ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年4号
特集
儲かる中国物流 混迷する国内物流市場の見取り図

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2009  24 混迷する国内物流市場の見取り図  今後の中国物流は、現地の国営企業と民間企業、イン テグレーター、そして日系物流企業が入り乱れて、国内市 場でしのぎを削ることになる。
日系同士の競争から戦略 を転換する必要がある。
先進国の物流会社が物価の安い 新興国の国内事業で利益を生むための新しいビジネスモデ ルが試されている。
           (大矢昌浩) 日系物流企業 VS 中国系  中国最大の海運グループ、中国遠洋集団傘下のコス コ・ロジスティックスは今年一月、中国資本一〇〇% の日本法人コスコ・ロジスティックスジャパンの営業 を開始した。
利用運送事業のコスコン・ジャパンエク スプレスの株式をコスコ・ロジスティックスが取得し、 社名を変更して再スタートを切った。
 それ以来、同社の五十嵐公取締役は日系荷主企業 に呼び出されて中国本土に頻繁に出張している。
「以 前は我々のような中国の国営物流会社がいくら見積 もりを出しても他の日系物流企業の?当て馬?に使 われるだけだったが、最近はスタンスが変わってきた。
日系の大手荷主が本気で我々をパートナーに選び始め ている」と手応えを感じている。
 コスコ・ロジスティックスは中国全土に約三〇〇拠 点を配置し、ミルクラン輸送を伴うVMIや家電製品 を国内全土に配送する販売物流、さらには海外から の資材調達を仲介する「融資物流」など、幅広いサ ービスを展開している。
国有系だけに許認可や行政対 応にも強い。
 その実力は折り紙つきだ。
中国交通運輸協会が毎年 発表する「中国物流百強企業(China Logistics Top 100)」の第一位は同社の指定席となっている。
ちなみ に同ランキング二〇〇八年度版の二位は中鉄快運、三 位は中郵物流と、上位陣は国有系が独占している。
 それでもこれまでは中国に進出した日系荷主企業 が国有物流企業をメーンのパートナーに選ぶことは稀 だった。
言葉の問題に加え、サービス品質やトラブル 発生時の対応などに不安があったからだ。
現地相場 と比較して二〜三割高いとされる料金を支払っても日 系物流企業や物流子会社を使ったほうが安全という 判断だ。
 日系荷主が現地で販売するのは付加価値の高いハイ エンド商品。
割高な物流コストも吸収できた。
しかし、 富裕層向けから中産階級向けに販売ターゲットを拡げ るとなれば事情は変わってくる。
商品単価は低下し、 物量は膨らむ。
販売地域も大都市の集中する沿岸部 から内陸部も含めた中国全土に拡大する。
物流コスト の負担は一気に上昇する。
 日系荷主はサプライチェーンを改めて組み直す必要 に迫られる。
そこでは馴染みの日系企業と並んでコス ト競争力のある中国の国営物流企業や民間物流企業 が有力なパートナー候補となる。
中国国内の配送パー トナーを日系から現地系に切り替える動きは、自動車 や精密機械、家電などの大手日系荷主で既に実行に 移されている。
 従来、国有系の課題の一つとされてきた官僚的なセ クショナリズムも今では払拭されつつあるようだ。
コ スコの五十嵐取締役は「かつてのように同じ会社で も地域ごとに運営がバラバラということはなくなった。
少なくとも当社の場合、中国全土の経営が完全に一 本化されている。
我々の強みはコストだけではない」 とアピールする。
 今年二月二五日、温家宝首相が招集した国務院常 務会議は、物流業調整振興計画を承認した。
そこで は〇九年から一一年の三カ年に、政府が巨額の投資を 断行して物流インフラの整備を進めることと共に、企 業の再編合併を加速させ、強い国際競争力を備えた 大型の現代型物流企業群を育成する方針が打ち出さ れている。
 計画経済時代の中国では物流政策の実動部隊とし て、政府機関ごとに国営物流会社を置いていた。
海 運では、かつての対外貿易経済部系列のシノトランス 物流ネットワークで国内需要を開拓第2部 特集 25  APRIL 2009 (中外運)と交通部のコスコ。
陸上輸送は、物資部系 の中国物資儲運、鉄道部の中鉄快運、郵政傘下の中 郵物流などが代表格だ。
 当初はそれぞれ役割が分かれていたが、改革開放 路線の一環で各社が事業領域を拡大したことで、今で は市場の覇権を競い合うライバル同士の関係になって いる。
なかには、セクショナリズムが根強く残り、市 場環境の急激な変化に乗り遅れた企業も少なくない。
そこに近く政府のメスが入る。
中国全土を一社でカバ ーする巨大国営物流企業が誕生することになる。
買収に走るインテグレーター  先の〇八年版「中国物流百強」には国有企業に混 じって遠成集団(九位)や安得物流(一〇位)など の純粋な民間企業もランクインしている。
うち民間だ けを抜粋して評価したトップテンが以下の表だ。
その 多くは一九九〇年代に創業し、二〇〇〇年頃から始 まった急激な経済成長と共に年率三〇%近い猛スピー ドで事業規模を拡大させてきた。
 しかし、現地民間企業の急成長はここに来て踊り 場にさしかかっている。
景気の減速に加え、創業者 が現在も経営を支配していることから組織化が遅れて いる。
なかには「手間のかかる物流業はそっちのけ で、株や土地転がしなど手っ取り早い金儲けに走って いる経営者もいる」との声もある。
 こうした民間企業のほとんどは外資系荷主などを 対象にして、行政とのパイプや地縁・血縁を活かした ニッチなサービスで商売の地歩を築いた。
それを全国 規模に拡大するには莫大な資本力と組織化が必要だ。
それまでの同族支配は通用しなくなる。
拡大路線は 壁に突きあたった。
