ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年11号
ケース
C.H.ロビンソン 世界同時不況

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2009  44 世界同時不況 C.H.ロビンソン 中小運送会社を組織化して輸送を仲介 運賃相場の下落を追い風に収益性向上  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
売上高大幅減でも増益を確保  車両や物流センターなどの資産を自社で所 有せずに輸送業務を仲介する、アメリカの C.H.ロビンソンに対する株式市場の評価が高 まっている。
証券アナリストたちは同社のビ ジネスモデルに「ベスト・イン・クラス」の太 鼓判を押している。
 同社の二〇〇九年度の第2四半期(四月〜 六月)決算では、総収入が一九億二六〇〇万 ドル(一七三三億四〇〇〇万円)と、前年同 期比で一七%も減少したにもかかわらず、純 収入(総収入から協力輸送会社の支払い等を 差し引いた実質収入)は同三・一%増の三億 五二〇〇万ドルを確保した。
 最終利益は九二〇〇万ドルで同二%増。
潜 在株式調整後の一株当たりの利益は〇・五四 ドルで同三・八%増だった。
キャッシュフロ ーも前年同期末から一億五〇〇〇万ドル以上 増やして四億九五〇〇万ドルとした(図1)。
 アナリストが同社の業績を称賛する理由は、 その利益率の高さにある。
第2四半期の純収 入に占める営業利益率は四二・六%で、最終 利益率も二六・二%に達している。
最終利益 率ベースでは、〇七年度と〇八年度に出した 最高値の二六・一%をわずかながらも更新し た。
五年前の〇四年度の二〇・八%と比べる と、五ポイント以上向上している。
 アメリカの今年度の国内輸送市場は、運賃 と物量とも前年同期比で五%は減ったといわ れている。
フェデックスやUPSといったガ リバー企業までもが苦戦を強いられている中、 同社が収益性を向上させていることは、株式 市場から驚きを持って賞賛されている。
 高い収益性の秘密は、売り上げの七割強を 占めるトラック輸送の仲介業にある。
同社は 日々変動するスポット運賃で、協力運送会社 から輸送力を購入している。
一方、同社が荷 主から受け取る運賃の約半分は長期契約に基 づいている。
 運賃相場が下がっても、荷主との契約を 更改するまでは、収受する運賃は下がらない。
協力運送会社に支払う運賃と、荷主から受け 取る運賃の変動に「時差」があるため、運賃 の値下げ局面において、同社の利幅は拡大す る仕組みになっている。
この事業構造が現在 深刻な不況に直面するアメリカの物流市場で一人 気を吐くのが輸送仲介業をメーンとするC.H.ロビン ソンだ。
中小零細の運送会社を中心に輸送力を確保。
運賃相場の下落という逆風を追い風に変えて収益を 伸ばしている。
協力会社の管理やM&A戦略、人件 費管理の工夫によって独自のビジネスモデルを構築 している。
図1 
.H. ロビンソンの2009 年の第2四半期の業績 総収入 1,926,020 -17.0% 純収入 351,704 3.1% 輸送部門 306,223 2.9% トラック輸送 266,226 5.6% 鉄道輸送 8,457 -21.0% 海上貨物 12,947 -7.7% 航空貨物 7,748 -20.2% その他 10,845 0.1% 食品卸業 34,048 12.4% 情報サービス 11,433 -14.8% 営業経費 1,776,136 -18.4% 輸送枠の購入代金 1,181,354 -27.5% 卸売業の仕入れ代金 392,962 12.1% 人件費 151,743 3.6% その他の営業経費 50,077 -0.2% 営業利益 149,884 3.7% 投資など 729 -57.3% 税引き前の利益 150,613 3.0% 法人税 58,360 4.6% 最終利益 92,253 2.0% 潜在株式調整後一株当たりの利益 3.8% (注1)単位は千ドル (注2)パーセンテージは、前年同期比の増減率 45  NOVEMBER 2009 の市場環境と上手くかみ合っている。
