2009年9月号
特集

事例で学ぶ現場改善 《第80回》 米国市場報告 米トランスプレイス社の成長戦略

SEPTEMBER 2009  36 米大手陸運六社の輸送管理を統合  米トランスプレイス社は、輸送管理サービスを柱 とするノンアセット型3PLだ。
社歴はまだ一〇年 に満たないが、二〇〇八年度には三〇億ドル分の 輸送を直接管理し、国内輸送ネットワークを担う大 手の一角を占めるまでに成長してきている。
 流通加工も含めた輸送管理の年間取扱件数は、 発送・荷受けの数が四〇〇万件、オーダー数が一 五〇〇万件に上る。
正味売上高は九億七五〇〇万 ドルで営業利益が七〇〇〇万ドル、従業員は五二 〇人を超える。
 同社は株式を公開している大手トラック運送会 社六社のノンアセット型ロジスティクス部門が合併 して二〇〇〇年に誕生した。
オペレーションの基 礎になるのは、ウェブベースのオンデマンド型TM S(輸送管理システム)である。
図1に示したよ うに、例えば一週間に発生した荷物の到着遅れの 原因をウェブ上で照会することができる。
 ここ数年でトランスプレイスのサービスメニュー は大幅に拡がった。
すなわちリード・ロジスティク ス・プロバイダー(LLP)としての機能、ネット ワーク輸送管理、サプライチェーン・コンサルティ ング、オンデマンドのTMSテクノロジー、求貨求 車サービス、複合輸送、国際輸送管理、等々であ る。
 主な得意先にはアナズ・リネンズ(ベッドリネ ン、家庭用品)、カミンズ(ディーゼルエンジン)、 コット・ビバレッジ(清涼飲料水)、デルモンテ・ フーズ(食品)、ザ・ホーム・デポ(ホームセンタ ー)、グラットフェルター(製紙)、ロックテン(包 装材)、サニー・ディライト・ビバレッジ(清涼飲 料水)、そしてウォルマートなどがある。
〇八年に は七件の大口顧客を獲得したが、〇九年にはその 倍以上の成果を見込む。
 輸送需要の変動に対応するため、ノンアセット ベースの求貨求車オペレーションの充実に力を注い でいる。
同部門はアリゾナ州スタットガートとテネ シー州メンフィスに拠点を置き、現在一〇〇人を超 えるスタッフを擁する。
同部門の〇八年の売り上げ はおよそ三億五〇〇〇万ドルで、一八万件以上の 配送を管理している。
配送の約六割は冷凍、もし くは冷蔵車だ。
 設立以来、トランスプレイスは国内輸送管理をメ ーンとする3PLであったため、海外ではあまり 知られていなかった。
そこで国際輸送管理サービ スに乗り出すにあたり、国際サービス部門担当の 原因不明 ( 件数) 54 14 4 2 2 2 1 1 図1 到着遅れの原因(2009 年6 月12 日〜6 月18 日) 60 50 40 30 20 10 0 荷受け側の勘違い 荷受け側の理由 他の輸送手段が原因 道路状況 荷主側の理由 配送ミス 経由地が原因 米トランスプレイス社の成長戦略  米トランスプレイス社は大手トラック運送会社6社の 配車管理を統合して設立したノンアセット型の3PLだ。
荷主企業の配車管理を一括して請け負うことで、物流 品質の向上と輸送費削減の両立を実現している。
海外 事業やコンサルティング事業にも進出し逆風下でも業績 を伸ばしている。
米アームストロング&アソシエイツ エヴァン・アームストロング 社長 米国市場報告  特集 37  SEPTEMBER 2009 役員としてケビン・ヒギンズ氏を招いた。
同氏は主 にウォルマートの国際サプライチェーン部門で活躍 し、国際輸送管理について幅広い経験を持つ。
 トランスプレイスは現在、航空/海上フォワーデ ィングおよびNVOCC(非船舶運航業者)のラ イセンスを持ち、〇八年三月にはC─TPAT(テ ロ行為防止のための税関産業界提携プログラム)の 認証も得ている。
またアジア太平洋地域と北米間 の輸出入サービスだけでなく、北米─欧州および 北米─ラテンアメリカ間の輸送管理も行う。
 この分野でまず手がけたのが、既存顧客の輸出 入オペレーションの改善である。
そうしたところか ら始めた国際輸送管理サービスの取り扱いは、〇 八年には三〇〇〇TEU(二〇フィートコンテナ換 算)を超え、〇九年には六〇〇〇TEUに達する 見込みだ。
 国際的なオペレーションを行うため香港に設立さ れたトランスプレイス・アジアは、アジア太平洋地 域・欧州・中東の二五カ国、七七カ所を網羅する ため、代理店三社と契約を結んでいる。
