ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年7号
特集
第4部 国際物流 知らないとボラれる

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JULY 2009  26  国際輸送の運賃相場と基礎知識  国際輸送運賃は海上貨物、航空貨物とも荷主と キャリア・フォワーダーとの相対(あいたい)交 渉で決まる。
かつての海上輸送は各航路の配船船 社が加盟する海運(運賃)同盟のタリフ、航空運 賃は航空会社の業界団体、IATA(国際航空運 送協会)の定めた運賃に基づく定価輸送だったが、 現在ではこれらのカルテル運賃の拘束力はなくな り、実勢運賃での輸送が定着している。
 運賃契約の期間はスポットから数カ月、半年、 数年までさまざま。
市況が上昇基調にある時は、 半年や一年、複数年の長期契約が荷主にとって有 利になる。
下落基調はその逆。
しかし、大手荷主 の日本発では年間経費を安定させるため、半年ま たは一年で固定するケースが多い。
 三月決算の企業であれば、五月頃に行われる米 国向けの海上輸送契約を除いて四月または一〇月 に契約を更改するため、その数カ月前から交渉が 始まる。
特に決まった期間を定めず、輸送業者を 起用している場合は都度、市況をにらみながら契 約期間と運賃を交渉することになる。
海上運賃──欧米航路で大幅下落  船会社の海上運賃は、ベースレート(本体運賃) と各種サーチャージで構成される。
 サーチャージは航路によって名称が異なるが、 BAF(バンカー・アドジャストメント・ファク ター:燃油調整料)、CAF(カレンシー・アド ジャストメント・ファクター:通貨変動調整料)、 THC(ターミナル・ハンドリング・チャージ: 港湾のターミナル内の荷役料金)、PSS(ピーク シーズン・サーチャージ:繁忙期の割増料金)な どがある。
このほか、航路特有のサーチャージが かかることもある。
 各サーチャージの金額は北米、アジア域内航路 は海運同盟や運賃安定化協定が定めたガイドライ ンの価格にほぼ揃っているが、欧州航路では各船 社でバラツキが出ている。
欧州航路は外航定期コ ンテナ航路に対する独占禁止法の適用除外制度が 廃止され、海運同盟が昨年解体されためだ。
 荷主やフォワーダー(船社にとっては荷主)に は、すべてのサーチャージを支払う義務はない。
諸チャージ込みのオールインレートや一部のサー チャージ込みのレートで契約することも可能で、 そこは交渉次第だ。
 荷動きの悪化に合わせて運賃は急降下してい る。
欧州向けでは一時期、中国発で本体運賃ゼロ、  グローバル化が進んだことで、これまで国内だけを 見ていれば良かった物流部門も国際物流と無縁では いられなくなってきた。
トラック一辺倒の管理とは全 く異なる知識とテクニックが求められている。
キャッ チアップしないと足元を見られる。
国際物流 知らないとボラれる 1,600,000 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 2006 年 1月 3月 5月 7月 9月 11 月 2007 年 1月 3月 5月 7月 9月 11 月 2008年 1月 3月 5月 7月 9月 11 月 2009 年 単位:TEU(20フィートコンテナ) 1月 3月 アジア発米国向けコンテナ荷動き推移 出所:日本海事センター 27  JULY 2009 特 集 すぐ効くコスト削減 サーチャージも割り引く異常運賃も発生した。
日 本発欧州向けの年間契約運賃は二〇%程度下落し たという。
四半期ごとの契約更改が一般的なフォ ワーダーと船社との契約運賃は、五〇%以上値下 がりし、オールインで四〇フィートコンテナ当た り二〇〇〇ドル以下になったケースも出ている。
 米国向けでは今年、船社の運賃協議協定が、年 間契約更改のガイドラインとしてベースレートの 最低運賃を設定。
アジア発北米西岸向けで四〇フ ィートコンテナ当たり一三五〇ドル、東岸向け(オ ールウォーター)では二五〇〇ドルとした。
が、 実際にはこれを下回る水準で決着したようだ。
 大手船社の関係者によると、日本発北米西岸向 けはBAFまたは日本側のTHC込みで四〇フィ ートコンテナ当たり一〇〇〇ドルを切る水準(昨 年は二〇〇〇ドル以上)。
