ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年1号
特集
第1部 低炭素社会のロジスティクス市場 ケーススタディ 先進荷主の算定勘定

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 環境負荷低減は企業としての責務だ。
しかしコストアッ プやサービスレベルの低下は容認できない。
先進企業はし たたかに算盤をはじいている。
社会的なプレッシャーを 改革の推進力に変えることで収益向上を図る各社の取り 組みの実情に追った。
          (石鍋 圭) JANUARY 2010  14 先進荷主の算定勘定  トヨタ自動車  ──環境対策としての物流改善  トヨタ自動車は環境対策をコスト削減の手法の一つ として明確に位置付けている。
 「コストをかけてまで環境に投資できるかと言わ れたら現状では“ノー”だ。
また、JIT(Just in Time)が基本理念にある当社はリードタイムも犠牲 には出来ない。
コストもCO2も減り、リードタイム にも影響が出ないような取り組みの洗い出しに努力 している」(同社)という。
 トヨタの全社的な環境への取り組みは、「トヨタ地 球環境憲章」が制定された一九九二年に端を発する。
翌九三年には、この憲章の理念を具体的な企業活動 に反映させるため、中長期計画として「第一次トヨ タ環境取組プラン」が策定されている。
以降、九六 年に第二次、〇〇年に第三次環境取組プランが策定 され、現在は第四次トヨタ環境取組プラン(〇六年 〜一〇年)が推進されている。
 国内の推進体制としては、豊田章男社長が委員長 を務める「トヨタ環境委員会」を頂点に、「生産環境 委員会」、「製品環境委員会」、「資源循環委員会」と いう三つの委員会が横並びでぶら下がり、各分野の 取り組みを統括している。
このうち、生産環境委員 会の下に「物流分科会」が設置されている。
 トヨタ自動車の物流に関する部門は、物流企画部、 生産部品物流部、車両物流部、サービスパーツ物流 部の四つに分かれている。
合計一四〇〇人強の大部 隊だ。
物流分科会では、会長を務める常務役員が各 部門の取り組みを年に二回フォローアップしている。
 現在推進している第四次トヨタ環境取組プランで は、「エネルギー/温暖化」「資源循環」「環境負荷物 質」といった各分野の計二二項目について、推進す べき取り組みや、プランの最終年度である二〇一〇 年に向けた目標値が提示されている。
 このうち物流分野のテーマとしては、「CO2排出 量の削減活動」と「梱包資材使用量の低減活動」の 二つが掲げられている。
 「せっかく環境に優しいプリウスをつくっても、そ の輸送時に多大なCO2を排出していては何の意味も ない。
環境への取り組みのトップランナーを標榜する トヨタにとって、物流分野での環境負荷低減は重要 なファクター」だと同社はいう。
 
達錬嫁喀侘未砲弔い討蓮九〇年度比で一〇%削減 することを達成目標としている。
具体的には、九〇年 に四四万トンだったCO2排出量を、一〇年までに三 九万六〇〇〇トンまで削減することを目指している。
 もっとも、〇八年度のCO2の排出量は、当初見込 みの段階で既に三九万三〇〇〇トンと一〇年度の目 標を軽くクリアしている。
しかも実績は見込みを大き く下回る二九万八〇〇〇トンに抑えられた。
これは 〇八年後半からの急激な不況による生産台数減、そ れに伴う物量減によるところが大きく、とても喜べ る状況ではない。
 それでも同社では物量減とは別に取り組み活動に よる削減分を切り分けて把握している。
その取り組 みによる成果だけでも一万六〇〇〇トンの削減に成 功している(図1)。
「今後、生産台数が戻ってきも プランに掲げた目標は達成できる見込みだが、引き 続き自社の取り組みによる削減活動を重視していく つもりだ」(同社)という。
 既に物流各部門は様々な施策を打っている。
その 一つが、完成車輸送の航路集約だ(図2)。
従来は中 部・関東間、中部・四国間、中部・九州間の三航路 第1部低炭素社会のロジスティクス市場 特集 15  JANUARY 2010 に分けて、合計七隻で運行していた。
その体制を〇 八年九月の大型船就航に伴い見直し、一航路合計六 隻に集約した。
同じ船で関東・中部・中四国・九州 を回ることで、船の待機時間短縮や運行パターンの 均一化が可能になり、中型船一隻を減船することに 成功した。
