2009年10月号
特集

第4部 加食業界の物流ビジョンはなぜ頓挫した

OCTOBER 2009  20 専用センターを廃止し卸拠点に集約  神奈川県を中心に約六〇店舗を展開する中堅スー パー、相鉄ローゼンは、二〇〇七年から物流サービス レベルの適正化を進めてきた。
過剰なサービスを是正 し、同社の規模と店舗の実情に合わせて物流体制の 再構築を図っている。
 同社は〇二年に「愛川物流センター」(神奈川県愛甲 郡)を設置している。
一般食品、菓子、酒類といっ たドライ商品をDC型、日雑をTC型で管理し、店舗 に一括納品している。
リードタイムは受注当日。
商品 をおよそ六〇のカテゴリー別に仕分けてオリコンに詰 め、カートラックで通路側に納品するなど、ハイレベ ルな機能を誇っている。
 〇七年三月に同社の営業本部物流部に異動した松 島一夫統括マネージャーは「愛川のレベルは非常に高 いと自負している。
実際、当社が旗艦店と位置付け る一部の大規模店舗には最適な仕組みになっている」 という。
 しかし、それ以外の店舗にとっては最適とは言えな かった。
店舗と物流センターの双方でムダな作業、ム ダなコストが発生していた。
 中規模以下の店舗は売り場面積が小さく、もとも と厳密なカテゴリー別、通路別納品の必要性が低かっ た。
そうした店舗では個々のカテゴリー当たりの販売 量が少ないためにオリコン一個に入っている商品も少 ない。
多くのオリコンを売り場に持っていき、品出し をするのは煩雑なため、店舗のパート社員は荷受けし た数個のオリコンを一個に詰め直し、空になったオリ コンを畳んだ後、品出し作業に取りかかるという手間 すら発生していた。
 そこで商品カテゴリーの分類を見直すことにした。
六〇あったカテゴリーは商品部の決めたもので、それ に従ってオリコンに仕分けしていたが、物流管理のた めのカテゴリーを新たに設定。
仕分けのカテゴリーを 半分に絞り込んだ。
 通路別管理も見直した。
従来は同じ酒類でも、複 数の通路に分かれている場合には使用するカートラッ クを分けていたが、これをやめて酒類はカートラック 一台で納品するように改めた。
酒類以外の商品につ いても、個々の店舗の要望に応じて通路別管理の運 用を緩和した。
 松島統括マネージャーは「店舗側は通路別管理にそ れほどこだわっていないと感じている。
パートさんは 毎日発注して毎日品出ししているので、よほど新し い人でなければどこに商品を並べるかがすぐにわか る。
それを物流でカバーする必要性は低いのかもしれ ない」という。
 次に取り組んだのが納品をしない休配日の設定だ。
〇七年末から愛川センターや店舗運営部などと調整を 進め、昨年三月、全店を対象に日曜休配に踏み切っ た。
さらに今年一月には常温で回転率の低い一般食 品と菓子、酒類の配送を半数以上の店舗で週三日〜 四日に改めた。
 取り組みの結果、配送トラックの積載率はおよそ六 五%から七〇〜七五%に向上し、台数は大幅に減少 した。
週当たりの台数は〇七年度には二五九台だっ たが、昨年度上期は二三〇台、同下期は二二四台に 減少。
今年度上期は二〇六台を計画している。
 一年間で配送費用をおよそ七七〇〇万円削減でき た。
酒類の通路別管理の撤廃でピッキング効率が三 〇%向上するなど、センターの生産性も向上している。
 一方では物流センターの集約も進めている。
相鉄 ローゼンは愛川のほか、専用センターとして神奈川 加食業界の物流ビジョンはなぜ頓挫した  バラピッキングを高速で集中処理するRDCを全国各 ブロックに設置して、納品先そばの前線に置いたFDC でケース商品と積み合わせて一括納品する。
その稼働 率を上げていくことで利益を捻出する。
20期連続増収 増益を成し遂げた菱食の物流戦略は、なぜ壁に突き当 たったのか。
