ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年7号
物流IT解剖
第28回 バンテック

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2009  52 ## 四月に持ち株会社制を廃し 事業会社として再出発   今年四月、バンテックグループは持 株ち会社制を廃止した。
純粋持ち株 会社だったバンテック・グループ・ホ ールディングス(VGH)が、傘下 で自動車部品物流を主力とするバン テック(VTC)と、航空フォワーダ ーのバンテックワールドトランスポー ト(VWT)を吸収合併。
存続会社 であるVGHをあらためてバンテック に社名変更し、事業会社がグループ の中核を担う体制へと移行した。
 多くの企業が持ち株会社制への移 行を選択する中で、これを廃止した のは同社特有の事情による。
 もともと旧VTCは日産自動車の 物流子会社だった。
ゴーン改革によ る系列の解体を受け、経営陣による 買収(MBO)という手法を使って、 〇一年に親会社から資本的に離脱し て再スタートを切った。
このとき英 国系投資ファンドの力を借りたこと もあって、早期の株式公開が既定路 線となっていた。
 しかし、この英国系投資ファンド はVTCの上場を待たずに日本市場 から撤退。
二〇〇三年八月にVTC 株を、みずほキャピタルパートナーズ などに売却した。
さらに〇四年十二 月、みずほキャピタルパートナーズは 東急電鉄系の東急エアカーゴ(後のV WT)のMBOも支援。
同社をバン テックと経営統合させるため、〇五 年三月に持ち株会社のバンテックホー ルディングス(VHD)を設立した。
 翌〇六年三月には上場準備のた め、VHDとの株式交換でVGH を設立。
この時点でVHDは中間持 ち株会社となり実質的な機能を失っ た。
代わってグループを統括しはじ めたVGHも、いわば?上場のため の器?にすぎなかった。
このため〇 七年九月に東証一部への上場を果た すと、持ち株会社としてのVGHも 一定の役割を終えた。
 以降は、自動車部品の物流を中心 とする旧VTCと、航空フォワーデ ィングの旧VWTという、異なる業 態の物流企業を統合して、総合物流 企業に脱皮させることがグループ経 営の重要なテーマとなった。
しかし、 同じ持ち株会社の傘下とはいえ、二 つの事業会社に分かれた状態のまま 組織間の壁を取り払うのは容易では なかった。
 新生バンテックで情報システム部 長を務める加松哲夫執行役員は、「当 社には、顧客にハイブリッドでシーム レスな物流を提供していくという経 営方針がある。
そのためには、とに かく一回、組織を一つにする必要が あった」と、今回の吸収合併による 三社統合の狙いを説明する。
 このターニングポイントに伴い、情 報システム部の組織も抜本的に見直 約半年でERPを立ち上げ経営基盤を刷新 5億円を投じた統合配車システムも稼働 バンテック  相次ぐM&Aによって分散していた組織を、今年4月に一本化した。
これを機に情報システムも刷新。
10億円超を投じて独SAPのERP パッケージを導入し経営基盤を再構築した。
同時に5億円弱をかけ て統合配車システムも新たに開発。
1日あたり約400台の運行車両 削減をめざしている。
情報システム部長を務める 加松哲夫執行役員 組織改革 第28 回 ◆本社組織  44人が所属(09年6月時点)。
IT戦 略や企画を担当する「イノベーション推進課」、新規シ ステムの開発業務などを担う「ソリューションシステム 課」、保守・運用を手掛ける「基幹システム課」の3 課からなる。
◆情報関連会社  なし( ※ICタグの研究と事業化 を目的としていた子会社バンテック・RFソリューショ ンズおよびLiti R&Dは、09年1月にバンテックが吸 収合併。
上記組織と融合済み) 《概要》日産自動車の系列解体を受けてMBO で独立した後、むしろ日産からの受託業 務を増やすことに成功した。
自動車部品のデータベースを中核とするノウハウが認めれ た結果。
同分野の管理システムが強み。
 財務会計などのシステムには評価の定着したパッケージを活用。
一方、TMS や WMS など事業の競争力に直結するシステムでは、リスクを承知で自社開発を志向して いる。
個社対応だったWMS の刷新が今後の課題。
 今年4 月の経営統合に伴い、経営管理の基盤としてERP を導入した。
ERP に事業 に対応するシステムを外付けしていき事業活動全体を可視化する。
年間IT コストは従 来1%弱。
IT 部門としては2%程度にしたい考え。
53  JULY 2009 面からシナジー効果を発揮するため の道を模索していた。
 今年四月に新生バンテックが誕生 すると、旧二社のIT部門を完全に 統合した。
