2009年8月号
特集
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第4部 新・総合物流施策大綱を読む
新・総合物流施策大綱を読む
政府は7 月14 日、総合物流施策大綱(2009-13)を
閣議決定した。
向こう5年間の物流行政の基本方針を示 したものだ。
国交省、経産省、財務省などの各省は大綱 の内容に則って関連政策を進める義務を負う。
その全文 を掲載し、本誌が独自の注釈を加えた。
はじめに 政府は、平成 17 年 11 月に「総合物流施策大綱(2005- 2009)」(以下「 17 年大綱」という。
)を策定し、平成 21 年を目標年次として、物流分野において「スピー ディでシームレスかつ低廉な国際・国内一体となった 物流の実現」、「「グリーン物流」など効率的で環境に やさしい物流の実現」、「ディマンドサイドを重視した 効率的物流システムの実現」、「国民生活の安全・安心 を支える物流システムの実現」の4つの目標【本誌注1】 を掲げて、総合的な物流施策を推進してきた。
その結 果、諸施策の効果が発揮されつつあるが、更なる対応 が必要な課題も多数残されている。
一方、 17 年大綱策定以降、経済構造の一層のグロー バル化、京都議定書第一約束期間の開始を契機とした 地球温暖化対策の必要性の増大、貨物セキュリティ確 保の要請の高まり等、物流をめぐる環境には様々な変 化が生じており、平成 20 年秋以降の世界的な経済危機 の影響を見極めつつ、これらから生ずる課題への迅速 かつ適確な対応が求められている。
このため、 17 年大綱を見直し、新たな総合物流施策 大綱を策定することにより、諸施策の総合的・一体的 な推進を図る。
17年 大 綱 に 掲 げ た 目 標 の 達 成 状 況 と 新たな総合物流施策大綱策定の必要性 1 17 年大綱に掲げた目標の達成状況 17 年大綱は、物流分野において「スピーディでシー ムレスかつ低廉な国際・国内一体となった物流の実現」、 「「グリーン物流」など効率的で環境にやさしい物流の 実現」、「ディマンドサイドを重視した効率的物流シス テムの実現」、「国民生活の安全・安心を支える物流シ ステムの実現」の4つの目標を掲げたが、現時点にお 【本誌注1】九七年に策定された最初の大綱では、 「基盤整備」「規制緩和」「物流高度化」の三つ が柱だった。
このうち規制緩和については、荷 主側に立つ経産省と物流事業者側の国交省でス タンスに大きな違いがあった。
「 17 年大綱」に おいても「ディマンドサイドの重視」という言 葉で荷主側のニーズが強調されていた。
しかし本大綱では、規制緩和やディマンドサ イドの重視などの表現は影を潜めている。
それ に変わって新たに強調されているのが、グロー バル・サプライチェーンというキーワードだ。
経 産省の視点は、物流事業者および物流業界の変 革からプロセス改革にシフトしている。
一方の国交省は、物流事業者のオペレーショ ン負担の軽減に力を入れている。
環境負荷軽減 を旗印として、従来のディマンドサイド重視を 修正し、多頻度小口化や納品リードタイムの短 縮などの行き過ぎに歯止めを掛けたいという意 図がうかがえる。
AUGUST 2009 22 第1 第4 部 脚 注 《細字は原注。
太字が本誌注釈》 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 【本誌注2】港湾局の資料によると、香港、シ ンガポール、上海、釜山のアジア主要港に寄港 する基幹航路の便数が増加もしくは横ばいであ るのに対し、東京、横浜、名古屋、大阪、神 戸はいずれも長期的に減少する傾向にある。
九五年には週当たり四二便だった神戸の寄港 数は〇八年に一七便に減少。
現在日本で最も寄 港数の多い東京でも便数は二一便に過ぎず、香 港の七〇便、上海五八便、釜山四五便、シン ガポール四四便の半分以下となっている。
基幹航路の寄港がなくなると日本発の貨物を アジアの主要港にいったん持ち込んで積み替え なければならなくなる。
それだけコストとリー ドタイムがかさみ、荷主企業の競争力が落ちて しまう。
いて、その達成状況をみると、おおむね以下のとおり である。
(1)「スピーディでシームレスかつ低廉な 国際・国内一体となった物流の実現」について 経済構造のグローバル化が進む中、我が国の企業が 国内を含むアジア市場を一体的にとらえ、調達、製造、 販売の面で国際・国内の区別なく最適地での生産や販 売を目指しており、極力無駄な在庫を持たないサプラ イチェーンマネジメント(SCM〈※1〉)の徹底をグロー バル規模で進めている。
また、アジア地域との間の物 流は、距離的にみても国内物流と大差ない圏域で行わ れていることから、国内輸送体系の効率化等により、 一層スピーディでシームレスかつ低廉な物流が求めら れている。
17 年大綱では、こうした認識から、この目 標を掲げ、諸施策を進めてきた。
?国際拠点港湾・空港の機能向上 港湾については、スーパー中枢港湾の重点的整備及 び運営の効率化のため、東京港・横浜港で水深 16 m の大水深コンテナバースを新規着工するなどの機能強 化が進められ、港湾コスト・リードタイムは一定程度 改善してきている。
しかしながら、我が国の外貿コン テナ取扱貨物量は増大しているものの、コンテナ船の 大型化やアジア諸国の港湾における貨物取扱量の増大 により、我が国においては、欧米との長距離基幹航 路の輸送サービス頻度が減少している。
【本誌注2】こ のため、欧米基幹航路を始めとする多方面・多頻度・ ダイレクト輸送といった高質な港湾サービスの強化が 求められている。
加えて、原材料等の一括大量輸送 を目的として大型化している船舶の入港が困難な港湾 もあり、産業競争力を支えるインフラとしての機能強 化が求められている。
空港については、首都圏において、成田国際空港の 北伸事業、東京国際空港(羽田空港)の再拡張事業 を進めている。
また、関西国際空港は2本目滑走路の 供用開始により完全 24 時間運用が可能となり、中部国 際空港でも第3国際貨物上屋が竣工するなど、大都市 圏拠点空港の機能拡充が図られてきた。
しかしながら、 引き続きネットワーク拡充が求められているほか、仁 川空港等近隣諸国の主要空港が飛躍的な成長を遂げて いる中で、成田・羽田両空港間の物流円滑化を図るな ど、我が国の国際拠点空港の物流機能強化等が求めら れている。
?国際・国内の輸送モードの有機的連携による 円滑な物流ネットワークの構築 道路については、主要港湾・空港や物流拠点へのア クセスの改善、大都市における環状道路の整備等基幹 ネットワークの整備を推進してきた。
国内の海運につ いては、経済的で環境にやさしい次世代内航船(スー パーエコシップ(SES〈※2〉)の普及支援等を推進し、 鉄道については、主要幹線区間の輸送力増強のための インフラ整備等を推進してきた。
引き続き、陸海空が 一体となったサービス水準の高い交通ネットワークの構 築のため、経済のグローバル化の進展への対応、国際 競争力の一層の強化及び地域経済の発展に資する道路 ネットワークの整備、内航海運・フェリーの一層の利 用促進や競争力強化、貨物鉄道の輸送力増強や駅設備 等の近代化のための投資等が必要である。
?物流拠点施設における ロジスティクス機能〈※3〉の高度化 国際物流の高度化に資するロジスティクス・ハブの 形成のため、「流通業務の総合化及び効率化の促進に 関する法律」に基づき、社会資本と連携した物流施設 の整備及び当該施設を利用した物流の総合化・効率化 を進めるとともに、「流通業務市街地の整備に関する 法律」による流通業務団地等及び土地区画整理事業 の活用による物流施設の配置と供給にも取り組んでき た。
また、主要な港湾・空港を抱える地域に設置され ※1 サプライチェーン・マネジメント(SCM):商品 供給に関するすべての企業連鎖を統合管理し、その全体 最適化を図ること。
原材料調達から生産、販売までを一 貫したシステムとしてとらえ、消費者の購買情報を関係 者が共有し、在庫の削減、リードタイムの短縮、適時・ 適量の商品供給等の実現を目指すこと。
※2 スーパーエコシップ(SES):電気推進システム を採用し、二酸化炭素や窒素酸化物の削減および燃費の 削減に資する優れた環境性能と経済性を有する次世代内 航船。
※3 ロジスティクス機能:軍隊での兵站補給に由来す るが、調達、生産、販売等に係る物流活動全般を統合管 理し、その全体最適化を図ること。
倉庫や物流センター においても、保管のみならず、荷捌き、流通加工、在庫 管理等のサービスを提供し、荷主ニーズの高度化に対応 すること。
23 AUGUST 2009 た国際物流戦略チームの取組みにより、関西国際空港・ 上海間の深夜貨物便の定期便化や大阪湾諸港の一開港 化等が実現した。
?輸出入・港湾手続等のワンストップサービス〈※4〉・ シングルウィンドウ化〈※5〉と民間物流業務の 電子化の促進 平成 20 年 10 月に海上貨物通関情報処理システム(S ea─NACCS〈※6〉)と港湾EDI(電子データ交 換〈※7〉)を統合し、輸出入・港湾関連情報処理シス テム(NACCS〈※8〉)を稼働させるとともに、申 請窓口の一本化等を行った新たなシングルウィンドウ (府省共通ポータル)が稼働した。
さらに、平成 20 年 4月から税関の臨時開庁制度について、手数料を廃止 するとともに、手続を簡素化している。
(2)「「グリーン物流」など 効率的で環境にやさしい物流の実現」について 環境負荷の小さい社会を実現するため、物流に関す る多様な関係者が連携して、地球環境問題に適切に対 応することが求められているとの認識から、 17 年大綱 では、この目標を掲げ、諸施策を進めてきた。
近年、国内貨物輸送からのCO2排出量は低減する 傾向にあるが、現在交渉中の平成 25 年(2013年) 以降の次期枠組みを見据え、今後はサプライチェーン 全体からの環境負荷を低減していくこと等、更に進ん だ取組みが求められる。
?グリーン物流パートナーシップ会議〈※9〉の活用 グリーン物流パートナーシップ会議を活用し、CO2 排出量削減のための先進的取組みや設備導入、調査研 究等、モーダルシフトを含めた様々な輸送の効率化の ための荷主と物流事業者の協働による取組みを支援し てきた。
その際、荷主及び物流事業者間でCO2排出 量削減効果を共有するため「ロジスティクス分野にお けるCO2排出量算定方法共同ガイドライン」を策定し、 活用を促してきた。
?鉄道・内航海運の機能向上 鉄道貨物の輸送力増強、機関車の省エネ化、スーパー エコシップの普及促進、内航海運・フェリー等の輸送 品質の向上、エコレールマーク〈※ 10 〉やエコシップマー ク〈※ 11 〉の活用、港湾における海上コンテナの鉄道へ の積替え施設の改善によるモーダルシフト等を推進し てきた。
?貨物自動車による環境負荷の低減等 トラックの大型化や自家用トラックから効率の良い 営業用トラックへの輸送の転換(自営転換)、自動車 単体の燃費性能向上、エコドライブ管理システム(E MS〈※ 12 〉)の導入等により、貨物自動車のCO2排 出量は平成8年をピークとして着実な減少傾向にある。
窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(PM)につい ても、自動車単体の排出ガス対策とともに、自動車N OX・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び 粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する 特別措置法)に基づく各種対策の推進、低公害車の普 及促進等により、自動車NOX・PM法の対策地域を 中心に緩やかな改善傾向がみられる。
都市内においては、道路上での荷捌き等が交通渋 滞を引き起こしており、都市内交通の円滑化や、歩 行者の安全等を確保するために、きめ細かな交通規 制の実施、荷捌き施設等の整備により、無秩序な荷 捌きによる交通渋滞の解消を進めてきた。
また、物 流業務施設等の集約的な立地誘導を行ってきた。
さ らに、環状道路の整備、交差点の立体化、開かずの 踏切の解消、信号制御の高度化等の交通流対策を行っ てきた。
このほか、地域によって異なる物流の効率化 を阻害する課題について、荷主、物流事業者、行政 機関等の多様な関係者の連携による合意形成に取り組 んできた。
