2009年6月号
ケース
ケース
プライムポリマー 事業統合
JUNE 2009 38
事業統合
プライムポリマー
再編繰り返し錯綜した物流を統合
合併効果で10数億円の合理化狙う
住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達
成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
合併前の物流体制に大きな相違 プライムポリマー(以下ではプライム)は四 大汎用樹脂の一つポリプロピレン(PP)の生 産で国内トップのシェアを持つ。
二〇〇五年 四月に、三井化学と出光興産が両社のPPお よびポリエチレン(PE)の製品分野である ポリオレフィン事業を統合してプライムを設立 した。
資本金の六五%を三井化学が、三五% を出光興産が出資している。
プライムにとって、事業統合を活かした物流 の合理化は重点課題の一つだった。
この課題 に対して同社は、物流部門を管轄する業務部 を中心に、組織や管理体制・業務の統合に取 り組んだ。
社内の体制を固めた上で協力会社 や拠点の集約による実質的な物流統合を実現 し、具体的な成果につなげる青写真を描いた。
だが一筋縄ではいかなかった。
同じ業界、 同じ事業ではあっても、統合前の物流体制に は大きな違いがあったからだ。
石油化学業界 では規模の拡大によるシナジー効果への期待 から、過去十年以上にわたって事業再編が繰 り返されてきた。
その軸の一つが三井化学だ。
同社は一九九七年一〇月に三井石油化学と 三井東圧化学の大合併によって誕生した会社 で、その後も図1の通り、同業他社との事業 統合、再編を重ねてきた。
一方、出光興産側には再編に絡んだ動きが ほとんどなかった。
同社のポリオレフィン事 業は、三井化学との統合に向けて〇四年八月 に同社が吸収合併するまで子会社の出光石油 化学が担っていた。
それ以前の目立った動き といえば、〇一年七月にトクヤマからPP事 業の営業譲渡を受けたくらい。
再編の波をかぶっていない出光では従来か らポリオレフィンの物流を一体のものとして 運営してきた。
それに対し、三井側は工場や 事業部により管理体制がまちまちだった。
事 業統合に至るまでの三井化学と出光興産の道 のりの違いが、両社のポリオレフィンの物流 体制に如実に表れていた。
物流管理の考え方 にも両社でかなりの相違があった。
プライムの物流統合プロジェクトは第一ス テップから、その壁と向き合うことになった。
まずは受注業務の統合に着手したところ、そ もそも受注業務を物流部門の管理範囲に含め るかどうかについて、両社で考え方の異なっ ていることが判明した。
出光では、注文を受けてからユーザーに商品 を届けるまでを物流管理の範疇と考えていた。
これに則って物流の組織も一本化され、「物 流センター」という部署がすべての商品の受 注、工場への出荷指示、在庫管理、輸配送指 示までを行っていた。
この体制は旧出光石油 化学時代に確立したものだ。
これに対し三井では受注業務が事業部に属 していた。
事業部が注文を受けて工場の物流 担当部門に出荷指示を出すという流れだ。
し かも事業部によって受注体制が異なっていた。
PE事業部は受注窓口を一カ所に集約してい 三井化学と出光興産のポリオレフィン事業の統合 によって05年4月に発足した。
まずは2年半余りを かけて、工場や事業部ごとに異なっていた物流の組 織や管理体制を統合。
そこから協力会社やストック ポイントの再編を本格的にスタートさせた。
2011年 度までに物流分野で十数億円のシナジー効果実現を 狙っている。
39 JUNE 2009 たが、PP事業部では各支店が受注業務を行 っていた。
議論の末、プライムでは受注業務も物流管 理に含めて一元管理する考え方に統一した。
〇 六年の五月、業務部のもとに「受注センター」 を発足。
それまで出光の「物流センター」や 三井の支店などで受注業務を担当していた社 員を同センターに所属させて、受注業務を集 約した。
続いて六月には情報システムの統合を行っ た。
三井も出光も、受注などを処理する基幹 業務システムに、同じ「SAP─R3」を導 入していたため、システムの統合は比較的ス ムーズだった。
