ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年2号
特集
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第19位 プラスロジスティクス──上場目指しスピード経営

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2010  26 プラスロジスティクス ──上場目指しスピード経営  事務用品メーカー、プラスの物流子会社。
2008年 には阪急カーゴサービスを買収し約100億円分の増収 を確保。
逆に翌09年にはアスクル向け事業約120億円 分をアスクルに譲渡するなど、活発に事業構造を組み 替えている。
新たな買収も視野に入れ、早期の株式 上場を目指す。
        (聞き手・梶原幸絵) コスト競争力を武器に ──昨年四月、アスクル向けの物流事業を約八〇億 円でアスクルに譲渡しています。
その影響は?  「二〇〇八年五月期でいえば当社の単体の売上高 二四〇億円のうち、アスクルに譲渡したのは約半分、 一二〇億円に相当します。
具体的にはアスクルの物 流センターの運営事業と、『Bizex』と呼んで いる小口配送サービスを譲渡しました。
Bizex ではアスクルだけでなくグループ会社で、オフィス用 品の購買代行のビズネットなどの配送業務も行って いました。
それがすべてなくなりました」  「その結果、今期の売上高は当社に残った一二〇 億円と〇八年に買収した阪急カーゴサービス(現・ プラスカーゴサービス)の七〇億円を合わせて、合 計で一九〇億円程度になる見通しです。
それを三年 後をメドに二五〇億円まで拡大することを目標にし ています。
そのために、グループ内の取りこぼしを なくしていくのはもちろん、外販を拡大します。
事 業譲渡収入で財務的な基盤も整ったので、良い案件 があれば新たな買収も検討したい」  「従来から当社は外販を拡大して株式公開するこ とを目標に置いていましたが、これまではアスクル の事業拡大に対応するのに手一杯というところがあ りました。
そのパワーを今度は外に使える。
既に成 果も現れてきており、楽しみにしています」 ──外販の武器は?  「事業の柱は、?物流センターの運営、?配送、 ?環境物流、?静脈物流・その他の四本です。
この うち?センター運営と?配送では、アスクル向け事 業で培ったノウハウが強みになると考えています」  「当社はアスクルに鍛えられた会社です。
アスクル は一九九三年にプラスの一事業部としてスタートし、 九七年に分社化して独立しました。
私が以前に勤め ていた銀行を辞めて、プラスロジスティクスに赴任 したのが九八年なのですが、当時のアスクルの売り 上げは一〇億円程度だったと記憶しています。
そこ から毎年倍々ペースでアスクルの売上規模は拡大し、 それに合わせて当社の取扱量も増えていった」  「ただしアスクルは、当社がグループ会社であって もまったく優遇はしなかった。
コストの安いところ から調達するという方針をはっきり打ち出していま したから、入札で外部の物流会社とまともに競わな ければなりませんでした」 ──それまでのコスト構造では通用しなかった?  「アスクルの業務が始まる前の当社はグループの間 接部門の一部、言葉は悪いですが親会社の余剰人材 の受け皿的な存在で、その代わり、かかったコスト を親会社に実費請求できていた。
そこをアスクルに よって目を覚まされた。
センターの作業員の使い方 から、配送システムまで、それこそどれだけダメ出 しされたか分かりません」 ──センター運営に加えて、九九年には小口配送の Bizex事業を開始しました。
人件費の割高な物 流子会社が実運送で専業者と勝負するのは相当に厳 しいはずです。
 「それまで小口配送は当社が元請けとなって他社 さんに委託していましたが、アスクルからの値下げ 要求が厳しくて委託先がついてこられなくなったの です。
これから物量はさらに増えるだろうし、だっ たら自前でやろうと方針転換をしました。
しかしセ ンター運営も含めて最初の五年くらいはずっと赤字 でしたね」  「物量がものすごい勢いで伸びており、仕事はあ 今泉三千夫 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 27  FEBRUARY 2010 りあまるほどありましたが、物量増に合わせてデポ を移転・拡張していかなければなりません。
移転当 初は家賃負けして赤字。
物量が増えてようやく利益 が出るようになったところでまたパンクして引っ越す。
その繰り返しです。
配送も物量が増えて集配密度が 上がり効率が良くなると、さらにコストダウンを求 められる。