※4 ワンストップサービス:複数の手続を一つの窓口 (システム)から行うことを可能とするもの。
※5 シングルウィンドウ化:複数の手続を一回の入力・ 送信で行うことを可能とするもの。
これにより、共通入 力項目の重複入力を排除することが可能となる。
※6 海上貨物通関情報処理システム(Sea─NAC CS):平成3年 10 月に稼働した、海上貨物に係る輸出 入通関業務等の税関手続およびこれに関連する民間業務 (貨物管理等)を処理する官民共同システム。
※7 港湾EDI(電子データ交換):港湾関連の申請 や届出等の行政手続の電子情報処理化を推進するため に、国土交通省、海上保安庁等が港湾管理者と協力して 開発した情報通信システム。
※8 輸出入・港湾関連情報処理システム(NACC S):輸出入等関連業務を行う者をオンラインで結び、輸 出入等関連業務およびこれに関連する民間業務(貨物管 理等)を処理する官民共同システム。
平成 20 年 10 月の海 上貨物通関情報処理システム(Sea─NACCS)の 更改において国土交通省の港湾関連手続を処理する港湾 EDIを統合し、これに伴いシステムの名称を輸出入・ 港湾関連情報処理システム(NACCS)と変更した。
*輸出入等関連業務とは、税関手続、入管手続、食品衛 生手続、検疫手続(人)、植物検疫手続、動物検疫手続、 貿易管理手続および港湾手続に関する業務。
※9 グリーン物流パートナーシップ会議:物流部門での CO2の一層の削減を図るため、荷主と物流事業者の連 携・協働により、モーダルシフト、共同輸配送、拠点集 約等、施策の幅を広げ、中小企業を含めた裾野の広い取 り組み拡大を図るため、平成 17 年4月に正式発足した会 議体。
現在、荷主、物流事業者、地方公共団体、シンク タンク、有識者等三〇〇〇を超える会員登録がある。
同 会議の下に、「政策企画委員会」、「事業推進委員会」を 設置し、本格的活動を推進。
※ 10 エコレールマーク:鉄道貨物輸送による環境負荷 低減に取り組む企業および商品を認定し、商品等にエコ レールマークを表示することを通じて鉄道を利用したモー ダルシフトのアピールを行う。
AUGUST 2009 24 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 引き続き、運輸部門全体のCO2排出量の削減に向 けた総合的取組み及び単体対策が求められる。
?ITSの推進 ドライバーに対する安全運転支援や経路選択支援等 のサービスを実施するとともに、同サービスとカーナビ、 道路交通情報通信システム(VICS〈※ 13 〉)、ETC〈※ 14 〉等の基礎的なサービスを併せて利用できる次世代車 載器の開発・普及及びそれに対応した設備の整備・活 用を図るなど、高度道路交通システム(ITS)の推 進による交通流対策の強化を図ることで、環境負荷の 低減及び利便性の向上を実現する。
?物流分野におけるエネルギー使用の合理化や 温室効果ガス排出量削減への取組みの促進 国際海運からのCO2排出量を大幅に削減する省エ ネ技術の開発・国際標準化、スーパーエコシップの普 及促進等を一体的にクールシッピングとして推進して いる。
また、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省 エネ法)により、一定規模以上の輸送事業者や荷主に 対して、省エネルギー計画の策定、エネルギー使用量 の報告義務等が課されており、荷主と物流事業者の企 業単位でのCO2排出量削減の取組みが進められてい ることから、引き続き、省エネ法による取組みを促進 するとともに、省エネ法の更なる活用について検討を 進める必要がある。
?静脈物流〈※ 15 〉システムの形成 静脈物流に関しては、静脈物流ネットワークの拠点 としてのリサイクルポート〈※ 16 〉の指定や、岸壁、ストッ クヤード〈※ 17 〉等重点的な静脈物流基盤の整備を進め てきたところであるが、更なる輸送コストの削減が課 題となっている。
引き続き、適正な処理・輸送を確保 した上で、効率的な静脈物流システムの構築を推進し ていく必要がある。
(3)「ディマンドサイドを重視した 効率的物流システムの実現」について 企業の経営姿勢が消費者等のディマンドサイドの要 望に敏感なものへと変化していることに応じ、多様な 消費者ニーズにこたえながらも交通渋滞や環境問題の 深刻化を招来しない効率的な流通・物流システムが求 められているとの認識から、この目標を掲げ、諸施策 を進めてきた。
?流通システムの標準化等 流通業界において迅速かつ効率的なサプライチェー ンマネジメントを実現するため、次世代のEDI〈※ 18 〉 標準の確立に取り組み、「流通ビジネスメッセージ標準」 を平成 20 年度に完成させた。
今後はこの標準が流通に かかわる事業者の間で速やかに普及することが期待さ れる。
(4)「国民生活の安全・安心を支える 物流システムの実現」について 米国同時多発テロ以降、物流におけるセキュリティ 対策の強化と効率化の両立が課題となっており、また、 輸送の安全確保、物流面における大規模災害発生への 対応、さらには、情報セキュリティの強化に対応する ことが求められているとの認識から、 17 年大綱では、 この目標を掲げ、諸施策を進めてきた。
?セキュリティ確保と物流効率化の両立 通関手続については、米国同時多発テロ以降、国 際貿易の安全確保と円滑化を両立させるため、貨物 のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事 業者の貨物に関する手続を迅速化・簡素化するAEO (Authorized Economic Operator)制度を推進するこ とが国際的な潮流となっている。
我が国においても、 AEO制度の対象を輸出入者、倉庫業者、通関業者、 ※ 11 エコシップマーク:海上輸送へのモーダルシフトに 貢献する荷主および物流事業者を選定し、エコシップマー クの使用を認めること等を通じて船舶を利用したモーダ ルシフトのアピールを行う。
※ 12 エコドライブ管理システム(EMS):自動車の 運行において、エコドライブを計画的かつ継続的に実施 するとともに、その運行状況について客観的評価や指導 を一体的に行う取組み。
※ 13 道路交通情報通信システム(VICS):渋滞や 交通規制等の道路交通情報を、車に搭載させたカーナビ ゲーションシステム等を通じて、画面により表示できるシ ステム。
※ 14 ETC:Electronic Toll Collection System(自 動料金収受システム)の略。
車両に設置されたETC車 載器と有料道路の料金所に設置された路側機との無線通 信により、車両を停止することなく通行料金を支払うシ ステムであり、ITS(高度道路交通システム)の一つ。
※ 15 静脈物流:循環資源(廃棄物や使用済み製品、副 産物等)を、再利用や再資源化、処分等の目的で回収・ 輸送する物流。
※ 16 リサイクルポート:循環資源を集積・運搬し、広 域的なリサイクルを促進するための拠点となる港湾。
総 合静脈物流拠点港とも呼ぶ。
※ 17 ストックヤード:循環資源を輸送する過程で、陸 上輸送と海上輸送との積み替え等の際に一時保管を行う ための施設。
※ 18 E D I : 電子データ交換( Electronic Data Interchange)。
企業間の電子的な商取引を実現するため の手段であり、企業間でオンラインにより、共通フォー マットの取引データを交換すること。
これにより受発注 情報を伝票に書き写すことなく、そのまま利用できる。
25 AUGUST 2009 運送業者及び製造業者へと順次拡大した。
また、航空貨物について、KS/RA( Known Shipper/Regulated Agent)制度〈※ 19 〉の導入や、改 定航空保安対策基準〈※ 20 〉に基づく保安対策の実施に より、高いセキュリティ・レベルの維持と物流効率化 の両立が図られることとなった。
今後ともこれらの制 度の活用を進めるためには、コンプライアンス(法令 の遵守)の確保、利用運送事業者と実運送事業者の連 携の強化等が求められる。
?輸送の安全確保等 トラックによる交通事故を防止するため、先進安全 自動車(ASV〈※ 21 〉)技術等を活用した大型トラッ クの車両安全対策、運輸安全マネジメント〈※ 22 〉の推進、 運行管理制度の徹底、監査の充実等を進めており、輸 送の安全確保への取組みを継続する必要がある。
さらに、 貨物自動車に係る交通事故防止を図る観点から、交差 点改良等、交通安全施設等の整備について、引き続き 推進していく必要がある。
また、主要な海上輸送路の安全確保については、こ れまでもマラッカ・シンガポール海峡沿岸国等の海上 取締能力の向上に対する支援や当該海峡の航行安全に 対する沿岸国への協力、さらには、ソマリア周辺海域 で近年頻発する海賊に対する取組み等を進めてきたが、 今後とも、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に 関する法律」の実施を含め官民連携して、日本関係船 舶に係る主要な海上輸送路の安全確保を図っていく必 要がある。
さらに、外航海運分野の国際競争が激化す る中、安定的な国際海上輸送の確保の核となるべき日 本船舶の減少に対応するため、海上運送法等を改正し、 いわゆるトン数標準税制〈※ 23 〉の導入等を図ったが、 今後も日本船舶等の確保を図っていく必要がある。
一方で、少子高齢化の進展に伴い、物流事業の現場 では、トラック・ドライバーや船員等の担い手が減少 しており、質の高い物流を支えるための労働力の育成・ 確保等の適切な対応が必要となっている。
?災害時の早期復旧に向けた体制整備等 大規模災害等が発生した場合の国民生活の維持や産 業活動への影響の軽減を図るため、災害に強い交通網 の確保、代替輸送の確保、災害時の道路、鉄道、港湾 等の早期復旧に向けた体制整備や業務の継続のための 計画策定等を推進し、防災・減災対策を着実に進めて いく必要がある。
?消費者ニーズを踏まえた流通システム 食の安全への消費者の関心が高まっている中、卸売 市場等における品質管理の徹底のためのコールドチェー ンシステム〈※ 24 〉の整備や産地から消費に至る一連の 品質・衛生管理水準の向上、流通機能の高度化を図る ための流通システムの整備に努める必要がある。
2 新たな総合物流施策大綱策定の必要性 これまで、総合的な物流施策に関する大綱は、その時々 の経済社会の変化に適確に対応した物流の在り方とそ の意義を明確にし、省庁間の連携を図りながら中長期 的な物流施策や物流行政の指針を体系的に分かりやす く提示することを目的として策定してきた。
今後の物 流施策の展開に当たっては、行政内部での省庁間連携 や地方公共団体との連携を更に強化することに加えて、 官民連携や民間の業種を超えた連携、さらには、広く 国民の理解と協力を得ていくことが重要である。
こう した連携・協働による広範な施策の推進のより所とし て、また、国民への情報発信を担うものとして、大綱 が果たすべき役割への要請は強まっている。
17 年大綱は、平成 21 年が目標年次となっているが、 この間の様々な経済情勢等の変化や課題を踏まえて、 新たな総合物流施策大綱を策定し、今後の物流施策や 物流行政の指針と多様な関係者間の連携の枠組みを示 す必要がある。
なお、 17 年大綱を踏まえつつ、政府としては、「貿 易手続改革プログラム」(アジア・ゲートウェイ戦略会 議)や「国際物流競争力強化のための行動計画」(国 ※ 19 KS/RA(Known Shipper/Regulated Agent) 制度:航空機に搭載する航空貨物について、ICAO (国際民間航空機関)国際標準等に基づき、高いセキュ リティ・レベルを維持しつつ、物流の円滑化を図るため、 荷主から航空機搭載まで一貫して航空貨物を保護する制 度。
この制度において、適切な保安措置が実施できる航 空貨物利用運送事業者または航空運送代理店業者を国土 交通省航空局長が「特定航空貨物利用運送事業者」また は「特定航空運送代理店業者」として認定。
※ 20 改定航空保安対策基準:米国同時多発テロ以降、 全国の空港警戒態勢を最高水準(フェーズE)に引き上 げて、厳格な保安検査(旅客検査、受託手荷物検査、航 空貨物等)を開始。
平成 17 年4月より、航空保安対策基 準を強化(フェーズEの恒久化=現行のレベル?へ移行)。