             (梶原幸絵) 第4部 21  OCTOBER 2009 県綾瀬市の日配品チルドセンター、座間市の総菜セン ター(チルド・冷凍対応)、横浜市のアイスクリーム 用冷凍センター、川崎市の冷凍食品センターを設置し ていた。
 このうち横浜市と川崎市のセンターを今年六月に閉 鎖して東京都八王子市の菱食の汎用センターに機能 を移した。
冷凍が二つに分かれているのはムダで割 高だった。
座間の総菜センターもチルドも冷凍のセン ターに集約することを検討している。
座間は相鉄ロー ゼンだけでなく関連会社も利用しているため、同社 と調整を行う考えだ。
 現在、物流部では愛川センターで取り扱うSKUの 削減も提案している。
以前、同センターは最大七〇〇 〇SKU以上を保管していた。
中堅スーパーとしては アイテムが多い。
中には何カ月も発注がまったくない ものもあった。
このため一定期間発注のないものは 廃止を働きかけている。
 大規模な改革で他部署と利害が衝突することも多 い。
しかし社長の後押しを得て関連部署との調整を進 めてきた。
昨年三月には商品計画・物流部から「物 流部」を独立させて権限も与えられている。
そのう えで社長自らが前面に立ち、毎月の店長会議では毎 回のように物流改革が議題に取り上げられていた。
 日曜休配はとくに反発が強かった。
定番品の動きが 速い大型店舗では欠品が懸念された。
このため、松 島統括マネージャーは日曜休配の開始当初、毎週月 曜日に店舗に足を運んでいたが、欠品は増えなかった。
もともと大型店舗では発注を担当するパート社員の意 識が高かったためだ。
 松島統括マネージャーは「日曜休配や隔日配送はあ るべき物流へのステップであり、完成形とはいえない。
営業・商品政策や発注体制、システムなど今の枠組 み、制約の中で可能な範囲で改善を行ってきた」と、 物流部門に異動してから二年あまりの取り組みを振り 返っている。
 相鉄ローゼンの一括物流の歴史は一九九二年にま で遡る。
綾瀬にチルドセンターをオープンさせ、九三 年に厚木グロサリーセンターを開設したのが始まりだ。
イトーヨーカ堂に倣って窓口問屋制度の導入を目指し た。
菱食をパートナーに一括物流センターの設置を進 めるのと同時に、帳合いも菱食に集約していった。
 これが他の卸の反発を買った。
その結果、同じ商品 カテゴリーの一括物流センターが分散する事態を招い てしまった。
それを集約する目的で設置したのが愛川 センターだ。
菱食が運営を受託し、約五〇億円を投じ て建設した。
最先端の機能を持った画期的なセンター として当時その仕組みは多くの注目を浴び、各界から の見学者が後を絶たなかった。
 菱食も相鉄ローゼンに対する思い入れは強かった。
厚木グロサリーセンターでの一括物流は、菱食がその 後全国に展開する「SDC(Specialized Distribution Center:特定企業を対象とした専用センター)」のモ デルケースだった。
実際、菱食は相鉄ローゼンとの取 り組みで構築した技術を横展開していった。
物流の菱食の看板を降ろす  しかし、相鉄ローゼンが抜本的な物流のリストラを 余儀なくされたのと同様、菱食もロジスティクスによ る差別化を武器とする従来の戦略を現在は大きく転換 している。
 九〇年から菱食は約一〇年を費やし、「RDC─F DCネットワーク」と称する物流の全国ネットワーク を整備してきた。
ピースピッキングを集中的に処理 する広域物流拠点「RDC(Regional Distribution 1150 1100 1050 1000 950 900 850 800 (億円) (月期) 図1 相鉄ローゼンの業績推移。
業績の低迷を受け、物流コストの 削減を進めている 10 5 0 -5 -10 -15 02/2 03/2 04/2 05/2 06/2 07/2 08/2 09/2 売上高 純利益 経常利益 相鉄ローゼン営業本部 物流部の松島一夫統括 マネージャー 菱食の榎本猛戦略機能部 門統括・SCM推進本部 SCM運用部長 Center)」を全国の各エリアに配置し、それを衛星上 に取り巻くかたちで、納品先近くの前線に「FDC (Front Distribution Center)」を置く。