これによってプライム製品の 受注窓口が一つになり、受注から在庫引き当 てまでの情報処理が一元化された。
物流子会社も再編に揺れ しかし、この時点では在庫を引き当てた後 の物流管理は従来のままだった。
その一本化 が統合プロジェクトの最大の難関だった。
プライムの生産拠点は、三井系が市原工場 (千葉県)と大阪工場、 宇部工場の三カ所。
出 光系が姉崎工場(千葉県)と徳島工場で計五 カ所にある。
各工場はそれぞれ広大な石油化 学コンビナートの一角を占めるかたちで立地 している。
また市原・大阪・姉崎工場ではプ ライムの製品のほかに三井や出光の基礎化学 品、先端化学品などの生産も行っている。
プライムは発足と同時に三井と出光からP EとPPの生産プラントをすべて引き継ぎ、自 社生産を開始した。
これに伴い出光系の姉崎・ 徳島工場では出荷業務を担当する部門の社員 もプライムに移籍した。
だが三井系の市原・大阪・宇部工場では三 井化学の物流を担当する部門が、そのままプ ライム製品の物流管理を担当した。
プライム 側から見ると、生産については五工場すべて が自社の管轄下にありながら、物流について は三井系の三工場だけ自社の管理下にないと いう不自然な状況だった。
当時、三井化学は三井化学物流(MCB) という子会社を持っていた。
住友化学との全 面的な事業統合を前提として〇三年七月に設 立された会社だ。
同じ時期、住友側でも住化 物流を発足させている。
事業統合に向けて両 社がそれぞれ物流子会社を設立し、本体の統 合に合わせ子会社の統合を行い、物流統合を 図るという目論見だった。
ところが、三井化学と住友化学との間で 統合比率について合意に達することができず、 全面的な事業統合は白紙に戻された。
これを 受けて、住友化学は住化物流を〇四年六月に、 親会社に吸収合併するかたちで解散した。
同 様に三井化学も〇八年一月にはMCBを吸収 合併するのだが、プライムが設立した〇五年 四月の段階では、まだ子会社として事業を継 続していた。
三井化学はMCBの設立に当たって、本社 物流部の戦略担当以外の部門、すなわち企画 図1 再編を繰り返しポリプロピレン最大手に PP 統合 (95/10) PP 統合 (97/7) PP 営業譲渡 (01/7) 合併 (97/10) 住友化学 (PE、PP) PE=ポリスチレン PP=ポリプロピレン※石油化学工業協会資料より グランドポリマー (PP) 三井化学 (PE) 三井住友 ポリオレフィン (PE、PP) PE、PP 統合 (02/4) 出光石油化学 (PE、PP) 出光興産 と合併 (04/8) 出光興産 (PE、PP) 三井化学 (PE、PP) 宇部興産 (PE、PP) 宇部興産 (PE、PP) 三井石油化学 (PE、PP) 三井東圧化学 (PP) 住友化学 (PE、PP) 出光石油化学 (PE、PP) トクヤマ (PP) 宇部丸善ポリエチレン (PE) (04/10) プライムポリマー (PE、PP) PE、PP 統合 (05/4) JUNE 2009 40 立案や工場・支店での物流管理業務をすべて MCBに移管した。
プライム発足後もこの体 制が続き、プライムの工場でもMCBが在庫 引き当て後の管理を行っていた。
その管理体制は、出光系の工場とは大きな 違いがあった。
出光系の二工場では、「構内 物流」と「構外物流」で、管理を二つに分け ていた。
製品を充填包装した後に工場内の倉 庫または工場周辺の外部倉庫へ入庫・保管す るまでが構内物流で、それぞれの工場の物流 担当者が管理する。
その後、工場から製品を各地域の中継拠点 (SP)に転送してユーザーへ配送(またはユ ーザーへ直送)するまでを「構外物流」と呼 び、これについては「物流センター」が一元 的に管理する。
どこのSPにどれだけ在庫を 持つかの判断や輸送計画の立案も「物流セン ター」で行うという体制だった。
一方、三井系の三工場では出荷指示を受け てからユーザーへ製品を届けるまでをすべて MCBが、工場の物流担当者として管理して いた。
いわば工場ごと、あるいは事業部ごと の縦割りで物流管理が行われていた。
目まぐ るしい事業再編に物流体制や業務内容の統合 が追いつかず、工場ごとの縦割り体制が継続 していたのだ。