 また、通関業務についてはカーマイケルおよび マースクロジスティクスと提携している。
システム 系は二種類のプラットフォームに統合されており、 「Log-net」と呼ばれるシステムがグローバル・オー ダー/シッピングの管理および可視性を担当し、N VOCCとフォワーディング機能については「IE S」が管轄する。
事業領域を多方面に拡大  〇八年二月、トランスプレイスはメキシコにトラ ンスプレイス・メキシコとトランスプレイス・デ・ メキシコの二社を設立した。
同時に新たなオペレー ションを立ち上げるため、エクスペダイターズ・イ ンターナショナル・メキシコで管理職についていた 二人のベテラン、トロイ・ライリー氏とホセ・ミナ ーロ氏を招聘した。
 主なサービスを以下に挙げる。
メキシコ国内/国 境越えのトラック輸送管理、海上/航空輸送管理、 米国/メキシコ税関での通関、越境手続き、保管/ 配送、テクノロジー・ソリューション(TMS)、コ ンサルティング、等々である。
陸上輸送管理で取り 扱う輸送形態はドライバン、平台、冷蔵・保護サ ービス、および複合輸送である。
 トランスプレイス・メキシコの従業員は現在十三 人に過ぎないが取り扱う物量は急増している。
〇 八年度にトラック二六〇〇台分だった陸上輸送は 〇九年度八〇〇〇台分に。
米国・メキシコ間の通 関件数は一四〇〇件から四〇〇〇件に、海上輸送 は二〇TEUから七〇〇TEUに、それぞれ増加 する見込みだ。
 拠点としては米国テキサス州ラレードに位置する 約一万平方メートルの倉庫を併設するメキシコ本部 に加え、メキシコのグアダラハラには輸送管理オペ レーションセンターを、メキシコシティ、ヌエボラ レード、モンテレー、プエブラの各都市には販売拠 点を構えている。
(図2)。
 メキシコにおける顧客はBDT(情報サービス)、 コット・ビバレッジ、デルモンテ・フーズ、ディレ クTV(衛星放送)、フレゼニウス・メディカル(医 療機器)、ガーディアン・ビルディング・プロダクツ (建築資材)、マイクロソフト、ネクステージ・メデ ィカル(医療機器)、ペース・インダストリーズ(プ ラスチック製品)、ポータクール(空調機器)、ザ・ ホーム・デポ、UFPC(食品卸)等である。
 〇八年にリクルートされたマシュー・ハーディン グ氏は、「トランスプレイス・コンサルティング」事 業を立ち上げ、ベンチマーキング、調達サービス、 サプライチェーン・ネットワークの分析と設計など、 リーン・シックスシグマの手法を用いたコンサルテ ィングを行っている。
 昨今の世界的大不況により、輸送サービスの委 託先選定サービスへの需要が増えている。
〇八年、 ハーディング氏が率いるコンサルティンググループ の取扱高は、業者選定サービスの一環として行うコ ンペを通じ、運送費ベースで一五億ドルに上った。
〇九年第1四半期には、荷主企業一五社、年換算 六億ドル相当のコンペを取り仕切った。
 ハーディング氏によれば、最近行われた数々のコ ンペでの輸送費削減幅は、八%から二〇%にも上 ヌエボラレード モンテレー マッカレン ピエドラスネグラス コロンビア ラレード グアダラハラ マンザニーヨ トランスプレイス・メキシコ 代理店メキシコシティ プエブラ ベラクルス エルパソ ノガレス シウダードファレス 図2 トランスプレイス・メキシコの各拠点とエージェント SEPTEMBER 2009  38 るという。
 各荷主ごとのコンペに加え、トランスプレイスは つい最近、三度目となるマルチカスタマー・コンペ を実施した。
この〇九年のコンペでは、それぞれ の物流費が年間一二〇万ドルから二五〇〇万ドル の規模を持つ、荷主五社のトラック輸送が対象とな った。
このマルチカスタマー・コンペでは八九六万 ドル、おそよ一四%の費用削減が見込まれていた。
 マルチカスタマーの複合輸送ソーシングは現在準 備中である。
コンサルティング・サービスの主な顧 客はデルモンテ・フーズ、ドール・フード(食品)、 エブロ・ノースアメリカ(食品)、エナジャイザー (電池)、ザ・ホーム・デポ、サーマダイン(工業用 機器)等となっている。