※ 21 先進安全自動車(ASV):エレクトロニクス技 術等の新技術を利用してドライバーの安全運転を支援す る装置を搭載した自動車。
※ 22 運輸安全マネジメント:平成 18 年 10 月から開始。
運輸事業者が、経営トップから現場まで一丸となって、い わゆる「PDCAサイクル」の考え方を取り入れた形で安 全管理体制を構築し、その継続的取り組みを行うととも に、事業者が構築した安全管理体制を国が評価する「運 輸安全マネジメント評価」を実施することにより、運輸 事業者の安全風土の構築、安全意識の浸透を図るもの。
※ 23 トン数標準税制:法人税等について、毎年の利益 に応じた納税額の算出に代わり、船舶のトン数に応じた 一定のみなし利益に基づいて納税額を算出する税制。
世 界の主要海運国でも同様の税制が導入されている。
※ 24 コールドチェーンシステム:生鮮食料品や冷凍食 品等について、品質保持のため、低温管理を維持したま まで輸配送するシステム。
AUGUST 2009 26 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 際物流競争力パートナーシップ会議)を策定し、我が 国における通関等の手続改革や、多数の日本企業が生 産拠点等を置くアジア諸国における物流システムの効 率化・グリーン化等を進めてきた。
【本誌注3】新たに 大綱を策定する中で、こうしたプログラム・計画や「新 経済成長戦略のフォローアップと改訂」(平成 20 年9月 19 日閣議決定)に基づき推進している内容も包含し、 より総合的・一体的な施策推進体制を確立する。
今後推進すべき 物流施策の基本的方向性 1 目標と視点 17 年大綱を策定して以降の施策の進ちょく状況、経 済社会の変化、物流を取り巻く新たな課題への対応の 必要性を踏まえ、今後、 (1)グローバル・サプライチェーンを支える効率的物 流の実現 (2)環境負荷の少ない物流の実現等 (3)安全・確実な物流の確保等 を目標とし、平成 25 年(2013年)を目標年次として、 物流施策の総合的・一体的推進を図ることとする。
その際、物流関連社会資本の整備に当たっては、我 が国財政の厳しい現況を踏まえ、事業評価の厳格な実 施、コスト縮減・事業の迅速化等により、重点的、効 果的かつ効率的に実施するとともに、既存社会資本の 有効活用を進めることが重要である。
なお、【本誌注4】平成 20 年秋以降、米国の金融危 機に端を発する世界的な景気後退が進行し、物流にも 大きな影響を及ぼす事態となったが、物流関連を含め た経済対策を機動的に実施しつつ、中長期的視点から 上記施策を着実に進めていくこととする。
2 基本的方向性 (1)グローバル・サプライチェーンを支える 効率的物流の実現 我が国企業は、アジアその他の新興国の経済成長を 踏まえ、その調達・生産・販売する財それぞれの性質 に応じ、サプライチェーンのグローバル化を進めている。
こうした中、我が国企業がその国際競争力を維持・強 化していくためには、日本国内を含むアジア地域を中 心に各国に分散する事業拠点それぞれにおけるコスト の低減のみならず、事業拠点間のサービスリンク・コ スト(輸送コストや情報伝達コスト)の低減が、より 一層重要である。
【本誌注5】 また、こうした企業によるグローバル規模での最適 立地戦略が進む中で日本が事業活動を行う魅力的な拠 点として選ばれ続けるために、また日本国内に立地す る企業のグローバル規模での取引が拡大していくために、 日本発着貨物や国内輸送貨物に係る輸送コストの低減 等に向け、日本国内の物流環境も不断に改善され続け る必要がある。
さらに、近年、テロ対策や核不拡散についての国際 的な要請が強まっており、物流においてもセキュリティ の強化が重要になってきているが、サプライチェーン のグローバル化に対応した物流効率化との両立に取り 組む必要がある。
このため、日本とアジア等海外の政府・自治体、国 内外の荷主・物流事業者・施設管理者、国際機関等 の多様な関係者が連携し、国際・国内を問わずグロー バル・サプライチェーンの上に存在する物流のボトルネッ クを解消し、企業のグローバル・サプライチェーンを支 える国際・国内一体の効率的な物流の実現に取り組む 必要がある。
?アジアにおける広域的な物流環境の改善 これまで、日中韓物流大臣会合、日ASEAN交 27 AUGUST 2009 第2 【本誌注3】現状では国家的物流戦略の推進会 議が三つあり、テーマの重複も見られる。
これ に対してメンバーに選出された民間人から、似 たような会議は整理して統合しろとの声も上がっ ている。
【本誌注4】緊急景気対策に便乗した政治家の 利益誘導や縦割り予算の増額によって、地方へ のバラマキが復活している。
公共事業=地方景 気対策というアプローチは依然として変わって いない。
【本誌注5】お隣の韓国では物流コストだけで なく、企業の拠点立地や輸出競争力に大きな影 響を与える関税コストについても各国との二国 間協定(FTA:自由貿易協定/EPA:経済 連携協定)の締結に向け政府主導でスピーディ に動いている。
日本は国内農業の保護などの制 約が強く、出遅れが指摘されている。
通大臣会合、国際物流競争力パートナーシップ会議を 通じて、アジアにおける物流環境に係る課題の抽出や 人材育成の取組み等を推進してきた。
今後も、これら の枠組み等を始めとする各種の政府間対話等を通じ、 複合一貫輸送の推進、物流に関する諸制度・サービス の改善、貿易手続円滑化や物流管理技術の向上等に向 けた協力を引き続き強力に進め、物流環境の改善に取 り組む必要がある。
また、アジア域内の主要都市・産業集積を結ぶ主 要国際物流ルートについて、「東アジア産業大動脈構 想〈※ 25 〉」に基づき、域内政府等と協力・協調し、イ ンフラ開発と産業開発の一体的な整備を進める必要 がある。
?効率的でシームレスな物流網の構築【本誌注6】 ロジスティクス機能を担う港湾・空港については、 迅速で低廉な物流を確保するために、スーパー中枢港 湾プロジェクトの充実・深化、大型船舶に適切に対応 するための産業港湾インフラの刷新、港湾関連手続の 電子申請化、航空自由化の推進による航空貨物ネット ワークの拡充、大都市圏拠点空港の物流機能強化等、 ハード・ソフト両面において取組みを進める必要があ る。
また、効率的な物流を目指し、高速道路の料金引 下げ等、既存の高速道路ネットワークの有効活用に引 き続き取り組むとともに、国際・国内の輸送モードや 物流活動の拠点等の有機的連携に資する道路ネットワー クの整備及び選定ルートの利用促進に向けた新たな取 組みが必要である。
さらに、鉄道の輸送力増強、内航 海運・フェリーの競争力強化について具体的な取組み を進めることも必要である。
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」 に基づく、社会資本と連携した物流施設の整備及び当 該施設を利用した物流の総合化・効率化や、「流通業 務市街地の整備に関する法律」による流通業務団地等 及び土地区画整理事業の活用による物流施設の配置と 供給も、引き続き必要である。
?貿易手続や物流管理のIT化と 国際的情報連携の構築 貿易手続や物流管理のIT化の推進は、取引に関す る様々な情報の集積・共有・活用を通じて、取引に係 る各種のリスクの低減やリードタイムの短縮等、多く のメリットが期待される。
こうした観点から、平成 20 年 10 月に稼働したシング ルウィンドウについては、引き続き、関係者にとって 全体最適な業務プロセスが実現するよう手続の簡素化、 関係当局間での情報共有・活用、国際システム連携の 推進等に向けて、国・地方一体となって、継続的な見 直しを行っていく必要がある。
その中で、国際物流に おける「中核となる基幹システム」について、国の目 指すべき方向性やプライオリティを明確にし、NAC CSと民間の物流関連システムを連携し、中核となる システムを構築していく必要がある。
また、電子タグ〈※ 26 〉等の技術を活用し国際物流管 理情報の可視化を推進するため、物流事業者や荷主等 の間で貨物の位置情報を共有するための貨物管理コー ド〈※ 27 〉の国際標準化等、企業間情報連携基盤の構築 について検討を進める必要がある。
?セキュリティ確保と物流効率化の両立 人材育成・通関・環境規制等ソフトのインフラを一 体的に整備し、国境を越えた総合的な開発を行うもの。
米国の同時多発テロを契機に平成 16 年7月に改正S OLAS(海上人命安全)条約が発効し、また、貨 物セキュリティ確保と物流効率化との両立が、 21 世紀 の国際物流にかかわる最大の課題の一つとして改め て認識された。
こうした中、米国・EUを始め世界 各国・地域は、輸入貨物に対するセキュリティ管理規 制を大幅に強化しつつ、コンプライアンスに優れた事 業者に対しては比較的簡便な取扱いを行う新たな仕 組みを、国際的な相互承認も視野に入れて検討・構 築している。
我が国においても、国際貿易の安全確保と円滑化 ※ 25 東アジア産業大動脈構想:東アジア・アセアン経済 研究センター(ERIA)、アジア開発銀行(ADB)、ASEAN 事務局が関係国と協力して策定するマスタープランに基 づき、東アジアにおいて物流・港湾・工業団地・電力網 等ハードのインフラ、人材育成・通関・環境規制等ソフ トのインフラを一体的に整備し、国境を越えた総合的な 開発を行うもの。
※ 26 電子タグ:情報を記録したICチップを付けて、電 波や磁気等で情報を読み取り、書き込むことができる電 子荷札。
※ 27 貨物管理コード:コンテナ等の貨物を他の貨物と 区別するため付番される識別番号のこと。
AUGUST 2009 28 【本誌注6】本大綱の実行計画として策定され た「総合物流施策推進プログラム」によると、 国交省・経産省は国際複合一貫輸送のリード タイムについて詳細にモニターし、輸送および 手続きにおける具体的な課題を抽出、中国やア セアン諸国との二国間政策対話を通じてボトル ネックを解消し、その成果を検証し継続的改善 を進めていくとされている。
政治と物流──荷主主導に舵を切れ を両立させるため、貨物のセキュリティ管理と法令遵 守の体制が整備された事業者の貨物に関する税関手続 を迅速化・簡素化するAEO制度【本誌注7】を導入 し、当該制度の対象を輸出入者、倉庫業者、通関業者、 運送業者及び製造業者へと順次拡大している。
引き続き、AEO制度の利用状況や諸外国の制度の 進展等を踏まえ、貨物のセキュリティ管理を確保しつつ、 物流全体のリードタイムの短縮やコスト削減等に向け、 AEO制度の利用・運用状況や効果を見極めつつ、貿 易円滑化と貨物セキュリティ確保の両立を図る見地に 立って、AEO制度等、保税・通関制度等の在り方を 検討し、必要な見直しを継続的に行う必要がある。
また、主要貿易相手国との間で、AEO制度の相互 承認の実現に向け、政府間協議等を推進する必要がある。
国際港湾施設においては、ヒト・モノの出入を管理 するシステムの構築等の検討を推進するとともに、メ ガポート・イニシアティブ〈※ 28 〉への対応に向けた検 討を進める必要がある。
また、航空貨物については、KS/RA制度の適切 な運用によりセキュリティ確保を図る必要がある。
(2)環境負荷の少ない物流の実現等【本誌注8】 ?低炭素型物流〈※ 29 〉の実現 京都議定書第一約束期間〈※ 30 〉が開始し、現在交 渉中の平成 25 年(2013年)以降の次期枠組みを見据え た地球温暖化対策の必要性が一層増大した現在、低炭 素型物流の実現は避けては通れない大きな課題となっ ている。
低炭素型物流の実現に向けては、新技術の開発を含 め、陸海空の輸送モードごとに総合的な対策を図ると ともに、モーダルシフトを含めた輸送の効率化、低環 境負荷の港湾・物流システムの構築、輸送機器の低炭 素化、情報化や標準化の推進を図る必要がある。
あわ せて、環状道路やバイパスの整備、交差点の立体化、 開かずの踏切の解消、ITSの推進、高速道路の多様 で弾力的な料金施策、荷捌き駐車対策、信号制御の高 度化等の交通流対策により、自動車の貨物輸送による 環境負荷の低減、都市内物流の効率化を推進する必要 がある。
また、幹線物流全般にわたる物流結節点の集約・ 再配置、巡回集荷(ミルクラン)等、物流結節点と末 端との間の集配の効率化の推進、複数荷主による共 同輸配送や往路と復路を組み合わせた輸送効率の向上 に当たって、関係者による幅広い連携・協働が求めら れる。