“なぜ出光方式なのだ” これを整理するためプライムは〇七年十二 月に組織と管理体制の統合を一気に断行した。
化するにはこの方法がベストだと訴えた。
組 織論だけでなく具体的なシナジー効果をコミ ットすることで納得してもらう必要があった」 と振り返る。
プライムは発足から〇七年度までの三年間 に生産統合などにより八〇億円の合理化を達 成した。
〇八年度から始まった中期経営計画 では、十一年度までの四年間でさらに〇七年 度予算比で五〇億円強の合理化をめざしてい る。
その六割近くを物流合理化によって達成 する計画だ。
このうち一〇数億円を業務部が 物流統合のシナジー効果としてコミットする ことで、新体制への承認を取り付けた。
同社の事実上の物流統合はここから本格的 にスタートした。
まず工場ごとに物流協力会 社の再編に乗り出した。
市原工場と姉崎工場 は同じ千葉地区のコンビナート内に隣接して いながら、それまで別々に運送会社と契約し ていた。
同じ方面のSPへ別々にトラックを 仕立てるケースもあった。
そこで二工場を一 つの地区と考え、元請け会社だけで一〇社以 上あったのを三社に集約した。
このほかの三 工場でも、契約窓口をMCB経由から直接契 約に切り替え、一社元請け体制へ移行した。
続いてSPの再編に着手した。
縦割り管理 体制の名残りで、わずか数キロしか離れてい ないところに旧三井石化、旧宇部興産、出光 のSPが立地しているケースもあった。
地区 ごとに集約を進めこれまでに九州・北海道・ 四国地区で終えた。
残る地区も〇九年度上期 MCBに委託していた三工場の物流管理業務 をプライムに移管するとともに、組織の再編 を行った。
構内と構外とで管理を分け、構内物流は生 産・技術部の管轄として各工場の製品課や生 産課が担当する。
一方、それまで工場が行っ ていた構外物流の管理は「受注センター」が 行う。
このとき同時に受注センターの名称を 「デリバリーセンター」に変更し、同センター が受注からユーザーへの配送までを一元管理 する形にした。
この統合は事実上、出光の管理方式への一 本化であり、三井側にとって物流体制の大き な変革を意味していた。
三井化学の関連会社 のなかでプライムの売り上げは最も大きい。
年 間二〇〇万トン近い生産数量があり、親会社 としてはその管理を手放すことへの不安も根 強かった。
三井化学の出身でプライム発足時にはMC Bに籍のあった渡辺晃彦業務部業務室長は、 三井の経営陣や工場など関係部署に延べ三〇 回以上も足を運び理解を求めた。
「?なぜ出光 方式なのだ?という声に対して、物流を効率 プライムポリマーの渡辺晃彦 業務部業務室長 41 JUNE 2009 バルクコンテナを使ったユーザー配送も拡大 している。
バルクコンテナとは二〇フィートコ ンテナを改良したもので、後ろ側に充填口と 排出口がある。
中に内袋をセットし、工場で の充填時にコンテナをダンプアップしてサイロ から充填口へ樹脂製品を流し込む。
ユーザー への納品時には排出口から原料サイロへホー スを使って送り出す。
輸送を大型化する手段 として九五年に旧出光石化が業界で初めて開 発した。
それまで汎用樹脂は紙袋やフレキシブルコ ンテナを使って一〇トン車で輸送するのが一 般的だった。
バルクコンテナは一度に一六ト ン積むことができるため、輸送ロットが大幅 にアップする。
ユーザー側でも、受け入れる 際の積み降ろし作業や袋を破いて製品をサイ ロに投入する作業が不要になるため効率がい い。
作業時に異物の混入するリスクがなくな るため、品質管理面でもメリットが大きい。
三井でも過去にローリー車を導入しロット アップを図ってきた。
だが中身の銘柄が変わ る際にバルクコンテナなら内袋を変えるだけで 済むのに対して、ローリー車はその都度洗浄 が必要になる。
結局、ユーザー別に専用車を 用意しなければならずコストがかさむ。
そこ で三井系の工場でもバルクコンテナシステムを 導入して輸送の大型化を推進することにした。
バルク輸送を行うには、工場のプラントで 製品をコンテナに充填するための設備が要る。
まず市原工場で設備を整えバルク輸送を開始 した。
九五年から導入している隣の姉崎工場 には、広大な敷地内に二〇〇〇台のコンテナ を収容可能なヤードが整備されている。
