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FEBRUARY 2010 18
日立建機ロジテック
──世界同時不況で物量半減
親会社、日立建機の新興国事業拡大の波に乗り、2002
年度以降、年率20〜30 %のペースで売上規模を拡大させて
きた。 ところが、リーマン・ショックの直撃で物量が半減。
一時帰休や残業削減などの緊急リストラ策で09年度も何と
か黒字を維持する見通しだが、中期経営計画は見直しを余
儀なくされている。 (聞き手・梶原幸絵)
〇九年六月頃から中国が回復基調に
──リーマン・ショック以降、建機各社は急激な生
産調整を行いました。 親会社の日立建機は昨年九月
までに油圧ショベルの在庫を二〇〇八年十二月の半
分以下、約五〇〇〇台に圧縮しています。
「大変な目に遭いました。 本当に一〇〇年に一度
の不況という実感です。 〇八年度上期までは絶好調
でかなりの右肩上がりできていましたが、秋から物
量がどんどん、どんどん落ち込んでいき、大きなダメー
ジを受けました。 同年度下期の売上高は前年同期比
六割減、経常損益は赤字です。 通期では上期の貯金
で何とか増収減益で終わらせることができましたが、
続く〇九年度上期は惨憺たる状況です。 通期の売上
高は半減し二〇〇億円を超える程度、経常利益は何
とか黒字を確保、といった見通しです」
──物量急減にどう対応したのですか。
「親会社の工場で一時帰休を実施したのに合わせ、
私どもも帰休をやったり、経費を削減して何とかやっ
てきました。 残業の削減や昇給の凍結なども行いま
した。 当社は固定資産をあまり持っていないため、
人件費が経費の七割を占めている。 人件費を中心に
あらゆる対策を進めてきました」
──昨年後半から中国を中心に、建機需要に回復の
兆しが見えてきました。 今後の見通しは。
「日立建機の在庫調整は、昨年九月にようやく一
段落つきました。 販売に見合った生産、出荷ができ
るようになり、少しだけほっとしています。 昨年六
月頃から中国の景気対策の効果が現れてきています。
中国向けの製品・部品ともに出荷が増加し、インド
や東南アジア向けも漸増している。 それがなければ
〇九年度の当社の売上高は二〇〇億を割ってしまっ
ていたでしょう」
「今後は新興国地域のインフラ整備を中心に、少
しずつ回復してくるのではないかと期待しています。
特に中国は毎年、GDP成長率目標を設けて政策を
実施している。 親会社も中国には相当期待をかけて
いるようです」
──日立建機によると、〇九年度の油圧ショベルの
世界需要は前年度比二五%減ですが、唯一、中国
だけが一七%の伸びを示しています。 日立建機の地
域別売上比率を見ても、〇八年度の中国の比率は一
六%でしたが、〇九年度は二四%の予想です。 これ
に合わせた展開は。
「当社の仕事は国内生産工場向けに部資材を調達
し、生産ラインに補給、完成した製品を梱包して港
まで持っていく、つまりFOB(本船渡し)までが
原則です。 FOBの場合でも依頼を受ければ海上輸
送の手配を行いますし、日立建機と海外との貿易取
引条件によっては現地まで輸送に責任を持つ。 ただ
原則的な事業範囲を変えるつもりはありません」
「当社と同じ日立グループに日立物流があり、グロー
バルに現地法人を展開しています。 海外では同じグ
ループの中での業務の重複は避けるべきであり、また、
日系の大手物流会社さんも多く出ている」
「私が社長に就任したのは〇八年ですが、確かに
それ以前には主力生産拠点である中国とインドネシ
アで現地法人設立を検討したこともあったようです。
インドネシアには二〇〇〇年代の初めに正式な駐在
員事務所まで設立していましたが、現法設立はなか
なか難しかった。 リーマン・ショックもあり、〇八
年秋に決断して事務所の閉鎖手続を開始し、昨年十
二月に閉めました」
──では海外での物流には関わらないということ?