 そこに国際インテグレーターが買収攻勢をかけてい る。
フェデックスは〇七年に、中国合弁先の天津大田 集団(DTW)から合弁会社フェデックス─�
庁圍廚� 全持ち株を約四億ドル(四〇〇億円)で買い取った。
現地法人を完全子会社化して中国国内の宅配便事業 に乗り出している。
 同様にTNTは〇七年に黒龍江省華宇物流集団を 買収した(買収金額は非公開)。
華宇は車両三〇〇〇 台、ハブ拠点五六カ所、デポ一一〇〇カ所を所有する 陸運大手。
そのリソースをベースにして、社名を天地 華宇(TNT-Hoau)に変更し、中国最大のトラック輸 送ネットワークの構築を進めている。
 現地企業の買収という手法を採らず、独立資本で 国内輸送ネットワークを敷くDHLの中国投資も、二 〇〇〇年以降〇七年までの間だけでで既に六億一五 〇〇万ドル(六一五億円)に達している。
これに対 して日系物流企業の累積投資額は最大手でも二〇〇 億円程度と推測される。
国内物流市場への踏み込み には欧米勢と大きな開きがある。
 日本人スタッフを現地に投入すれば一人当たり二〇 〇〇万円程度のコストがかかる。
それに対して中国の ような新興国の物流事業の売り上げは一拠点当たり 一億円に満たないことも珍しくない。
それでも従来 は国際輸送や日本側の物流事業で収益を調整するこ とができた。
しかし、国内物流が本格化する次のフ ェーズでは利益補填も効かなくなる。
 リスクをとって、民間企業を買収し独自ネットワー クの構築に巨費を投じるのか。
それとも現地企業と の提携や合弁で機能をカバーし、国内物流を新たな収 益源とすることは諦めるのか。
その場合に既存荷主 を他社に浸食されるダメージをどう見積もるのか。
先 進国とは異なる、新興国における国内物流事業のモ デルと経営判断が問われている。
2008 年版 中国民間物流企業ベスト10 (中国交通運輸協会) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 1 2 3 5 6 7 8 9 対外貿易経済部傘下の国営企業として91年に設立。
海上輸送主力。
01年に民営化を果たす。
国内の主要地はもちろん、日 本、韓国、タイなどアジア全域に70以上の拠点を有している。
年商は約890億円、従業員数は約2500人。
黄遠成総裁が88 年に遠成貿易有限公司として創業。
鉄道輸送をベースとした物流事業を展開。
6 本の貨物専用列車を自社 で所有するほか、中国全土に300カ所の拠点を設置し、車両約1000台、従業員約6000 人を有している。
中国の大手家電メーカーの美的グループの物流子会社として2000年に設立。
外販を開始した。
TCL、チャイナデジタル、方正、パ ンダ等のライバル家電メーカーの配送業務を受託。
06年にシンガポールのKeppel Logisticsから約5000万元の出資を受けている。
98 年に貿易・旅行会社として創業。
04 年に物流業務を含む欧米企業向けサプライチェーンサービスに事業領域を拡大。
深 圳をはじめとする中国各地の保税区に多くの物流施設を所有・運営する。
航空貨物の取り扱いに強い。
劉武総裁が94年に創業。
中国で社名に「物流」を付けたのは同社が初。
24時間営業などの斬新なサービスで日用雑貨品のバイ ヤーなどを荷主として獲得。
P&Gの物流パートナーに選ばれた。
その後も外資系荷主を次々に獲得し業績を飛躍的に拡大させた。
中華民国時代から中華人民共和国時代にかけての実業家・政治家で中国水運業の父とされる盧作孚氏が25年に創業。
52 年の盧氏の死去に伴い一時は事業を停止していたが84年に再建。
現在は中国最大の民間海上輸送グループを形成している。
99 年に夫婦二人で創業。
山東省全域を対象とした24 時間のドアツードア輸送サービスがヒット。
家電製品や医薬品を中心に 多くの外資系荷主を獲得した。
現在は1500台以上の車両と約1800人の現場従業員を抱えている。
94年にトラック運送会社として創業。
年率30%以上の成長を続け、05年に売上高が10億元に達した。
現在の従業員数は 約1万人。
ボックス車を中心に約3000台の車両を有している。
うち1200台は長距離トラック。
1800台は市内配送用。
83年に原南京宝芝汽車有限公司として設立。
化学品、肥料、食品、医薬品などを主に扱う。
本社のある南京のほか、上海、 青島、広州にハブ拠点を置く。
2万台の車両を所有し、ヘリコプターを使った緊急輸送やアクセス困難な僻地輸送も手がける。
92年にトラック運送会社として設立。
全国170カ所に物流センター、自動車修理工場、車検工場を展開する。
保有有車両台 数1100台。
従業員数約5000 人。
05年にGPSを搭載した車両を導入するなどシステム化にも積極的に投資している。
概 要 山東海豊国際集団有限公司 SITC MARITIME(GROUP) 遠成集団有限公司 YuanCheng group. 蕪湖安得物流股份有限公司 Wuhu Annto logistics Company 深圳市騰邦物流有限公司 Tempus Supply chain & Logistics 宝供物流企業集団有限公司 P.G.LOGISTICS GROUP 民生輪船有限公司 Minsheng Shipping Company 山東佳怡物流有限公司 Jiayi Logistics 上海佳吉快運有限公司 CNEX Express 江蘇順源集団有限公司 Searun Group 福建省盛輝物流集団有限公司 Shenghui Logistics Company 順位社 名 青島市 上海市 深圳市 広州市 重慶市 上海市 南京市 安徽省 蕪湖市 山東省 済南市 福建省 福州市 本社所在地 10 4

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