市原 工場で充填したコンテナもここでいっしょに 一時保管して出荷指示を待つ。
遠隔地へはコ ンテナ船で海上輸送する。
週二便で定期運航 され、豊橋・四日市・大阪・伊予・徳山・広 島に寄港している。
港のCYからはトレーラ でユーザーへ配送する。
市原に続いて昨年には大阪工場にも設備が 完成し、夏からバルクコンテナ輸送を開始し ている。
出光系の徳山工場を含めてこれまで に四工場で導入しており、バルクコンテナに よる輸送量は年間二〇万トンに近い。
大治リ ーダーは「品質や作業性の高さからバルク輸 送への顧客の要望も強く、営業支援の物流戦 略としても積極的に拡大していきたい」と意 欲的だ。
十一年までに年間三〇万トン以上の バルク化をめざしている。
渡辺室長は「物流統合を本格的に開始し て一年余りだが、見込み通り成果は上がって おり、十一年度までにコミットした目標の達 成は十分可能だ」と自信を見せる。
統合前の 売り上げ規模でも出資比率でも勝る三井側が、 出光の物流の仕組みを評価し、これを受け入 れるために自らの変革を決断したことで、目 標達成への道筋が開けた。
物流の統合はプラ イムの競争力を揺るぎないものにするための 大きな一歩となるだろう。
(フリージャーナリスト・内田三知代) をめどに終了し、全国で二〇カ所以上のSP を廃止する計画だ。
協力会社やSPの集約効果はすでに出てい るという。
市原と姉崎の二工場はいずれも三 井と出光の主力工場で、プライム製品の生産 規模も大きく、シナジー効果はとりわけ高い。
元請けの集約で二工場の製品を混載できるよ うになった。
「しかも並行してSPの集約を 行ったことで輸送をより大型化しやすくなっ た」と業務室の大治保雄ロジスティックグル ープリーダーは強調する。
バルク輸送の拡大も 集約の過程で同社は、合理化のための施策 や仕組みの統一も進めてきた。
たとえば三井 系のPE製品は従来、SPに在庫を持って受 注に応じるやり方をとってきた。
これに対し PP製品は工場内や周辺倉庫に在庫を集約し てユーザーへ直送する形態が主流となってい る。
SPは保管基地というより方面別積み替 え拠点としての性格が強い。
今後はPE製品 でも、顧客からの要望や緊急性の高いケース を除いて直送を増やしていく方針だ。
プライムポリマーの大治保雄 ロジスティックグループリー ダー
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
合併前の物流体制に大きな相違 プライムポリマー(以下ではプライム)は四 大汎用樹脂の一つポリプロピレン(PP)の生 産で国内トップのシェアを持つ。
二〇〇五年 四月に、三井化学と出光興産が両社のPPお よびポリエチレン(PE)の製品分野である ポリオレフィン事業を統合してプライムを設立 した。
資本金の六五%を三井化学が、三五% を出光興産が出資している。
プライムにとって、事業統合を活かした物流 の合理化は重点課題の一つだった。
この課題 に対して同社は、物流部門を管轄する業務部 を中心に、組織や管理体制・業務の統合に取 り組んだ。
社内の体制を固めた上で協力会社 や拠点の集約による実質的な物流統合を実現 し、具体的な成果につなげる青写真を描いた。
だが一筋縄ではいかなかった。
同じ業界、 同じ事業ではあっても、統合前の物流体制に は大きな違いがあったからだ。
石油化学業界 では規模の拡大によるシナジー効果への期待 から、過去十年以上にわたって事業再編が繰 り返されてきた。
その軸の一つが三井化学だ。
同社は一九九七年一〇月に三井石油化学と 三井東圧化学の大合併によって誕生した会社 で、その後も図1の通り、同業他社との事業 統合、再編を重ねてきた。
一方、出光興産側には再編に絡んだ動きが ほとんどなかった。
同社のポリオレフィン事 業は、三井化学との統合に向けて〇四年八月 に同社が吸収合併するまで子会社の出光石油 化学が担っていた。
それ以前の目立った動き といえば、〇一年七月にトクヤマからPP事 業の営業譲渡を受けたくらい。
再編の波をかぶっていない出光では従来か らポリオレフィンの物流を一体のものとして 運営してきた。
それに対し、三井側は工場や 事業部により管理体制がまちまちだった。
事 業統合に至るまでの三井化学と出光興産の道 のりの違いが、両社のポリオレフィンの物流 体制に如実に表れていた。
