2009年5月号
特集
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宅配市場のすべて 「関東即配」SBSロジテム
荷主専用伝票も使える個建て輸送
SBSロジテムは「関東即配」のブランド名で即日
配送事業を行っている。
関東一都三県にエリアを絞 り、軽トラックを使った集配ネットワークを構築。
自 社車両二〇〇台と協力会社の車両三〇〇台の計五〇 〇台で一日二回、午前と午後に集荷・配送を行い、午 前中に集荷した貨物は午後、午後に集荷した貨物は 翌日に配送する。
即日配送のセンターは関東九カ所 に設置している。
「宅配便の料金で専用便のサービス」が売り文句だ。
宅配便は高度にパッケージ化されたサービス商品であ るため、カスタマイズには対応できない。
一方、チ ャーター便は顧客の要望に応じたサービスが可能だが、 車両単位で物量がまとまらないと高くつく。
運賃の 変動費化もできない。
これに対してSBSロジテムは個建ての運賃で荷主 の専用伝票の使用や、無梱包/簡易梱包配送に対応 する。
納品方法も荷主が指定した置き場所まで届け る。
代引きも可能だ。
「当社は既製品とオーダーメードの中間を狙い“ハ ーフメード”以上のサービスを提供している。
即日/ 翌日配送を行う業者はあっても、一都三県を対象エ リアとした即日配送、専用伝票対応、簡易梱包対応 の三つすべてを提供できる業者はいない。
その意味 で当社はナンバーワンであり、オンリーワン」と同社 の大内純一社長はアピールする。
もともと同社はSBSホールディングスの創業者、 鎌田正彦社長が一九八八年に設立した物流ベンチャ ーの関東即配を前身としている。
大内社長は創業時 代からのメンバーだ。
当時は九〇年の物流二法によ る規制緩和前。
トラック運送事業には免許制が敷か れ、新規開業は事実上不可能だった。
しかし軽トラックなら届け出さえすれば、車両一 台からすぐに運送事業を開始できた。
そこで軽トラ ックを使った首都圏の即日配送に乗り出した。
エリ ア内で小口配送を行うだけなら、軽トラックで十分。
車両価格や維持費も安く、場所をとらない。
普通自 動車免許で運転できるため、ドライバーを集めるのも 大型/中型トラックに比べれば容易だった。
それでも「大手と同じ土俵に乗ってしまえば、規 模、インフラ、情報システムなどのどこをとっても敵 わない。
工夫しなければ生き残れない。
チャーター便 でやるような面倒な部分を小口配送で実現すること で差別化を図ることにした」(大内社長) コストの抑制にも知恵を絞った。
取り扱い規模が小 さい中でやみくもに貨物を集めても、配送先はバラ バラになってしまう。
集荷と配送の効率を上げるた め、個人宅向けには手を出さず、業種も眼鏡のメー カーや問屋に絞った。
いずれも配送先は同じ眼鏡店 のため、配送効率を上げることができる。
眼鏡店は商店街にある。
物量が増えてくるに連れ て、美容院、文具店、歯科医院など配送先を増やし ていき、そうした店舗に商品を供給するメーカー、問 屋などにアプローチをかけて荷主を増やしていった。
その道のりは平坦ではなかった。
新しい市場だか らといって、貨物がドラスティックに増えたわけでも ない。
それどころか関東即配の成長に伴い、新規参 入が相次いだ。
軽トラックがあれば開業できるため、 参入障壁は低い。
「ウチが創造したマーケットだけに ウチが突出していたというか、儲かっているように みえたのかもしれない。
小さなマーケットに似たよ うな会社が乱立してしまった」と大内社長は振り返 る。
SBSロジテムはジャスダック上場のSBSホールディン グスの源流企業だ。
「宅配便の料金で専用便のサービス」 をコンセプトに、軽トラックを使って関東圏で、?即日 配送、?荷主専用伝票、?簡易梱包、による配送を行っ ている。
ニッチサービスに特化することで大手宅配会社 との差別化を実現している。
