ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年7号
特集
市場調査 半年で募集賃料は6.4%下落した

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2009  22 半年で募集賃料は6.4%下落した  リーマンショック以降、首都圏の物流施設マーケット は供給過多が顕著になっている。
オーナーサイドが空室 解消を優先した結果、募集賃料はこの半年で6. 4%下落 した。
中長期的に見れば現在の水準は底値である可能性 が高い。
テナントにとっては有利な条件で長期契約を獲 得するチャンスだ。
空室率は一九%まで上昇か  首都圏における物流施設の現マーケットは、テナ ントにとって中長期の契約を締結する有利な局面だ と判断している。
本稿ではその判断に至った根拠を 示していきたい。
ポイントは以下の三点だ。
?現状の賃料相場は下落基調であり、ボトムに近づ いている。
?オーナーは空室消化を優先する傾向にある。
?二〇一〇年には需給バランスは改善する可能性が 高い。
 図1は首都圏の中大型クラスの物流施設を対象と した募集賃料の推移だ。
〇八年七月以降、下落の一 途を辿っている。
直近の〇九年四月には四二一〇円 /坪まで落ち込んでいる。
募集賃料と成約賃料の乖 離幅も拡大している。
物件によっては数カ月分の賃 料を無料にするフリーレントが発生しているケースも あるようだ。
 主要エリアの実勢の賃料相場はリストラで工場閉 鎖が相次いだ〇一年から〇二年の頃と同水準にまで 下落している。
当時も中小倉庫を中心に空き物件が 目立ったが、現時点との大きな相違点として大型物 件の存在が挙げられる。
大規模な空室が各地に出て いるうえ、これから竣工を迎える大型施設も少なく ない。
 近く募集賃料は反転に向かうのか、それともしば らく一進一退が続くのか。
それを予測する上で、市 場競争力の高い大型物流施設の需給バランスが重要 な判断材料になる。
図2は、大型物流施設を対象 とした首都圏の需給バランスの推移である。
直近の 〇九年四月時点の空室率は一四・五%と高止まりし ている。
 一方、テナントが実際に利用する稼働面積をみ ると、〇八年七月の三六四・八万平方メートルから 〇九年四月には四三〇・一万平方メートルとなり、 九カ月間で六五・三万平方メートルも増加している。
最近でもコストコ・ホールセール・ジャパンがプロロ ジスパーク市川(千葉県市川市塩浜)へ、TNTエ クスプレスがAMB新木場ディストリビューションセ ンター(東京都江東区新木場)へ新規入居するなど、 市場競争力の高い施設が需要を吸引している点は見 逃せない。
 首都圏の大型物件に限れば、不景気による物流拠 点の閉鎖や縮小によって空室が増加しているわけで はない。
新設物件の竣工が新たな需要を喚起する一 方で、マクロ的には供給過剰になっていることから、 空室率が高止まりしているというのが実情であろう。
 次に空室率を押し上げた主要因である新規供給 のボリュームについて確認する。
図3は首都圏の 大型物流施設の新規供給量の推移である。
〇七年 に九三・三万平方メートルだったものが〇八年には 一三一・一万平方メートルとピークを迎えている。
今後の見通しとしては、〇九年は昨年の半分以下 で六一・八万平方メートル、一〇年は更に減少し 四四・五万平方メートルと予想される。
 今後は新規供給が抑制されるため、需給バランス の大幅な悪化は考えにくい。
〇九年末の空室率の悪 化は一六〜一九%まで上昇するものの、一〇年には 改善に向かうと予測している。
 図4は〇四年から一〇年までの需要と供給の関係 を示したイメージ図だ。
〇四年から〇七年の間は、 新規供給の拡大に合わせて新規需要も喚起され、順 調に市場拡大が続いた時期である。
〇八年も新規供 給は拡大を続けたが、景気悪化から新規需要が奮わ 曽田貫一 一五不動産情報サービス 代表 1975年生まれ。
99年、不動産調査会社 である生駒データサービスシステム( 現 シービー・リチャードエリス総合研究所) へ入社し、物流部門の調査業務を担当。
2007年、物流施設や工場など、工業用 不動産に特化した独立系の不動産調査会 社、一五不動産情報サービスを設立。
独 自に構築したデータベースを基に、物流不 動産や工業団地などの市場分析や各種調 査業務を行っている。
http://www.ichigo-re.co.jp 保管費 減額交渉の好機到来市場調査 特 集 すぐ効くコスト削減 23  JULY 2009 なかった。
これに対して〇九年は新規供給が大幅に 抑制されることから、需要と供給が釣り合うライン に近づいてくる。
一〇年はさらに供給が減少するこ とから、需要が供給を上回ることも十分に考えられる。