楽はさせてもらえませんでした」  「しかし、そこで苦労したことが現在の当社の武 器になっている。
当日配送のノウハウやコスト競争力、 もちろんサービスレベルも十分な競争力があると自 負しています」 ──〇八年には経営不振の続いていた阪急カーゴサー ビスの国内物流事業を買収しています。
その狙いは?  「物流の急増していた当社の小口配送と物量が減 少傾向にあった阪急カーゴの足回りをうまく融合さ せて、シナジー効果を出せればと考えました。
また 阪急カーゴは二千数百社もの優良顧客を抱えていた。
一部上場企業だけでも約四〇〇社ありました。
その パイプを使って新たな仕事を開拓できると考えました。
しかもオフィス書類などを扱う阪急カーゴの荷主側 の窓口は総務部などですから、親会社のプラスの営 業部隊とも連携が取れる」  「当社が上場を目標としていたことも背景の一つ です。
阪急カーゴの当時の国内事業の売上高は約一 〇〇億円。
これに対して当社は二四〇億円。
買収に よって、外販比率をゼロに近いところから一気に三 〇%以上に引き上げることができる」 ──しかしシナジー効果を生むはずのBizexを 翌年アスクルに売却することになりました。
これは 誤算でしたか。
 「確かに買収時には想定はしていませんでしたが、 それで展望がなくなったわけではありません。
実際、 プラスカーゴは〇八年三月期、〇九年三月期と赤字 が続き、一〇年三月期も赤字の見通しですが、コス ト削減を徹底したことで下期から単月黒字に転換し ました。
来期トントンは見込めます。
黒字体質になっ た段階で当社と統合しようと考えています」 オーナー経営の強み活かす ──親会社のプラスは、株式公開をしていないオー ナー企業ですが、アスクルとビズネットを上場させ て、プラスロジスティクスもまた上場したいという。
今泉社長もオーナー一族と伺っていますが、プラス・ グループの特徴をどう考えていますか。
 「意志決定が速いということはいえるでしょうね。
また現在は私の兄がグループのトップを務めている わけですが、失敗を恐れるより、とにかくやってみ ろ、というところがある。
外部の人材もどんどんス カウトする。
役員会の顔触れを見ても、生え抜きの ほうが少ないぐらいです。
良かれ悪しかれオープン な組織で、決して保守的ではありません」 ──当面の課題は?  「特に力を入れていこうと思っているのは『MR S(マテリアル・リサイクル・システム)』と呼ぶ環 境ビジネスです。
使われていないオフィス家具・什 器を我々が管理して、不要になったものは当社の主 催する中古オフィス家具のオークションで処分する。
大手企業、例えば都銀などは、都心の一等地に家具・ 什器を大量に保管しています。
それを当社が整理を してウェブ上で保管場所と数量を可視化し、新しい 支店ができれば指示に応じて必要なものを運んでいく。
既に複数の案件の運用が始まっています。
機密文書 のリサイクルや配達に行った先のものを引き取ると いう静脈物流も広げていきたい」 主要荷主のアスクルを離れ再出発  1990年に設立。
94年、プラスの物流関連の子会社、 昇運を統合。
97年にはプラスから物流部門の全面移 管を受けた。
アスクルの事業拡大を受けて急成長した。
2008年には阪急カーゴサービス(現プラスカーゴサー ビス)の国内事業を買収した。
 その一方、アスクルは企業の間接材(生産原材料 以外の一般消費財)の購買事業「SOLOEL(ソロエル)」 の本格展開に当たって、プラスロジスティクスに委託 していた物流業務の内製化を指向。
親会社プラスの 意向もあり、プラスロジからアスクルのセンター運営 事業と小口配送の「Bizex」事業を会社分割し、昨年 4月付けでアスクルに譲渡した。
これによって10年5 月期のプラスロジスティクスの単体売上高は半減する もよう。
 今後はセンター運営など既存のサービスとプラスカー ゴの配送事業を融合。
外販を拡大して三年後に総売 上高250億円を達成し、改めて株式公開を目指す。
本誌解説 プラスロジスティクス単独業績推移 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 -1,000 (単位:百万円) 03年 5月期 04年 5月期 05年 5月期 06年 5月期 07年 5月期 08年 5月期 09年 5月期 売上高 当期利益 08年4月 阪急カーゴサービス を買収 09年4月 アスクルに同社から受託してい る物流センターの庫内運営事 業と小口配送事業を譲渡 《売上高》 《当期利益》 《平成22年版》

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