(梶原幸絵) 第7部オルタナティブ宅配便の商品力 「関東即配」SBSロジテム 宅配便の料金で専用便のサービス MAY 2009 28 大内純一社長 本社社屋にあるハブセンター しかし、いざサービスを始めてみると、手間がか かる割にはそれほど儲からない。
ピーク時には七社 ほどあった同業者は、すべて廃業していった。
廃業 した同業者の貨物がそのままSBSロジテムに流れる ほど甘くもなかった。
大手宅配会社やチャーター便に 戻る荷主も多い。
もともと即日配送に対するニーズ 自体はそれほど大きくはない。
社名は関東即配でも、 実際には翌日配送の比率が高い。
付加価値サービスを含めた独自のサービスを本当に 必要としている荷主は、現在でも二割程度だという。
それ以外はいつ他社に貨物を奪われてもおかしくは ない。
それでもSBSロジテムは競争を生き抜くこと ができた。
その理由を大内社長は「ドライバーの質=教育だ。
一朝一夕でできるものではない。
日々の積み重ねを 皆で一所懸命やったからウチはつぶれなかった。
仕 事を一所懸命する人の一所懸命の姿、元気とやる気 を全面に出せるような集団はなかなかない。
そこは 日本一だ」と得意気に説明する。
自社車両の社員ドライバーと、協力会社の差別も していない。
「同じ仕事でともに汗を流す同志」(大 内社長)として、仕事に対する対価は同等にしてい るという。
それによって自然に仕事に対する責任感 が生まれてくる。
一〇〇〇億円企業に成長 成長軌道に乗った関東即配はその後、3PL、人 材派遣、情報システム開発からマーケティング、物流 施設開発まで次々に事業領域を広げていった。
二〇〇 三年にはエスビーエスとしてジャスダックに上場。
そ の公開益で〇四年に雪印物流(現フーズレック)、〇 五年に東急ロジスティック(現ティーエルロジコム)、 〇六年の全通など積極的な買収をしかけ、飛躍的に 事業規模を拡大した。
今やグループの連結売上高は一三九四億円(〇八 年十二月期)に達し、物流業界の有力プレーヤーの一 つに挙げられるまでに成長した。
SBSロジテムの即 配事業の業績も順調に伸びている。
〇八年十二月期 の取扱数量は前年比十三・六%増の一二五〇万個だ (図)。
「今のやり方、スキームは間違いないと思って いるし、よりよい品質を目指すということ以外では 大きな課題はないと思っている」と大内社長。
ただし、今期は苦戦が予想される。
既存顧客の物 量が減少している上、大手宅配会社を含めた価格競 争が激しくなっている。
これに対して大内社長は「と にかく今は利益率ではなく利益額の追求をしていか ないと生き残れない。
勝つためには、ぎりぎりの値 段でも取りにいく時期だと思っている」という。
つ まり薄利多売をしてでも、自社の既存顧客を守りな がら新規顧客を開拓する時期と判断している。
不況は追い風にも成り得る。
実際、チャーター便か らの切り替えが増加している。
卸が商物を分離して、 従来は営業マンが行っていた配送をSBSロジテムに 委託するケースも出てきた。
今年二月〜四月に行っ た営業キャンペーンでは、単価は厳しくとも例年以上 に受注件数は増えている。
しかし、小口配送の利益率は取扱量よりも積載効 率がモノをいう。
単価の下げをカバーするために取扱 量を増やせば、かえって積載率が低下し、利益率が 下がることもある。
現在のSBSロジテムは、まさ にそうした状態にあるという。
しかし、そこから貨 物を増やせば事業のステージが一段上がる。
「今年は 種まきの時期であり、来年のV字回復のためのステ ップ」と大内社長は意欲を燃やしている。
04年 12月期 05年 12月期 06年 12月期 07年 12月期 08年 12月期 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 (万個) 04年12月期〜08年12月期の 即配事業の売上規模と取扱数量の推移 取扱数量 売上規模(04年12月期 を1とした比率) 1 1.15 1.27 1.44 1.67 750 860 1,010 1,100 1,250 29 MAY 2009
