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75 MAY 2009
佐高 信
経済評論家
文庫化もされて二五万部以上出たテリー伊
藤と私の編著『お笑い創価学会』(光文社知恵
の森文庫)がある。 その中でテリーが、
「池田大作と創価学会を見ていると、どうし
ても北朝鮮に近いものを感じてしまうんです
けど。 北朝鮮のことをよく宗教国家という言
い方をしますよね。 その場合の宗教って、創
価学会のような閉鎖的な組織をイメージして
いるように思う」
と述べ、私も
「まったく批判ができない組織という点では
同じだ」
と応じた。 さらにテリーは、
「一人の権力者が組織、集団を牛耳っている
ところは同じような構造なんでしょうね。 モ
ラルじゃなくて、メチャクチャな論理が罷り通
る。 そうでなくては権力を独り占めできない。
メチャクチャでないと、話し合いできちんとと
いうことになり、独裁者は生まれないですか
らね」
と畳みかけ、私も
「その権力を批判することに異常にヒステリ
ックになる。 いっさい認めない」
と頷いた。
これが端的に出たのが、元公明党委員長の
矢野絢也から創価学会ないし公明党が「極秘
メモ」を記した一〇〇冊近い手帳を強奪した
事件だろう。 矢野の自宅に乗り込んできたの
は公明党のOB議員三人だった。
これを『週刊現代』が二〇〇五年八月六日
号でスクープすると、三人のOBは直ちに名
誉毀損だとして、同誌と矢野を訴えた。 司法
界にも創価学会員が多いためか、一審では矢
野側の敗訴となったが、今年の三月二七日に
下った二審の東京高裁は矢野と同誌の主張を
全面的に認め、逆転勝訴となったのである。
しかし、学会が新聞雑誌やテレビに盛んに
広告を出しているためか、逆転勝訴を伝えた
マスコミは非常に少ない。
『週刊現代』は四月一八日号で、これを報じ、
こう書いている。
「判決文の中で、裁判長はOB議員や創価学
会青年部による矢野氏への脅迫、OB議員に
よる手帳の強奪などを事実として認定しただ
けではなく、党および学会による組織的な関
与まで認めたのである」
判決文によれば、矢野は創価学会の西口副
会長(当時、良三現副理事長)から呼び出さ
れ、一〇年以上も前に『文藝春秋』に書いた
手記について、「創価学会青年部は跳ね上が
っている。 矢野の命も危ない」などと脅された。
そして学会機関紙の聖教新聞に謝罪文を書い
たのだが、青年部は納得せず、矢野を出頭さ
せて、「土下座しろ」と迫り、「あなたは息子
がどうなってもよいのか」などと脅迫した。
もちろん、その強さもしつこさも違うが、『お
笑い創価学会』を書いたためか、私も慶大に
講演に行って、その後、学会の青年部の面々
に囲まれたことがある。 池田大作先生に会わ
ずに批判したのは許せないということだった。
しかし、こちらはインタビューを申し込んで
いるのに拒否しているのは向こうなのである。
いくら、そう言っても彼らは引き下がらなか
った。 私を呼んだ大学の教授が割って入らな
ければ、私はいつまでも解放されなかったか
もしれない。
矢野が実際に関わった主な事件は、学会
による言論妨害事件、池田大作の女性問
題を記事にした『月刊ペン』との裁判、日
蓮正宗総本山・大石寺との二度にわたる抗
争、本山からの破門事件、元経理担当者が
一億七〇〇〇万円が入った金庫を捨てた事件
などである。 これらに関する克明なメモだから、
学会は強奪したかったのだろう。 矢野宅を訪
ねたOBはヤリトリをICレコーダーで隠し録
りし、それを脅迫でない証拠として提出したが、
判決文は「その後に削除等の加工を施された
ものと認められる」と断罪した。 マスコミが
萎縮すれば、学会はますますタブーとなる。
矢野元公明党委員長と週刊現代が逆転勝訴
報じるマスコミの少なさは学会への遠慮か
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