 ケーススタディ:デルモンテ  ウォルマートの納品条件をクリア  デルモンテ・フーズはペットフードと家庭用食品 でよく知られたメーカーである。
ブランド名として Meow Mix、Kibbles n"Bits"Del Monte、StarKist などを持ち、ウォルマート、コストコ、サムズ・ク ラブ等のチェーンストアが製品を取り扱っている。
北米での売り上げが約九割を占めるため、米国内 をもれなくカバーする輸送管理がポイントとなる。
 トランスプレイスと契約する以前、デルモンテは ウォルマートが求める輸送・保管条件をクリアする のに大きな問題を抱えていた。
デルモンテに課せら れた輸送管理品質の主な指標は二つあり、一つは 充足率九六%での時間指定配送、もう一つが一カ 月間に配送センターでの欠品が五五件以下という ものであった。
 〇六年、こうした課題に取り組むため、チェーン ストアの各配送センターへのデリバリーを、既存の 3PLからトランスプレイスに切り替えた。
デルモ ンテの配送は、二七カ所の配送センターをはじめ、 数多くの工場やパッケージング協力会社などからの ものもある。
トランスプレイスは〇六年七月から国 内輸送の一部を請け負い、それから二カ月以内に デルモンテの顧客であるチェーンストア専門のサー ビスチームを立ち上げた。
 現時点でこのオペレーションに従事しているのは 一六人ほどである(この数は組織的なオペレーショ ンの効率改善によって漸次減少しつつある)。
この チームはトラック輸送、複合輸送、鉄道輸送、積 み合せ輸送(LTL輸送)を利用し、年間二〇万 件以上の出荷/在庫補充を取り扱っている。
 トランスプレイスがデルモンテと協働して目指し たのは、カスタマーサービスのレベルと繁忙期のキ ャパシティ計画の精度を引き上げるということだっ た。
デルモンテでは一年を通じて主に三種類の繁忙 期が発生する。
パッケージングに追われる時期、需 要がピークを迎える時期、そして四半期の締めの 時期だ。
 需要予測に対し利用可能な輸送キャパを確定す る、キャパシティ計画の案件は進行中であったが、 トランスプレイスが改良と導入を主導した。
導入し て一年が経ち前年の水準と比較したところ、デル モンテでは臨時や緊急の輸送費用が大幅に圧縮さ れた。
また自社の生産施設向け配送において、輸 送機器の不備等を原因とする到着遅れが一掃され た。
 キャパシティ計画については現在、すべてトラン スプレイスに移管されている。
さらにデルモンテは、 ウォルマートが課す二つのロジスティクス指標の達 成維持に頭を悩ませることもなくなった。
 アーカンソー州ベントンビルにあるデルモンテの 事務所にカスタマーサービス専任のマネージャーを 派遣することと、きめ細かい報告でサプライチェー ンにおける可視性を向上させることで、トランス プレイスはデルモンテの時間指定配送サービスの達 成率を、九〇%以下から九八%以上に向上させた。
また欠品率も、現在はウォルマートの要求基準をク リアする水準に落ち着いている。
 ケーススタディ:サニー・ディライト  物流品質向上と輸送費削減を両立  サニー・ディライト・ビバレッジズは〇四年、プ ロクター&ギャンブル(P&G)から分社化した企 業である。
五億五〇〇〇万ドルを売り上げる“新 しい”企業として、販売・注文管理、生産計画、 輸送管理の各分野で自前のビジネス・プロセスを立 ち上げることが急務だった。
 3PL選定の正式なコンペを実施した後、サニ ー・ディライトはパートナーにトランスプレイスを 選び、米国内の五つの工場から出荷するすべての ドライおよび冷蔵バンのトラック輸送を委託するこ とになった。
サニー・ディライト側にとり、輸送管 理技術への投資額が最小で済むこと、担当人員を 減らせること、時間とエネルギーを本来のコア業務 である生産とマーケティングに集中できることなど が選定の決め手となった。
 〇四年十一月、トランスプレイスはまず第一フェ ーズに着手する。
P&Gのシステムからデータを集 めるために情報システムのインターフェースを立ち 上げ、そしてP&Gのトラック業者をトランスプレ イスのそれへと移行させていった。
特集 39  SEPTEMBER 2009  この移行に際しては、既存と新規の業者が共に 参加したオンライン・コンペも実施された。