借り手優位のうちに手を打て  賃貸マーケットの交渉では、即入居可能な空室だ けでなく、今後の新規供給(空室発生)も織り込ま れる。
現状は高止まりする空室率を背景に、借り手 優位のマーケットとなっているが、今後は需給バラン スの見通しを悪化させる材料が新たに出てくる可能 性は小さい。
 市場見通しとして、需給バランスが改善する期待 感が膨らめば、賃料交渉の主導権もオーナーサイド に戻る可能性がある。
 とはいえ、現在は間違いなく借り手市場。
オーナー は空室消化を優先する姿勢を強めている。
テナント サイドには好材料である。
 以前は倉庫業者や物流業者が自社物件の余剰ス ペースを外部へ貸し出すことが主流だったため、賃 料を大幅に下げるケースは限られていたが、現在では、 大型の物流倉庫に関しては不動産のプロ(不動産ディ ベロッパー、不動産投資ファンドなど)が所有・運 営する物件が増えている。
 周知の通り、賃貸マーケットが成熟したオフィス ビルではテナントが決まらなければ、賃料を引き下げ ることは半ば当然である。
物流セクターでもテナント を獲得するために、様々なリーシング戦略を練るオー ナーが増えており、賃料の再検討も当然ながら俎上 には上がっている。
 また、空室物件のなかには、ニューシティコーポレー ションが開発し、先ごろ運用主体が変更された﹁横 浜ロジスティクスパーク(横浜市鶴見区大黒町)﹂の ように、オーナーチェンジをきっかけにリーシング戦 略を見直し、物件の潜在力を引き出す例もある。
も ちろん、対象物件の市場競争力によっても戦略は異 なるが、空室を放置せず積極的に動くオーナーが増 えていることは間違いない。
 加えて、契約期間についてもテナントとして工夫 の余地がある。
一般に不動産ディベロッパーが開発 した大型物流施設は、契約期間が長期に及ぶケース が多い。
テナントの入れ替えを前提とするマルチテナ ント型物流施設でも、定期借家契約で五年程度の契 約期間が通常。
現行は賃料が下落トレンドにあるた め、オーナーサイドとしては定期借家契約の期間を 長期化して、賃料相場の下落の影響を回避しようと する傾向がある。
 この場合の契約交渉では、賃料水準の反転時期の 見極めが重要となる。
ボトムに近い賃料で長期契約 を獲得できれば、テナントとしては中長期にわたって 競合他社に比し有利な物流体制を構築できる。
 現在、オーナーサイドはテナント確保のために、 積極的なリーシング活動を展開するとともに、契約 交渉においても柔軟な姿勢を示している。
賃料は下 落トレンドにあり、 候補物件も多い。
 テナントにとっ ては、使い勝手の 良い施設を利用し た物流効率化、競 合他社との差異化 を進めるまたとな いチャンスと言え る。
7,500 6,500 5,500 4,500 3,500 2,500 4,510 4,500 08年7月 (N=208) (円/坪) 中央値 (千?) 空室面積(左軸) 稼働面積(左軸) (%) 08年10月 (N=214) 09年1月 (N=241) 09年4月 (N=303) 09年末10年末 6,000 4,000 2,000 0 20 18 16 14 12 10 08年7月08年10月09年1月09年4月 4,410 4,210 1,500 1,000 500 0 250 54 450 630 618 445 933 03年04年05年06年07年08年09年10年 (竣工年) (千?) 図1 募集賃料の推移図2 首都圏の需給バランス図3 首都圏の新規供給の推移 出所:一五不動産情報サービス 算出基準:首都圏(一都三県)内で募集面積1,000?以 上の賃貸物流施設を対象に、個別の物流施設の坪あた り賃料単価を把握し、全サンプルの真ん中に位置する中 央値を算出した。
なお、中央の上下にある線は全サンプ ルの上位10%と下位10%を結んでおり、サンプルの散ら ばり具合を示している。
出所:一五不動産情報サービス 調査対象基準:首都圏に所在する延べ床 面積もしくは敷地面積が5000?以上の賃 貸型物流施設(2009年4月時点:144棟) 出所:一五不動産情報サービス 調査対象基準:首都圏に所在する延べ床面積もしくは敷地面 積が5000?以上の賃貸型物流施設(2009年4月時点:144棟) 留意事項:竣工時期が未定の開発物件が70万?弱ある。
これ らの物件の開発次第で需給バランスは大きく変化する。
523 674 707 727 12.5 15.1 14.5 14.5 3,648 3,790 4,156 4,301 空室率(右軸) 大幅に減少 供給ピーク 1,311 2004 2005 2006 2007 2008 2010 2009 図4 需要と供給の関係 縮小 需要>供給 需要<供給 拡大 縮小拡大 出所:一五不動産情報サービス 《新規供給》 《新規需要》

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