東岸向け(オールウォー ター)はオールインで二〇〇〇ドル台前半(同三 〇〇〇ドル台半ば)。
鉄道運賃込みの西岸経由中西 部向けは二〇〇〇ドル前後(同三五〇〇〜四〇〇 〇ドル)にまで下落した。
 日本発アジア向けは航路によって需給環境が異 なる。
船社側でも集荷に積極的な航路とそうでな い航路で分かれる。
それでも全体のトレンドとし ては「実感として変わっていない。
低位安定だ」 と大手フォワーダーはいう。
航空輸送──回復は海上貨物より後  航空輸送では荷主と航空会社が直接契約するこ とは少なく、フォワーダーによる混載輸送が一般 的だ。
フォワーダーは小口の貨物を大口に仕立て、 航空会社から安いレートを仕入れて輸送する。
 空港間の輸送で荷主がフォワーダーに支払う料 金は本体運賃とFS(燃料サーチャージ)、利用す る航空会社によってはSS(セキュリティサーチ ャージ)とシンプル。
そのほか、発地/着地で集 荷料や配達料、上屋料、通関料、取扱料などの費 用もあるが、運賃交渉では本体運賃単体を対象と 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2006 年 1月 3月 5月 7月 9月 11月 2007 年 1月 3月 5月 7月 9月 11月 2008 年 1月 3月 5月 日本発欧州向け荷動きの推移 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 2008 年 10月 11月 12月 2009 年 1月 2月 3月 4月 アジア発欧州向け荷動き推移 欧州向けの荷動きの推移。
08 年まで右肩上がりの成長を続けてきたが、昨秋を境に一変した 出所:ELAA(European Liner Affairs Association) 日本発北欧州向け 日本発地中海向け 前年同月実績 アジア発欧州向け 単位:TEU 単位:TEU 2,300 2,100 1,900 1,700 1,500 1,300 1,100 900 700 500 (US$/ TEU) アジア/欧米間のコンテナ運賃の推移 Q1 2000 アジア/米国東航(アジア発米国向け) アジア/米国西航(米国発アジア向け) 出所:Containerization International アジア/欧州西航(アジア発欧州向け) アジア/欧州東航(欧州発アジア向け) Q2 Q3 Q4 Q1 2001 Q2 Q3 Q4 Q1 2002 Q2 Q3 Q4 Q1 2003 Q2 Q3 Q4 Q1 2004 Q2 Q3 Q4 Q1 2005 Q2 Q3 Q4 Q1 2006 Q2 Q3 Q4 Q1 2007 Q2 Q3 Q4 Q1 2008 Q2 Q3 Q4 Q1 2009 (暦年) 1,400,000 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 2006 年1 月 3月 5月 7月 9月 11 月 2007 年 1月 3月 5月 7月 9月 11 月 2008 年 1月 3月 5月 7月 9月 11 月 2009 年 1月 3月 日本発航空輸出混載貨物重量の推移 出所:JAFA(航空貨物運送協会) (単位:kg) JULY 2009  28 る」と、住商グローバル・ロジスティクス国際事業 本部の狩野誠国際物流第一部長はアピールする。
 混載をやめてコンテナ単位にまとめる  海上貨物をFCLで輸送するか、LCLで輸送 するか。
もちろん重量や容積当たりの運賃はFC Lのほうが安い。
そのため通常、LCLは出荷ロッ トの小さな貨物やFCLから溢れてしまった貨物 を輸送するために使われる。
ところが、昨秋以来 の物量急減で一回当たりの出荷量が少なくなり、 現在はLCLでの出荷が増加している。
 その一方、コスト削減を目的に出荷頻度を絞っ て貨物をまとめ、FCLにシフトする荷主もみら れる。
料金面だけでなく、安全や品質の確保もF CLの方が確実だというメリットがある。
 同じ向け地の小口貨物を発地側で混載してFC Lに仕立てる手法もある。
これを十年以上前から 行っているのがサントリー・グループでイタリア からの食材・酒類の輸入販売を行う専門商社のモ ンテ物産だ。
イタリア・ラスペチアの倉庫で各地 から集めた小口貨物を混載し、出荷している。
 モンテ物産はイタリア全土のサプライヤー約八 〇社から商品を調達している。
