ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年11号
特集
第5部 事例で学ぶ現場改善《第82回》 実践から学んだコンペ運営の勘所

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2009  30 コンペの種類と進め方  物流コンペはその目的から大きく二つに分類で きる。
コスト削減を至上命題とするタイプと、荷 主企業の事業展開を支える物流体制に対する提案 を期待するタイプである。
 この二つでは、コンペに参加する物流会社の数 が違う。
コスト削減至上型のコンペは通常、候補 となる物流会社の数が三〜四社にとどまる。
これ が提案期待型になると五〜七社に増える。
 ちなみに八社以上集めるのは、やめておいたほ うが賢明だ。
運営を仕切る事務局の手間がかかり 過ぎる。
それだけ間接費がかさんでしまう。
候補 の絞り込みも難しくなる。
目移りして社内の意見 がまとまらずに、決定が遅れてしまうという弊害 も出てくる。
 コンペの取り組み方にも二種類がある。
コンペの 実施が社内で決定され、プロジェクトチームを組織 して、データ整備や物流会社のリストアップなどを 行う通常型と、現場サイドでの値下げ交渉がコンペ に発展していく「相見積り派生型」である。
後者 ではいわゆる?あて馬〞にされる候補やダミーの 見積書が登場することもある。
いくらコスト削減 が大事だと言っても実施企業のモラルが問われる ところだ。
 さらにはコンペの進め方にも二種類ある。
エリア 毎に選考していく「段階型」と、3PLへの一括 委託を前提に複数エリアの選考を一気に実施する「期 間集中型」である。
段階型は在庫型センターを多 く抱え、移管作業の負担の大きい場合。
期間集中 型は、在庫を全国一、二カ所に集約し、地方には 通過型センターを置く体制で、移管が比較的容易 な場合、もしくはボリュームディスカウントを狙い に行く場合に多く見られる。
 どんな商売でも同じなのだろうが、荷主企業と 物流会社の間には常に?温度差〞がある。
コンペ ではそれが顕著に表れる。
予め温度差があること を認識し、その差をできる限り埋めておくことで コンペの進行はスムーズになる。
⓵言葉の壁  荷主が社内で使用している物流用語と物流会社 が使用している用語は必ずしも同じではない。
例 えば「ピパ(PIPA)」と言われて何のことが分 かるだろうか。
ある荷主企業では、ピッキングと パッキングのことを合わせてそう表現していた。
質 問しなければ何のことだかまず分からない。
 ピパは極端な例だとしても、?方言〞の違いが不 要な誤解や混乱を招くことは多い。
荷主が「仕入 物流」と表現しているものが、調達物流と同じ意 味であることを物流会社側の担当者が理解できて いなかったり、また荷主業界特有の用語を知らな いことなど珍しくはない。
 それを物流会社の不勉強だと切り捨ててしまう のは得策とはいえない。
専門用語はできるだけ一 般用語に置き換える、あるいは説明を加える等の 配慮が荷主企業側にもあっていい。
⓶時間軸の壁  一般に物流事業者は、書類提出や質問、要望に 対する回答のスピードが遅い。
同じ提案型サービ スでも、情報システムや損害保険などの業界では、 遅くても七日〜一〇日後には返答することが暗黙 のルールとなっている。
これが物流業界では一カ月 実践から学んだコンペ運営の勘所  物流コンペによるコストダウンはとっつきやすい反面、 その扱いにはデリケートさが求められる。
準備が不十分 な状態でコンペを実施すれば目的を達成できないだけで なく、コンペに落選した多くの物流会社に不信感を抱かれ、 後々に大きな禍根を残す。
コンサルタントとして数多くの コンペを経験してきた筆者が運営の勘所を解説する。
青木正一 日本ロジファクトリー 代表 (あおき・しょういち) 1964年生ま れ。
京都産業大学経済学部卒業。
大 手運送業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入社。
物 流開発チーム・トラックチームチーフ を務める。
96年、独立。
日本ロジフ ァクトリーを設立し代表に就任。
現在 に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 第 5 部 事例で学ぶ現場改善《第82回》 特 集 物流コンペのすべて 後等のんびりした対応が多く見受けられる。
物流 会社に改善を促したいところだが、焦れていても 始まらない。
そのスピードを前提にコンペのスケジ ュールを立てておくしかない。