約三カ月を費やして既存組 織の融合を図り、重 複していた機能など を整理したうえでま ったく新しい組織形 態へと作りかえた。
 六月末現在、計 四四人が所属するバ ンテックのIT部門 は三つの課で成り立 っている。
I T 戦 略や企画を担当する 「イノベーション推進 課」、新規で開発する システムの具体的な 構築業務などを担う 「ソリューションシス テム課」、そして既存 システムやハードの 保守・運用を手掛け る「基幹システム課」 である。
ICタグの 実用化をめざす企業 に所属し、M&Aで グループ入りした人 たちも、これらの部 門に組み込まれた。
カスタマイズを極力省き わずか半年でERP導入   組織を抜本的に見直す一方で、シ ステム自体の刷新も進めてきた。
柱 となっているのが経営基盤システム の再構築だ。
約一年前に、向こう三 年間で一〇億円以上を投じて独SA PのERPパッケージを導入するこ とを決めた。
すでに今年四月から会 計システムの一部が稼働しており、今 年度中に全面稼働させる計画だ。
 「組織を一つにするという非常に大 きなプロジェクトが進行している中 で、同時にシステムの刷新まででき るのかと危ぶむ声も社内にはあった。
しかし、共通のシステムを使うこと こそ、異なる組織に所属していた人 たちの意識を一つにまとめる近道に なる。
このタイミングでERPの導 入に踏み切ったのはそのためだ」と 加松執行役員は強調する。
 昨年夏から持ち株会社の中で、外 部のコンサルタントの力も借りなが ら現状分析や新たな方針の策定を進 めた。
ここでERPの採用を正式決 定すると、同一〇月から導入プロジ ェクト「V─
咤唯稗味邸廖 Vantec SAP Management Information/ Initiative Leading to Excellence) を発足させた。
文字通り「エクセレ ント企業に向かって、組織を融合し ながら笑顔でやっていこう」という 意志を込めたプロジェクトだ。
 
咤腺个裡釘劭弌ECC6.0)を採用 した理由は、基幹システムの分野で 高いシェアをもつ同ソフトを導入する ことで、標準的なIT基盤を整える 狙いが大きい。
近年のERPの進化 によって、システムのバージョンアッ プに伴うコスト負担などが軽減され たことも評価につながった。
 それにしても、昨年一〇月のプロ ジェクトの開始からわずか半年で、一 部とはいえシステムを稼働させたの は異例のスピードだ。
これをバンテッ クは、ソフトの修正をほとんどしな いことによって実現した。
 過去にERPを導入した日本企業 の多くは、自社に固有の業務プロセ スにこだわるあまり、パッケージの 設計に大幅に手を加えた。
原型をと どめないほどカスタマイズしたことが 結果として、ERPをバージョンアッ プする際に予想外のコストをベンダー に支払わなければならないという事 態を招いた。
 しかし、登場からすでに二〇年近 く経ってERPも成熟してきた。
バ ージョンアップに関するベンダーの考 え方も変化している。
導入実績を重 ねることでノウハウの蓄積も進んだ。
した。
実はこれに先立つ昨年五月、 VGHの中に「IT企画部」を新設 している。
銀行出身の加松氏の元に、 VTCとVWTの担当者が参画。
持 ち株会社を介して、中核二社がIT システム刷新 SAP ECC6.0 SAP BI/BO SAP CRM (SAP TM) 検討予 定範囲 入出金FBデータ 取引先 EDIデータ 業務システム 輸送・倉庫管理等 各業務系システム 集中配車システム V-Cubic フォワーダー系業務 システム(TACCS) 銀行 ERP導入のための「V-SMILE」プロジェクト システム連携基盤 (SAP 
丕鼻 債権管理 (外貨対応) 債務管理 (外貨対応) 購買在庫 入金管理支払 資金繰り 人事管理 給与計算 伝票入力 一般会計 (各元帳) 管理会計 予算管理 管理連結 マスタ管理 輸送管理 先行指標管理 多次元分析 営業支援 共通 TM BI/BO CRM 人事モジュール 購買モジュール 会計モジュール 決算 制度連結各社会計 固定資産 (Non-SAP) 営業部門 ワークフロー (入力サポート) SAP NetWeaver JULY 2009  54  バンテックは、ERPの導入にあ たってアビームコンサルティングをパ ートナーに据えている。
運輸・ロジ スティクスの分野で実績のある同社 の「アビーム・トランスポーテーショ ン・システム」というテンプレートを 全面的に採用したことが、カスタマ イズを最小限に抑え、導入期間を短 縮することにつながった。
 もちろん、そのためには現場の協 力が不可欠だった。
IT部門は現場 に対して、システムを手直しするこ とが将来のコスト増につながること を理解させ、業務を新システムに合 わせるよう納得してもらう必要があ った。