サプライヤーが多 いほど、組み合わせの自由が利くためFCLにま とめるのも容易になる。
しかも商品ごとの正確な 需要予測と在庫率の管理を徹底。
航路やタイミン グ、サプライヤーのミニマム製造ロットなどの要 素を考慮して、FCLの利用を前提とした、発注 方法の工夫を行っている。
その結果この数年はL CLでの輸入ゼロを達成している。
生ハムなど特 殊な食材や特需が発生した場合を除いて、エアを 使って緊急輸送することもないという。
えは感じられない」(同開発センターの小早川和寛 米州・欧州開発課長)。
 「(運賃が割高で環境負荷も高い)航空輸送の荷 動きは海上貨物が戻ったあとになるだろう。
現段 階では今後については不透明。
しかし、航空会社 の便数は減少しているため、需要が回復すれば需 給が一気に引き締まる可能性もある」(郵船航空サ ービス混載部の尾畑貴昭混載管理課長)  フォワーダー VS 船会社直接契約  コンテナの海上輸送には、船会社と直接契約す る方法と、フォワーダーと契約する方法の二通り ある。
船会社と直接契約するメリットは、一定の 物量さえ確保できればフォワーダー経由で輸送す るよりも安くなること。
スケジュールの遅れなど が発生しても、最新のステータス情報をすぐに入 手できる。
 ただしフォワーダーがFCL(Full Container Load :コンテナ単位の貨物)とLCL(Less-than Container Load :コンテナ一本に満たない混載 貨物)両方を扱うのに対し、船会社はLCLの集 荷には積極的ではない。
運賃も割高になるようだ。
FCLでも本数の少ない場合はフォワーダーの方 が船社より安い運賃を提示してくることが多い。
 「さまざまなサービス・メニューを提供できるの がフォワーダーの強み。
港間だけでなく陸、海、 空の一貫輸送に 対応しているた め、急遽航空輸 送に切り替える といった柔軟な 輸送が可能にな することが多いようだ。
 交渉方法や契約期間は船社との交渉とほぼ同様 だ。
ただし貨物取扱量の多いフォワーダーほど航 空会社からの仕入れは有利で運賃競争力がある。
ある航空会社関係者は「航空会社が最大手の日本 通運に提示する運賃やキックバックはまったく違 う。
近鉄エクスプレス、郵船航空サービスを含め た大手三社とそれ以外も同様だ」と語る。
 運賃相場は下落が続いている。
アジアの近距離 線では、キログラム当たり一〇〇円を切る混載運 賃もみられた。
航空会社がスポットベースで大幅 な値下げをしたためだ。
それに乗じて新規荷主獲 得のため、「常識ではあり得ない」価格を出すフォ ワーダーも現れている。
 航空会社は便数減、機材の小型化、駐機、サー ビスの休止などスペースの供給量削減を進めてい る。
就航路線や便数には海運と異なり、規制があ るため自由度は低いが、既に一〇%以上削減され たもようだ。
「最近では大分、需給がバランスして きた」と日本通運東京航空支店国際貨物部開発セ ンターの井戸賢 次アジア・オセ アニア開発課長 と語る。
 四月の輸出混 載重量は前年同 月比四〇%減と 低調だが、減少 幅は縮小してき た。
しかし「ま だまだ貨物が戻 ったという手応 日本通運東京航空支店 国際貨物部開発センタ ーの井戸賢次アジア・オ セアニア開発課長 郵船航空サービス 混載部の尾畑貴昭 混載管理課長 住商グローバル・ロジス ティクス国際事業本部の 狩野誠国際物流第一部長 29  JULY 2009 特 集 すぐ効くコスト削減 じめ契約書に盛り込んでおくといい。
 ビッドは運賃削減効果が大きい反面、生半可な 知識とやり方ではそれ以上のものを失ってしまい かねない。
運賃だけで毎回起用業者を変更する荷 主は影でベンダー・ホッパーとのありがたく ないレッテルが貼られる。
それによって物流会社 から敬遠され、必要な投資や改善努力を放棄され てしまうようでは本末転倒だ。
 関税最適化は物流費削減より効果大  「物流費は所詮、売値の数%。
いくら削減して も知れている。
それに対してFTA(Free Trade Agreement :自由貿易協定)やEPA(Economic Partnership Agreement :経済連携協定)をうま く利用すれば売値の二〇%もの関税を場合によっ てはゼロにすることができる。
その効果は運賃や 倉庫費を削減するよりもずっと大きいのに、ほと んどの日本企業が活用できていない」と嶋正和ロ ジスティック社長は指摘する。
 
