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物流不動産市場レポート
JUNE 2009 80
世界不況によるポーランド経済への打撃は
比較的小さいといわれるが、賃貸契約面積は、
前年同期比五五%の減少。 需要は、首都ワル
シャワ中心部から半径二〇キロ以内が中心で、
食品、薬品、日用品など不況に強いテナントか
らの引き合いがみられる。 賃料は、直近は横
ばいを保ったが、今後は下落傾向へとの見方
が強い。
空室率は前期の一〇%から一六%に上昇し
た。 これは不況の影響に加え、以前より計画
されていた計二三件、五〇万平米に上る新規
供給の余波でもある。 新規開発は〇八年第3
四半期をピークに〇九年後半に向けては中止・
延期の案件が増え、減少しすぎることが予想
される。
チェコ
主要物流集積地は、北・北東プラハ、西プ
ラハ、プルゼン、オストラバ、ブルノ。 中欧の
なかで最も道路網が発達しており、第二の倉
道路網の整備は不十分
四〇年以上にわたる共産主義の政策は、中
東欧州内の交通インフラ制度においても大きな
影響を残しており、一部では、西側諸国との
往来を妨げる目的で車両幅など鉄道システム規
定の違いなどを設けるなどしていた。 そのため、
道路網に関しては、二車線規模の国道は存在
するものの、国際物流に対応するハイウェイ・
ネットワークの整備は十分とはいえず、完成ま
でには、まだ数年を要す予定だ(図1)。
しかし、それに先立ち、二〇〇四年のEU
拡大を機に、コスト削減と新たな商機を求め
る西欧各地の自動車メーカーを中心とした企業
が中東欧へと製造拠点を移している。 トヨタ、
スズキ、フォルクスワーゲン、アウディ、フィ
アット、オペル、フォード他、三〇〇社を超え
る関連企業が過去一〇年間で製造拠点を移転・
開設し、中東欧は急ピッチで経済発展を実現
している。 〇八年の自動車登録数は〇三年比
二〇%の増加となり、ロシアと西欧のブリッジ
となるこの地域の物流市場も急成長している。
それにより、海外からの大手物流施設デベ
ロッパーも続々進出し、これまで存在しなかっ
たハイスペックな大型倉庫市場が誕生した。 本
稿では、中欧のなかでも開発の著しい「Tier
1」とよばれる、チェコ、ポーランド、ハンガ
リー、スロバキアに焦点をあて、〇九年第1四
半期の最新物流施設開発状況と、賃貸市場を
紹介する。
ポーランド
主要物流集積地は、ワルシャワ、カトウィツ
ェ、ブロツワフ、ウッジ、ポズナン、グダニスク。
中欧のなかでも国土、人口、倉庫市場ともに
最大だ。 道路交通網は脆弱であるが、二〇一
二年のユーロ・サッカー・チャンピオンシップ
(UEFA)に向けて道路建設を計画する動き
もある。
第24回
中 欧
EU拡大を機に大型倉庫市場が誕生
グローバル企業の製造拠点が集積
シービー・リチャードエリス グローバル・ロジスティクス・インダストリアル部 三宅昌子
四カ国の物流施設延べ床面積(平米)
および賃料相場(EUR/平米/月)
ポーランド
567万1800平米
チェコ 3.00̶4.50EUR
312万3000平米
3.30̶6.00EUR
ハンガリー
137万4000平米
3.50̶5.50EUR
95万295平米
3.50̶5.00EUR
スロバキア
81 JUNE 2009
〇平米以外では、大規模な計画はない。
空室率は一六%に上昇。 しかし、このうち
六〇%は既に契約済みで、長期的には明るい
見通し。 賃料は全体的に横ばい。 プラハ近郊
では三・五〜五ユーロ/平米、その他で三〜
四・五ユーロ/平米が相場だ。 今後も、短期的
には安定の見通し。
有望な投資先
ハンガリー
主要物流集積地は首都ブダペストを囲むよう
に東西南北に広がるが、特に南側に集中。 道
路網は過去三年間、首都周辺で急速に建設が
進んでいるが、郊外へのネットワークは未開発
だ。
需要は堅調。 〇八年第4四半期の数字では、
不況のなか新規賃貸契約面積は〇七年第1四
半期に比べても三〇%増加の八万六三〇〇平
