ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年1号
特集
第2部 公的助成金・支援制度活用ガイド レポート 「事業仕分け」がNEDOを直撃

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 行政刷新会議の「事業仕分け」で、資源エネ ルギー庁が担当する省エネ補助事業に対して予 算要求の縮減という判定が出た。
補助金の存在 意義は一応認めつつも、「ムダがある」と判断 された。
            (梶原幸絵) JANUARY 2010  24 「事業仕分け」がNEDOを直撃 財務省 VS 経産省  二〇〇九年十一月二七日、新宿「国立印刷局市ヶ 谷センター体育館」。
行政刷新会議の「事業仕分け」 の会場だ。
広いフロアをパーテーションで簡易的に区 切り、三つのワーキンググループ(WG)の会場が セットされている。
 午後一時半。
予定通り第二WGで、経済産業省資 源エネルギー庁が担当する補助金、「エネルギー使用 合理化事業者支援事業(省エネ事業者支援)」の事業 仕分けが始まった。
 太陽光発電設備など新エネルギー設備の導入経費 を補助する「新エネルギー等導入加速化支援対策費 補助金(新エネ導入支援)」も同じ時間で仕分けされ ることになっている。
 省エネ事業者支援の二〇一〇年度予算の概算要求 は二五八億七八〇〇万円。
これはグリーン物流パート ナーシップ会議等の原資としても利用される。
一方、 新エネ導入支援は三八八億四五〇〇万円だ。
 長方形の会場の一番奥の折り畳み式テーブルには、 同WG主査の尾立源幸参議院議員、とりまとめ役の 菊田真紀子衆議院議員、担当府省から評価者として 入った経済産業省の高橋千秋政務官、そして司会者 が並んで席に着いている。
 民間から選出された仕分け人たちは議員らの机と 九〇度の角度に置かれたテーブル二つに分かれて、計 十三人が座っている。
 議員たちのテーブルと正面から向かい合う位置の テーブルが、いわば“被告席”だ。
エネ庁の担当者 たちが着席している。
エネ庁担当者の背後には報道 陣とテレビカメラが何台も陣取っている。
 もっとも会場の空気はテレビのニュース映像から受 ける印象と少し違って、それほどピリピリはしていな い。
一般人の見学も許可されているが、ざっと会場 内を見渡してもスーツ姿の関係者とマスコミの取材陣 がほとんどのようだ。
 議論の時間は一時間と決められている。
仕分け作 業はまずエネ庁担当者による事業概要とこれまでの 実績についての説明から始まった。
 エネ庁担当者は、「省エネ事業者支援ではCO2を 一トン削減するために必要な補助金額が約二二〇〇 円であり、海外から排出枠を購入するのとほぼ同等 になっている。
費用対効果は高い」などとアピール し、最後に鳩山由起夫首相の掲げる「二〇二〇年ま でに温室効果ガスの二五%削減」の取り組みのため に、予算を要求したと締め括った。
 これに対して今度は“検事役”の財務省主計局担 当者が登場。
査定担当としての考えを述べた。
「省エ ネ事業者支援の一トン当たり二二〇〇円というコスト は低額だからこそ、補助金としての役割は終わった といえるのではないか。
新エネ導入支援は補助先に 大企業とその子会社が多い。
大企業に対しては補助 は不要ではないか」などと問題点を指摘した。
 これらを受けて、とりまとめ役の菊田議員が論点を 整理。
仕分け人たちによる質疑・議論に入っていく。
 議論の多くは省エネ事業者支援に費やされた。
導 入支援は補助金と税制特例のどちらで行うべきなの か、補助対象として大企業は適切なのか、キャップ& トレードや排出権取引との関係での問題点など、矢 次早な質疑応答が続く。
 時間の経過と共に仕分け人たちもヒートアップして くる。
「そうじゃないでしょ!」と発言途中で回答を さえぎられるエネ庁担当者。
だんだん会場の雲行き が怪しくなってきた。
第2部公的助成金・支援制度活用ガイド 特集 25  JANUARY 2010  新エネ導入支援については、ある仕分け人から「(導 入費の三分の一補助であれば)初期投資を積めば積 むほど補助金が多く下りるので、過大な投資をして ムダを生む」という発言まで飛び出す。