藤圍繊殖釘丕舛脇団蠅瞭鷙餞屬簔楼茣屬隆慇 を撤廃する経済協定だ。
日本は〇七年以降、アジア 各国を相手に順次
釘丕舛鯣効させている。
日本 からこれらの国に製品を輸出する際に、日本の商 工会議所から原産地証明の発給を受けることで、 輸出先での輸入関税をゼロもしくは大幅に削減す ることができる。
 もちろん日本以外の 現地法人など三国間同 士の取引では現地国の FTA/EPAが使え る。
ただし、日本から 部品を輸出してアジア システムによる電子ビッドが活用されることも少 なくない。
が、電子ビッドには数字が一人歩きす るリスクがある。
海外ではビッドの代行業者も登 場しているが、頼り過ぎれば必要なノウハウが社 内から失われてしまう恐れがある。
 契約後も環境は変化する。
サービス品質を維持 するために、定期的に物流会社のパフォーマンス を測定する。
その評価が一定の点数以下になった 場合には契約を打ち切るといった文言を、あらか  国際物流入札の手順とテクニック  貨物量のまとまる大手荷主の間では国際輸送入 札(ビッド)による協力会社の選定が常識となっ ている。
通常の相見積もりと比べて競争原理が働 きやすい。
「荷主の貨物量はロバの鼻先につるされ た人参と同じ。
多ければ多いほど、皆が全力で走 る」と大手船社関係者。
 ただし、ビッドの実施には手間もかかる。
まず 自社の出荷計画に応じて航路や路線別の貨物量予 測や前年実績などを明記した依頼書を作成。
それ を候補となる物流会社に配布する。
昨秋以来、荷主 は少しでも安い運賃を探そうと、海上輸送のビッ ドで可能な限り多くの参加者を募る傾向にある。
 アビームコンサルティング経営戦略研究センタ ーの梶田ひかるマネージャーは「出荷の航路と貨 物量予測だけしか記載されていない依頼書も多い が、必要な前提条件(下図)をすべて網羅しなけ れば効果的なビッドはできない」と指摘する。
 物流会社の能力を適正に評価することも重要 だ。
大手ITメーカー関係者は「商品の販売先に 対する物流サービスレベルの目標を明確にして、 自社の物流を詳細まで把握した上で、ビッドに参 加した各社のIT、輸送品質、ネットワーク、商 品に対する理解、対応力、コンプライアンスなど 多面的に評価して点数化する」と説明する。
 資料の作成か ら物流会社の評 価、選択までを 行う労力は相当 なものになる。
このため、情報 キャリア選定のための前提条件コンテナ輸送キャリア選定基準 ●貨物の発地、着地、量、頻度、到着日、特殊要件 などがわかっていること ●サービス目標と輸送要件(リターナブル容器の回収、積 み替え時間、納品条件など)が明確化されていること ●発送要件や目標に基づくキャリア選定の判断基準があ ること ●地理的なエリアやルート、サービス、運航スケジュール、 価格から、国籍を問わず条件に沿うキャリアを選ぶこと ●キャリア側でかかるコストの内訳(諸掛)を理解し、許容 できるコストを推計しておくこと。
これは交渉力向上のた めに必要 ●量やフロー情報も含めた入札パッケージを作成すること ●事前に作成した選定基準に基づき、キャリアの応札を 分析すること ●キャリアのパフォーマンス評価のためのシステムを構築 すること。
パフォーマンスに問題があることを示す証拠 がある場合、そのキャリアに対し問題の指摘、アドバイ ス、またはキャリアが独自で実現可能な改善ポイントな どを行う トランジット時間の信頼性/一貫性 器財の可用性 便数 料金交渉余地への期待度 オペレーション要因の質 ドア・ツー・ドアのトータル・リードタイム 輸送業者の財務安定性 紛失や汚損・破損の割合 積み込み、荷卸処理の迅速性 貨物追跡能力 サービス変更交渉余地への期待度 ドア・ツー・ドアでの総料金 スケジュールの柔軟性 キャリアの営業品質 ターミナル間移動 特殊器財 集配サービス クレーム処理 荷主における重要度 出所:Kent,J.I.,Parker, S ., "International containership carrier selection criteria: Shippers/carriers differences," International Journal of Physical Distribution & Logistics Management, vol.29, no.6, 1999, pp398-408 嶋正和ロジスティック社長 アビームコンサルティング 経営戦略研究センターの梶 田ひかるマネージャー JULY 2009  30 輸送後、陸送した場合でリードタイムは三日〜四 日。