物流管理の考え方 にも両社でかなりの相違があった。
プライムの物流統合プロジェクトは第一ス テップから、その壁と向き合うことになった。
まずは受注業務の統合に着手したところ、そ もそも受注業務を物流部門の管理範囲に含め るかどうかについて、両社で考え方の異なっ ていることが判明した。
出光では、注文を受けてからユーザーに商品 を届けるまでを物流管理の範疇と考えていた。
これに則って物流の組織も一本化され、「物 流センター」という部署がすべての商品の受 注、工場への出荷指示、在庫管理、輸配送指 示までを行っていた。
この体制は旧出光石油 化学時代に確立したものだ。
これに対し三井では受注業務が事業部に属 していた。
事業部が注文を受けて工場の物流 担当部門に出荷指示を出すという流れだ。
し かも事業部によって受注体制が異なっていた。
PE事業部は受注窓口を一カ所に集約してい 三井化学と出光興産のポリオレフィン事業の統合 によって05年4月に発足した。
まずは2年半余りを かけて、工場や事業部ごとに異なっていた物流の組 織や管理体制を統合。
そこから協力会社やストック ポイントの再編を本格的にスタートさせた。
2011年 度までに物流分野で十数億円のシナジー効果実現を 狙っている。
39 JUNE 2009 たが、PP事業部では各支店が受注業務を行 っていた。
議論の末、プライムでは受注業務も物流管 理に含めて一元管理する考え方に統一した。
〇 六年の五月、業務部のもとに「受注センター」 を発足。
それまで出光の「物流センター」や 三井の支店などで受注業務を担当していた社 員を同センターに所属させて、受注業務を集 約した。
続いて六月には情報システムの統合を行っ た。
三井も出光も、受注などを処理する基幹 業務システムに、同じ「SAP─R3」を導 入していたため、システムの統合は比較的ス ムーズだった。
これによってプライム製品の 受注窓口が一つになり、受注から在庫引き当 てまでの情報処理が一元化された。
物流子会社も再編に揺れ しかし、この時点では在庫を引き当てた後 の物流管理は従来のままだった。
その一本化 が統合プロジェクトの最大の難関だった。
プライムの生産拠点は、三井系が市原工場 (千葉県)と大阪工場、 宇部工場の三カ所。
出 光系が姉崎工場(千葉県)と徳島工場で計五 カ所にある。
各工場はそれぞれ広大な石油化 学コンビナートの一角を占めるかたちで立地 している。
また市原・大阪・姉崎工場ではプ ライムの製品のほかに三井や出光の基礎化学 品、先端化学品などの生産も行っている。
プライムは発足と同時に三井と出光からP EとPPの生産プラントをすべて引き継ぎ、自 社生産を開始した。
これに伴い出光系の姉崎・ 徳島工場では出荷業務を担当する部門の社員 もプライムに移籍した。
だが三井系の市原・大阪・宇部工場では三 井化学の物流を担当する部門が、そのままプ ライム製品の物流管理を担当した。
プライム 側から見ると、生産については五工場すべて が自社の管轄下にありながら、物流について は三井系の三工場だけ自社の管理下にないと いう不自然な状況だった。
当時、三井化学は三井化学物流(MCB) という子会社を持っていた。
住友化学との全 面的な事業統合を前提として〇三年七月に設 立された会社だ。
同じ時期、住友側でも住化 物流を発足させている。
事業統合に向けて両 社がそれぞれ物流子会社を設立し、本体の統 合に合わせ子会社の統合を行い、物流統合を 図るという目論見だった。
ところが、三井化学と住友化学との間で 統合比率について合意に達することができず、 全面的な事業統合は白紙に戻された。
これを 受けて、住友化学は住化物流を〇四年六月に、 親会社に吸収合併するかたちで解散した。
同 様に三井化学も〇八年一月にはMCBを吸収 合併するのだが、プライムが設立した〇五年 四月の段階では、まだ子会社として事業を継 続していた。