 これにより、年間のCO2排出量を三五〇〇トン削 減した。
他にも生産用部品の鉄道輸送の拡大や、パー トナー物流会社に対するエコドライブ推進などを実施 している。
 梱包資材の使用量については、九五年度比で四五% の削減、一〇万三〇〇〇トンから五万九二〇〇トン に低減することを目指している。
これに対して〇八 年度は当初見込みが七万二〇〇〇トンで実績は六万 一八〇〇トンだった。
 見込みを大きく下回ったのは、やはり物量減が大 きな要因だが、バンパー包装仕様のスリム化やスチー ル・リターナブル容器の適用拡大といった取り組みに よっても三三〇〇トンを改善している。
 現在見舞われている急激な生産台数減、物量減が、 物流分野における環境への取り組みには追い風となっ ている。
共同配送やモーダルシフト、さらには生産工 場の移管など、物流部門だけでは実現できない取り 組みも次々に実現している。
 同社では「ここ数年で国内、そしてグローバルにお ける物流コストの“見える化”が進んだことや、コ スト削減へのニーズが強まったことにより、整合性の ある施策なら、部門を越えて協力し合うことも難し いことではなくなってきた」としている。
 さらに海外での活動に関しても二〇一〇年度まで には、CO2排出量と梱包資材使用料の実態を把握し て、具体的な削減策を進めていく計画だ。
 パナソニック電工香川  ──国からの助成金を活用  パナソニック電工の一〇〇%子会社であるパナソ ニック電工香川(以下、電工香川)は、主に玄関収 納やリビングファニチャー、造作部材ホームライン(幅 木・窓枠)などを生産している。
売上は約六〇億円 で、製品の九割以上が親会社向けだ。
 パナソニック電工グループの環境方針のもと、物流 においては、CO2排出量を前年度比一%削減すると いう目標を立て、モーダルシフトなどの取り組みに積 極的に着手している。
〇六年には国交省の外郭団体 である鉄道貨物協会が主催する「エコレールマーク」 もグループ内で初めて取得している。
 物流分野の最も大きな取り組みとして、〇六年に 国交省と経産省が主催する「グリーン物流パートナー シップ事業」の認定を受け、助成金を得たことが挙 げられる。
翌〇七年には、認定された事業の中でも 特に優れた施策であったとして「グリーン物流パート ナーシップ国土交通大臣賞」も受賞した。
 同社が認定を受けた事業は、海運へのモーダルシフ トと鉄道輸送の拡大の二本柱で構成されている。
ま ずは、海運へのモーダルシフトの概要から説明しよう。
 従来、同社は「芯材」という原材料を大阪府岸和 田市のベンダーから購入していた。
ベンダーが独自で 物流会社を選定し、トラックを仕立て、電工香川の 工場まで陸上輸送して納入していた。
 一方、電工香川は工場で生産した製品の一部を、 京都府田辺市にある親会社の物流センターにトラック で輸送していた。
共に帰り便が空配送になっていた。
 まず、工場から京都の物流センターに届けるトラッ ク輸送を海上フェリーに切り替えた。
工場からの荷 図1 トヨタ自動車物流CO2 排出量の推移(国内) 図2 航路集約により1隻減船、CO2 排出量3,500t を削減した 出所:トヨタ自動車「Sustainability Report 2009」より (万t) 1990 33.0 44.0 50 40 30 0 29.8 35.8 35.1 ’ 05 ’ 06 ’ 07 ’ 08 実績(年度) 物流量減 ▲7.9 改善分 ▲1.6 当初見込み 39.3 中型船(2 隻) 4日ラウンド 大型船(2 隻) 2日ラウンド 大型船(3 隻) 3日ラウンド 大型船(6 隻) 6日ラウンド 〜2008 年8月2008 年9月〜 中部中部 関東 九州 関東 九州 合計7隻合計6隻 物を高松港までトレーラーで運び、トレーラーの荷台 をヘッドと切り離して船に積み込み神戸港まで運ぶ。
神戸港からは再びトレーラーのヘッドと荷台を連結さ せて京都の物流センターまで運び、製品を納入する。
 京都の物流センターへの納入が終わったトレーラー は、大阪のベンダーに回る。
そこで原材料の芯材を 積み込み、神戸港まで走る。
あとは来たルートの逆 を辿って香川の工場に帰る(図3)。
この海運への モーダルシフトでは、トレーラーでの輸送を地場運送 会社の朝日通商が、海運での輸送をジャンボフェリー が担っている。
 原材料を「取りに行く物流」に変えたことで、商 慣行にもメスが入った。