それでこそパッケージを採用 する意味があるという確信がIT部 門にはあった。
データベースを一元化し プッシュ型で情報発信   一〇億円以上を投じるIT投資は、 同社にとって大きな決断だった。
その 妥当性を加松執行役員は、「ITコス トというよりは、経営基盤を整備す るうえで必須の投資だった」と捉えて いる。
そこで重視されたのは「ビジネ ス・インテリジェンス(BI=データ に基づく経営支援)」機能の拡充だ。
 バンテックには自動車部品の物流で 培った高度な現場スキルがある。
かつ て東急エアカーゴとして展開していた フォワーディング事業もまた、独自の ノウハウを持っている。
しかし、こう した現場力と、経営層によるマネジメ ントを有機的につなぎ、企業活動全 体の効率を高めていく仕組みには課題 があった。
 バンテックの歴代の経営陣は、その ためのシステム基盤の充実を切望して いた。
従来のシステムには、現場で日 常的に進行していることを経営レベル の意志決定に生かすためのデータとし て?見える化?する仕組みが欠けて いた。
ERPを全社共通の経営基盤 とすることで課題の解決を図った。
 実際、現在のバンテックにとっては、 経営管理のための指標を整備し、こ れを日常業務のなかで運用していく 環境を整えることが重要な課題になっ ている。
そのための専門プロジェクト も動き出している。
 「経営管理の資料を作るにしても、 まずは何がオフィシャルなレポートで、 それにどのようなデータベースを使う のかといったことを整理する必要があ る。
BICCと呼んでいるプロジェク トで、情報システム部や経理財務部門 などがそれを検討している」と加松 執行役員は説明する。
 
稗塢門には、必要なデータベース を一元化し、これを維持管理してい くことが求められている。
場合によっ ては、経営情報を高度化するために、 現場でデータを入力してもらうケース も出てくる。
しかし現場にとってメリ ットのない入力作業を依頼しても、満 足のいく対応は期待できない。
その ために一向に情報の精度が高まらな いという悩みは、多くの先行企業に 共通するものだ。
 このような事態を回避するため、B ICCプロジェクトでは、現場でもメ リットを実感できるデータ入力の仕組 みと社内環境の整備を進めている。
こ うした活動が結果的に、システムを通 じて会社を一つにまとめていくこと にもつながると加松執行役員は見て いる。
 作成したデータを経営陣に確実に送 り届けるため、いわゆる?プッシュ 型?の情報発信も積極化する。
たと えば、経営者が自分のパソコンを立ち 上げると、自動的に必要なデータが画 面に提示される仕組みをシステムで担 保する。
従来のように担当者から報 告資料が届くのを待つのではなく、必 要な情報が、必要なタイミングで届く ようになるというわけだ。
積載率向上へ仕組み刷新 集中配車センターも新設   物流サービスの競争力を高めるため のシステム刷新も進めている。
個々の 業務に対応するシステムをERPに外 付けしていけば、経営管理の高度化 と、競争力の強化を両立できる。
そ の目玉となるのが五億円弱を投じて 新たに開発した統合配車システム「V キュービック(V- Cubic)」だ。
 パッケージを全面的に採用したER Pと違って、こちらはNECをパート ナーに全てを自社開発した。
昨年四 月から開発プロジェクトをスタートし て、すでにこの五月からトライアル稼 働している。
七月には全面的に稼働 させる計画だ。
 
屮ュービックの開発は、「集中配 車センター」の設置をベースとしてい る。
バンテックは一日あたり約三〇〇 〇台(一〇トン車換算)の車両を運行 している。
うち約八割が傭車だ。
以 業務システム 経営支援 今年4 月に持ち株会社制を廃し組織を融合した 09 年4月 バンテック(VTC)がMBOにより日産から独立。
東急エアカーゴがMBOにより東京急行電鉄か ら独立。
さらに05 年2月にバンテックワールドト ランスポート(VWT)へと社名を変更。
VTCおよびVWTの2 社が株式交換によりバン テックホールディングス(VHD)の100%子会社 になる。
VHDが株式移転によりバンテック・グループ・ ホールディングス(VGH)の100%子会社になる。
VGHが東京証券取引所市場1 部に上場。
VGHがVTCとVWTの2 社を吸収合併し持ち 株会社制を廃止。
存続会社であるVGHが、あ らためてバンテックに社名を変更。
01 年1月 04 年12月 05 年3月 07 年9月 06 年3月 55  JULY 2009 になっていたことにも問題があった。
情報システム部イノベーション推進課 の橋本淳一担当課長は、「従来は荷量 情報が紙ベースでしか出てこなかっ た。