⓷情報交換の壁  コンペの場は物流企業による通常の訪問営業と は違い、要望や目的、期日など、多くの話をしな ければならないのは荷主のほうである。
それを勘 違いした物流会社は、自社のPRに時間を割き過 ぎて、荷主の要望を理解するための質問と確認が おろそかになってしまう。
 「何でもできます」とPRする物流会社も多い。
できない業務があることで、受託を逃したり、受 31  NOVEMBER 2009 託範囲が狭まる可能性を危惧してのことだろうが、 安請け合いは逆に何もできない会社だという印象 を荷主に与えてしまうことにある。
結果的には何 の仕事も獲れない?あぶ蜂取らず〞となる場合が 多い。
コンペの主役はあくまで荷主だ。
そのこと を物流会社と荷主の双方がよく認識しておく必要 がある。
コンペの失敗とは何か  コンペの成否はその準備段階で八割がた決まっ てしまう。
準備が不十分なコンペのほとんどは失 敗に終わる。
コンペの失敗とは具体的には以下の ような結果を意味している。
●コストが下がらなかった(下がってもほんのわず かであった) ●コストは下がったが業務品質が悪くなった ●稼動から三カ月〜六カ月後に値上げの要請があり、 他の選択肢がなく受け入れざるを得なくなった。
●料金の安さに物流会社がギブアップした  反対に成功と呼べるコンペには、以下のような 共通点がある。
?必要なデータを荷主側が用意している ?機密保持契約を締結した上で物流データ、将来 計画などの情報開示を積極的に行なっている ?コンペに参加する物流会社のリストアップが充実 している  候補企業をリストアップする力は荷主企業によっ て大きく異なる。
それがコンペの結果に大きく影 響する。
 荷主企業の多くは、集めた物流会社を?削る〞 勝ち残る物流会社の七つの共通点  ?意志決定権者がコンペに同席している  荷主企業の要望をいちいち社に持ち帰るのは時間 がかかるだけではなく、伝言ゲームとなって本来の主 旨から外れた回答になってしまうことが多い。
意思 決定権者がその場にいれば、質問事項に対してほぼ 確約した応答ができる。
トップセールスはやはり強い。
 ?全社プロジェクト化している  ?とも関連するが、コンペを担当する営業マンにと っていくら魅力的な案件であっても、物流会社の社 内でコンペに対する協力体制が構築されていなければ、 まず勝てない。
したがって営業担当者にとっての第 一関門は自社内、とりわけトップを説得することに ある。
 ?質問の仕方が上手い  百戦錬磨の営業担当者は数多くの荷主情報のなか でも特に何を押えておかなければならないかをよく 理解している。
彼らは仮説を持って重要なポイントに 照準をあてて質問を行ない、コスト削減の目標など、 荷主企業の本音をうまく聞き出している。
 ?担当者二名による少数精鋭チーム  四、五人の大所帯でコンペに臨んだ物流会社が勝ち 残ったケースは少ない。
チームの人数が多いのは、決 定権者が不在であることや、個人の能力・スキルが 弱いこと、高コスト体質を意味していることもある。
 ?締め切りよりも半日早く回答する  受注を勝ち取る物流企業は総じて書類到着順位が 一番であることが多い。
そうした物流会社は?納期 厳守〞を業務品質の証と認識している。
回答のクイ ックレスポンスだ。
 ?戦略的な見積もりの提示  コスト算出を?積み上げ〞と?競争価格〞の両面 からアプローチしている。
受託できるギリギリのコス ト水準を押さえておきながら、荷主企業への提示ラ インには、一次審査、二次審査、最終交渉と進んだ 時のためのタメを持たせている。
 ?トイレがきれい  トイレの清掃状態は、現場視察の重要なポイントだ。
トイレ掃除は誰もが嫌がる仕事なだけに、その現場の 教育レベルが表れる。
もちろん視察の時だけキレイに している可能性もあるが、それさえできていない現 場が珍しくない。
方法は知っていても、?集める〞方法については驚 くほど何も知らない。
メディアによく名前の挙が るブランド企業にアプローチするほかは、ホームペ ージで情報を検索する程度の情報収集しかしてい ない荷主が多く見受けられる。
 それでは成功は約束されない。
口コミや現場か らの情報、同業他社の委託先情報、外部の専門家 による情報提供、さらには社内政治によるコンペ のどんでん返しを避けるための経営幹部からの推 薦企業情報などを事前に整理しておく必要がある。
?コンペ専任事務局を設置する  物流管理部門などに日常業務との兼務でコンペ を運営させるのは無理がある。
専任事務局が必要だ。
