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世界企業の通販物流
英国に本社を置くエレクトロコンポーネンツグルー
プは、世界二七カ国に現地法人を設置し、電子部品
や制御部品など工業用部品の通信販売を行っている。
グループ売上高は約二〇〇〇億円。 創業は一九三七
年に遡る。 その日本法人がアールエスコンポーネンツ
だ。 九九年に営業を開始して以降、ほぼ毎年二ケタ
のペースで成長を続け、現在は年間に約五〇億円を
売り上げている。
「当社の武器は三つある」と浜本宏顧問はいう。 一
つは品揃え。 日本では電子部品を中心に常時八万点
を在庫している。 二つ目が販売ロット。 通常なら最
低購入ロットが千個以上の部品でも一個単位で販売
する。 そして三つ目が物流だ。 一八時までの注文で
あれば全国どこでも翌日に届ける。 二〇〇四年九月
からは、首都圏を対象に朝一〇時半までの注文を当
日中に納品する「即着配送」も実施している。
注文充足率は九八%以上。 アイテムごとの販売動
向に応じて八万点すべてに予測・発注ルールを設定し、
五人の担当者がそれを管理する。 マニュジスティック
スの需要予測ソフトに人間の判断を加え、在庫水準
を抑えながら品切れを起こさないよう努めている。
物流センターは横浜市瀬谷区の日本ロジテム倉庫
内に延べ床五五〇〇平方メートルの「横浜ロジスティ
クスセンター」を構えている。 一日当たりの出荷件数
は一〇〇〇〜一三〇〇件。 午前中に入荷検収を終え、
ピッキングは午後から夕方に処理する。 ミスピッキン
グの発生率は今年三月現在で〇・〇〇一%という精
度だ。
庫内作業にマテハン類はほどんど使っていない。 「手
作業の方が速くて正確。 また人の力は多くの改善を生
通販物流支援市場の見取り図
宅配便の寡占化とは対照的に、ネット通販のフルフィル
メントを代行する物流支援事業には、物流業界のみなら
ず異業種からの新規参入が相次いでいる。 アマゾンジャパ
ンや楽天などネット通販ビジネスの勝ち組や、カタログ通
販の物流インフラの活用を狙う物流子会社など、各社が
独自のソリューションを競い合っている。 (梶原幸絵)
む」とオペレーションズ部門の福久貴之製品サポート
担当。 その代わり、同社独自の「一体型帳票」を使
用している。 A3の紙一枚の左側に配送伝票とピッ
キングリスト、右側に納品書と請求書が印刷されてい
る。 ピッキングから梱包まで一枚の伝票で処理するこ
とでミスを抑えている。
配送は翌日配送を基本として、日本全国どこでも
顧客が指定した日時に納品する。 北海道、九州、四
国、中国、沖縄は日通航空をパートナーに航空輸送
を行っている。 それ以外のエリアは佐川急便がパート
ナーだ。 一体型帳票でピッキングをするためには、配
送業者とのシステム連携が必要で、各社の対応を検討
した結果、右の二社に落ち着いた。
「とにかく速く速く、が当社の物流の特徴。 その点
でヤマトは業界のガリバーなだけに、なかなか要求通
りに動いてくれない。 佐川急便の方が小回りが利いた。
日通にしても本体より日通航空の方が対応が速いこと
が分かった」と浜本顧問は各社を評価している。
「即着配送」は、当日一五時着を横浜市から開始
し、同市全域にエリアを拡大している。 それ以外の
首都圏は一七時まで、または二〇時までに配達して
いる。 地方でも空港カウンター渡しで当日対応を実施
している。 現在、三九都道府県が対象となっている。
浜本顧問は「今の時代、ネット通販をやるだけなら
誰でもできる。 しかし、これだけのアイテムを素早く
一〇〇%納品できる会社は少ない。 それが当社の競
争力になっている」とアピールする。
通販会社にとって物流サービスは販売機能の重要
な構成要素であり、顧客との貴重なコンタクトポイン
トだ。 物流ノウハウのない通販会社は大きなハンデを
負うことになる。 それを従来は宅配会社や倉庫会社
などの物流会社が支援してきた。 ネット通販の市場
第3部
MAY 2009 14
ムトウの直販事業の出荷センター。 ソー