内藤博 社長
注目企業 トップが語る強さの秘訣
19 FEBRUARY 2010
「インドネシアは日立建機の生産工場に当社の社員
を出向させ、物流関連のサポートをするというかた
ちに改めました。 同様に、中国の安徽省合肥とオラ
ンダのアムステルダムにも当社の社員が生産会社に
入って物流の指揮を執り、生産性を上げている。 こ
れによって現地と日本との連絡も非常にスムーズに
いっています。 今後も海外物流にはこうしたかたち
で携わっていこうと考えています」
外販比率を五%から二〇%に拡大図る
──会社を再び成長軌道に乗せるためにはどのよう
な施策が必要ですか。
「外販を拡大します。 現在、グループ外の売上比
率は五%程度ですが、これを早期に一〇%に引き上げ、
将来的には二〇%を目標としています。 地域的には
われわれが本拠とし、使い慣れた港もある北関東地
域を中心に顧客を開拓する。 そのために外販営業を
行う開発営業部の人員も増強しました。 当初は三〜
四人でしたが、現在は約一〇人が動いており、受注、
引き合いは増えています。 太陽光パネルの製造装置
やMRIなどの大型医療機器の出荷業務、印刷関連
メーカーの部品調達を受託するなど、実績が上がっ
てきた」
──グループ向けの内販については。
「特に日立建機の子会社の物流で、まだまだ取り
こぼしがある。 そうしたグループ会社は調達や生産
ラインへの補給、出荷といった業務ごとに物流会社
に委託し、作業指示を出すのにとどまっています。
今でも一部は当社が受託していますが、これを一手
に引き受けて効率を上げ、コスト削減を提案し、削
減効果をグループ会社と当社でシェアしていく」
「日立建機に対しても、サービスの向上を続けて
います。 例えば日立建機は昨年一〇月、新たなSC
Mシステムを導入しました。 世界中の各拠点にある
製品、仕掛品の流通在庫を可視化し、販社が立案す
る販売計画の精度を向上させるものです。 これに応
じて当社も港や物流センターでの在庫削減に向け、
出荷・船積み頻度を見直すなど、取り組みを進めて
いく」
「現状の枠の中でも仕事を増やすために、〇八年
三月には通関業の許可を受けました。 同じ時期に欧
州向けでNVOCCの資格(外航海運に係る貨物利
用運送事業の許可)も取得し、今はシンガポールと
インドネシア向けを追加するために手続を進めてい
ます。 以前のような取次にとどまらず、自社でB/
L(船荷証券)を発行できるようになる。 価格競争
力を向上すると同時に、品質も高めることができる」
「通関などでメリットのあるAEO(特定事業者)
制度にも対応しています。 日立建機が補修部品の輸
出について特定輸出者として承認を受けるに当たっ
ては、ともに取り組みを進めました。 現在、補修部
品から承認範囲を拡大するかについて検討している
ところです。 承認を受けるためには税関からセキュ
リティ管理と法令順守の体制が整備されていると認
められなければなりません。 こうした体制整備は内
販、外販ともに役立つはずです」
──今後の見通しを。
「中期経営計画では一〇年度に売上高五七〇億円
を目標にしていましたが、それはすっかりご破算です。
一〇年度は三〇〇億弱くらいでしょう。 ですが提案力、
ソリューション力で力をつけて、しっかり仕事をもら
えるように物流のプロ集団を育て、一一年度からの
次期中計では最終年度の一四年度に売上高五〇〇億
円、経常利益二五億円を目指していきます」
2014年度に売上高500億円を新たな目標に
日立建機の物流関連子会社2社、出荷梱包をメー
ンとする建機発送エンジニアリングと、構内物流の
日立建機サポートエンジニアリングが統合し、1999
年10月に設立。 日立建機は本社物流部門を廃止し、
管理機能を日立建機ロジテックに全面移管した。 合
併当初の売り上げのほとんどは国内物流だった。
2002年度以降、旺盛な建機需要に支えられ、輸
出物流を中心に売上高を一気に拡大した。 03年度
から07年度までの5年間で売上高は2.7倍に増加し
ている。 しかし08年秋のリーマン・ショックで環境
が一変、急激な需要減に見舞われている。
業績の立て直し策として、外販拡大を挙げている。
これまでも外販には取り組んでいたが、親会社の
需要に追いつくだけで精一杯だった印象。 親会社
の物流で培った梱包技術や輸出物流のノウハウを武
器に、グループ外の一般荷主に対する提案営業に改
めて本腰を入れる。
本誌解説図1 単体業績推移
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
(単位:百万円)
05年度06年度07年度08年度
売上高
当期利益
図2 建設機械の出荷金額推移
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
(単位:兆円)
07年度08年度09年度
(予測)
10年度
(予測)
《売上高》 《当期利益》
注1)国内・輸出合計。 ただし補修部品は含まない
注2)日本建設機械工業会統計より作成
《平成22年版》
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