関東一都三県にエリアを絞 り、軽トラックを使った集配ネットワークを構築。
自 社車両二〇〇台と協力会社の車両三〇〇台の計五〇 〇台で一日二回、午前と午後に集荷・配送を行い、午 前中に集荷した貨物は午後、午後に集荷した貨物は 翌日に配送する。
即日配送のセンターは関東九カ所 に設置している。
「宅配便の料金で専用便のサービス」が売り文句だ。
宅配便は高度にパッケージ化されたサービス商品であ るため、カスタマイズには対応できない。
一方、チ ャーター便は顧客の要望に応じたサービスが可能だが、 車両単位で物量がまとまらないと高くつく。
運賃の 変動費化もできない。
これに対してSBSロジテムは個建ての運賃で荷主 の専用伝票の使用や、無梱包/簡易梱包配送に対応 する。
納品方法も荷主が指定した置き場所まで届け る。
代引きも可能だ。
「当社は既製品とオーダーメードの中間を狙い“ハ ーフメード”以上のサービスを提供している。
即日/ 翌日配送を行う業者はあっても、一都三県を対象エ リアとした即日配送、専用伝票対応、簡易梱包対応 の三つすべてを提供できる業者はいない。
その意味 で当社はナンバーワンであり、オンリーワン」と同社 の大内純一社長はアピールする。
もともと同社はSBSホールディングスの創業者、 鎌田正彦社長が一九八八年に設立した物流ベンチャ ーの関東即配を前身としている。
大内社長は創業時 代からのメンバーだ。
当時は九〇年の物流二法によ る規制緩和前。
トラック運送事業には免許制が敷か れ、新規開業は事実上不可能だった。
しかし軽トラックなら届け出さえすれば、車両一 台からすぐに運送事業を開始できた。
そこで軽トラ ックを使った首都圏の即日配送に乗り出した。
エリ ア内で小口配送を行うだけなら、軽トラックで十分。
車両価格や維持費も安く、場所をとらない。
普通自 動車免許で運転できるため、ドライバーを集めるのも 大型/中型トラックに比べれば容易だった。
それでも「大手と同じ土俵に乗ってしまえば、規 模、インフラ、情報システムなどのどこをとっても敵 わない。
工夫しなければ生き残れない。
チャーター便 でやるような面倒な部分を小口配送で実現すること で差別化を図ることにした」(大内社長) コストの抑制にも知恵を絞った。
取り扱い規模が小 さい中でやみくもに貨物を集めても、配送先はバラ バラになってしまう。
集荷と配送の効率を上げるた め、個人宅向けには手を出さず、業種も眼鏡のメー カーや問屋に絞った。
いずれも配送先は同じ眼鏡店 のため、配送効率を上げることができる。
眼鏡店は商店街にある。
物量が増えてくるに連れ て、美容院、文具店、歯科医院など配送先を増やし ていき、そうした店舗に商品を供給するメーカー、問 屋などにアプローチをかけて荷主を増やしていった。
その道のりは平坦ではなかった。
新しい市場だか らといって、貨物がドラスティックに増えたわけでも ない。
それどころか関東即配の成長に伴い、新規参 入が相次いだ。
軽トラックがあれば開業できるため、 参入障壁は低い。
「ウチが創造したマーケットだけに ウチが突出していたというか、儲かっているように みえたのかもしれない。
小さなマーケットに似たよ うな会社が乱立してしまった」と大内社長は振り返 る。
SBSロジテムはジャスダック上場のSBSホールディン グスの源流企業だ。
「宅配便の料金で専用便のサービス」 をコンセプトに、軽トラックを使って関東圏で、?即日 配送、?荷主専用伝票、?簡易梱包、による配送を行っ ている。
ニッチサービスに特化することで大手宅配会社 との差別化を実現している。
(梶原幸絵) 第7部オルタナティブ宅配便の商品力 「関東即配」SBSロジテム 宅配便の料金で専用便のサービス MAY 2009 28 大内純一社長 本社社屋にあるハブセンター しかし、いざサービスを始めてみると、手間がか かる割にはそれほど儲からない。
