ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年11号
ARC
WMS市場は十三億ドル規模に 企業統合が市場を攪乱

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2005 86 数年間の停滞期を抜け、二〇〇四年は倉庫管 理システム(WMS)の世界市場が成長軌道に 乗り始め、市場規模は五パーセント以上拡大し た。
ARCアドバイザリーグループの最新調査 「倉庫管理システムの世界市場動向調査」 (Warehouse management systems worldwide outlook through 2009)によれば、市場は二〇 〇四年に一〇億六七〇〇万ドルであったが、二 〇〇九年には一三億三九〇〇億ドルを超えると 予測される。
ARCアドバイザリーグループのサプライチ ェーン管理サービス担当ディレクターで、本調 査レポートの主著者であるSteve Bankerは次 のようにコメントしている。
「昨年この市場で 多くの企業買収・合併が行われた(WMSソリ ューション関連企業二〇社以上が買収・合併さ れた)ことからすれば、市場の成長は驚くほど だ」「買収・合併された企業のうち何社かは引 き続き売り上げの増大が期待できるものの、歴 史的に見れば、買収・合併は市場成長の足を引 っ張ることになりがちである」 ARCでは、WMSベンダーを三つのグループに分類している。
■WMS専業ベンダー ■ERPベンダー:自社のERPソリューショ ンのコードやデータなどをもとにしたWMS も販売するERPベンダー ■マテハンベースのベンダー:マテハンに関す る専門知識により差別化を図り、はるかに高 額なマテハンのコンサルティングや機器販売 の付属品として、WMSやマテハン機器を制 御する倉庫制御システムを販売するベンダー マテハンベースのWMSベンダーは他のWM Sベンダーの買収には積極的ではなかった。
と いうのも、規模の大きなマテハン企業の多くが、 数年前すでにその種の買収を行っていたからで ある。
二〇〇四年と二〇〇五年にこの分野で積極的 な動きを見せたのはERPベンダーである。
■たとえば、Oracleは二〇〇四年十二月に PeopleSoftを買収したが、その前にPeople Soft はWMSベンダーのJD Edwardsを買収 していた。
■Inforは二〇〇四年の三月から九月の間 に、ERPベンダーであるLilly Software Associates、NxTrend、daly.commerceを 次々と買収した。
■ Retailixは製品ラインナップを拡げるため、 二〇〇四年一月に食品雑貨業界向けに特化し たソリューションを持つOMI International を 買収した。
ERPベンダーがWMSソリューションを持 つ他のERPベンダーを買収するとき、顧客は次のように自問するものだ。
「彼らはこのプラ ットフォームをサポートし続けてくれるのだろ うか? 機能改善も? サポートは少なくとも いままでと比べて見劣りはしないくらいのレベ ルなのだろうか?」 多くの有力ベンダーが買収されたが、例を挙 げてみよう。
■RedPrairieはヨーロッパにおける主要ベンダ ーのひとつであるLISを二〇〇四年二月に 買収、同地域向けの態勢を強化した。
だが二 〇〇五年五月には逆に、プライベート・ベン チャーファンドのFrancisco Partnersによっ て買収された。
WMS市場は十三億ドル規模に 企業統合が市場を攪乱 問い合わせ先 ARCジャパンオフィス eメール:skuroiwa@arcweb.com Web:http://www.arcweb.com/Japan/ 87 NOVEMBER 2005 TMS(輸配送管理システム)市場は二〇〇四 年に九億一千万ドルに成長し、今年は九億五千万 ドルを超えると予想される。
成長要因のひとつは、 企業業績の把握と管理に対するニーズである。
ARCのロジスティクス・エグゼクティブ協 議会のディレクターで、「輸配送管理システム の世界市場動向調査」(Transportation Mana gement System Worldwide Outlook)の著者 であるAdrian Gonzalesはこう言う。
「SOA (Sarbanes-Oxley Act:米国企業改革法)遵守 への対策を講じる必要などから、CFO(最高 財務責任者)の間では、ロジスティクスが企業 業績に与える影響の大きさに関する認識が深ま ってきている。
とはいえ、自社の輸送コストを 正確に把握している企業は少ない。
多くの企業 が、輸送コストを他のコストと一緒にしてまと めた数字しか把握しておらず、特定の製品/顧 客/事業部門別に輸送コストを割り出すことが できていない」 企業はもはや、その計画過程で輸配送を「無 限のリソース」として取り扱うことはできない。
自社所有の車両などへの投資以外には、在庫を 積み上げるときのような容易さで輸配送キャパ シティをアップすることはできない。
他の計画 同様、限りあるリソースをもとに計画を立てな ければならない。
需要予測をもとにロジスティクスと輸配送キ ャパシティ予測を立てることが、本調査レポー トにおける注目すべき傾向のひとつである。
「上流のベンダーや製造パートナーと共同で計 画や予測をするケースがしばしばあるが、こう した需要予測や生産予測をもとに必要とされる であろう輸送力をはじき出し、それを輸送業者 と共有することはまれだ。
そうした情報を輸送 業者に前もって提供する荷主企業は、輸送力の 優先的な割当を受けることができる」と Adrian Gonzalesは言う。
本調査レポートで取り上げられている他の傾 向として下記がある。
■フリート管理とコモンキャリアの統合ソリュ ーション ■財務担当者のサプライチェーンへの関心が増大 ■国際宅配便サービスの重要性が増大 ■ロジスティクスサービスのプロバイダにます ます注目が集まる ■HighJump Softwareは二〇〇四年一月に3M によって買収された。
ソフトウェア企業とし てはあまり知られていないが、3Mはいくつ かの優良なソフトウェア部門を持っている。
たとえば、そのうちのひとつはパッケージン グ・ラインのソリューションである。
High Jumpはその後、生産管理ソリューションを 開発中であると発表したが、同社の実行系ソ フトの機能範囲が大幅に拡がることが期待さ れている。
■ Catalyst International は二〇〇四年九月、 ComVest Investment Partnersに買収された。
Catalyst は公開会社であったが、株主から持株 を買い取ったComVest はこれを非公開とした。
■Yantraは二〇〇四年一月、Sterling Commer ceに買収された。
買収の目的は拡大サプライ チェーンを支えるプラットフォームの構築に あり、Yantraの積み重ねてきた技術がその実 現に非常に役立つとの判断によるものである。
専業ベンダーの買収に疑問を投げかける向き もある。
非公開の投資ファンドやソフトウエア 業界にはあまりなじみのない企業が買収をした 場合、既存顧客の心配は、買収企業がソフトウ ェアそのものと自分の業種を充分に理解してい るのかどうかということである。
ある調査によ れば、買収のうち五〇〜八〇パーセントは期待 されたほど利益を生み出していない。
WMS市 場は買収の急増を今年は乗り切ったが、買収さ れた企業の収益が今後どれだけ伸びていくかに よって真価が問われることになるだろう。
企業業績の正確な把握へのニーズが TMS(輸配送管理システム)市場を牽引

購読案内広告案内