制されると弊社ではみて いる。
他方、〇九年の新規需要(稼働面積の変動分) はマイナスにはならないものの、景気悪化で急速な 伸びも期待しづらい。
したがって、〇九年の需給バ ランスとしては抑制された新規供給と乏しい新規需 要でやや停滞した市場環境が続き、空室率は〇九年 末にかけて緩やかな上昇を続ける可能性が高いだろう。
 二〇一〇年の不動産市場は今後の景気動向に大き く左右されるものの、新規供給量は五〇万平方メー トルを下回るものと弊社では試算している。
景気の 底のタイミングやその後の回復スピードは、今後の経 済動向を注視し続けるしかないが、二〇一〇年以降 は需要が供給を上回り、需給バランスが改善するシ ナリオも十分に想定可能だ。
着工延期されている大 型用地での開発が再び動き出し、不動産市場が再び 活性化することを期待している。
29  MARCH 2009 14% 58% 28% 48% 89% 2% 8% 47% 6% 100 80 60 40 20 0 (%) 第1回 (08 年1月) N=64 第2回 (08 年7月) N=89 第3回 (09 年1月) N=83 図1 物流用地の土地価格の見通し(半年後) 9% 69% 22% 28% 66% 31% 2% 64% 8% 100 80 60 40 20 0 (%) 第1回 (08 年1月) N=64 第2回 (08 年7月) N=89 第3回 (09 年1月) N=83 図2 物流施設の賃料水準の見通し(半年後) 下落横ばい上昇 出所:一五不動産情報サービス 13.0 546 3,662 15.6 751 4,150 696 15.3 3,779 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 16 14 12 10 8 6 4 2 0 (千?) 空室面積 稼働面積 空室率 (%) 08年3月08 年10月09年1月 図3 首都圏の需給バランスの動向 調査方法:首都圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県) に所在する延べ床面積5000?以上の賃貸型物流施設を対象 に、実地調査によりテナント入居状況を確認している。
調査棟 数は139 棟となっている。
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