航空輸送でも通関やデリバリーなどの時間を 食うので、ほとんど変わりはない。
それでいて 「トータルコストは航空輸送と比べて半額以下に なる」とSSEの寺内昌弘社長はアピールする。
輸送スケジュールに合わせて生産する  海上・航空 輸送のキャリ アの減便で港 や空港に在庫 が積み上がっ てしまうこと がある。
製造部門が船社や航空会社のスケジュー ル変更を知らずに出荷してしまい、物流部門は仕 方なく次の便が来るまで港で保管するためだ。
そ の結果、外資系ハイテクメーカーの中国の工場で は、港で在庫が一週間以上滞留していたという。
高額な保管料も発生していた。
 日本オラクルの新良清ライセンス事業ビジネス デベロップメントエグゼクティブは「そうした滞 留在庫を減らすためには、物流部門と最新のスケ ジュールを共有し、スケジュールに合わせて生産 計画を立てる必要がある。
一方、物流部門は生産 完了から出荷、最終仕向地までの一貫で輸送計画 を立てなければならない」と解決策を説明する。
 当然とも言える施策だが実際には海運や航空の スケジュールまで計算に入れ、生産計画を組む工 場は少ないという。
現在の環境下ではスケジュー ル変更は頻繁に起こる。
最新のスケジュールの入 手を心がけるだけで、ムダな在庫の発生を防ぐこ とができる。
進んでいるが、昨秋以降はその動きが加速してい る。
運賃よりもリードタイムが優先されるような 航空輸送のドル箱貨物でさえ、海上輸送に切り替 えられるようになってきた。
 以前なら本社が目を瞑っていたような、工場発 の緊急輸送にも厳しい目が向けられる。
「工場の生 産能力に余裕のある現状では、陳腐化リスクを承 知で各地域に在庫を積み増す傾向が強くなってい る」とアビームコンサルティング・プロセス&テ クノロジー事業部の安井正樹SCMセクター長・ プリンシパルは説明する。
 運賃と輸送リードタイムはトレードオフの関係 にある。
日中、日韓間ではRORO(ロールオン/ ロールオフ)船やフェリーを使う方法もある。
航 空輸送と海上輸送の中間的な輸送商品だ。
 その一つが、博多〜上海を二八時間・週二便で 結ぶ上海スーパーエクスプレス(SSE)。
国際輸 送用のISOコンテナ、国内鉄道輸送用の十二フ ィートコンテナからブレークバルク(コンテナ詰 めせず輸送される貨物)、完成車までさまざまな 種類の貨物をR ORO船で輸送 する。
十二フィ ートコンテナを 使えば国内鉄道 を組み合わせた 一貫輸送も可能 だ。
 上海から首都 圏への輸入を比 べると、SSE で博多まで海上 で組み立てた製品を第三国に輸出する場合にはど う扱われるのか。
あるいはFTAとEPAの両方 を結んでいる場合や別途最恵国待遇(MFN)税 率が用意されている場合には、どちらを使うほう が有利なのかなど、検討が必要な事項も多い。
 ところが協定の締結状況は日々更新されてい て、監督省庁が財務省、経産省、外務省、農水省な どに分散しているので情報が整理されていない。
そのため荷主は協力会社の港湾会社や通関会社に アドバイスを求めるが、協力会社自身がそれをフ ォローアップできていないことが珍しくない。
 「原産地証明の申請は荷主自身が処理しなけれ ばならないため、知識のある担当者が社内にいな いと結局、使われずじまい。
私の知る範囲だと、 日本企業では自動車で日産、電機ではパナソニッ クが最も進んでいる。
後は外資系に買収されたと ころぐらい」と嶋社長はいう。
 企業でこの問題を扱う部署が税負担を担当する 財務部門とオペレーションを処理する物流部門で 分かれていること。
さらには事務手続きは輸出国 側で発生するのに、関税削減の恩恵を受けるのが 輸出先側であることなどが利用の障壁になってい るようだ。
 日本企業の中では進んでいるとされるパナソニ ックでも、「現状ではロジスティクス部門が自主的 にFTA/EPAを使っているだけで、それによ って輸出先の関税を削減しても、自分たちの手柄 として評価される体制にはなっていない」(同社グ ローバルロジスティクス部門)という。