 もちろん、同社と長期契約を結んでいる荷 主も運賃市況の下落を自社の支払い運賃の引 き下げにつなげたいと考えている。
今年に入 ってコンペを開催するケースも増えている。
例 えば年間五万件の出荷のある大手荷主が、そ のうち五〇〇〇件から一万件分の輸送ルート に関して、それまでの一〇%から二〇%引き の運賃で運んでくれる業者を探す、といった 具合だ。
 しかしそうした支払い運賃削減の流れも、 C.H.ロビンソンにとってはプラスに働いてい ると、同社のジョン・ウィーホフ会長兼CE O(最高経営責任者)はいう。
「運賃市況を 含めて、輸送業界全体が流動的で不安定で ある現状において、荷主が単独で自信をもっ て輸送業者を切り替えることは容易ではない。
それよりも当社に任せれば、付加価値をつけ て貨物を運んできてくれるという心理が働い ているようだ」と分析している。
 第2四半期に同社の総収入が大幅に落ち 込んだ最大の要因も、物量や運賃の下落では なく、燃料費が低値で安定したためだという。
ウィーホフCEOは、「物量と運賃が下がる中 でも、当社は荷主企業に積極的に営業をかけ て新規顧客を開拓することで、既存顧客の物 量減を補っている」という。
食品卸売業から物流業に展開  同社の創業は一九〇五年にさかのぼる。
ア メリカ東部出身 のセールスマン だったチャール ズ・ヘンリー・ ロビンソン(C. H.ロビンソン) 氏が中西部に移 住後、共同経営 者たちと食品の 卸売業者として 同社を立ち上げ た。
鉄道輸送や 定温輸送にかか わるようになっ たのも卸売業の 一環だった。
六〇年代後半に牛肉専門の輸送 業者を設立し、車両などのアセットを持ち輸 送業務を開始した(図2)。
 そのビジネスモデルが大きく変わったの は、八〇年の自動車運送事業者法(Motor Carrier Act)の施行による規制緩和がきっか けだった。
トラック(トレーラー含む)運送 業の仲介業が解禁された。
これを受けて同社 は八〇年代半ばに、先の牛肉専門の輸送業者 を売却。
トラック運送の仲介業に本格的に参 入した。
 その後は通運業務、海上・航空のフォワー ディング業務へと事業領域を拡大していった。
九七年にはナスダック市場に株式を上場。
上 場当初は五ドル台だった株価は現在では五〇 ドルを超えている(図3)。
 上場以来、年率一五%の成長を目標に掲 げ、〇八年度までは目標以上の成長を達成し てきた。
九九年から〇八年までの一〇年間を みると、純収入の一〇年間の年平均成長率 (CAGR)は一八・八%増、営業利益は同 二三・八%増、一株当たりの利益は二三・ 四%増だ(図4)。
 〇九年度に入ってからは、成長率が前年同 期比で一〜二%増に鈍化しているが、それで も市場の評価は揺らいでいない。
 現在の事業の柱は大きく三つ。
主業はトラ ック運送をメーンとする輸送業務の仲介業で 総収入の九割近くを占める。
もう一つは創業 時から続く食品卸売業で、これが総収入の一 図2 
.H. ロビンソンの略史 1896 年 創業者のロビンソン氏 中西部で食品卸売業を開始 1905 年 1913 年 共同経営者のナッシュ兄弟がロビンソン氏の全株取得 1919 年 本社をミネソタ州ミネアポリス近郊に移す 1941 年 経営者が従業員への株式の売却を始める 1968 年 1976 年 従業員が株式の100%を所有する 1980 年 1983 年 1986 年 1988 年 通運業務を開始 1989 年 海上貨物のフォワーディング業務を開始 1990 年 航空貨物のフォワーディング業務を開始 1993 年 欧州初の拠点をフランスに開設 1997 年 ナスダック市場に上場 1998 年 アメリカ国内と南米で3 PL 企業2社を買収 顧客用のウェブサイトを立ち上げる 1999 年 フランスの3 