 RDCで処理したピース商品のオリコンをFDCに 横持ちし、そこでケース商品と一緒に仕分け機に流し て店舗別にまとめて納品する(図2)。
この汎用イン フラの稼働率を高めることで削減した物流コストが同 社の利益の源泉だった。
 ところが、小売りの専用センターの乱立が、この戦 略に待ったをかけた。
既存顧客が専用センターに移れ ば汎用インフラの物量が減ってしまう。
しかし、それ を放置すれば帳合いまで取られてしまう。
このため菱 食は自社の汎用インフラと専用センターへの二重投資 を強いられた。
 専用センターの設置が進むほどに菱食は追いつめら れていった。
そして?ロジスティクスの菱食?が成し 遂げた二〇期連続の増収増益が〇六年十二月期につ いに途絶えた。
強い危機感を持った同社は〇六年に実 施した低温食品を扱う子会社、アールワイフードサー ビスの吸収合併をきっかけに経営陣を一新した。
 現在、同社は改めてロジスティクスをコストセンター として位置付け、マーケティングに軸足を移している。
あとに残されたのは稼働率の低下した汎用ネットワー クと多くのSDCだ。
機械化を推進し、大がかりなマ テハンを装備しているだけに固定費負担が重い。
 今や小売業の戦略は利便性の追求からコスト削減に 移っている。
相鉄ローゼンに限らず、通路別納品や時 間指定、毎日納品の緩和が卸・小売り間で議論され るようになってきた。
店舗規模の大きい大手GMS (総合スーパー)ですら専用センターの運営の見直し を進めているという。
 小売業の売上高は軒並み低下し、センターの通過 額も減少している。
卸に専用センターの空きスペース を活用させたり、専用センターの廃止と卸の汎用セン ターの利用を検討するケースも出てきている。
 「今は中間流通のどこが残るかというサバイバル、我 慢比べの状態だ」と菱食の榎本猛戦略機能部門(I T・ロジスティクス)統括・SCM推進本部SCM運 用部長はいう。
菱食の物流コストは年間七百数十億 円に上っている。
同社の経費項目の中でも最大の比 率を占める。
その低減が直面する大きなテーマになっ ている。
 対策の一貫として同業他社との共同配送を進めて いる。
昨年は岡山県で日本アクセスと取り組んだ。
小 売業の専用センターから郊外型店舗への低温品とドラ イ商品をまとめて運んでいる。
センターではトヨタ流 の現場改善の手法「2S(整理・整頓)」を取り入れ るなど、コスト削減を推進している。
売上高二兆円に向けて物流を整備  稼働率の低下した汎用ネットワークに再び取引先を 呼び込む仕掛けも検討している。
RDC─FDCのフ ルラインの品揃えを強みとして、ネット通販やネット スーパー事業者の利用を提案していく考えだ。
菱食は 動きの遅いロングテールの商品を含め、RDCとFD Cで合計約一万品目を揃えている。
RDCは各エリ ア内を広域でカバーするため、商品の鮮度も保つこと ができる。
 「商品の調達力を持ち、単価の低い商品の物流を安 くできるところに任せたい、という要望が少しずつ 出てきている。
他社にはないネットワークの強みを生 かして十分、ビジネスチャンスにできると考えている。
流通の関係当事者すべてが皆でサプライチェーン全体 の最適化に向けて進めば、改めて我々のRDC─FD OCTOBER 2009  22 EOS 図2 菱食の物流ネットワーク 販売店 店舗 リョーショク 情報 センター FDC SDC メーカー RDC 小分け商品 小分け出荷 対象商品 ケース出荷 対象商品 伝票レス 検品省力化 定時配送 高頻度納品率 カテゴリー別納品 商品の流れ情報の流れ C構想がクローズアップされてくる」と榎本部長は期 待している。
 菱食と並ぶ二大加食卸の一つ、国分は従来から物 流よりも商流を重視する、菱食とは対照的な戦略を とってきた。