いくら三分 の一のお金をもらっても、三分の二は自己負担。
地 方自治体でもない民間企業が過大な投資をするわけ はない。
 話題はあちこちに飛び、論点が深掘りされること はないまま、一時間の短い議論は終わった。
 まずは省エネルギー事業者支援の判定だ。
仕分け 人がそれぞれ判定結果を記入したカードが菊田議員 の手元に集められた。
結果は十三人中、廃止が三人、 一〇年度予算計上見送りが一人、予算要求縮減が九 人。
九人のうち、縮減程度は半額が三人、三分の一 が三人、その他三人。
省エネ補助金を三分の一削減  この結果を受け、省エネルギー事業者支援は予算要 求の三分の一程度の縮減となった。
 これに続き菊田議員によって、省エネ事業者支援 について、次のように仕分け人たちのコメントが整理 された。
?規制的手法の導入で補助金支出を抑制することが できるのではないか。
?補助金の交付先と税制特例による減税先の関係が 明らかになっていないなど、全体的にデータが不足し ている。
データを集めて分析し、示して欲しい。
?CO2の二五%削減という全体戦略に基づいた補助 金のあり方と規制のあり方を早急に打ち出してもら いたい。
?補助金は中小企業に特化するべきではないか。
 次は新エネ導入支援の判定だ。
廃止四人、予算計 上見送り二人、予算要求縮減七人という結果だった。
廃止と予算計上見送りは予算をゼロにすべきという 意見であり、予算要求縮減の七人のうち、半額が一 人、三分の一程度が三人、その他三人だった。
 新エネ導入支援については半額程度の縮減となっ た。
中小企業に特化すべきだという意見や、税によ る優遇とフィード・イン・タリフ(エネルギーの買い 取り価格を法律で定める助成制度)の推進に予算を 回すべき、とのコメントがまとめられた。
 仕分け作業を傍聴していたNEDO関係者は「仕 分け一般についてよく言われているように、事業の中 身をきちんと理解していない人が議論していた。
し かも最初から結論ありきで、結論に向けて議論を誘 導している印象を受けた。
エネ庁も企業は補助金が なければ省エネ投資自体を見合わせてしまうという、 補助金の意義をもっとクリアに説明すべきだった」と ため息交じりに話していた。
 今回の判定結果について後日、他の関係者にも感 想を聞いてみた。
 グリーン物流パートナーシップ会議の関係者は、「N EDOの全体の予算枠が減ったとしても、グリーン 物流パートナーシップ会議の推進事業は省エネ事業者 支援制度のなかでも重点支援対象になっているので、 それほど心配はしていない」という。
 一方、国交省の支援事業関係者は「中小企業に特 化すべきといったコメントが多かったことが気になっ た。
大企業には使えないとなれば、これまでのNE DOの支援の仕組み自体が大きく変わってしまう」と 危惧していた。
 仕分けの結果が予算編成にどう反映されるのか、 本稿を執筆している〇九年十二月十六日の時点では まだ決まっていない。
事業仕分けの最終日となった27日、会場は多く の人であふれかえった 98 16 18 9.1 99 31 32 4.8 00 35 44 10.0 01 70 84 16.2 02 120 87 21.1 03 111 109 41.0 04 65(80) 115 40.0 05 314(330) 147 46.8 06 399(419) 231 68.9 07 331(374) 297 62.2 08 402(460) 357 59.7 計画省エネ効果 年度 (万kL /年) 新規採択件数 (複数年度事業含む) 補助金交付決定額 (億円) ※1 ※1 ※1 ※1 ※2 ※1 図1 エネルギー使用合理化事業者支援事業の実施スキーム 図2 NEDO エネルギー使用合理化事業者支援事業の実績。
05 年度に運輸関連等が対象になり、採択件数は大幅に増加した NEDO 資料より作成 NEDO 申請/省エネデータ提供 国土交通省 農林水産省 事業者 認定 申請 補助 公募/補助 経済産業省 資源エネルギー庁 審査委員会 ※1 複数年度事業は新 規採択年度に計 上。
カッコ内は前 年度までに採択し た複数年度事業の 後年度分 ※2 補正(予算分)公募 を含む

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