ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年6号
特集
2) 第2部 航空フォワーダーは悪くない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

航空フォワーダーは悪くない  航空貨物業界が、カルテル問題に揺れている。
公正取引 委員会は3月、燃油サーチャージ(FS)などの金額をめぐ り、航空フォワーダー12社に対して総額90億円余りに上る 課徴金の支払いを命じた。
しかし、フォワーダーにとって FSは航空会社の代理で荷主から収受しているに過ぎない と不満を訴える声が強い。
         (梶原幸絵) JUNE 2009  26 公取委の命令に業界の対応は二分  日本通運は今春、中谷桂一副社長営業本部長兼国 際事業本部長の退任を発表した。
これまでの同社の 人事で副社長クラスは退任後に関係会社のトップに就 任するのが常だったが、そうした予定は発表されてい ない。
異例の人事を業界関係者は、カルテル問題の責 任をとらされたものとして受けとめている。
 公取委は三月一八日、燃油サーチャージ(燃油特 別付加運賃:FS)などの独占禁止法違反で、日通、 近鉄エクスプレス(KWE)、郵船航空サービス(Y AS)の大手三社を含むフォワーダー十二社に排除措 置命令と課徴金納付命令を下した。
これを受けて日 通は同日、社長と担当役員の減棒二〇%・三カ月の 処分を決定。
四月一〇日には中谷副社長の代表権返 上を発表した。
中谷氏は航空フォワーダーの業界団体、 航空貨物運送協会(JAFA)の会長も務める業界 の顔役。
JAFAによると、中谷氏は四月二六日の 理事会で辞任の意向を示したが、慰留されたため辞 任を撤回したとされる。
 この問題は航空会社、航空行政を管轄する国土交 通省、OBも含めた業界中に衝撃を与え、関係者は 神経を尖らせている。
これまでに支払ったFSなど の返還を要求する荷主も出てきた。
荷主にしてみれ ば、「FSなどが価格カルテルで決まっていたのだと したら、到底容認できない」というわけだ。
 公取委の命令に対する各社の対応は今のところ真 っ二つに分かれている(図)。
日通やKWEなどが命 令を応諾したのに対し、YASや西日本鉄道など五 社は審判を請求する方針を固めた(五月一八日時点)。
ある関係者は「課徴金の金額で対応が分かれたので はないか。
また課徴金の金額が大きなところでも対応 が割れているのは課徴金減免制度(リーニエンシー) が関係している」と解説する。
 リーニエンシーとは違反行為を?自首?した事業者 の課徴金を減免する制度で、一件につき三社まで認 められる。
公取委は今回のリーニエンシーの適用事業 者として日通だけを挙げているが、KWEも適用を 受けた可能性が高い。
この件について同社は「ノーコ メント」としているが、課徴金の金額はカルテル行為 を行っていた期間の各社の対象商品の売り上げなどか ら算定される。
〇三年度以降、KWEは日本発輸出 航空貨物取扱量で二位、YASは同三位だが、YA Sの課徴金額はKWEよりも二億円以上高い。
 またDHLグローバルフォワーディングジャパンは 独禁法違反の認定を受けながらも排除措置命令・課 徴金納付命令ともに受けていない。
これは同社が公 取委が調査を開始する以前、最初に自主的にカルテル の内容を報告したためだと目されている。
業界関係 者は「欧米でもカルテル問題でフォワーダーに調査が 入ったため、日本の公取委も足並みを揃えることを 見越して事前に申告したのではないか」と指摘する。
 今回の騒動の発端は昨年四月一六日。
公取委が十 三社の一斉立ち入り検査を実施したことに始まる。
フ ォワーダーにとってはまさに寝耳に水の出来事だった。
その後の調査を経て、公取委は計一四社(うち、エ アボーンエクスプレスはDHLによる買収に伴い、〇 三年に業務を廃止したため、立ち入り検査を受けてい ない)の独禁法違反を認定した。
 公取委によると、各社は〇二年九月、JAFAの 国際部会役員会の会合で航空会社から請求されるF Sに相当する額を荷主に対して新たに請求することで 合意。
さらに〇四年十一月、同役員会会合で米国税 関当局向けの貨物情報送信費用(AMSチャージ)と 第2部 流政策に 異議 あり! その物 特集2 して五〇〇円、〇六年の役員会会合では国交省の行 う保安対策の費用(セキュリティチャージ:SS)と して三〇〇円、保安対策で一部の貨物に義務付けら れている爆発物検査料として一五〇〇円を請求する ことで合意したという。
 しかしその後、米司法省や欧州委員会がカルテル容 疑で欧米フォワーダーの調査を開始したことから、〇 七年十一月にカルテル行為をやめたとされている。
こ れについては複数のフォワーダー関係者が「AMSチ ャージ、SS、爆発物検査料についてはカルテルがあ った」と認めている。
 しかし、他の三つの料金に比べて格段に金額が大 きく、問題の焦点となっているFSについては、フ ォワーダー側に違法という認識はなかった。
FSは航 空会社が半ば強制的にフォワーダーから徴収している。
フォワーダーはそれを荷主に転嫁しようと動いただけ で「他の料金と違ってFSはフォワーダーが価格を決 めているわけではなく、国交省にも届け出を行ってい る。
しかも、その全額を荷主から収受できたとして も、フォワーダーには何の利益にもならない。
それが なぜ違反なのか」と関係者は口を揃える。
 