菱食のロジスティクス戦略が業績に結び ついていた時期には、国分の収益力は菱食を下回って いた。
しかし、それが現在では逆転している(図3)。
 国分は汎用型センターと各種業態に特化して複数企 業の物流を手掛ける業態別センターのほか、「3OD (One Order One Delivery:加工食品や菓子、酒類、 雑貨などの、一回のオーダー分を一回の配送でまかな うこと)」というコンセプトを掲げた特定小売りの専 用センター五〇拠点を含めグループで約一九〇拠点を 運営している。
 専用センターが一つ増えれば周辺の既存汎用セン ターに空きスペースを作らないよう集約するなど、柔 軟に統廃合を続けてきた。
庫内作業もハンディターミ ナルを導入している程度で、あまり機械化していない。
マテハンはコストが割に合わず、センター集約の重荷 にもなるという判断だ。
 しかし国分は現在、中期目標として売上高二兆円、 経常利益二〇〇億円を掲げている。
荻野司物流統括 部長は「二兆円を支える物流体制を整備していかな ければならない」という。
同社が物流センターの運営 を委託している協力会社は今や一〇〇社以上に上っ ている。
管理が煩雑なうえ、グループ外に資金が流出 するのは好ましくない。
 そこで今後は物流子会社の国分ロジスティクスに取 り込んでいきたい考えだ。
現状では船橋でセンター運 営を請け負っているだけだが、事業規模の大幅な拡 大を検討する。
グループ会社の物流センターの統合や 共同配送も進めるという。
 JILS総合研究所ロジスティクス環境推進セン ター副センター長の北條英主任研究員は「今でも卸の 競争力の原資の一つはローコストで高品質な物流であ ることに変わりはない。
加食分野では革新的な商品 が出にくいだけに、物流革新は常に意識せざるをえ ない」と説明する。
卸主導のメーカー改革  メーカー・卸間の物流効率化も改めて検討課題に 上っている。
国分と菱食は共同で〇二年に、フーズ・ ロジスティクス・ネットワーク(FLN)を設立して いる。
メーカー各社の製品をFLNが運営する共同物 流センターに集めて、そこから卸に一括して納品させ ることが狙いだ。
 FLNにメーカーの在庫を集約することで卸側は荷 受けが一回で済む。
土日祝日などのメーカー休日分の 在庫負担も解消できる。
しかし、二大卸からの要請 にもかかわらず広くメーカーに受け入れられていると は言い難い。
 現在FLNは栃木県足利市の約三〇〇〇坪のセン ター一カ所から全国の国分と菱食の物流拠点に出荷し ている。
参加メーカーは中小を中心とした二二社、取 扱量は年間二五〇万ケース。
参加社数と取扱量はス タート時に比べて増加したが、収支はようやくトント ンといった状況のようだ。
累損はまだ残っている。
 国分の荻野統括部長は「本来であれば大手メーカー に参加して欲しいところ。
しかし大手はメーカー同士 の共同配送を行う傾向にあり、取り込みは難しい。
中 小以下のメーカーが現実的なターゲット。
他の卸にも 参加を呼びかけて中部や関西にも新たに拠点を設置し たい。
それによって配送距離が短くなるためコストを 下げられる」と見ている。
23  OCTOBER 2009 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 図3 菱食と国分の業績推移 (億円) 140 120 100 80 60 40 20 0 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 (月期) 菱食経常利益 国分経常利益 菱食売上高 国分売上高 国分の荻野司 物流統括部長 JILS総合研究所ロジスティ クス環境推進センター副セン ター長の北條英主任研究員

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