加えて、ユーザーである荷主や消費者が低炭素型の 物流サービスを提供する物流事業者を積極的に選択す ること、地方公共団体、荷主、物流事業者等の地域 の多様な関係者が連携して取り組むこと等を通じ、社 会全体で物流の低炭素化を進めることが期待される。
さらに、グローバル・サプライチェーン全体の環境 負荷低減に向け、グリーン物流関連の技術・ノウハウ の国際的な普及等を通じ、グリーン物流の国際的連携 を進める必要がある。
こうした低炭素型社会の構築への取組みは、我が国 をめぐる環境負荷の低減に資するのみならず、我が国 が世界規模での環境改善に積極的な貢献を果たすこと につながる。
さらに中長期的には、多種多様な革新的 な省エネ・環境技術の開発・応用を誘発し、我が国産 業の国際競争力強化につながることも期待される。
?効率的な静脈物流の構築 静脈物流に関しては、臨海部等の適切な場所にリサ イクル施設・最終処分場の立地を集約すること等を含 め、物流面での環境負荷低減のための工夫が求めら れる。
また、静脈物流の効率化・高度化は、CO2排出量 抑制や循環資源の利用促進等にも大きく貢献するため、 国・地方公共団体は、各事業者間による更なる連携強 化等の施策に、官民一体となって強力に取り組んでい くことが必要である。
※ 28 メガポート・イニシアティブ:世界の主要港に放射 性物質検知施設を設置することにより、港における積荷 の検査能力を強化し、核物質その他の放射性物質の拡散 を防止することを目的とする、米国政府が推進する取組 み。
※ 29 低炭素型物流:都市内物流の効率化やモーダルシ フトの推進等による環境負荷の小さい物流。
※ 30 京都議定書第一約束期間:2008 年から2012 年 までの5年間。
京都議定書では、この期間において、温 室効果ガスの排出量を先進国全体で1990 年レベルと比 べて少なくとも5%削減することを目的として、国ごと に法的拘束力のある数量化された約束が定められ、我が 国については6%削減が定められた。
29 AUGUST 2009 【本誌注7】現状のAEOは荷主企業から「ベ ネフィットが見えにくい」との批判がある。
認 可を取得できるような事業者はもともと通関上 のトラブルが少ないため従来から優遇されてき た。
国によって制度設計が異なることも問題の 一つ。
二国間の相互認証で障害になる。
管理 組織も欧米はセキュリティ専門部隊を設けてい るが、日本では財務省が通関と一緒に管理して いる。
【本誌注8】九〇年の「物流二法」に始まった 物流事業の規制緩和が山を越えたことで、国交 省の仕事は環境負荷低減や安全対策を始めとし た社会的規制の強化に完全に軸足を移している。
国交省にとって環境対策は予算確保の理由とし て有効であるだけでなく、これまで荷主企業に 対して弱い立場に置かれてきた物流事業者の事 業支援を正面から打ち出せる格好のテーマとなっ ている。
(3)安全・確実な物流の確保等 安全・確実な輸送の確保は物流に欠かすことのでき ない重要な要因である。
輸送の手配と実施の連携強化、荷主の協力や優良事 業者の認定・監督について、国際物流・国内物流とも にその充実と新しい対応が求められており、コンプラ イアンスの徹底、利用運送事業者と実運送事業者の連 携の強化等を進める必要がある。
さらに、トラック輸送の安全対策については、AS V技術等を活用した大型トラックの車両安全対策、ト ラック運送事業者の運行管理の徹底や監査の充実、運 輸安全マネジメントの推進、安全・安心な道路交通環 境の実現に向けた交通安全施設等の重点的な整備、運 転者教育を始めとする交通事故防止等を引き続き推進 する必要がある。
主要な海上輸送路の安全対策についても、引き続き、 沿岸国との協力等を通じた航行安全の推進や海賊行為 への適切な対応を図る。
また、食の安全への消費者の関心が高まっている中、 卸売市場等における品質管理の徹底のためのコールド チェーンシステムの整備や産地から消費に至る一連の 品質・衛生管理水準の向上、流通機能の高度化を図る ための流通システムの整備を推進する必要がある。
さらに、大規模な地震の発生時や、豪雨・豪雪等の 頻発する自然災害時に備え、災害に強い交通網の確保、 災害時の道路、鉄道、港湾等の早期復旧に向けた体制 整備等、安全・安心の確保に向けた防災・減災対策の 総合的な実施が求められている。
加えて、将来にわたって質の高い物流サービスを安 定して提供するためには、労働力の確保・育成策が重 要と考えられ、労働環境の改善や地位の向上のための 対策が必要である。
3 施策の推進体制の在り方 (1)連携・協働の必要性【本誌注9】 物流システムは、荷主、物流事業者、施設管理者、 行政機関、地域住民、消費者、海外の国や企業等、 多様な関係者の関与によって成立するため、課題の解 決のためには、多様な関係者が密接に連携を図りなが らそれぞれの役割を適切に遂行する不断の努力が必要 である。
これを踏まえ、物流施策の推進に当たっては、経済 活動全般や企業活動にとっての物流の果たす役割の重 要性を関係者が広く認識し、物流施策の改善に向けて 積極的に提案しながら、それぞれの主体の取組みが最 大限効果を発揮できるよう連携・協働を深めながら取 り組むことが重要である。
?国民の理解と協力 国民や消費者の間でも、地球環境保全、交通の安全、 食の安全・安心確保等に対する関心が高まっているが、 これらに対応するための企業のモーダルシフト、低公害・ 低燃費車の導入、共同輸配送等の取組状況について、 分かりやすい情報発信を行い、取組みに対する国民の 理解と協力を得ていく必要がある。
また、消費者が環境問題の改善に主体的に参画する 「グリーン・コンシューマー」として、自らの生活を環 境にやさしいライフスタイルに変えていくことが必要 である。
このため、「低炭素社会づくり行動計画〈※ 31 〉」 に基づき、商品の製造や食品の生産から輸送、廃棄に 至る過程や、サービスの利用に伴って排出される温室 効果ガス排出量を表示するカーボン・フットプリント制 度〈※ 32 〉等の「見える化」によって、消費者が的確な 選択を行うための情報を提供していく。
これにより、 消費者が企業の環境配慮への取組みに注目し、商品や サービスの購入等に際して、環境改善貢献企業を選択 していくことが、グリーン物流の推進、さらには、経 済社会全体をグリーン化していく大きな原動力になる ものと考えられる。
※ 31 低炭素社会づくり行動計画:平成 20 年7月 29 日閣 議決定。
経済的手法を始めとした国全体を低炭素化へ動 かす仕組みや革新的な技術開発、ビジネススタイル・ラ イフスタイルの変革に向けた国民一人一人の行動を促す ための取組みについて策定。
※ 32 カーボン・フットプリント制度:商品・サービスの ライフサイクル全般で(原材料調達から廃棄・リサイクル まで)排出される温室効果ガス排出量をCO2量に換算 し、表示すること。
【本誌注9】本大綱で国交省が最も強く主張し たかったパートだと思われる。
本大綱の文面で は物流の社会的役割の重要性と利害関係者の協 力の必要性が穏当な表現で書かれているに過ぎ ないが、具体的な実行計画である「総合物流 施策推進プログラム」には、「店着価格制」を 改めて商品価格と物流コストを分離すること、 さらには「過度な多頻度補充の見直し」など、 取引条件の改善を推進することが明記されてい る。
AUGUST 2009 30 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 【本誌注 10 】「過積載や過労運転を招来」とい う表現は、「物流の委託者である荷主」に向け られている。
さらに実行計画の「総合物流施 策推進プログラム」には、公正取引委員会に対 して、「独占禁止法(物流特殊指定)及び下請 法の周知並びに執行を通じ、物流に係わる取引 の適正化を推進し。
その実施に必要な体制整備 に努める」ことが明記されている。
【本誌注 11 】「総合物流施策推進プログラム」 の原文および概要は国交省のホームページで ダウンロードできる。
http://www.mlit.go.jp/ report/press/tokatsu01_hh_000033.html ※ 33 流通加工:入庫した貨物に対し、検品・ラベル貼 り・値札付け・組み立て・箱詰め・梱包・方面別仕分け 等を行うこと。
※ 34 在庫管理:物流事業者が取引企業のニーズに応じ て在庫管理を行うこと。
Vender Managed Inventory (納 入業者側が納入先であるメーカーや小売店に代わって在 庫を管理し、必要に応じて部品や製品の自動補充をする こと)等の例が増加している。
保税地域内の施設でVM Iを行えば、輸入時ではなく、補充のための出庫時にお いて関税納付することになり、キャッシュフロー上のメ リットがある。
※ 35 3PL(サードパーティロジスティクス):荷主に 代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流シス テムの構築について包括的に受託し、実行すること。
?荷主と物流事業者、インフラとの連携・協働 民間企業においては、市場の競争環境の下、創意工 夫をこらした取組みにより、高度化・多様化した消費 者ニーズに対応するとともに、環境問題や安全対策等、 社会的課題に適確に対応していくことが期待される。
効率的で環境負荷の小さい物流システムの構築に向 け、グリーン物流パートナーシップや多様な関係者に よる各種協議会の活用を引き続き推進することが重要 である。
また、過積載や過労運転を招来しない【本誌 注 10 】安全なトラック輸送の実現等のためには、物流 の委託者である荷主と受託者である物流事業者とのパー トナーシップを構築し、関係行政機関も含めて、課題 の解決に向けた取組みを進めることが重要である。
特に、 荷主が経営のリストラを進める中で、自らの経営資源 を本業に集中し物流部門をアウトソーシングする傾向 がみられるが、このような動きの中で、物流事業者が 荷主ニーズにこたえる効率的な物流システムを積極的 に提案し、輸送のみならず、流通加工〈※ 33 〉、在庫管 理〈※ 34 〉等、包括的に業務を受託して、物流のトータ ルコストの低減や自らのビジネス機会の拡大につなげ る3PL〈※ 35 〉の推進等を図る必要がある。
?地域レベルでの関係者の連携・協働 国際物流と国内物流が一体となった効率的・総合的 な物流体系を構築していくためには、地域ごとに、関 係行政機関、荷主、物流事業者等の参画による協議の 場を設け、主要港湾・空港・道路・鉄道等のアクセス も含めた効率化等の取組みを進めるため、ボトルネッ クの抽出と、その解消のための具体策の検討を行い、 地域からの知恵と工夫に富んだ実効性のある対策を講 じていく必要がある。
都市内物流対策についても、広く地域の関係者の参 画による協議の場を設け、輸配送の共同化、荷捌き施 設や駐車帯の設置、きめ細かな駐車規制、混雑時間帯 を避けるための集配時間帯の設定等の対策を講じてい く必要がある。
特に、地方公共団体は、まちづくり等 の面で、物流施策との関係が密接であり、引き続き積 極的な参画が必要である。
これらの対策により、交通 の安全の確保や混雑の緩和、環境問題の改善が図られ ることは、歩いて楽しいまちづくりにもつながり、中 心市街地の活性化や都市観光の振興にも寄与すること となる。
(2)今後の推進体制 ?国における推進体制 関係省庁の関係局長等による「総合物流施策推進 会議」を通じ、施策の総合的・一体的推進に向けた連携・ 協働を一層強めることとし、今後推進すべき具体的な 物流施策をプログラム【本誌注 11 】として取りまとめ、 その実現に努めることとする。
上記プログラムについては、「目標設定・実施・評価・ 反映(PDCA)」方式により、官民で協働し、毎年 度実施状況のフォローアップを行い、必要に応じて改 訂を行うこととする。
?地域における推進体制 17 年大綱の策定以来、国の地方支分部局、地方公 共団体、荷主、物流事業者等による地域の実情に応じ た連絡体制の下、総合的な施策の推進を図ってきた。
また、主要な港湾・空港を抱える各地域において、 国の地方支分部局、地方公共団体、経済団体、荷主、 物流事業者等の実務者が、国際・国内物流の一体的 効率化策を検討する「国際物流戦略チーム」を設置し、 地域の実情を踏まえた施策の推進を図ってきた。