 航空輸送を海上輸送に切り替える  航空輸送から海上輸送へのシフトは数年前から SSE の 寺内昌弘社長 日本オラクルの新良清 ライセンス事業ビジネ スデベロップメントエ グゼクティブ アビームコンサルティン グ・プロセス&テクノロジ ー事業部の安井正樹SCM セクター長・プリンシパル 31  JULY 2009 特 集 すぐ効くコスト削減  富士フイルムグループの国内基幹工場は神奈川県小 田原市、南足柄市、静岡県富士宮市、榛原郡吉田町に立 地している。
輸出貨物は通常、横浜の「輸出センター」 にいったん集約してコンテナにバンニング後、京浜港 (東京港・横浜港)で船積みしている。
 輸出貨物の物流コストのうち、国内のドレージ(横持 ち)費用は海上運賃よりも高くつく。
このため、富士宮 工場と吉田南工場で生産する製品のうち、出荷先が決 まっており、定期的かつコンテナ単位で出荷するものに ついては工場で直接バンニングして最寄りの清水港で 船積みし、コストを削減している。
二〇〇八年度は清水 港を利用した直送が全体の約二五%を占めた。
 現在、富士宮工場で生産する米国市場向けの印画紙の 原紙はすべて直送だ。
「同様に、中国工場向けのレント ゲンフィルムなどにも直送を広げていきたい」と富士フ イルムロジスティックスの菊本孝二貿易業務部部長兼 FF貿易グループグループ長はいう。
さらに吉田南工場 で生産するア ルミ板でも各 国の代理店向 けに出荷ロッ トがまとまる コンテナは清 水港の利用を 推進していく。
 ただし直送 はメリットば かりとは限ら ない。
清水港は 京浜港に比べ て北米向けの 基幹航路の配船が少な い。
そのため、同じ清水 港積みでも北米への直 航便と、フィーダー船で 京浜港へ輸送して北米 航路の本船に積み替え るルートを併用してい る。
 富士フイルムホール ディングス経営企画部 物流グループの辻哲郎 担当課長は「現状ではド レージ距離の短い清水 港の利用のメリットは 大きいが、今後も海上運 賃、港湾の設備面などさ まざまなファクターを 勘案し、効率化を考えていく必要がある」と説明する。
 コンテナの積載効率向上も進めている。
米国工場向け の印画紙は以前は四〇フィートコンテナに八ロールを 積んでいたが、パレットの形状を八角形から丸形に近づ け、ストッパーなどを改良。
陸送する際の道路の重量規 制やストッパーの強度を確認するためトライアル輸送 を繰り返し、一〇ロール積みに改善した。
「二五%の積 載量の増加は大きかった。
積載効率が上がればコンテナ 本数を減らせる」と辻課長。
 〇五年からは本格的に海上・航空輸送のビッドを実施 している。
「ビッドは公平かつ競争原理が働く。
かなり の効果が上がっている。
また〇六年からは一部航路で富 士フイルムと富士ゼロックスの共同でビッドを実施し ている。
ボリュームが増えたことで交渉力も向上してい る」(辻課長)  日本発だけでなく三国間輸送の一部にもビッドの対 象を拡大している。
全航路合計で二〇社程度が参加す る。
開始当初は海上輸送は春の年一回、航空輸送は春と 秋の年二回の更改だったが、現在は航空輸送を秋の年一 回に改めた。
半年契約では季節変動のために、年度の上 期と下期で貨物量や運賃が異なる場合もあるからだ。
 バンニングを含めたハンドリング、横持ち、倉庫での 保管・荷役、通関など、基幹輸送以外の部分でも各項目 のコストを洗い出し、それぞれ利用業者を選定してい る。
辻課長は「各費用項目の実態把握とビッドによって、 サービスとその対価を適正化できた。
品質を保ちなが ら、うまくドア・ツー・ドアの輸送につなげている」と 自信を持っている。
富士フイルムの国際輸送管理 事例報告 東京都 千葉県 神奈川 長野県 静岡県 横浜 清水港 富士宮工場 吉田南工場米国へ 国内の 横持ち輸送を 削減 コンテナ内寸 11.550m(40 フィート) 出所:富士フイルムホールディングス「サステナビリティレポート2007」 ※イメージ 1.440m コンテナ内寸 11.550m(40 フィート) 1.114m 最低寸法 最低寸法 2.235m 2.235m 富士フイルムホールディ ングス経営企画部物流グ ループの辻哲郎担当課長 富士フイルムロジス ティックスの菊本孝二貿 易業務部部長兼FF貿易 グループグループ長

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