PL 企業を買収 アメリカ国内の3 PL 企業を買収 2000 年 アメリカ国内の定温3 PL 企業を買収 2003 年 香港にフォワーディング業務のための事務所開設 ドイツの3 PL 企業を買収 2004 年 中国のフォワーダーを買収 2005 年 ドイツとイタリアでフォワーダー2社を買収 2006 年 アメリカ国内で3PL 企業を買収 インドの3 PL 企業を買収 2007 年 シンガポールに事務所開設 アメリカ国内で3PL 企業を買収 2008 年 カナダのフォワーダーを買収 2009 年 イギリスのフォワーダーを買収 フロリダ州の卸業者2社を買収 アセットを持った牛肉専用の輸送会社ROBCOトラ ンスポーテーションを設立 自動車運送事業者法による規制緩和を機に、トラッ ク輸送の仲介業を開始 トラック業者向けの情報企業であるT- チェック・シ ステムを買収 ROBCO トランスポーテーションを売却して、再び ノンアセットの3PL 企業に ロビンソン氏 2人の共同経営者とC.H. ロビンソンを 立ち上げる NOVEMBER 2009  46 割弱。
残りがトラック運送業者向けのIT支 援サービスだ。
 支社の数は現在二三三社。
そのうち八割近 い一七七社がアメリカ国内にある。
他にヨー ロッパが二八社、アジアに一八社の支社を置 いている。
純収入で見ると、九割以上をアメ リカ国内が占めている。
中小運送会社を実績で評価  輸送業務の仲介では、約三万二〇〇〇社 の荷主企業と取引を行っている。
年間の取扱  協力運送会社との信頼関係を構築するの と並行して、荷主企業とも長期にわたり取引 を行うことが同社の経営の安定に欠かせない。
件数は七三〇万件。
荷主の上位一〇〇社の内 訳をみると、食品や飲料関係が三四%と一番 多く、次いで製造業二七%、小売業一五%、 紙関連の製造業一四%と続く。
荷主企業の上 位一〇〇社が同社の純収入に占める割合は約 三〇%だ。
 一方、協力トラック運送会社数は約五万社 に上っている。
主力は中小業者で、?一人親 方?の個人事業主も多い。
五万社の輸送業者 を規模別にみると保有台数一〇〇台以下が七 五%、一〇〇台から三九九台までが十三%、 四〇〇台以上が十二%となる。
 ウィーホフCEOは「当社の取扱貨物の多 くは五〇台以下の運送会社が運んでおり、当 社はそうした中小の輸送業者と一緒に成長し ようとしている」という。
 一カ月平均で一〇〇〇社強が同社のネット ワークに新たに入ってくる。
ウィーホフCE Oは「(そうした零細業者と取引を始めるこ とは)当社にとっての信頼関係を築くタネの ようなものであり、長期間をかけて取引を 拡大していく、土台となるものである」と いう。
 運送会社はC.H.ロビンソンとの取引を開 始するにあたって、免許と安全に関する記録、 車両や事故をカバーする保険書類を提出する だけでいい。
ただし、契約一年以内といっ た新規の運送会社に委託する物量は、全体の 一%前後にとどまる。
実績に応じて、委託す る物量を増やしていく方法をとっている。
図4 C.H. ロビンソンの業績の伸び図? ? 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 293.3 (単位:百万ドル) 1,375.0 (単位:ドル) 18.8% 23.4% ‘00‘01‘02‘03‘04‘05‘06‘07‘08 ‘99‘00‘01‘02‘03‘04‘05‘06‘07‘08 純収入の過去10 年間の年平均成長率1 株当たりの利益の過去10 年間の年平均成長率 0.32 2.08 ‘99 図3 C.H. ロビンソンの株価の伸び 出典:Yahoo! ファイナンス (単位:ドル) 1997年2000年2002年2004年2006年2008年 47  NOVEMBER 2009 割合を一定の範囲に収めるということがある。
第2四半期の人件費比率は四三・一%で前 年同期は四二・九%となっている」という。
 従業員数はこれまで、業績が伸びるのに合 わせて一貫して増え続けていた。