今後は、これまでのこうした連絡・連携体制を不断 に見直しつつ、物流現場で生じる課題の収集や施策の 立案と効果的な実施に向け、一層の連携強化を進める 必要がある。
31 AUGUST 2009
向こう5年間の物流行政の基本方針を示 したものだ。
国交省、経産省、財務省などの各省は大綱 の内容に則って関連政策を進める義務を負う。
その全文 を掲載し、本誌が独自の注釈を加えた。
はじめに 政府は、平成 17 年 11 月に「総合物流施策大綱(2005- 2009)」(以下「 17 年大綱」という。
)を策定し、平成 21 年を目標年次として、物流分野において「スピー ディでシームレスかつ低廉な国際・国内一体となった 物流の実現」、「「グリーン物流」など効率的で環境に やさしい物流の実現」、「ディマンドサイドを重視した 効率的物流システムの実現」、「国民生活の安全・安心 を支える物流システムの実現」の4つの目標【本誌注1】 を掲げて、総合的な物流施策を推進してきた。
その結 果、諸施策の効果が発揮されつつあるが、更なる対応 が必要な課題も多数残されている。
一方、 17 年大綱策定以降、経済構造の一層のグロー バル化、京都議定書第一約束期間の開始を契機とした 地球温暖化対策の必要性の増大、貨物セキュリティ確 保の要請の高まり等、物流をめぐる環境には様々な変 化が生じており、平成 20 年秋以降の世界的な経済危機 の影響を見極めつつ、これらから生ずる課題への迅速 かつ適確な対応が求められている。
このため、 17 年大綱を見直し、新たな総合物流施策 大綱を策定することにより、諸施策の総合的・一体的 な推進を図る。
17年 大 綱 に 掲 げ た 目 標 の 達 成 状 況 と 新たな総合物流施策大綱策定の必要性 1 17 年大綱に掲げた目標の達成状況 17 年大綱は、物流分野において「スピーディでシー ムレスかつ低廉な国際・国内一体となった物流の実現」、 「「グリーン物流」など効率的で環境にやさしい物流の 実現」、「ディマンドサイドを重視した効率的物流シス テムの実現」、「国民生活の安全・安心を支える物流シ ステムの実現」の4つの目標を掲げたが、現時点にお 【本誌注1】九七年に策定された最初の大綱では、 「基盤整備」「規制緩和」「物流高度化」の三つ が柱だった。
このうち規制緩和については、荷 主側に立つ経産省と物流事業者側の国交省でス タンスに大きな違いがあった。
「 17 年大綱」に おいても「ディマンドサイドの重視」という言 葉で荷主側のニーズが強調されていた。
しかし本大綱では、規制緩和やディマンドサ イドの重視などの表現は影を潜めている。
それ に変わって新たに強調されているのが、グロー バル・サプライチェーンというキーワードだ。
経 産省の視点は、物流事業者および物流業界の変 革からプロセス改革にシフトしている。
一方の国交省は、物流事業者のオペレーショ ン負担の軽減に力を入れている。
環境負荷軽減 を旗印として、従来のディマンドサイド重視を 修正し、多頻度小口化や納品リードタイムの短 縮などの行き過ぎに歯止めを掛けたいという意 図がうかがえる。
AUGUST 2009 22 第1 第4 部 脚 注 《細字は原注。
太字が本誌注釈》 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 【本誌注2】港湾局の資料によると、香港、シ ンガポール、上海、釜山のアジア主要港に寄港 する基幹航路の便数が増加もしくは横ばいであ るのに対し、東京、横浜、名古屋、大阪、神 戸はいずれも長期的に減少する傾向にある。
九五年には週当たり四二便だった神戸の寄港 数は〇八年に一七便に減少。
現在日本で最も寄 港数の多い東京でも便数は二一便に過ぎず、香 港の七〇便、上海五八便、釜山四五便、シン ガポール四四便の半分以下となっている。
基幹航路の寄港がなくなると日本発の貨物を アジアの主要港にいったん持ち込んで積み替え なければならなくなる。
それだけコストとリー ドタイムがかさみ、荷主企業の競争力が落ちて しまう。
いて、その達成状況をみると、おおむね以下のとおり である。
(1)「スピーディでシームレスかつ低廉な 国際・国内一体となった物流の実現」について 経済構造のグローバル化が進む中、我が国の企業が 国内を含むアジア市場を一体的にとらえ、調達、製造、 販売の面で国際・国内の区別なく最適地での生産や販 売を目指しており、極力無駄な在庫を持たないサプラ イチェーンマネジメント(SCM〈※1〉)の徹底をグロー バル規模で進めている。
また、アジア地域との間の物 流は、距離的にみても国内物流と大差ない圏域で行わ れていることから、国内輸送体系の効率化等により、 一層スピーディでシームレスかつ低廉な物流が求めら れている。
17 年大綱では、こうした認識から、この目 標を掲げ、諸施策を進めてきた。
?国際拠点港湾・空港の機能向上 港湾については、スーパー中枢港湾の重点的整備及 び運営の効率化のため、東京港・横浜港で水深 16 m の大水深コンテナバースを新規着工するなどの機能強 化が進められ、港湾コスト・リードタイムは一定程度 改善してきている。
しかしながら、我が国の外貿コン テナ取扱貨物量は増大しているものの、コンテナ船の 大型化やアジア諸国の港湾における貨物取扱量の増大 により、我が国においては、欧米との長距離基幹航 路の輸送サービス頻度が減少している。
【本誌注2】こ のため、欧米基幹航路を始めとする多方面・多頻度・ ダイレクト輸送といった高質な港湾サービスの強化が 求められている。
加えて、原材料等の一括大量輸送 を目的として大型化している船舶の入港が困難な港湾 もあり、産業競争力を支えるインフラとしての機能強 化が求められている。
空港については、首都圏において、成田国際空港の 北伸事業、東京国際空港(羽田空港)の再拡張事業 を進めている。
また、関西国際空港は2本目滑走路の 供用開始により完全 24 時間運用が可能となり、中部国 際空港でも第3国際貨物上屋が竣工するなど、大都市 圏拠点空港の機能拡充が図られてきた。
しかしながら、 引き続きネットワーク拡充が求められているほか、仁 川空港等近隣諸国の主要空港が飛躍的な成長を遂げて いる中で、成田・羽田両空港間の物流円滑化を図るな ど、我が国の国際拠点空港の物流機能強化等が求めら れている。
?国際・国内の輸送モードの有機的連携による 円滑な物流ネットワークの構築 道路については、主要港湾・空港や物流拠点へのア クセスの改善、大都市における環状道路の整備等基幹 ネットワークの整備を推進してきた。
国内の海運につ いては、経済的で環境にやさしい次世代内航船(スー パーエコシップ(SES〈※2〉)の普及支援等を推進し、 鉄道については、主要幹線区間の輸送力増強のための インフラ整備等を推進してきた。
引き続き、陸海空が 一体となったサービス水準の高い交通ネットワークの構 築のため、経済のグローバル化の進展への対応、国際 競争力の一層の強化及び地域経済の発展に資する道路 ネットワークの整備、内航海運・フェリーの一層の利 用促進や競争力強化、貨物鉄道の輸送力増強や駅設備 等の近代化のための投資等が必要である。
?物流拠点施設における ロジスティクス機能〈※3〉の高度化 国際物流の高度化に資するロジスティクス・ハブの 形成のため、「流通業務の総合化及び効率化の促進に 関する法律」に基づき、社会資本と連携した物流施設 の整備及び当該施設を利用した物流の総合化・効率化 を進めるとともに、「流通業務市街地の整備に関する 法律」による流通業務団地等及び土地区画整理事業 の活用による物流施設の配置と供給にも取り組んでき た。
また、主要な港湾・空港を抱える地域に設置され ※1 サプライチェーン・マネジメント(SCM):商品 供給に関するすべての企業連鎖を統合管理し、その全体 最適化を図ること。
原材料調達から生産、販売までを一 貫したシステムとしてとらえ、消費者の購買情報を関係 者が共有し、在庫の削減、リードタイムの短縮、適時・ 適量の商品供給等の実現を目指すこと。
※2 スーパーエコシップ(SES):電気推進システム を採用し、二酸化炭素や窒素酸化物の削減および燃費の 削減に資する優れた環境性能と経済性を有する次世代内 航船。
※3 ロジスティクス機能:軍隊での兵站補給に由来す るが、調達、生産、販売等に係る物流活動全般を統合管 理し、その全体最適化を図ること。
倉庫や物流センター においても、保管のみならず、荷捌き、流通加工、在庫 管理等のサービスを提供し、荷主ニーズの高度化に対応 すること。
23 AUGUST 2009 た国際物流戦略チームの取組みにより、関西国際空港・ 上海間の深夜貨物便の定期便化や大阪湾諸港の一開港 化等が実現した。
?輸出入・港湾手続等のワンストップサービス〈※4〉・ シングルウィンドウ化〈※5〉と民間物流業務の 電子化の促進 平成 20 年 10 月に海上貨物通関情報処理システム(S ea─NACCS〈※6〉)と港湾EDI(電子データ交 換〈※7〉)を統合し、輸出入・港湾関連情報処理シス テム(NACCS〈※8〉)を稼働させるとともに、申 請窓口の一本化等を行った新たなシングルウィンドウ (府省共通ポータル)が稼働した。
さらに、平成 20 年 4月から税関の臨時開庁制度について、手数料を廃止 するとともに、手続を簡素化している。
(2)「「グリーン物流」など 効率的で環境にやさしい物流の実現」について 環境負荷の小さい社会を実現するため、物流に関す る多様な関係者が連携して、地球環境問題に適切に対 応することが求められているとの認識から、 17 年大綱 では、この目標を掲げ、諸施策を進めてきた。
近年、国内貨物輸送からのCO2排出量は低減する 傾向にあるが、現在交渉中の平成 25 年(2013年) 以降の次期枠組みを見据え、今後はサプライチェーン 全体からの環境負荷を低減していくこと等、更に進ん だ取組みが求められる。
?グリーン物流パートナーシップ会議〈※9〉の活用 グリーン物流パートナーシップ会議を活用し、CO2 排出量削減のための先進的取組みや設備導入、調査研 究等、モーダルシフトを含めた様々な輸送の効率化の ための荷主と物流事業者の協働による取組みを支援し てきた。
その際、荷主及び物流事業者間でCO2排出 量削減効果を共有するため「ロジスティクス分野にお けるCO2排出量算定方法共同ガイドライン」を策定し、 活用を促してきた。
?鉄道・内航海運の機能向上 鉄道貨物の輸送力増強、機関車の省エネ化、スーパー エコシップの普及促進、内航海運・フェリー等の輸送 品質の向上、エコレールマーク〈※ 10 〉やエコシップマー ク〈※ 11 〉の活用、港湾における海上コンテナの鉄道へ の積替え施設の改善によるモーダルシフト等を推進し てきた。
?貨物自動車による環境負荷の低減等 トラックの大型化や自家用トラックから効率の良い 営業用トラックへの輸送の転換(自営転換)、自動車 単体の燃費性能向上、エコドライブ管理システム(E MS〈※ 12 〉)の導入等により、貨物自動車のCO2排 出量は平成8年をピークとして着実な減少傾向にある。
窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(PM)につい ても、自動車単体の排出ガス対策とともに、自動車N OX・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び 粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する 特別措置法)に基づく各種対策の推進、低公害車の普 及促進等により、自動車NOX・PM法の対策地域を 中心に緩やかな改善傾向がみられる。
都市内においては、道路上での荷捌き等が交通渋 滞を引き起こしており、都市内交通の円滑化や、歩 行者の安全等を確保するために、きめ細かな交通規 制の実施、荷捌き施設等の整備により、無秩序な荷 捌きによる交通渋滞の解消を進めてきた。
また、物 流業務施設等の集約的な立地誘導を行ってきた。
さ らに、環状道路の整備、交差点の立体化、開かずの 踏切の解消、信号制御の高度化等の交通流対策を行っ てきた。
このほか、地域によって異なる物流の効率化 を阻害する課題について、荷主、物流事業者、行政 機関等の多様な関係者の連携による合意形成に取り組 んできた。
※4 ワンストップサービス:複数の手続を一つの窓口 (システム)から行うことを可能とするもの。