米となった。 四カ国のなかでも、急成長中の
市場といえる。 〇八年の年間新規供給面積は、
〇七年の約二倍の三三万五〇〇〇平米となっ
た。 新規供給ラッシュに加え〇八年は大手物流
会社の倒産により空室率は〇八年末一六・四%
となったが、堅調な需要を受けて、今後は安
定していくと予測される。 倉庫デベロッパー間
の競争が激化するなかで賃料は下落が続いたが、
既に底をついた感があり、今後は安定が見込
まれる。
スロバキア
主要物流集積地は全体の九〇%近くが首都
ブラチスラバに集中。 交通網は、全土にわたり
未開発となっている。
新規賃貸契約面積は、〇八年第4四半期に
ピークに達したが、〇九年第1四半期には大
幅減少し、空室率は一〇・三%に。 賃料は横
ばいを保ったが、他国同様、デベロッパー間の
競争激化と需要の減少で賃料は今後下落傾向
に向かうと予測される。
工業生産高は〇八年末から二七%の大幅な
減少。 中欧全体的にいえる事ではあるが、特
にスロバキアはGDPに対する輸出比率が約八
〇%と非常に高い。 そのうち自動車関連が多
くを占め、人口一人あたりの自動車生産数は
世界一となっている。 今後、不況の煽りが懸
念される。
しかし、同時に〇四年以降高い経済成長
率を保ち、生活水準も引き続き上昇してきた。
格付け機関のフィッチ調べでは、〇九年第1四
半期のスロバキアは欧州全体のなかで、今後の
経済安定を測る指標で最優良の+Aランクとな
った。
投資市場
四カ国のうち、ポーランドが全投資市場の約
半分を占める。 〇八年投資額は前年比八%増
の一億四四〇〇万ユーロとなっている。 主要デ
ベロッパーは、全ての国で米系大手のプロロジ
スがトップ、次いでパナトーニ、セグロ、AI
Gリンカーン、ピナクル、バラド、グッドマン、
フューチャーリアル、ユーロポリス、アバロン等
が優勢。 最近ではローカルのMLPやBIK等
が参入している。 賃料も若干下落傾向となった
が、インフレ率も下がり、長期的に今後の経済
成長が見込まれるこの地域は、投資家にとって
はまだ魅力的な進出先であるといえる。
庫市場である。
不況の影響で、賃貸契約が計一六件、八万
二八〇〇平米と過去三年間の同時期平均に比
べ五〇%以上の減少。 〇六年第1四半期以来
最低の数字となった。 新規開発は、〇九年第
1四半期に計一六棟、二四万三六〇〇平米で、
過去三年の四半期平均一六万三〇〇〇平米を
大きく超え、市場の総延床面積は三〇〇万平
米に達した。 しかし、これらは不況が深刻化
する以前に計画されていたもので、〇九年後
半にむけては現在既に建設中の一五万八〇〇
ロシア
ベラルーシ
ウクライナ
ポーランド
ドイツ
チェコ
オーストリア
ハンガリー
ルーマニア
Warsaw̶Belarus
border,est.2014
Gdansk̶Ostrava,
est.2013
Cracow̶Ukrainian
border,est.2013
Budapest̶Maribor,
est.2012
Dresden̶Suljivice,
est.2010
Strykow̶Warsaw
border,est.2010
Lipnik̶Ostrava,
est.2010
Gorlitz̶Boleslawiec
est.2010
German border̶Nowy
Tornysyi,est.2010
Gdansk̶Nowy
Marzy,est.2008
Bratislava̶Kosice,
Amberg̶Wernberg est.2010
est.2008
Gdansk
Lodz
Warsaw
Bratislava
Ostrava
Prague Cracow Rzeszow
Poznan
Brno Zllina
Maribor
Wernberg Szekesfehervar
Gorlitz Legnica
Amberg
Kosice
Budapest
図1 中欧のハイウェイ計画地図
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