この情報と?配車板?をつかっ て担当者がマニュアルで配車業務を手 掛けていた。
配車と同時に採算がわ かるような仕組みがなかったため、業 務の効率化には限界があった」とか つての状況を振り返る。
 新たな配車システムVキュービック は、全社で運行している車両を一元 的に管理することができる。
分散管 理していた配車業務を集約すること によって、一日あたり三、四〇〇台 の車両を削減できると見ている。
こ れによって運行コストを削減すると同 時に、積載効率の向上によるメリット などを顧客と共有していく。
 今年四月には「集中配車センター」 も本社内に開設している。
全国三〇 カ所のうち大規模に配車業務を手掛 けていた十二カ所をここに集約した。
残りは従来通り各事業所で手掛けて いるが、共通のシステムをオンライン で活用することで一元管理を実現し ている。
配車情報が統合されたこと で、顧客からの問い合わせに迅速に 対応できるようにもなった。
 ロジスティクス事業に欠かせないW MSについても、かねてより刷新を 検討してきた。
しかし事業環境の悪 化を受けて先延ばしになっている。
I T部門としては、これまでの顧客ご との個別対応から脱却して、中核に 据えられる標準的なWMSを開発し たいと考えている。
フォワーディング 分野におけるシステムの刷新と共に今 後の課題だ。
実行系システムは リスク承知で自社開発   従来のバンテックのシステム開発は、 全てを社内で手掛けようとしていた。
しかし、ERPの導入にもあらわれ ているように、現在は案件ごとに判 断して最適の開発手法を採用するスタ イルに転換している。
 経営基盤としてのシステムは、評価 の定着したパッケージを採用すればい い。
一方で、企業の競争力に直結す る業務システムについては、「リスク をとって我々の強みに変えられるよう にチャレンジしていく必要がある」と 加松執行役員。
自社開発したVキュ ービックはその典型例だ。
 過去にはITの差別化投資で痛い 目にも遭っている。
〇六年十二月、バ ンテックはICタグベンチャーで同一 〇月に経営破綻した先端情報工学研 究所(Liti)から営業権の一部譲渡を 受けている。
3PLのバンテック・R Fソリューションズと、研究開発組織 のLiti R&Dをグループ会社に抱えて ICタグの実用化をめざした。
しかし 結果として、今年一月に二社を本体 に吸収合併している。
 最新のIT技術をウォッチする姿勢 は維持するものの、先行投資や事業 活用は当面、慎重に検討していく方 針だ。
元・親会社で現在も同社の最 大の荷主である日産自動車は今、世 界同時不況に苦しんでいる。
その影 響は当然、バンテックにも及んでいる。
同社のIT部門もまたリストラによる コスト削減と無縁ではいられない。
 しかし、これまでのバンテックのI T投資は、売上高比で一%程度にす ぎず、競合他社と比べると決して高水 準ではない。
しかもコストの大半は既 存システムの保守や運用に回され、新 規開発に回る資金は限られていた。
 これに対して加松執行役員は、「も ともと当社は売上高に対する比率をI T投資の尺度としてこなかった。
現在 の環境でIT部門がコスト削減に寄与 するのは当然だが、平時であれば売 上高の二%程度はかけてもいいと考 えている。
効果的なIT投資を継続 していくためにも、自分たちでコスト を削減し、それを再投資に回してい く努力を続けていく」と述べている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 前は全国約三〇カ所の事業所でそれ ぞれに配車業務をこなしていたのだ が、事業所間の連携をとりづらいこ とが全体を最適化するうえで妨げにな っていた。
これを集中管理に切り替 えて効率を高めていこうと考えた。
 配車業務が、担当者の?職人芸? 開発方針 荷主・得意先 統合的な輸送管理を実現する「V-Cubic」システム V-Cubicシステム 他システム 電話 EDI FAX Web 車載機器 Web 実施部署 受注 保有車協力会社 車両動向・確認 配車 (1次、2次、確定・求貨求車) 受注 情報 配車 情報 売上 予測 売上 実績 実績 情報 配車計画 配車表 車両管理 台帳乗務員 管理台帳 車両別 損益 得意先別 損益 業態別 損益 部署別 損益 作業別 損益 配車表 会社損益 点呼簿 運行 指示書 運行 実績 運行 依頼書 運行 実績 損益予測 (N-1日、N日) 経理・購買 システム 人事システム (勤怠・給与) 他システム 請求実績 売上 予測 損益予測 (N+2日) 納入 実績 損益実績 ( 当月) 請求 実績 実際 原価

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