ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年8号
特集
第3部 議員が語る物流政策の争点「民主党は説明責任を果たしていない」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

元凶は官僚への政策丸投げ ──民主党への政権交代の機運が高まっています。
 「確かに各地方選挙の結果を見る限り、自民党の推 す候補者はいずれも厳しい結果を突きつけられている。
私の地元である奈良県の広陵町長選でも自民推薦候 補が敗れました。
厳しい状況ではありますが、これ がそのまま国政選挙に直結するとは限りません。
我々 は絶対に大丈夫、絶対に勝つんだという強い意気込 みで、来たるべき総選挙に備えます」  「民主党は確かに聞こえの良い政策を掲げています が、本当にそれが実現可能かどうかを問いたい。
ガ ソリンの暫定税率の撤廃や、月二万六〇〇〇円の子 供手当てなどを声高に叫んでいますが、財源はどう するのか。
一向に具体策が出てこない。
また、鳩山 代表の?故人?献金問題、小沢代表代行の違法献金 問題、石井一副代表の不正郵便問題なども十分な説 明責任が果たされたとは考えていません。
国民は冷 静になって見極めて欲しい」  「もちろん自民党もこのままで良いわけはありませ ん。
是正すべき所は多々ある。
私が長年いたビジネス の世界と比べると与野党問わず今の政治家の質は十分 ではないと言わざるを得ない。
このままでは政治が国 民に愛想を尽かされてしまう。
?政治家の質?という 根本的なところから見直す必要があります」 ──縦割り行政にも一向にメスが入りません。
 「統治機構改革による?脱・霞ヶ関?は私にとって も大きな政治テーマですが、縦割り行政の根本には政 治家による官僚への丸投げがあります。
本来は政治 家が政策のグランドデザインを描き、官僚を振り付け ていくのがあるべき姿です。
しかし残念ながら、グラ ンドデザインまで官僚に任せてしまっている。
政治主 導で進めて然るべきです。
そのためには政治家はもっ と理論武装しなくてはならない。
そうしなければ縦 割り行政にメスを入れることはできません。
アメリカ のように政治家が直轄のシンクタンクを持って活用す るというのも一つの手法だと考えています」 ──物流政策に関しても必要とは思えない地方港や地 方空港が増え続けている。
戦略性がありません。
 「本来、その地域にインフラが必要かどうかを判断 するのは、地元の知事であり県会議員の皆さんです。
地元の国会議員が旗を振るから歪みが生じてしまう。
だから我々は地方分権を唱えているのです。
地方の ことは、そこに住んでいる人の方が適正な判断ができ る。
ごく当たり前の理論です」 ──地方分権にしたら、それこそ地域エゴが出て不必 要なインフラが増えるのでは?  「全体的な国家戦略を描くのはあくまでも国の役割 です。
外交や財源分配などは中央が決め、地元の具 体的な施策は地方で行うのがあるべき姿です」  「民主党も地方分権を掲げていますが、自民党との 違いは?道州制?です。
自民党は国の下に道州があ り、その下に地方がある三層構造。
国と地方の間に 道州を咬ませることにより、大局的な判断もできる ようになる。
これに対し、民主党は国の下に地方が ぶら下がる二層構造です」 ──自動車産業の苦境をバンテックの元経営者として、 どうご覧になっていますか。
 「要因ははっきりしている。
過剰投資によるもので す。
米国や欧州各国での増産投資・設備投資を加速 しすぎた。
もちろん企業は利益を追求する団体だから、 攻める時は攻めるべきです。
しかし、経済環境の先 読みを誤ってしまった。
一九九〇年代のバブル崩壊で 一番大きなダメージを被ったのは日産でしたが、今回 「民主党は説明責任を果たしていない」 AUGUST 2009  20  民主党の公約は財源の裏付けを欠いている。
具 体策は一向に出てこない。
代表や副代表など最高 幹部の疑惑に対しても十分な説明責任を果たしてい ない。
冷静に評価すれば、民主党に勝たせること が国益にならないのは明らかだ。