コンペ に通過した業者は入札価格や輸送キャパに応じ、そ れぞれ配送路線を割り当てられた。
主戦力となる 八社が決定し、同時に各路線それぞれにバックア ップを担当する業者も決まった。
 〇五年一月には、すべての業者と正式契約を結 ぶ。
〇五年二月五日、トランスプレイスのサニー・デ ィライト向けオペレーションはすべての訓練を終え、 総員が配置についた。
訓練の一貫として、現状での 生産・出荷工程を把握し、さらに従業員との 協力関係を構築するため、サニー・ディライ トの各工場への訪問も行われた。
 最終フェーズは、サニー・ディライトの新 しいERPシステムとトランスプレイスのT MSを、“稼働開始”日である〇五年四月一 日に統合することである。
オペレーションは 予定どおり稼働し、〇五年十二月までには 時間指定配送の達成率は九五%超、オーダ ー充足率は九九・八%を超えるという成果 を上げている。
 〇七年一月、各業者のキャパシティと製品 需要の変化に対応するため、トランスプレイ スはサニー・ディライトに代わって二度目の オンライン・コンペを実施した。
その結果、 新たに業者が参入して従来の配送路線の割 り当てが見直され、サニー・ディライトの物 流コストは六%削減される。
 〇八年、トランスプレイスは六人のオペレ ーションチームで十三万件以上の配送を取り 仕切った。
継続的な改善を軌道に乗せるた め、〇九年第1四半期にコンペ内容を規格 化して「コラボレイティブ・ビッド・モジュ ール」と名づけ、これを用いて冷蔵ビジネス に関しては年に二度コンペをやり直す体制を 整える。
 それによって新たな業者が数社加わり、サ ービス指標が向上したにもかかわらず、コストは一 〇%減るという成果を得た。
同時にトランスプレイ ス・フレイト・サービシズ社がサニー・ディライト と提携し、マサチューセッツ州リトルトンにある工 場からの国内および海外への配送をすべてある企 業に一本化した。
この措置で物流費は〇八年と比 較して十一%改善され、業者のサービスレベルも向 上した。
 市場と企業の活力がともに変化するなか、理想 的なサプライチェーンを実現する最適のバランスを 得るには、トランスプレイスの提供する管理サービ スと技術的ソリューションをどれだけ採用するかで 決まるが、それはサニー・ディライト側の決断に任 されている。
 P&Gが管理するロジスティクス・オペレーショ ンからトランスプレイスが運営するシステムへの移 行は、周到な準備とトランスプレイスの持つロジス ティクス・インフラの調達能力のおかげで、サニ ー・ディライトの顧客に気づかれることは事実上ほ とんどなかった。
3PL企業が顧客と協力し合い ながら、どのようにして理想的なロジスティクス・ ネットワークを構築するか、サニー・ディライトの ケースは好個の例といえよう。
 トランスプレイスは設立以来、サービス領域を拡 大し続けている。
フレキシブルな顧客志向のソリュ ーション戦略は、輸送管理システムのプロバイダーと して成長する原動力となり、さらには新たに参入し た国際&メキシコでのオペレーションが、成長著し い市場への足がかりとなっている。
的を絞ったビジ ネス戦略とサービス領域の拡大により、輸送管理サ ービスを中心とする3PLとして成長を続け、市場 に確固たる地位を占めることになるであろう。
オーダー管理 製品概要メンテナンス 運送会社のウェブ 求貨求車スケジュール 出荷データ (データ確認─エラー管理) 出荷計画 (マニュアル・ルート設定) 業者の自動割り当て (システマティック・ルートガイド、 業者割り当て最適化) 出荷管理 (スケジューリング、出荷状況) TMSフィナンシャルズ 支払勘定受取勘定 オラクルフィナンシャルズ 領収書 ロケーション・メンテナンス ( 施設概要) 距離・ルート算出 最適化 (輸送手段とルートの組み合わせ) 評価エンジン エレクトロニック(or ペーパー) インボイス エレクトロニック(or ペーパー) インボイス 請求インボイス データフォーマット:EDI ASC X.12,IDOC,XML 等 図3 トランス・プレイスのTMS データチャネル:FTP,VAN,AS2 XML への変換 データ交換

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