ピーク時には七社 ほどあった同業者は、すべて廃業していった。
廃業 した同業者の貨物がそのままSBSロジテムに流れる ほど甘くもなかった。
大手宅配会社やチャーター便に 戻る荷主も多い。
もともと即日配送に対するニーズ 自体はそれほど大きくはない。
社名は関東即配でも、 実際には翌日配送の比率が高い。
付加価値サービスを含めた独自のサービスを本当に 必要としている荷主は、現在でも二割程度だという。
それ以外はいつ他社に貨物を奪われてもおかしくは ない。
それでもSBSロジテムは競争を生き抜くこと ができた。
その理由を大内社長は「ドライバーの質=教育だ。
一朝一夕でできるものではない。
日々の積み重ねを 皆で一所懸命やったからウチはつぶれなかった。
仕 事を一所懸命する人の一所懸命の姿、元気とやる気 を全面に出せるような集団はなかなかない。
そこは 日本一だ」と得意気に説明する。
自社車両の社員ドライバーと、協力会社の差別も していない。
「同じ仕事でともに汗を流す同志」(大 内社長)として、仕事に対する対価は同等にしてい るという。
それによって自然に仕事に対する責任感 が生まれてくる。
一〇〇〇億円企業に成長 成長軌道に乗った関東即配はその後、3PL、人 材派遣、情報システム開発からマーケティング、物流 施設開発まで次々に事業領域を広げていった。
二〇〇 三年にはエスビーエスとしてジャスダックに上場。
そ の公開益で〇四年に雪印物流(現フーズレック)、〇 五年に東急ロジスティック(現ティーエルロジコム)、 〇六年の全通など積極的な買収をしかけ、飛躍的に 事業規模を拡大した。
今やグループの連結売上高は一三九四億円(〇八 年十二月期)に達し、物流業界の有力プレーヤーの一 つに挙げられるまでに成長した。
SBSロジテムの即 配事業の業績も順調に伸びている。
〇八年十二月期 の取扱数量は前年比十三・六%増の一二五〇万個だ (図)。
「今のやり方、スキームは間違いないと思って いるし、よりよい品質を目指すということ以外では 大きな課題はないと思っている」と大内社長。
ただし、今期は苦戦が予想される。
既存顧客の物 量が減少している上、大手宅配会社を含めた価格競 争が激しくなっている。
これに対して大内社長は「と にかく今は利益率ではなく利益額の追求をしていか ないと生き残れない。
勝つためには、ぎりぎりの値 段でも取りにいく時期だと思っている」という。
つ まり薄利多売をしてでも、自社の既存顧客を守りな がら新規顧客を開拓する時期と判断している。
不況は追い風にも成り得る。
実際、チャーター便か らの切り替えが増加している。
卸が商物を分離して、 従来は営業マンが行っていた配送をSBSロジテムに 委託するケースも出てきた。
今年二月〜四月に行っ た営業キャンペーンでは、単価は厳しくとも例年以上 に受注件数は増えている。
しかし、小口配送の利益率は取扱量よりも積載効 率がモノをいう。
単価の下げをカバーするために取扱 量を増やせば、かえって積載率が低下し、利益率が 下がることもある。
現在のSBSロジテムは、まさ にそうした状態にあるという。
しかし、そこから貨 物を増やせば事業のステージが一段上がる。
「今年は 種まきの時期であり、来年のV字回復のためのステ ップ」と大内社長は意欲を燃やしている。
04年 12月期 05年 12月期 06年 12月期 07年 12月期 08年 12月期 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 (万個) 04年12月期〜08年12月期の 即配事業の売上規模と取扱数量の推移 取扱数量 売上規模(04年12月期 を1とした比率) 1 1.15 1.27 1.44 1.67 750 860 1,010 1,100 1,250 29 MAY 2009