※5 シングルウィンドウ化:複数の手続を一回の入力・ 送信で行うことを可能とするもの。
これにより、共通入 力項目の重複入力を排除することが可能となる。
※6 海上貨物通関情報処理システム(Sea─NAC CS):平成3年 10 月に稼働した、海上貨物に係る輸出 入通関業務等の税関手続およびこれに関連する民間業務 (貨物管理等)を処理する官民共同システム。
※7 港湾EDI(電子データ交換):港湾関連の申請 や届出等の行政手続の電子情報処理化を推進するため に、国土交通省、海上保安庁等が港湾管理者と協力して 開発した情報通信システム。
※8 輸出入・港湾関連情報処理システム(NACC S):輸出入等関連業務を行う者をオンラインで結び、輸 出入等関連業務およびこれに関連する民間業務(貨物管 理等)を処理する官民共同システム。
平成 20 年 10 月の海 上貨物通関情報処理システム(Sea─NACCS)の 更改において国土交通省の港湾関連手続を処理する港湾 EDIを統合し、これに伴いシステムの名称を輸出入・ 港湾関連情報処理システム(NACCS)と変更した。
*輸出入等関連業務とは、税関手続、入管手続、食品衛 生手続、検疫手続(人)、植物検疫手続、動物検疫手続、 貿易管理手続および港湾手続に関する業務。
※9 グリーン物流パートナーシップ会議:物流部門での CO2の一層の削減を図るため、荷主と物流事業者の連 携・協働により、モーダルシフト、共同輸配送、拠点集 約等、施策の幅を広げ、中小企業を含めた裾野の広い取 り組み拡大を図るため、平成 17 年4月に正式発足した会 議体。
現在、荷主、物流事業者、地方公共団体、シンク タンク、有識者等三〇〇〇を超える会員登録がある。
同 会議の下に、「政策企画委員会」、「事業推進委員会」を 設置し、本格的活動を推進。
※ 10 エコレールマーク:鉄道貨物輸送による環境負荷 低減に取り組む企業および商品を認定し、商品等にエコ レールマークを表示することを通じて鉄道を利用したモー ダルシフトのアピールを行う。
AUGUST 2009 24 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 引き続き、運輸部門全体のCO2排出量の削減に向 けた総合的取組み及び単体対策が求められる。
?ITSの推進 ドライバーに対する安全運転支援や経路選択支援等 のサービスを実施するとともに、同サービスとカーナビ、 道路交通情報通信システム(VICS〈※ 13 〉)、ETC〈※ 14 〉等の基礎的なサービスを併せて利用できる次世代車 載器の開発・普及及びそれに対応した設備の整備・活 用を図るなど、高度道路交通システム(ITS)の推 進による交通流対策の強化を図ることで、環境負荷の 低減及び利便性の向上を実現する。
?物流分野におけるエネルギー使用の合理化や 温室効果ガス排出量削減への取組みの促進 国際海運からのCO2排出量を大幅に削減する省エ ネ技術の開発・国際標準化、スーパーエコシップの普 及促進等を一体的にクールシッピングとして推進して いる。
また、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省 エネ法)により、一定規模以上の輸送事業者や荷主に 対して、省エネルギー計画の策定、エネルギー使用量 の報告義務等が課されており、荷主と物流事業者の企 業単位でのCO2排出量削減の取組みが進められてい ることから、引き続き、省エネ法による取組みを促進 するとともに、省エネ法の更なる活用について検討を 進める必要がある。
?静脈物流〈※ 15 〉システムの形成 静脈物流に関しては、静脈物流ネットワークの拠点 としてのリサイクルポート〈※ 16 〉の指定や、岸壁、ストッ クヤード〈※ 17 〉等重点的な静脈物流基盤の整備を進め てきたところであるが、更なる輸送コストの削減が課 題となっている。
引き続き、適正な処理・輸送を確保 した上で、効率的な静脈物流システムの構築を推進し ていく必要がある。
(3)「ディマンドサイドを重視した 効率的物流システムの実現」について 企業の経営姿勢が消費者等のディマンドサイドの要 望に敏感なものへと変化していることに応じ、多様な 消費者ニーズにこたえながらも交通渋滞や環境問題の 深刻化を招来しない効率的な流通・物流システムが求 められているとの認識から、この目標を掲げ、諸施策 を進めてきた。
?流通システムの標準化等 流通業界において迅速かつ効率的なサプライチェー ンマネジメントを実現するため、次世代のEDI〈※ 18 〉 標準の確立に取り組み、「流通ビジネスメッセージ標準」 を平成 20 年度に完成させた。
今後はこの標準が流通に かかわる事業者の間で速やかに普及することが期待さ れる。
(4)「国民生活の安全・安心を支える 物流システムの実現」について 米国同時多発テロ以降、物流におけるセキュリティ 対策の強化と効率化の両立が課題となっており、また、 輸送の安全確保、物流面における大規模災害発生への 対応、さらには、情報セキュリティの強化に対応する ことが求められているとの認識から、 17 年大綱では、 この目標を掲げ、諸施策を進めてきた。
?セキュリティ確保と物流効率化の両立 通関手続については、米国同時多発テロ以降、国 際貿易の安全確保と円滑化を両立させるため、貨物 のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事 業者の貨物に関する手続を迅速化・簡素化するAEO (Authorized Economic Operator)制度を推進するこ とが国際的な潮流となっている。
我が国においても、 AEO制度の対象を輸出入者、倉庫業者、通関業者、 ※ 11 エコシップマーク:海上輸送へのモーダルシフトに 貢献する荷主および物流事業者を選定し、エコシップマー クの使用を認めること等を通じて船舶を利用したモーダ ルシフトのアピールを行う。
※ 12 エコドライブ管理システム(EMS):自動車の 運行において、エコドライブを計画的かつ継続的に実施 するとともに、その運行状況について客観的評価や指導 を一体的に行う取組み。
※ 13 道路交通情報通信システム(VICS):渋滞や 交通規制等の道路交通情報を、車に搭載させたカーナビ ゲーションシステム等を通じて、画面により表示できるシ ステム。
※ 14 ETC:Electronic Toll Collection System(自 動料金収受システム)の略。
車両に設置されたETC車 載器と有料道路の料金所に設置された路側機との無線通 信により、車両を停止することなく通行料金を支払うシ ステムであり、ITS(高度道路交通システム)の一つ。
※ 15 静脈物流:循環資源(廃棄物や使用済み製品、副 産物等)を、再利用や再資源化、処分等の目的で回収・ 輸送する物流。
※ 16 リサイクルポート:循環資源を集積・運搬し、広 域的なリサイクルを促進するための拠点となる港湾。
総 合静脈物流拠点港とも呼ぶ。
※ 17 ストックヤード:循環資源を輸送する過程で、陸 上輸送と海上輸送との積み替え等の際に一時保管を行う ための施設。
※ 18 E D I : 電子データ交換( Electronic Data Interchange)。
企業間の電子的な商取引を実現するため の手段であり、企業間でオンラインにより、共通フォー マットの取引データを交換すること。
これにより受発注 情報を伝票に書き写すことなく、そのまま利用できる。
25 AUGUST 2009 運送業者及び製造業者へと順次拡大した。
また、航空貨物について、KS/RA( Known Shipper/Regulated Agent)制度〈※ 19 〉の導入や、改 定航空保安対策基準〈※ 20 〉に基づく保安対策の実施に より、高いセキュリティ・レベルの維持と物流効率化 の両立が図られることとなった。
今後ともこれらの制 度の活用を進めるためには、コンプライアンス(法令 の遵守)の確保、利用運送事業者と実運送事業者の連 携の強化等が求められる。
?輸送の安全確保等 トラックによる交通事故を防止するため、先進安全 自動車(ASV〈※ 21 〉)技術等を活用した大型トラッ クの車両安全対策、運輸安全マネジメント〈※ 22 〉の推進、 運行管理制度の徹底、監査の充実等を進めており、輸 送の安全確保への取組みを継続する必要がある。
さらに、 貨物自動車に係る交通事故防止を図る観点から、交差 点改良等、交通安全施設等の整備について、引き続き 推進していく必要がある。
また、主要な海上輸送路の安全確保については、こ れまでもマラッカ・シンガポール海峡沿岸国等の海上 取締能力の向上に対する支援や当該海峡の航行安全に 対する沿岸国への協力、さらには、ソマリア周辺海域 で近年頻発する海賊に対する取組み等を進めてきたが、 今後とも、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に 関する法律」の実施を含め官民連携して、日本関係船 舶に係る主要な海上輸送路の安全確保を図っていく必 要がある。
さらに、外航海運分野の国際競争が激化す る中、安定的な国際海上輸送の確保の核となるべき日 本船舶の減少に対応するため、海上運送法等を改正し、 いわゆるトン数標準税制〈※ 23 〉の導入等を図ったが、 今後も日本船舶等の確保を図っていく必要がある。
一方で、少子高齢化の進展に伴い、物流事業の現場 では、トラック・ドライバーや船員等の担い手が減少 しており、質の高い物流を支えるための労働力の育成・ 確保等の適切な対応が必要となっている。
?災害時の早期復旧に向けた体制整備等 大規模災害等が発生した場合の国民生活の維持や産 業活動への影響の軽減を図るため、災害に強い交通網 の確保、代替輸送の確保、災害時の道路、鉄道、港湾 等の早期復旧に向けた体制整備や業務の継続のための 計画策定等を推進し、防災・減災対策を着実に進めて いく必要がある。
?消費者ニーズを踏まえた流通システム 食の安全への消費者の関心が高まっている中、卸売 市場等における品質管理の徹底のためのコールドチェー ンシステム〈※ 24 〉の整備や産地から消費に至る一連の 品質・衛生管理水準の向上、流通機能の高度化を図る ための流通システムの整備に努める必要がある。
2 新たな総合物流施策大綱策定の必要性 これまで、総合的な物流施策に関する大綱は、その時々 の経済社会の変化に適確に対応した物流の在り方とそ の意義を明確にし、省庁間の連携を図りながら中長期 的な物流施策や物流行政の指針を体系的に分かりやす く提示することを目的として策定してきた。
今後の物 流施策の展開に当たっては、行政内部での省庁間連携 や地方公共団体との連携を更に強化することに加えて、 官民連携や民間の業種を超えた連携、さらには、広く 国民の理解と協力を得ていくことが重要である。
こう した連携・協働による広範な施策の推進のより所とし て、また、国民への情報発信を担うものとして、大綱 が果たすべき役割への要請は強まっている。
17 年大綱は、平成 21 年が目標年次となっているが、 この間の様々な経済情勢等の変化や課題を踏まえて、 新たな総合物流施策大綱を策定し、今後の物流施策や 物流行政の指針と多様な関係者間の連携の枠組みを示 す必要がある。
なお、 17 年大綱を踏まえつつ、政府としては、「貿 易手続改革プログラム」(アジア・ゲートウェイ戦略会 議)や「国際物流競争力強化のための行動計画」(国 ※ 19 KS/RA(Known Shipper/Regulated Agent) 制度:航空機に搭載する航空貨物について、ICAO (国際民間航空機関)国際標準等に基づき、高いセキュ リティ・レベルを維持しつつ、物流の円滑化を図るため、 荷主から航空機搭載まで一貫して航空貨物を保護する制 度。
この制度において、適切な保安措置が実施できる航 空貨物利用運送事業者または航空運送代理店業者を国土 交通省航空局長が「特定航空貨物利用運送事業者」また は「特定航空運送代理店業者」として認定。
※ 20 改定航空保安対策基準:米国同時多発テロ以降、 全国の空港警戒態勢を最高水準(フェーズE)に引き上 げて、厳格な保安検査(旅客検査、受託手荷物検査、航 空貨物等)を開始。
平成 17 年4月より、航空保安対策基 準を強化(フェーズEの恒久化=現行のレベル?へ移行)。
※ 21 先進安全自動車(ASV):エレクトロニクス技 術等の新技術を利用してドライバーの安全運転を支援す る装置を搭載した自動車。