三井化学はMCBの設立に当たって、本社 物流部の戦略担当以外の部門、すなわち企画 図1 再編を繰り返しポリプロピレン最大手に PP 統合 (95/10) PP 統合 (97/7) PP 営業譲渡 (01/7) 合併 (97/10) 住友化学 (PE、PP) PE=ポリスチレン PP=ポリプロピレン※石油化学工業協会資料より グランドポリマー (PP) 三井化学 (PE) 三井住友 ポリオレフィン (PE、PP) PE、PP 統合 (02/4) 出光石油化学 (PE、PP) 出光興産 と合併 (04/8) 出光興産 (PE、PP) 三井化学 (PE、PP) 宇部興産 (PE、PP) 宇部興産 (PE、PP) 三井石油化学 (PE、PP) 三井東圧化学 (PP) 住友化学 (PE、PP) 出光石油化学 (PE、PP) トクヤマ (PP) 宇部丸善ポリエチレン (PE) (04/10) プライムポリマー (PE、PP) PE、PP 統合 (05/4) JUNE 2009 40 立案や工場・支店での物流管理業務をすべて MCBに移管した。
プライム発足後もこの体 制が続き、プライムの工場でもMCBが在庫 引き当て後の管理を行っていた。
その管理体制は、出光系の工場とは大きな 違いがあった。
出光系の二工場では、「構内 物流」と「構外物流」で、管理を二つに分け ていた。
製品を充填包装した後に工場内の倉 庫または工場周辺の外部倉庫へ入庫・保管す るまでが構内物流で、それぞれの工場の物流 担当者が管理する。
その後、工場から製品を各地域の中継拠点 (SP)に転送してユーザーへ配送(またはユ ーザーへ直送)するまでを「構外物流」と呼 び、これについては「物流センター」が一元 的に管理する。
どこのSPにどれだけ在庫を 持つかの判断や輸送計画の立案も「物流セン ター」で行うという体制だった。
一方、三井系の三工場では出荷指示を受け てからユーザーへ製品を届けるまでをすべて MCBが、工場の物流担当者として管理して いた。
いわば工場ごと、あるいは事業部ごと の縦割りで物流管理が行われていた。
目まぐ るしい事業再編に物流体制や業務内容の統合 が追いつかず、工場ごとの縦割り体制が継続 していたのだ。
“なぜ出光方式なのだ” これを整理するためプライムは〇七年十二 月に組織と管理体制の統合を一気に断行した。
化するにはこの方法がベストだと訴えた。
組 織論だけでなく具体的なシナジー効果をコミ ットすることで納得してもらう必要があった」 と振り返る。
プライムは発足から〇七年度までの三年間 に生産統合などにより八〇億円の合理化を達 成した。
〇八年度から始まった中期経営計画 では、十一年度までの四年間でさらに〇七年 度予算比で五〇億円強の合理化をめざしてい る。
その六割近くを物流合理化によって達成 する計画だ。
このうち一〇数億円を業務部が 物流統合のシナジー効果としてコミットする ことで、新体制への承認を取り付けた。
同社の事実上の物流統合はここから本格的 にスタートした。
まず工場ごとに物流協力会 社の再編に乗り出した。
市原工場と姉崎工場 は同じ千葉地区のコンビナート内に隣接して いながら、それまで別々に運送会社と契約し ていた。
同じ方面のSPへ別々にトラックを 仕立てるケースもあった。
そこで二工場を一 つの地区と考え、元請け会社だけで一〇社以 上あったのを三社に集約した。
このほかの三 工場でも、契約窓口をMCB経由から直接契 約に切り替え、一社元請け体制へ移行した。
続いてSPの再編に着手した。
縦割り管理 体制の名残りで、わずか数キロしか離れてい ないところに旧三井石化、旧宇部興産、出光 のSPが立地しているケースもあった。
地区 ごとに集約を進めこれまでに九州・北海道・ 四国地区で終えた。
残る地区も〇九年度上期 MCBに委託していた三工場の物流管理業務 をプライムに移管するとともに、組織の再編 を行った。
構内と構外とで管理を分け、構内物流は生 産・技術部の管轄として各工場の製品課や生 産課が担当する。
一方、それまで工場が行っ ていた構外物流の管理は「受注センター」が 行う。
このとき同時に受注センターの名称を 「デリバリーセンター」に変更し、同センター が受注からユーザーへの配送までを一元管理 する形にした。
この統合は事実上、出光の管理方式への一 本化であり、三井側にとって物流体制の大き な変革を意味していた。
三井化学の関連会社 のなかでプライムの売り上げは最も大きい。
年 間二〇〇万トン近い生産数量があり、親会社 としてはその管理を手放すことへの不安も根 強かった。