ターにより1 時間当たり5000 件の注
文の仕分けが可能
アールエスコンポーネンツの物流セン
ター。 8 万点すべてに在庫量とロケー
ションを設定し、管理をしている
ソリューション事業の低温物流センター。
酒類や食品を扱いドライ商品と同様、
人手できめ細やかな対応を行っている
センター中央に位置する梱包・出荷エ
リア
規模拡大は、物流支援に対するニーズも増大させる。
そこに新たなビジネスチャンスを見出した、物流会社
以外のプレーヤーも事業化に乗り出している。
ネット通販最大手のアマゾンジャパンは昨年四月、
中小規模のネット通販会社向けに「フルフィルメント
by Amazon」と名付けた物流代行サービスを開始し
た。 受注処理からピッキング、出荷梱包、配送まで
をアマゾンのインフラで処理する。 〇六年に米国でス
タートした事業を日本に展開した。 今のところ日本
ではアマゾンの出店者にサービス対象を限定している
が、米国ではアマゾンに出店していないネット通販会
社も対象に含めている。
同様にインターネットショッピングモール最大手の
「楽天市場」を運営する楽天も、昨年五月から「楽
天物流サービス」を開始している。 楽天市場の出店
者を対象にその物流業務を代行する。 そのために楽
天はハマキョウレックスと手を結び、同社の物流セン
ターに専用スペースを確保した。
年間二五八〇万点を出荷処理
長年にわたって自社で物流を運営してきたカタログ
通販会社も、そのインフラとノウハウを使ってネット
通販向けの物流事業に進出している。 ムトウもその
一つだ。 子会社のムトウマーケティングサポート(M
MS)を通じて情報システム支援が三〇〇社、販促
支援のDMサービスが一五〇社、出荷代行では一二
八社というサービス実績がある。
このうち出荷代行サービスは昨年度だけでも三〇
社以上から業務を受託している。 顧客層は年商一億
〜五〇億規模の通販会社が中心だ。 MMS全体の出
荷梱数は年間七〇〇万梱以上、出荷点数は同二五八
〇万点に上っている。 MMSの高山隆司営業部部長
は「現在、これだけの規模で出荷代行を行っている
ところはないのではないか」と胸を張る。
浜松市に自社所有する高丘センター内に置く主要拠
点、「ソリューション出荷センター」では、顧客一社
ごとに専用エリアを設けて各社に合わせて異なった手
順で保管・出荷作業を実施している。 自社貨物の出
荷センターにはソーターなど大規模なマテハンを導入
しているが、ソリューション出荷センターでは顧客の
販売方法の変更に応じて人や棚の配置変更を行うた
め、マテハンはほとんど入れていない。
梱包資材や宅配はムトウと顧客企業の利用分を合
わせて発注し、スケールメリットを生かしている。 ム
トウの貨物だけでも毎月二〇万梱を出荷しているた
め、中小通販企業でも割安な料金を享受できる。 「ど
こと相見積もりになっても、まず負けない」と高山
部長はアピールする。
従来からムトウは自社の貨物二万アイテムの在庫を
単品管理し、物流センターの現場作業まで物流子会
社のムトウ流通センターで行ってきた。 出荷代行を開
始したのは九九年。 その後、〇六年にはムトウ流通
センターを本体のソリューション営業部に吸収し、そ
れを昨年四月に情報システム子会社のミックに統合し
て、通販ソリューションをワンストップで提供するM
MSを発足させた。
「機能を一本化したことにより、会社としての提案
力が大幅に向上した」と高山部長。 今年九月には静
岡県磐田市に八〇〇〇坪の新ソリューションセンター
を開設する。 出荷代行の受注が増加し、高丘センター
の処理能力が超えたためた。 新センターも二〇一一
年には満庫にする目標を掲げている。 それによって
同年には売上高一〇〇億円、経常利益七億円を達成
する計画だ。
MMS の高山隆司
営業部部長
アールエスコンポー
ネンツの浜本宏顧問
アールエスコンポーネンツ・
オペレーションズ部門の福
久貴之製品サポート担当
15 MAY 2009
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