奥野信亮 自民党衆議院議員(元バンテックCEO) 第 3 部 議員が語る物流政策の争点 政治と物流──荷主主導に舵を切れ の大恐慌ではトヨタが最も深刻です」  「ただし、良いモノを作っていれば、いずれは売れ 始めます。
トヨタのプリウスに代表されるように、既 にその兆候は現れ始めている。
トヨタは経済環境の先 読みには失敗した。
しかし同時に環境問題の世界的 な高まりを受けて、ハイブリッドカーに先行投資して いた。
これが結果的に命綱になっている。
日産もエコ カーの開発を進めていますが、ゴーン政権の下で選択 したのはハイブリッドではなく電気自動車です。
これ が正解かどうかは歴史の判断を待たなければなりませ んが、少なくとも現在はトヨタほど利益を享受できて いない。
電気自動車の開発・実用化にはもう少し時 間がかかる」 ──突発的なリーマンショックを予測するのは不可能 だったのでは。
 「しかしサブプライム問題など前触れはありました。
エコノミストや学者は早くから警鐘を鳴らしていまし た。
それでも経営者はブレーキを踏むことができな かった。
構図としては九〇年代のバブル崩壊とまった く同じです」 郵政には自由に経営させろ ──米国では大恐慌を受けて規制緩和が見直されて います。
日本でも規制緩和の流れに大きな揺り戻しが 起きている。
 「自国の産業を守るには、保護主義に回帰するのが 一番手っ取り早いのは確かです。
しかし、そんなこと をするべきではありません。
規制緩和は推し進める べきだというのが私の持論です。
ただ、これまでの 規制緩和のスピードが速すぎたことは否めません。
特 に小泉政権以来、加速度的に規制緩和・民営化が進 みましたが、ここにきて国民がついて来られなくなっ ている。
最も顕著に表れているのが、政策投資銀行 の件でしょう。
完全民営化が白紙に戻されたのは記憶 に新しい」  「かんぽの宿の問題も同様です。
郵政民営化は当時、 熱狂をもって国民に迎えられましたが、いざ自由に商 売をさせると『待った』がかかる。
『二四〇〇億円で 作ったものを、たった一〇九億円で売却するのはお かしい』という。
しかし、経営の常識からすれば何 もおかしいことはない。
既存従業員の雇用を維持す ることまでセットなのであれば、それくらいの値段に しかならない。
そもそも何故、二四〇〇億円も投資 してあんなものを作ってしまったのかが問題なのです。
しかし、そうした正論が受け入れられない」 ──民主党は郵政民営化の見直しを掲げていますが、 自民党の対応は。
 「?見直し?という旗を振るのではなく、今言った ようなスピードの調整を含め、様々な検討をしていく 必要があります。
もし、これまでの経緯に間違いが あると判断すれば、その段階で変えれば良い。
一般 企業なら一度下した決定を見直したり、軌道修正す るというのは当たり前の話です。
政治の世界でも同様 ではないでしょうか」 ──郵政四事業のうち、郵便事業の課題が特に大き いように思えます。
どう改革するべきでしょう。
 「民営化したのだから、利益が最大化すると判断し たことを何でもやれば良いのです。
ドイツポストのよ うにキャリアを傘下に収めても良い。
発想を変えない といけない。
もし私が郵政の社長ならドラスティック に事業を展開します。
もちろんユニバーサルサービス は維持しなくてはならない。
経営努力をして、いかに 安いコストで、従来通りのサービスを実現するかを考 える必要があります」 21  AUGUST 2009 奥野信亮(おくの・しんすけ) 1944年、奈良 県生まれ。
父は文部大臣、法務大臣などを歴任し た奥野誠亮。
慶応大学卒業後、日産自動車に入 社。
販売促進部長などを経て、日産グループのバ ンテックの代表取締役社長に就任、MBOによって 同社を日産系列から独立させる。
2003年、衆院 選に奈良県第三選挙区より出馬し初当選。
05年 再選。
法務大臣政務官などを歴任。
PROFILE

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