三井化学の出身でプライム発足時にはMC Bに籍のあった渡辺晃彦業務部業務室長は、 三井の経営陣や工場など関係部署に延べ三〇 回以上も足を運び理解を求めた。
「?なぜ出光 方式なのだ?という声に対して、物流を効率 プライムポリマーの渡辺晃彦 業務部業務室長 41 JUNE 2009 バルクコンテナを使ったユーザー配送も拡大 している。
バルクコンテナとは二〇フィートコ ンテナを改良したもので、後ろ側に充填口と 排出口がある。
中に内袋をセットし、工場で の充填時にコンテナをダンプアップしてサイロ から充填口へ樹脂製品を流し込む。
ユーザー への納品時には排出口から原料サイロへホー スを使って送り出す。
輸送を大型化する手段 として九五年に旧出光石化が業界で初めて開 発した。
それまで汎用樹脂は紙袋やフレキシブルコ ンテナを使って一〇トン車で輸送するのが一 般的だった。
バルクコンテナは一度に一六ト ン積むことができるため、輸送ロットが大幅 にアップする。
ユーザー側でも、受け入れる 際の積み降ろし作業や袋を破いて製品をサイ ロに投入する作業が不要になるため効率がい い。
作業時に異物の混入するリスクがなくな るため、品質管理面でもメリットが大きい。
三井でも過去にローリー車を導入しロット アップを図ってきた。
だが中身の銘柄が変わ る際にバルクコンテナなら内袋を変えるだけで 済むのに対して、ローリー車はその都度洗浄 が必要になる。
結局、ユーザー別に専用車を 用意しなければならずコストがかさむ。
そこ で三井系の工場でもバルクコンテナシステムを 導入して輸送の大型化を推進することにした。
バルク輸送を行うには、工場のプラントで 製品をコンテナに充填するための設備が要る。
まず市原工場で設備を整えバルク輸送を開始 した。
九五年から導入している隣の姉崎工場 には、広大な敷地内に二〇〇〇台のコンテナ を収容可能なヤードが整備されている。
市原 工場で充填したコンテナもここでいっしょに 一時保管して出荷指示を待つ。
遠隔地へはコ ンテナ船で海上輸送する。
週二便で定期運航 され、豊橋・四日市・大阪・伊予・徳山・広 島に寄港している。
港のCYからはトレーラ でユーザーへ配送する。
市原に続いて昨年には大阪工場にも設備が 完成し、夏からバルクコンテナ輸送を開始し ている。
出光系の徳山工場を含めてこれまで に四工場で導入しており、バルクコンテナに よる輸送量は年間二〇万トンに近い。
大治リ ーダーは「品質や作業性の高さからバルク輸 送への顧客の要望も強く、営業支援の物流戦 略としても積極的に拡大していきたい」と意 欲的だ。
十一年までに年間三〇万トン以上の バルク化をめざしている。
渡辺室長は「物流統合を本格的に開始し て一年余りだが、見込み通り成果は上がって おり、十一年度までにコミットした目標の達 成は十分可能だ」と自信を見せる。
統合前の 売り上げ規模でも出資比率でも勝る三井側が、 出光の物流の仕組みを評価し、これを受け入 れるために自らの変革を決断したことで、目 標達成への道筋が開けた。
物流の統合はプラ イムの競争力を揺るぎないものにするための 大きな一歩となるだろう。
(フリージャーナリスト・内田三知代) をめどに終了し、全国で二〇カ所以上のSP を廃止する計画だ。
協力会社やSPの集約効果はすでに出てい るという。
市原と姉崎の二工場はいずれも三 井と出光の主力工場で、プライム製品の生産 規模も大きく、シナジー効果はとりわけ高い。
元請けの集約で二工場の製品を混載できるよ うになった。
「しかも並行してSPの集約を 行ったことで輸送をより大型化しやすくなっ た」と業務室の大治保雄ロジスティックグル ープリーダーは強調する。
バルク輸送の拡大も 集約の過程で同社は、合理化のための施策 や仕組みの統一も進めてきた。
たとえば三井 系のPE製品は従来、SPに在庫を持って受 注に応じるやり方をとってきた。
これに対し PP製品は工場内や周辺倉庫に在庫を集約し てユーザーへ直送する形態が主流となってい る。
SPは保管基地というより方面別積み替 え拠点としての性格が強い。
今後はPE製品 でも、顧客からの要望や緊急性の高いケース を除いて直送を増やしていく方針だ。
プライムポリマーの大治保雄 ロジスティックグループリー ダー