※ 22 運輸安全マネジメント:平成 18 年 10 月から開始。
運輸事業者が、経営トップから現場まで一丸となって、い わゆる「PDCAサイクル」の考え方を取り入れた形で安 全管理体制を構築し、その継続的取り組みを行うととも に、事業者が構築した安全管理体制を国が評価する「運 輸安全マネジメント評価」を実施することにより、運輸 事業者の安全風土の構築、安全意識の浸透を図るもの。
※ 23 トン数標準税制:法人税等について、毎年の利益 に応じた納税額の算出に代わり、船舶のトン数に応じた 一定のみなし利益に基づいて納税額を算出する税制。
世 界の主要海運国でも同様の税制が導入されている。
※ 24 コールドチェーンシステム:生鮮食料品や冷凍食 品等について、品質保持のため、低温管理を維持したま まで輸配送するシステム。
AUGUST 2009 26 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 際物流競争力パートナーシップ会議)を策定し、我が 国における通関等の手続改革や、多数の日本企業が生 産拠点等を置くアジア諸国における物流システムの効 率化・グリーン化等を進めてきた。
【本誌注3】新たに 大綱を策定する中で、こうしたプログラム・計画や「新 経済成長戦略のフォローアップと改訂」(平成 20 年9月 19 日閣議決定)に基づき推進している内容も包含し、 より総合的・一体的な施策推進体制を確立する。
今後推進すべき 物流施策の基本的方向性 1 目標と視点 17 年大綱を策定して以降の施策の進ちょく状況、経 済社会の変化、物流を取り巻く新たな課題への対応の 必要性を踏まえ、今後、 (1)グローバル・サプライチェーンを支える効率的物 流の実現 (2)環境負荷の少ない物流の実現等 (3)安全・確実な物流の確保等 を目標とし、平成 25 年(2013年)を目標年次として、 物流施策の総合的・一体的推進を図ることとする。
その際、物流関連社会資本の整備に当たっては、我 が国財政の厳しい現況を踏まえ、事業評価の厳格な実 施、コスト縮減・事業の迅速化等により、重点的、効 果的かつ効率的に実施するとともに、既存社会資本の 有効活用を進めることが重要である。
なお、【本誌注4】平成 20 年秋以降、米国の金融危 機に端を発する世界的な景気後退が進行し、物流にも 大きな影響を及ぼす事態となったが、物流関連を含め た経済対策を機動的に実施しつつ、中長期的視点から 上記施策を着実に進めていくこととする。
2 基本的方向性 (1)グローバル・サプライチェーンを支える 効率的物流の実現 我が国企業は、アジアその他の新興国の経済成長を 踏まえ、その調達・生産・販売する財それぞれの性質 に応じ、サプライチェーンのグローバル化を進めている。
こうした中、我が国企業がその国際競争力を維持・強 化していくためには、日本国内を含むアジア地域を中 心に各国に分散する事業拠点それぞれにおけるコスト の低減のみならず、事業拠点間のサービスリンク・コ スト(輸送コストや情報伝達コスト)の低減が、より 一層重要である。
【本誌注5】 また、こうした企業によるグローバル規模での最適 立地戦略が進む中で日本が事業活動を行う魅力的な拠 点として選ばれ続けるために、また日本国内に立地す る企業のグローバル規模での取引が拡大していくために、 日本発着貨物や国内輸送貨物に係る輸送コストの低減 等に向け、日本国内の物流環境も不断に改善され続け る必要がある。
さらに、近年、テロ対策や核不拡散についての国際 的な要請が強まっており、物流においてもセキュリティ の強化が重要になってきているが、サプライチェーン のグローバル化に対応した物流効率化との両立に取り 組む必要がある。
このため、日本とアジア等海外の政府・自治体、国 内外の荷主・物流事業者・施設管理者、国際機関等 の多様な関係者が連携し、国際・国内を問わずグロー バル・サプライチェーンの上に存在する物流のボトルネッ クを解消し、企業のグローバル・サプライチェーンを支 える国際・国内一体の効率的な物流の実現に取り組む 必要がある。
?アジアにおける広域的な物流環境の改善 これまで、日中韓物流大臣会合、日ASEAN交 27 AUGUST 2009 第2 【本誌注3】現状では国家的物流戦略の推進会 議が三つあり、テーマの重複も見られる。
これ に対してメンバーに選出された民間人から、似 たような会議は整理して統合しろとの声も上がっ ている。
【本誌注4】緊急景気対策に便乗した政治家の 利益誘導や縦割り予算の増額によって、地方へ のバラマキが復活している。
公共事業=地方景 気対策というアプローチは依然として変わって いない。
【本誌注5】お隣の韓国では物流コストだけで なく、企業の拠点立地や輸出競争力に大きな影 響を与える関税コストについても各国との二国 間協定(FTA:自由貿易協定/EPA:経済 連携協定)の締結に向け政府主導でスピーディ に動いている。
日本は国内農業の保護などの制 約が強く、出遅れが指摘されている。
通大臣会合、国際物流競争力パートナーシップ会議を 通じて、アジアにおける物流環境に係る課題の抽出や 人材育成の取組み等を推進してきた。
今後も、これら の枠組み等を始めとする各種の政府間対話等を通じ、 複合一貫輸送の推進、物流に関する諸制度・サービス の改善、貿易手続円滑化や物流管理技術の向上等に向 けた協力を引き続き強力に進め、物流環境の改善に取 り組む必要がある。
また、アジア域内の主要都市・産業集積を結ぶ主 要国際物流ルートについて、「東アジア産業大動脈構 想〈※ 25 〉」に基づき、域内政府等と協力・協調し、イ ンフラ開発と産業開発の一体的な整備を進める必要 がある。
?効率的でシームレスな物流網の構築【本誌注6】 ロジスティクス機能を担う港湾・空港については、 迅速で低廉な物流を確保するために、スーパー中枢港 湾プロジェクトの充実・深化、大型船舶に適切に対応 するための産業港湾インフラの刷新、港湾関連手続の 電子申請化、航空自由化の推進による航空貨物ネット ワークの拡充、大都市圏拠点空港の物流機能強化等、 ハード・ソフト両面において取組みを進める必要があ る。
また、効率的な物流を目指し、高速道路の料金引 下げ等、既存の高速道路ネットワークの有効活用に引 き続き取り組むとともに、国際・国内の輸送モードや 物流活動の拠点等の有機的連携に資する道路ネットワー クの整備及び選定ルートの利用促進に向けた新たな取 組みが必要である。
さらに、鉄道の輸送力増強、内航 海運・フェリーの競争力強化について具体的な取組み を進めることも必要である。
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」 に基づく、社会資本と連携した物流施設の整備及び当 該施設を利用した物流の総合化・効率化や、「流通業 務市街地の整備に関する法律」による流通業務団地等 及び土地区画整理事業の活用による物流施設の配置と 供給も、引き続き必要である。
?貿易手続や物流管理のIT化と 国際的情報連携の構築 貿易手続や物流管理のIT化の推進は、取引に関す る様々な情報の集積・共有・活用を通じて、取引に係 る各種のリスクの低減やリードタイムの短縮等、多く のメリットが期待される。
こうした観点から、平成 20 年 10 月に稼働したシング ルウィンドウについては、引き続き、関係者にとって 全体最適な業務プロセスが実現するよう手続の簡素化、 関係当局間での情報共有・活用、国際システム連携の 推進等に向けて、国・地方一体となって、継続的な見 直しを行っていく必要がある。
その中で、国際物流に おける「中核となる基幹システム」について、国の目 指すべき方向性やプライオリティを明確にし、NAC CSと民間の物流関連システムを連携し、中核となる システムを構築していく必要がある。
また、電子タグ〈※ 26 〉等の技術を活用し国際物流管 理情報の可視化を推進するため、物流事業者や荷主等 の間で貨物の位置情報を共有するための貨物管理コー ド〈※ 27 〉の国際標準化等、企業間情報連携基盤の構築 について検討を進める必要がある。
?セキュリティ確保と物流効率化の両立 人材育成・通関・環境規制等ソフトのインフラを一 体的に整備し、国境を越えた総合的な開発を行うもの。
米国の同時多発テロを契機に平成 16 年7月に改正S OLAS(海上人命安全)条約が発効し、また、貨 物セキュリティ確保と物流効率化との両立が、 21 世紀 の国際物流にかかわる最大の課題の一つとして改め て認識された。
こうした中、米国・EUを始め世界 各国・地域は、輸入貨物に対するセキュリティ管理規 制を大幅に強化しつつ、コンプライアンスに優れた事 業者に対しては比較的簡便な取扱いを行う新たな仕 組みを、国際的な相互承認も視野に入れて検討・構 築している。
我が国においても、国際貿易の安全確保と円滑化 ※ 25 東アジア産業大動脈構想:東アジア・アセアン経済 研究センター(ERIA)、アジア開発銀行(ADB)、ASEAN 事務局が関係国と協力して策定するマスタープランに基 づき、東アジアにおいて物流・港湾・工業団地・電力網 等ハードのインフラ、人材育成・通関・環境規制等ソフ トのインフラを一体的に整備し、国境を越えた総合的な 開発を行うもの。
※ 26 電子タグ:情報を記録したICチップを付けて、電 波や磁気等で情報を読み取り、書き込むことができる電 子荷札。
※ 27 貨物管理コード:コンテナ等の貨物を他の貨物と 区別するため付番される識別番号のこと。
AUGUST 2009 28 【本誌注6】本大綱の実行計画として策定され た「総合物流施策推進プログラム」によると、 国交省・経産省は国際複合一貫輸送のリード タイムについて詳細にモニターし、輸送および 手続きにおける具体的な課題を抽出、中国やア セアン諸国との二国間政策対話を通じてボトル ネックを解消し、その成果を検証し継続的改善 を進めていくとされている。
政治と物流──荷主主導に舵を切れ を両立させるため、貨物のセキュリティ管理と法令遵 守の体制が整備された事業者の貨物に関する税関手続 を迅速化・簡素化するAEO制度【本誌注7】を導入 し、当該制度の対象を輸出入者、倉庫業者、通関業者、 運送業者及び製造業者へと順次拡大している。
引き続き、AEO制度の利用状況や諸外国の制度の 進展等を踏まえ、貨物のセキュリティ管理を確保しつつ、 物流全体のリードタイムの短縮やコスト削減等に向け、 AEO制度の利用・運用状況や効果を見極めつつ、貿 易円滑化と貨物セキュリティ確保の両立を図る見地に 立って、AEO制度等、保税・通関制度等の在り方を 検討し、必要な見直しを継続的に行う必要がある。
また、主要貿易相手国との間で、AEO制度の相互 承認の実現に向け、政府間協議等を推進する必要がある。
国際港湾施設においては、ヒト・モノの出入を管理 するシステムの構築等の検討を推進するとともに、メ ガポート・イニシアティブ〈※ 28 〉への対応に向けた検 討を進める必要がある。
また、航空貨物については、KS/RA制度の適切 な運用によりセキュリティ確保を図る必要がある。
(2)環境負荷の少ない物流の実現等【本誌注8】 ?低炭素型物流〈※ 29 〉の実現 京都議定書第一約束期間〈※ 30 〉が開始し、現在交 渉中の平成 25 年(2013年)以降の次期枠組みを見据え た地球温暖化対策の必要性が一層増大した現在、低炭 素型物流の実現は避けては通れない大きな課題となっ ている。
低炭素型物流の実現に向けては、新技術の開発を含 め、陸海空の輸送モードごとに総合的な対策を図ると ともに、モーダルシフトを含めた輸送の効率化、低環 境負荷の港湾・物流システムの構築、輸送機器の低炭 素化、情報化や標準化の推進を図る必要がある。
あわ せて、環状道路やバイパスの整備、交差点の立体化、 開かずの踏切の解消、ITSの推進、高速道路の多様 で弾力的な料金施策、荷捌き駐車対策、信号制御の高 度化等の交通流対策により、自動車の貨物輸送による 環境負荷の低減、都市内物流の効率化を推進する必要 がある。
また、幹線物流全般にわたる物流結節点の集約・ 再配置、巡回集荷(ミルクラン)等、物流結節点と末 端との間の集配の効率化の推進、複数荷主による共 同輸配送や往路と復路を組み合わせた輸送効率の向上 に当たって、関係者による幅広い連携・協働が求めら れる。