その担当者を兼務にしなければならない場合には、 コンペの説明やデータ開示後の問合せをメールに限 定するといったルールを設けて、運営業務の負担 を軽減する措置をとらないとコンペの進行に支障 を来たす。
?現場視察を欠かさない  物流会社にとって ?現場はショールーム〞だ。
最 終審査に残った物流会社、あるいは内定した物流 会社に対する契約前の現場視察は絶対条件だ。
プ レゼンテーションの内容や見積りコスト、窓口の対 応は申し分なくても、現場視察で予想もしていな かった現実を突き付けられる場合は少なくない。
 荷主が訪問しても、現場スタッフが挨拶ひとつ しない。
庫内はパレットが散在して、整理・整頓 ができていない。
これから使用するはずの倉庫ス ペースが他社の荷物で埋まっていて、稼動まで間 もないのに移管の折り合いさえついていない、と いう危険なケースにも出くわしたことがある。
?現場責任者を確認する  コンペに出てくる営業担当者だけでなく、稼働 後に現場を管理することになる実務責任者の話を 聞くことも欠かせない。
最近ではコンペに実務責 任者を同席させる物流会社も増えてきたが、荷主 の質問に対する回答は全て営業担当からという場 合が多い。
それでは業務の詳細の確認や検証が不 十分になってしまう。
そのような場合は「○○所 長にお聞きしたいのですが‥‥」と直接指名して 質問すべきだ。
Win│Winはきれい事か?  いくらパートナーだといっても仕事を出す側とも らう側、お金を支払う側と受け取る側という関係 にある以上、荷主と物流会社の「Win│Win」 など、きれい事に聞こえるかも知れない。
それでも、 荷主が物流会社の立場を理解することで、双方が メリットを享受する関係は作れる。
そのポイントを 紹介しよう。
❶全体最適の視点を持つ  荷主が部分最適から脱皮できない限り結局、コ ンペは料金叩きで終わってしまう。
全体最適の視 点でコンペを実施することで、初めて意味のある 提案が引き出せる。
改善や物流の?シクミ〞を変 えてトータルコストを削減することが期待できる。
❷提案範囲を明確にする  
劭藤个任魯灰鵐擇魍催する目的・主旨を明確 して、消耗品の負担や使用するWMSなどの基本 条件を、できる限り明確にする。
そのことが物流 会社側で自由に提案することのできる範囲を明確 にすることにもなり、良い提案を引き出すことに つながる。
❸対象領域を段階的に拡大する  販売物流から始めたコンペを、調達、回収、リ サイクルといったステップで段階的に拡大するとい う進め方は案外有効だ。
販売物流のコンペでは次 点で惜しくも落選した優良物流会社が、調達物流 で敗者復活を果たしたりする。
荷主企業の販売物 流まで理解していることが調達物流の運営にもプ ラスになる。
❹契約期間の柔軟な対応  契約期間は年々、短くなる傾向になる。
買い手 市場になっているためだ。
その荷主のために大型 の設備投資を行なった場合でも、契約期間は施設 の償却年数の半分がせいぜいだ。
そのため物流会 社では特定荷主のための設備投資を避けるように なってきた。
そのかわり、複数荷主を獲得するた めに先行投資に踏み切る物流会社が増えている。
 専用設備を必要とする荷主は、契約期間に柔軟 性を持たせる必要があるだろう。
リスクを避けよ うとするあまり契約期間を過度に短くすれば、有 望なパートナーを逃してしまうことになる。
❺選考結果のフィードバック  コンペの結果、既存の協力物流会社が勝ち残る 割合は、筆者の経験からすると四割程度だ。
六割 は新規事業者に切り替わる。
その移行において、 既存事業者との関係を必要以上に悪くすることは NOVEMBER 2009  32 特 集 物流コンペのすべて 避けなければならない。
 既存事業者以外でも落選し た物流会社に、選考結果とそ の理由を通知することは、最低 限守ってもらいたいマナーだ。
荷主の次世代の担当者たちが物 流会社との関係で困ることがな いように先輩としての配慮が欲 しい。
またそうしたフィードバ ックが物流会社にとっては課題 克服のための重要な経営情報に なる。
❻移行後の定例会議の開催  新規取引の場合には、稼動 三カ月以内にたいてい?こんな はずではなかった〞という問題 が双方に発生するものだ。
それ を修正するために、運営が落ち 着くまでの間は実務責任者によ る定期会が必要になる。
月一回、 テーマによっては週一回のペー スで現状について連絡し、課題 を整理して改善策を検討するこ とを事前に予定しておく。
❼イレギュラー業務と  その頻度の公開  イレギュラー業務は、コスト を大きく狂わせる。