従来はベンダーが商品価格 に物流費を乗せて、電工香川に料金を請求していた。
変更後は電工香川が直接フェリーやトレーラーを仕立 てている。
これに伴いベンダーからの仕入れ価格を商 品の本体価格と物流費に分ける必要が生じた。
 電工香川の大野智廣代表取締役常務は「従来の仕 入体制では当社には物流費がわからなかった。
当社 が取りに行くことで、物流費が“見える化”した。
コストが明確化したことで改善の余地も見えてきた。
実際、今の商品価格と物流費の合計は、以前ベンダー に一括で支払っていた額に比べて低くなっている。
今 は一社だけだが、今後ミルクランでの調達先が増えれ ばコストメリットはさらに大きくなる」と説明する。
 次に鉄道輸送の拡大だ。
電工香川では、MDFと いう木質素材にシートを貼り合わせる作業を、京都 府舞鶴市にある加工業者に委託していた。
MDFは 輸入材で、海外から大阪港に揚げられ、そこからト ラックで京都の加工業者まで運ばれていた。
シートは 埼玉幸手市の資材メーカーが京都の加工業者までト ラック輸送していた。
 
唯庁討肇掘璽箸鯆イ蟾腓錣気譴辛材は、加工業者 によって電工香川の工場まで陸送されていた。
海外 からの輸送に加え、長い距離をトラックで運んでいた ので、トータルでのCO2排出量は多大なものとなっ ていた。
 そこで、電工香川はコスト削減も見込めることか ら、加工業者に委託していた貼り合わせの作業を電工 香川の工場で内製化することにした。
それに伴い、海 外から輸入していたMDFを、すぐ近くの徳島県小松 島市にある原材料メーカーからの調達に切り替えた。
 シートは従来通り埼玉県幸手市のメーカーから調達 することになった。
しかし、トラックでの輸送は環境 への負荷が大きい。
そこで鉄道輸送を使うことにした。
 それ以前から電工香川は工場で生産した製品を、 埼玉県草加市にある親会社の物流センターに届ける ため、高松貨物ターミナルから埼玉の越谷貨物ターミ ナルまで鉄道輸送していた。
その帰り便を使うこと で、トータルのCO2は大きく削減されることになっ た(図4)。
この取り組みでは、JR貨物の四国支店 と日本通運の四国支店がパートナーとなっている。
 一連の取り組みは、年間二二五トンのCO2排出量 の削減、調達物流費一〇%削減、積載効率一七五% アップなど、大きな成果を挙げている。
このうちグ リーン物流パートナーシップ事業の助成金の対象と なったのは、電工香川が導入した検品・伝票発行シ ステムと、朝日通商が購入した二台のトレーラーだ。
 補助申請を担当した電工香川の松本康生執行役員 生産技術担当環境管理責任者は「当社に下りた補助 額は決して大きなものではない。
申請して認可に至 るまでは煩雑な業務も多い。
それでも、物流の仕組 みを変えて環境負荷を低減し、なおかつコストを下 げる良いモチベーションになった。
今後も機会が有れ JANUARY 2010  16 パナソニック電工香 川の大野智廣代表取 締役常務 パナソニック電工香川 の松本康生執行役員 生産技術担当環境管 理責任者 図3 図4 【商品届ける物流】 香川松下電工株式会社 (香川県綾川町) 原材料メーカー (大阪府岸和田市) 商品 資材 京都田辺物流センター (京都府田辺市) 実施前 【大型トラック輸送】 実施前 物流コスト 原材料メーカー負担 (売り手が、製品価格+輸送費を支払う) 【取りに行く物流】 香川松下電工株式会社 (香川県綾川町) 原材料メーカー (大阪府岸和田市) 資材 京都田辺物流センター (京都府田辺市) 実施後 物流コスト 仕入れメーカー負担 (買い手が物流コスト支払い) 買い手自ら輸送費を 負担することによる 効率的な物流に改善 商品 香川松下電工 株式会社 (香川県綾川町) 原材料加工工場C (舞鶴市) 海外調達 資材B 原材料メーカーA (埼玉県幸手市) 大阪港 資材A+資材B 資材A 【生産拠点集約化・鉄道輸送】 実施後 原材料メーカーB (徳島県小松島市) 原材料メーカーA (埼玉県幸手市) 越谷貨物ターミナル (埼玉県越谷市) 香川松下電工 株式会社 (香川県綾川町) 高松貨物ターミナル (香川県高松市) 資材A 資材B 特集 ば積極的に活用していきたい」という。
 三菱電機  ──生産・設計部門に物流の視点を導入  三菱電機グループは、一九九三年からほぼ三年ご とに「環境計画」を立案している。