加えて、ユーザーである荷主や消費者が低炭素型の 物流サービスを提供する物流事業者を積極的に選択す ること、地方公共団体、荷主、物流事業者等の地域 の多様な関係者が連携して取り組むこと等を通じ、社 会全体で物流の低炭素化を進めることが期待される。
さらに、グローバル・サプライチェーン全体の環境 負荷低減に向け、グリーン物流関連の技術・ノウハウ の国際的な普及等を通じ、グリーン物流の国際的連携 を進める必要がある。
こうした低炭素型社会の構築への取組みは、我が国 をめぐる環境負荷の低減に資するのみならず、我が国 が世界規模での環境改善に積極的な貢献を果たすこと につながる。
さらに中長期的には、多種多様な革新的 な省エネ・環境技術の開発・応用を誘発し、我が国産 業の国際競争力強化につながることも期待される。
?効率的な静脈物流の構築 静脈物流に関しては、臨海部等の適切な場所にリサ イクル施設・最終処分場の立地を集約すること等を含 め、物流面での環境負荷低減のための工夫が求めら れる。
また、静脈物流の効率化・高度化は、CO2排出量 抑制や循環資源の利用促進等にも大きく貢献するため、 国・地方公共団体は、各事業者間による更なる連携強 化等の施策に、官民一体となって強力に取り組んでい くことが必要である。
※ 28 メガポート・イニシアティブ:世界の主要港に放射 性物質検知施設を設置することにより、港における積荷 の検査能力を強化し、核物質その他の放射性物質の拡散 を防止することを目的とする、米国政府が推進する取組 み。
※ 29 低炭素型物流:都市内物流の効率化やモーダルシ フトの推進等による環境負荷の小さい物流。
※ 30 京都議定書第一約束期間:2008 年から2012 年 までの5年間。
京都議定書では、この期間において、温 室効果ガスの排出量を先進国全体で1990 年レベルと比 べて少なくとも5%削減することを目的として、国ごと に法的拘束力のある数量化された約束が定められ、我が 国については6%削減が定められた。
29 AUGUST 2009 【本誌注7】現状のAEOは荷主企業から「ベ ネフィットが見えにくい」との批判がある。
認 可を取得できるような事業者はもともと通関上 のトラブルが少ないため従来から優遇されてき た。
国によって制度設計が異なることも問題の 一つ。
二国間の相互認証で障害になる。
管理 組織も欧米はセキュリティ専門部隊を設けてい るが、日本では財務省が通関と一緒に管理して いる。
【本誌注8】九〇年の「物流二法」に始まった 物流事業の規制緩和が山を越えたことで、国交 省の仕事は環境負荷低減や安全対策を始めとし た社会的規制の強化に完全に軸足を移している。
国交省にとって環境対策は予算確保の理由とし て有効であるだけでなく、これまで荷主企業に 対して弱い立場に置かれてきた物流事業者の事 業支援を正面から打ち出せる格好のテーマとなっ ている。
(3)安全・確実な物流の確保等 安全・確実な輸送の確保は物流に欠かすことのでき ない重要な要因である。
輸送の手配と実施の連携強化、荷主の協力や優良事 業者の認定・監督について、国際物流・国内物流とも にその充実と新しい対応が求められており、コンプラ イアンスの徹底、利用運送事業者と実運送事業者の連 携の強化等を進める必要がある。
さらに、トラック輸送の安全対策については、AS V技術等を活用した大型トラックの車両安全対策、ト ラック運送事業者の運行管理の徹底や監査の充実、運 輸安全マネジメントの推進、安全・安心な道路交通環 境の実現に向けた交通安全施設等の重点的な整備、運 転者教育を始めとする交通事故防止等を引き続き推進 する必要がある。
主要な海上輸送路の安全対策についても、引き続き、 沿岸国との協力等を通じた航行安全の推進や海賊行為 への適切な対応を図る。
また、食の安全への消費者の関心が高まっている中、 卸売市場等における品質管理の徹底のためのコールド チェーンシステムの整備や産地から消費に至る一連の 品質・衛生管理水準の向上、流通機能の高度化を図る ための流通システムの整備を推進する必要がある。
さらに、大規模な地震の発生時や、豪雨・豪雪等の 頻発する自然災害時に備え、災害に強い交通網の確保、 災害時の道路、鉄道、港湾等の早期復旧に向けた体制 整備等、安全・安心の確保に向けた防災・減災対策の 総合的な実施が求められている。
加えて、将来にわたって質の高い物流サービスを安 定して提供するためには、労働力の確保・育成策が重 要と考えられ、労働環境の改善や地位の向上のための 対策が必要である。
3 施策の推進体制の在り方 (1)連携・協働の必要性【本誌注9】 物流システムは、荷主、物流事業者、施設管理者、 行政機関、地域住民、消費者、海外の国や企業等、 多様な関係者の関与によって成立するため、課題の解 決のためには、多様な関係者が密接に連携を図りなが らそれぞれの役割を適切に遂行する不断の努力が必要 である。
これを踏まえ、物流施策の推進に当たっては、経済 活動全般や企業活動にとっての物流の果たす役割の重 要性を関係者が広く認識し、物流施策の改善に向けて 積極的に提案しながら、それぞれの主体の取組みが最 大限効果を発揮できるよう連携・協働を深めながら取 り組むことが重要である。
?国民の理解と協力 国民や消費者の間でも、地球環境保全、交通の安全、 食の安全・安心確保等に対する関心が高まっているが、 これらに対応するための企業のモーダルシフト、低公害・ 低燃費車の導入、共同輸配送等の取組状況について、 分かりやすい情報発信を行い、取組みに対する国民の 理解と協力を得ていく必要がある。
また、消費者が環境問題の改善に主体的に参画する 「グリーン・コンシューマー」として、自らの生活を環 境にやさしいライフスタイルに変えていくことが必要 である。
このため、「低炭素社会づくり行動計画〈※ 31 〉」 に基づき、商品の製造や食品の生産から輸送、廃棄に 至る過程や、サービスの利用に伴って排出される温室 効果ガス排出量を表示するカーボン・フットプリント制 度〈※ 32 〉等の「見える化」によって、消費者が的確な 選択を行うための情報を提供していく。
これにより、 消費者が企業の環境配慮への取組みに注目し、商品や サービスの購入等に際して、環境改善貢献企業を選択 していくことが、グリーン物流の推進、さらには、経 済社会全体をグリーン化していく大きな原動力になる ものと考えられる。
※ 31 低炭素社会づくり行動計画:平成 20 年7月 29 日閣 議決定。
経済的手法を始めとした国全体を低炭素化へ動 かす仕組みや革新的な技術開発、ビジネススタイル・ラ イフスタイルの変革に向けた国民一人一人の行動を促す ための取組みについて策定。
※ 32 カーボン・フットプリント制度:商品・サービスの ライフサイクル全般で(原材料調達から廃棄・リサイクル まで)排出される温室効果ガス排出量をCO2量に換算 し、表示すること。
【本誌注9】本大綱で国交省が最も強く主張し たかったパートだと思われる。
本大綱の文面で は物流の社会的役割の重要性と利害関係者の協 力の必要性が穏当な表現で書かれているに過ぎ ないが、具体的な実行計画である「総合物流 施策推進プログラム」には、「店着価格制」を 改めて商品価格と物流コストを分離すること、 さらには「過度な多頻度補充の見直し」など、 取引条件の改善を推進することが明記されてい る。
AUGUST 2009 30 政治と物流──荷主主導に舵を切れ 【本誌注 10 】「過積載や過労運転を招来」とい う表現は、「物流の委託者である荷主」に向け られている。
さらに実行計画の「総合物流施 策推進プログラム」には、公正取引委員会に対 して、「独占禁止法(物流特殊指定)及び下請 法の周知並びに執行を通じ、物流に係わる取引 の適正化を推進し。
その実施に必要な体制整備 に努める」ことが明記されている。
【本誌注 11 】「総合物流施策推進プログラム」 の原文および概要は国交省のホームページで ダウンロードできる。
http://www.mlit.go.jp/ report/press/tokatsu01_hh_000033.html ※ 33 流通加工:入庫した貨物に対し、検品・ラベル貼 り・値札付け・組み立て・箱詰め・梱包・方面別仕分け 等を行うこと。
※ 34 在庫管理:物流事業者が取引企業のニーズに応じ て在庫管理を行うこと。
Vender Managed Inventory (納 入業者側が納入先であるメーカーや小売店に代わって在 庫を管理し、必要に応じて部品や製品の自動補充をする こと)等の例が増加している。
保税地域内の施設でVM Iを行えば、輸入時ではなく、補充のための出庫時にお いて関税納付することになり、キャッシュフロー上のメ リットがある。
※ 35 3PL(サードパーティロジスティクス):荷主に 代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流シス テムの構築について包括的に受託し、実行すること。
?荷主と物流事業者、インフラとの連携・協働 民間企業においては、市場の競争環境の下、創意工 夫をこらした取組みにより、高度化・多様化した消費 者ニーズに対応するとともに、環境問題や安全対策等、 社会的課題に適確に対応していくことが期待される。
効率的で環境負荷の小さい物流システムの構築に向 け、グリーン物流パートナーシップや多様な関係者に よる各種協議会の活用を引き続き推進することが重要 である。
また、過積載や過労運転を招来しない【本誌 注 10 】安全なトラック輸送の実現等のためには、物流 の委託者である荷主と受託者である物流事業者とのパー トナーシップを構築し、関係行政機関も含めて、課題 の解決に向けた取組みを進めることが重要である。
特に、 荷主が経営のリストラを進める中で、自らの経営資源 を本業に集中し物流部門をアウトソーシングする傾向 がみられるが、このような動きの中で、物流事業者が 荷主ニーズにこたえる効率的な物流システムを積極的 に提案し、輸送のみならず、流通加工〈※ 33 〉、在庫管 理〈※ 34 〉等、包括的に業務を受託して、物流のトータ ルコストの低減や自らのビジネス機会の拡大につなげ る3PL〈※ 35 〉の推進等を図る必要がある。
?地域レベルでの関係者の連携・協働 国際物流と国内物流が一体となった効率的・総合的 な物流体系を構築していくためには、地域ごとに、関 係行政機関、荷主、物流事業者等の参画による協議の 場を設け、主要港湾・空港・道路・鉄道等のアクセス も含めた効率化等の取組みを進めるため、ボトルネッ クの抽出と、その解消のための具体策の検討を行い、 地域からの知恵と工夫に富んだ実効性のある対策を講 じていく必要がある。
都市内物流対策についても、広く地域の関係者の参 画による協議の場を設け、輸配送の共同化、荷捌き施 設や駐車帯の設置、きめ細かな駐車規制、混雑時間帯 を避けるための集配時間帯の設定等の対策を講じてい く必要がある。
特に、地方公共団体は、まちづくり等 の面で、物流施策との関係が密接であり、引き続き積 極的な参画が必要である。
これらの対策により、交通 の安全の確保や混雑の緩和、環境問題の改善が図られ ることは、歩いて楽しいまちづくりにもつながり、中 心市街地の活性化や都市観光の振興にも寄与すること となる。
(2)今後の推進体制 ?国における推進体制 関係省庁の関係局長等による「総合物流施策推進 会議」を通じ、施策の総合的・一体的推進に向けた連携・ 協働を一層強めることとし、今後推進すべき具体的な 物流施策をプログラム【本誌注 11 】として取りまとめ、 その実現に努めることとする。
上記プログラムについては、「目標設定・実施・評価・ 反映(PDCA)」方式により、官民で協働し、毎年 度実施状況のフォローアップを行い、必要に応じて改 訂を行うこととする。
?地域における推進体制 17 年大綱の策定以来、国の地方支分部局、地方公 共団体、荷主、物流事業者等による地域の実情に応じ た連絡体制の下、総合的な施策の推進を図ってきた。
また、主要な港湾・空港を抱える各地域において、 国の地方支分部局、地方公共団体、経済団体、荷主、 物流事業者等の実務者が、国際・国内物流の一体的 効率化策を検討する「国際物流戦略チーム」を設置し、 地域の実情を踏まえた施策の推進を図ってきた。
今後は、これまでのこうした連絡・連携体制を不断 に見直しつつ、物流現場で生じる課題の収集や施策の 立案と効果的な実施に向け、一層の連携強化を進める 必要がある。
31 AUGUST 2009