藤咾蓮仔麈に航空会社が本格導入して以来、フ ォワーダーにとってはずっと悩みのタネだった。
大手 荷主は本体運賃への一本化を要求し「別建てでは一 銭たりとも払わない」(複数の業界関係者)と当初は フォワーダーの要請を突っぱねていた。
大手フォワー ダーでは一時期、荷主からの未収受額が一カ月当たり 一億円以上に達していたという。
 このためフォワーダーが業界を挙げて収受率の向上 に取り組んできたのは事実だ。
JAFAの国際部会 役員会で、特に未収受率の高い大手荷主をターゲット に「それぞれ取引量の多いフォワーダーに担当を割り 27  JUNE 2009 当ててFSの収受率向上に取り組んだこともあった」 (大手フォワーダー関係者)。
 そこに公取委の行政調査が入った。
「航空会社から 請求された額をそのまま荷主に転嫁する必要はない。
請求額より高くしても安くしてもいいはずだ」(公取 委審査局)との判断だ。
しかし、フォワーダーの言い 分にも同情の余地はある。
航空会社の体質が問題  そもそもカルテル問題の元凶は航空会社だけが国際 運賃協定の独禁法適用除外制度で政府による保護を 受けていることにある。
こうした日本の保護行政と は逆に、世界的には航空業界への監視は強化されて いる。
欧米では航空会社や大手フォワーダーがカルテ ル容疑で調査を受け、日本航空を含めた航空会社が 多額の課徴金を支払う例も増えている。
 「航空輸送産業の参入障壁は高く、これまで保護さ れてきた主要航空会社の高コスト体質が航空会社間の カルテルにつながり、フォワーダーにも波及している。
そこに欧米当局は介入し、国際航空貨物輸送でフェ アトレードを確保しようとしている。
公取委の命令は そうした流れの一環だ」と業界関係者は説明する。
 公取委も〇七年十二月、国交省に国際航空協定の 独禁法適用除外の見直しを要請している。
これを受 けて国交省は昨年八月、有識者や業界関係者による 懇談会を設けて検討を開始した。
今年三月にも報告 書をまとめるとしていたが、同懇談会は昨年十二月 で中断している。
金融危機で航空需要が急減したた め、航空会社の支援策を先にまとめたためだ。
国交 省によると、懇談会の再開は二〇一〇年の羽田空港 の発着枠増加に備えて開催している懇談会のとりま とめが終わる今年八月以降になるという。
日本通運 郵船航空サービス 近鉄エクスプレス 西日本鉄道 阪急阪神交通社ホールディングス(旧阪急交通社) 日新 バンテックワールドトランスポート(現バンテック) ケイラインロジスティックス ヤマトグローバルロジスティクスジャパン 商船三井ロジスティクス 阪神エアカーゴ ユナイテッド航空貨物 DHLグローバルフォワーディングジャパン エアボーンエクスプレス           合 計 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ̶ ̶ 12 社 24 億9503 万円 17億2828 万円 14 億9461万円 8 億5196 万円 6 億7414 万円 5 億2521万円 4 億1789 万円 3 億2078 万円 2 億7732 万円 1億6534万円 9090 万円 1152 万円 ̶     ̶     90 億5298 万円 応諾 審判請求 応諾 審判請求 応諾 排除措置命令は応諾、課徴金納付命令について審判請求 審判請求 審判請求 未発表(5月18 日時点) 未発表(5月18 日時点) 応諾 未公表(5月18 日時点)              ̶              ̶ 注:公正取引委員会・各事業者の発表文をもとに作成 事業者 排除措置命令 課徴金納付命令 対応

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