〇四年度末 に四八〇〇人だった総従業員数が、〇八年度 末には八〇〇〇人弱まで増えた。
しかし今年 第2四半期末にはその数が七三〇〇人と半年 間で一割減った。
前年同期比での人件費の支 払いが増加しているのは、従来より高い資格 を持つ従業員が増えたからだ。
 人員減は自然減と新規の採用を手控えるこ とで達成したとしているが、同社が従業員数 をコントロールする仕組みは、本社からの指 示によるものではない。
アメリカや海外の計 二三三の支社がそれぞれ人員数や人件費をコ ントロールしている。
 生産性や業績を評価するための全支社共通 のスコアカードを利用するほか、期末に支払 うボーナスの仕組みも支社に適正な人員を配 置する強力な動機づけになっている。
 ボーナスの支払い方には二種類がある。
一 つは、支社の成長が目標を上回った場合に、 その超過利益を期末に従業員の頭数で割って 分配するというもの。
二つ目は、支社ごとに 税引き前の利益に対して各人が一定の割合を 受け取るという仕組みだ。
いずれも支社の人 数が少ないほうが、各人が受け取るボーナス 額が増える。
 
.H.ロビンソンはまた、M&Aでも独自の アプローチをとっている。
その戦略を一言で 言うなら、「小さく買って、大きく育てる」だ。
原則として、買収に使う費用は年間の純収入 の一%以下に抑えている。
 主な買収対象は、それまでネットワークを 持たなかった地域の中小の仲介業者や通関業 者、フォワーダーなどだ。
そのため一件ごと の買収金額は会計法上では公開する必要のな いほど少額なものとなる。
それを自社のネッ トワークに組み入れてから自力成長を促す。
 七月に買収したインターナショナル・トレ ード&コマース(ITC社)は、そうしたM& A戦略の典型例だという。
ITC社はテキサ スに本社を置き、アメリカとメキシコ間の通 関業務を主業としている。
 ウィーホフCEOは「ITC社の買収によ って当社の通関業務の収入が増えることにな るのはもちろん、それ以上に重要なのは、通 関業務を強化したことによって、アメリカと メキシコ間でドア・ツー・ドアのサービスが 充実し、それがアメリカ国内のトラック輸送 の取り扱いの増加につながることだ」と説明 する。
 資産を持たずに輸送業務の仲介に徹する というC.H.ロビンソンの独自のビジネスモデ ルは、アメリカ国内の景気の低迷期において、 その強さを鮮明にしている。
逆風をバネにす る同社の業績が今後どこまで伸びていくのか 注目が集まっている。
(ジャーナリスト 横田増生) そのための手法の一つとして、特定の輸送 モードにこだわらない販売方法をとっている。
同社では「クロス・セリング(cross selling)」 と呼んでいる。
 貸し切りとLTL(Less Than Truckload: 日本の特別積み合わせ貨物輸送に相当)の トラック輸送を中軸としながらも、鉄道輸送、 海上・航空貨物輸送にも対応している。
 第2四半期の純収入の数字を見ると、トラ ック輸送が伸びているのに対して、鉄道輸送 は二〇%以上の落ち込みとなっている。
これ はトラック燃料費の高騰が落ち着いたことと、 物量減に端を発するトラック運賃の値下がり により、鉄道輸送を利用するメリットが減少 したことが理由だ。
 一つの輸送モードの売り上げが落ちたとし ても、全体の貨物量を確保すれば、仲介手 数料を収入源とする同社は業績を維持できる。
自社でアセットを持たないために、荷主の要 望に応じて輸送モードを柔軟に提供できるこ とが強みだ。
人件費比率を重要な経営指標に  同社の営業経費のうち、傭車への支払い を除くと、人件費が最大の項目となってい る。
この人件費とそのベースとなる従業員数 は、業績に合わせて柔軟に上下する仕組みに なっている。
 ウィーホフCEOは「当社の大切な経営戦 略の一つとして、純収入に対する人件費の

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