「最も安価 な料金を提示した会社と取引を 開始したが数カ月も経たないう ちに値上げの話が来た」という荷主に頼まれ、そ の実態を調べてみたところ、原因は荷主側にあっ たということは多い。
 イレギュラー業務の有無とその量がどれくらいあ るのかを荷主が事前に伝えていなかったのである。
それを確認しなかった物流会社側にも落ち度はあ るが、コストアップを恐れ、イレギュラー業務をわ ざと開示しない悪質な荷主もしばしば見受けられる。
当然ながら、稼働後に物流会社と揉めることになる。
結果としてコストは下がらない。
赤字で続くわけがない  コンペで提示されたコストはあくまでもシミュレ ーションに過ぎない。
実際にコストが下がったわけ ではない。
提示されたコストで運営を維持し、品 質を低下させないようにすることは物流会社の義 務であると同時に、荷主の責任でもある。
 日本で3PLの本格的なコンペが実施されるよ うになって一〇年以上が経過している。
物流会社 は例え受託までこぎ着けても、その運営次第では 赤字を強いられてしまうことを既に学習している。
その結果、物量だけが魅力で買い叩かれることが 明らかな案件は避けるようになっている。
 全国対応の可能な大手3PLはとくにその傾向 が強い。
そのため現状では、オーナー系の地場物 流会社がコスト面では優位に立っている。
ただし、 その業務品質は玉石混淆だ。
いくらコストが下が っても、品質が致命的に悪化してしまえば、物流 管理担当者はその責任を逃れられない。
赤字続き でバンザイされる恐れもある。
 コンペを安易に考えてしまうと、その代償は予 想以上に高くつくことは肝に銘じて欲しい。
33  NOVEMBER 2009 平成21 年10 月吉日 株式会社○○物流 御中 【最終選考選考通知文書例:内定企業向け】 株式会社●●●● 敬具 物流コンペティション最終結果のお知らせ  拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 平素は格別のお引き立てを賜り、心から厚く御礼申し上げます。
 この度は、お忙しい中、弊社物流コンペティションへご出席いた だきまして、誠にありがとうございました。
 皆様には、限られた情報・条件の中で、様々なご提案およびお見 積もりについてのプレゼンテーションをいただきました。
 最終選考につきましては、第一判断基準としてコスト対応力の他 に、物流品質、弊社との取組みに対する積極性、企業健全性にて判 断をさせていただき、●●●●および日本ロジファクトリーとの協議 の結果、今回○○物流様には、●●●●の物流パートナーとして、現 状の業務を引き続きお願いすることになりました。
詳細につきまし ては●月●日に改めてご連絡申し上げます。
 弊社発展のために、ご尽力いただきましたことを厚く御礼申し上げます。
 今後も、よりよい物流システム構築のために、皆様方のご提案・ ご協力をいただきたいと存じます。
 弊社と致しましては、御社とは物流パートナーとして今後も共に 発展できることを望んでおります。
 略儀ながら書面にて、今回の結果のご連絡をさせていただきます。
 今後とも、皆様のご健勝と貴社の一層のご発展をお祈り申し上げます。
平成21 年10 月吉日 株式会社○○物流 御中 【最終選考選考通知文書例:不採用企業向け】 株式会社●●●● 敬具 物流コンペティション最終結果のお知らせ  拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 平素は格別のお引き立てを賜り、心から厚く御礼申し上げます。
 この度は、お忙しい中、●●●●物流コンペティションへご出 席いただきまして、誠にありがとうございました。
 皆様には、限られた情報・条件の中で、様々なご提案およびお 見積もりについてのプレゼンテーションをいただきました。
 最終選考につきましては、第一判断基準としてコスト対応力の 他に、物流品質、弊社との取組みに対する積極性、企業健全性に て判断をさせていただき、●●●●および日本ロジファクトリー との協議の結果、今回は○○様の採用は見送りとさせていただく ことになりました。
 ●●●●発展のために、ご尽力いただきましたことを厚く御礼 申し上げます。
 今後も、よりよい物流システムの構築のために、皆様方のご提 案・ご協力をいただきたいと思います。
 略儀ながら書面にて、今回の結果のご連絡をさせていただきま す。
 末尾となりましたが、皆様のご健勝と貴社の一層のご発展をお 祈り申し上げます。

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