現在は「第六次 環境計画(〇九年度〜十一年度)」を推進している。
「地球温暖化防止」や「循環型社会形成」「環境事業 拡大」などの活動項目に対し、それぞれ現状と目標 が掲げられている。
 このうち、物流分野の取り組みは「エコ・ロジス活 動」と名付けられ、具体的な活動目標として「販売 物流におけるCO2排出量を〇八年度比で三%削減」 「包装材使用量を〇八年度比で一〇%削減」などが設 定されている。
 〇六年度からスタートし、〇八年度に終了した「第 五次環境計画」に掲げられた物流分野での目標は、 ほぼ達成された。
CO2排出量は〇二年度比で三〇% の削減を目指していたが、グループ全体で二七%を 削減した。
目標にはわずかに届いていないが、三菱 電機単体による取り組みでは、三二%の削減を達成 している。
 梱包資材の使用量削減においては、〇四年度比で 十三%の削減を目指していたが、グループ全体で一 五%削減、三菱電機単体にいたっては一八%の削減 に成功している。
 これと並行して物流コストも大幅に下がっている。
〇八年度は輸送コストで一〇億円、その他梱包など で一〇億円、合わせて二〇億円強の物流関連費の削 減に成功している。
 三菱電機の菊谷純ロジスティクス部長は「環境負荷 低減とコスト削減は基本的には“イコール”。
中には コストアップになる施策もあるが、そういった施策に は着手すべきではない。
環境は重要なテーマではあ るが、企業活動をしている以上、コストやサービスレ ベルを軽視することはできない」という。
 同社ではエコ・ロジス活動と並行して〇六年から 「物流JIT(Just in Time)改善プロジェクト」と呼 ぶ活動を推進している。
菊谷部長は「物流を徹底的に “見える化”し、全社一丸となって改善に努めること がプロジェクトの目的だ。
このプロジェクトを展開さ せたことで環境負荷低減が加速した」と胸を張る。
 各工場の生産技術部門から「物流キーマン」を、製 品設計部門から「包装キーマン」を最低一人選任し、 それぞれの現場の改善活動を統括させている。
これ と並行してロジスティクス部門は物流キーマンや包装 キーマン向けに勉強会を開催したり(図5)、実際に 現場に行って物流改善のノウハウを伝えている。
 この取り組みが、物流改革に全社的に取り組むこ とを可能にした。
その一つとして製品開発にも物流 の視点が採り入れられた。
同社の代表製品であるルー ムエアコンの室外機が一〇トントラック一台に乗るの は従来一四〇台だった。
積載効率をさらに上げるた め、室外機の設計を見直した。
奥行き五・九センチ、 幅十三・一センチ、高さ一センチ分を短縮・コンパク ト化することで、一台のトラックに乗る室外機は一七 〇台になり、積載率は二〇%向上した(図6)。
 七〇〇台の室外機を輸送するとすれば、トラック を五台から四台に減らせることになる。
これを室外 機工場のある静岡から佐賀の配送センターに当てはめ たことにより、CO2の排出量は二〇%削減された。
さらに、このトラック輸送を三一フィートコンテナで の輸送に切り替えたことで、CO2の排出量は従来に 比べて八七%削減したという。
17  JANUARY 2010 図5 包装キーマン実践改善会で は、より効率的な梱包方法などが 検討される 三菱電機の菊谷純 ロジスティクス部長 図6 製品のコンパクト化? ルームエアコンの室外機を小型化 トラックへの積載量アップ 従来小型化後 従来小型化後従来小型化後 従来小型化後 373×930×594[ ? ] 奥行を59?、幅を131?、 高さを10? 短縮! 314×799×584[ ? ] 製品のコンパクト化?( 鉄道輸送) トラック使用車数減! ⇒ CO2 排出量削減 さらにトラックを鉄道輸送に切り替えると JRコンテナ輸送へ切替推進! ⇒ CO2 排出量削減 ※静岡から佐賀まで約700 台を  輸送する場合 20% 小型化 20% 削減 87% 20% 削減 アップ 140 台170 台 5車 CO2 7,040 ? 4車 CO2 7,040 ? 日本通運 ECO LINER 31 日本通運 ECO LINER 31 CO2 911 ? ※静岡から佐賀までエアコン 約700 台を31ftコンテナで 輸送する場合 ※静岡から佐賀までエアコン 約700 台を大型トラックで 輸送する場合 CO2 8,800?

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