ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年1号
メディア批評
オバマの口をカネの力で封じさせた中国政府日本はなぜカネを払っても何も言えないのか

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 JANUARY 2010  74  「元外務省主任分析官」の佐藤優が『東京新 聞』の「放射線」に書いているコラムが刺激的 である。
 たとえば十一月二日付のそれは「蟻が砂糖 に群がるように、官僚は権力に擦り寄る」と 始まり、固有名詞を挙げて外務官僚の茶坊主 ぶりを描いている。
 彼らは自らが追い落とした鈴木宗男が、参 議院外務委員長になった時には茫然自失だっ たというが、性懲りもなく、防衛大臣の北沢 俊美を標的として、鈴木にいろいろ吹き込ん でいるらしい。
 あるとき、鈴木と佐藤はこう会話した。
 「佐藤さん、梅本和義北米局長はなかなか頭 がいい」  「確かに、どのような政治情勢でも生き残っ ていけるタイプの人です」  「どうも梅本局長をはじめとする外務官僚は、 北沢大臣に『アメリカの逆鱗に触れたらたいへ んですよ』という話を散々流して、普天間飛 行場を沖縄県内の辺野古に移設するように既 成事実化しようとしている」  それで佐藤は鈴木に、  「(移設問題を担当する)船越健裕日米安保 条約課長はどういう立場なのでしょうか」と 尋ねた。
 船越は鈴木が内閣官房副長官だった時の秘 書官で、佐藤によれば「赤坂の料亭で、腹に 口紅で絵を描いて?腹踊り?をするなど、人 間味にあふれた人物」だという。
 佐藤の問いに鈴木は、  「この前、梅本局長と一緒に俺のところに来 たが、えらく緊張していたな。
上を見ている(出 世することを考えている)のだろう」  と答えたとか。
 佐藤は「こういう官僚に沖縄の気持ちを理 解しろといっても時間の無駄だ」と結んでいる が、その通りだろう。
 さて、アメリカの国債をこれまで一番買って いたのは日本だった。
いまは中国にとってかわ られている。
このことを頭に置いて、十一月 二二日付の『朝日新聞』「風」欄を読むと興味 深い。
北京の峯村健司記者からの報告で、見 出しは「訪中の裏、人権派の失望」である。
 十一月一八日、オバマ大統領の乗った黒いリ ムジンが北京の大通りを猛スピードで駆け抜け たが、実はこの日、一つの予定がキャンセルさ れていたという。
 天安門事件の参加者らを支援する弁護士の 莫少平は一〇月末、アメリカ政府当局者から、  「大統領が民主活動家と会いたいと言ってい る」という電話を受け、  「大統領に人権状況を訴えたい」  と快諾した。
 ところが、その後、アメリカ側からの連絡は なく、逆に莫は地元警察から事情聴取を受け、 結局、面会は取りやめになった。
 「訪中時、天安門事件や宗教の自由に踏み込 んだクリントン元大統領、ブッシュ前大統領の 記者会見と比べると、オバマ氏は後退していた」 と峯村は書く。
 万里の長城の見学に行っただけで、人権に ついては何も触れなかったからである。
 中国紙の記者は、世界一の米国債を持って いる中国に対し、カネにならない人権問題を提 起できるわけがない、と解説した。
 大統領訪中の都度、中国の民主活動家が釈 放されていたが、今回はそれもなく、それど ころか、約三〇人の人権派弁護士らが当局に 拘束された。
人権活動のリーダー的存在で、国 家政権転覆扇動罪で服役中の胡佳の妻、曽金 燕も軟禁されたのである。
 胡佳夫妻は、昨年と今年のノーベル平和賞の 有力候補といわれていた。
「受賞すれば人権状 況の改善の大きな支えになる」(民主派弁護士) との期待があったが、夫妻は選ばれず、オバマ が受賞したのは知っての通りである。
 言わせなかった中国と、何も言えない日本 の差はどこから来るのか。
オバマの口をカネの力で封じさせた中国政府 日本はなぜカネを払っても何も言えないのか

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