ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年3号
特集
第2部 物流子会社トップが語る次の一手

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MARCH 2010  16  
複藤妬流の山中榮輔社長は二〇〇八年 四月に同社に赴任すると、ほとんど時を置か ずに新たな経営方針を打ち出した。
〇八年三 月期に連結売上高二二八二億円、経常利益 一〇八億円の過去最高決算をあげた直後のこ とで、当時社内はイケイケムード一色だった。
しかし、山中社長は気に入らなかった。
 親会社のJFEスチールに依存したままで、 好調な業績を継続できるわけがない。
機能分 社という組織形態は、親会社が増産を続けて いるうちは楽ができる。
しかし、いったん減 産に向かえば対応のしようがない。
固定費を 下げようにも六五%は人件費だ。
親会社から コストダウンを厳しく要求されれば雇用に手 を付けざるを得なくなってしまう。
そう考えた。
 「利益には質というものがある。
継続性が あり、市場の評価に支えられた、質の良い利 益を得るには外販が必要だ。
ところが当社は 身内との商売になれてしまい、“お客様”と いう意識自体を持ち合わせていなかった。
そ んな会社は認められないと思った」と山中社 長は振り返る。
 十二年三月期をメドとする中期経営計画で は、経常利益の半分を外販で稼ぐという目標 を打ち出した。
そのためにまず「セクター」 と呼ぶ部門を設けた。
従来の事業所別の採算 管理とは別に、陸運、倉庫、海運、機工と いう機能別の四つのセクターを設立し、各セ クターでそれぞれ外販営業の戦略を練った。
 本格的に一般荷主と接するようになったこ とで、何がJFE物流の付加価値なのか、初 めて理解することができた。
その一環で自動 に伴う一時帰休や、約一五%にも及ぶ固定費 の削減を余儀なくされた。
連結売上高も今期 は前年より五〇〇億円近く減り、一七〇〇億 円程度になる見通しだ。
それでも経常利益は 約七〇億円を見込んでいる。
うち三〇億円程 度が外販によるものだ。
 「以前の当社は、不況が来たら固定費を抑 えてじっと耐える。
待っていれば、いつか良 くなるという経営スタイルだった。
しかし、 この一年は守りと同時に攻めも進めてきた。
それがなければ今期の黒字はなかっただろう。
来期十一年三月期も売上高は厳しいだろうが、 経常利益としては一〇〇億円、うち五〇億円 を外販で稼ぎたい。
そして十二年三月期は一 五〇億円を目標にする」と山中社長はいう。
 今後親会社の業績が好転したとしても、国 内の鉄鋼需要は既に頭打ちで、以前のような 好況に戻ることはない。
JFEスチールの前 身となった川崎製鉄に入社して以来、ずっと 鉄鋼畑を歩んできた山中社長は、そう予測し ている。
JFE物流が今後も生き残っていく ためには、売り上げ面でも鉄への依存を脱し、 半分を外販で稼ぐ構造に変えていく必要があ るとの考えだ。
        (大矢昌浩) 車物流のバンテックと共同物流を開始した。
JFE物流が部品工場に鋼材を納品したト レーラーの帰り便で、バンテックに代わって 自動車部品を輸送する。
出荷情報の擦り合わ せや、積載方法などの工夫は必要だが、輸送 コストはおよそ半分になる。
 その後も重量物を対象とした共同物流や帰 り便の利用は拡大している。
親会社向けの重 量物物流に使用しているツールやアセットに 対して、思っていた以上に大きな市場ニーズ のあることを知った。
 その一方、利益の見込めない事業からは潔 く撤退して体質改善を図った。
〇八年十二月 にはJALカーゴの陸上輸送を担っていた子 会社の空港物流サービスを解散した。
「赤字額 は知れていたが、先行きを期待できそうになかっ たので潰すことにした。
多少強引だったが結 果的には正解だった。
存続させていたら当時 の何倍もの赤字が生じていたはずだ」という。
 空港物流サービスは一九八九年にJFEが 九〇%を出資して設立した会社で解散当時三 〇〇人近くの従業員を抱えていた。
それでも 希望者全員に再就職先を斡旋して雇用は維持 することができた。
世間の動きよりも一足早 く構造改革に踏み切ったことが奏功した。
 リーマンショック後の急激な物量減少の影 響も、構造改革が遅れていたらもっと深刻な ものになっていたはずだ。
JFEホールディ ングスの一〇年三月期の連結売上高は前年よ り一兆円以上少ない二兆八四〇〇億円が見込 まれている。
 その影響でJFE物流でも工場の操業停止 JFE物流 ──鉄への依存を脱し外販を半分に 第部物流子会社トップが語る次の一手 「外販にはもちろんリスクがあ る。
しかし、リスクを取れない 経営者など何の役にも立たない だろう」 山中榮輔社長 17  MARCH 2010 特 集  「一〇年ほど前、マツダは希望退職者の募 集をした。
当時、私のいた部署でも多くの方 が退職していった。
言いようのない辛い経験 だった。
そのためいくら環境が厳しくても正 社員の雇用には絶対に手を付けないと心に決 めている」。
マツダの物流子会社、マロックス の遠藤健嗣社長はそう語る。
 マツダは二〇〇八年十一月から大幅な減産 に入った。
国内工場の夜間操業停止や操業日 の抑制によって在庫の圧縮に動いた。
その直 後の〇九年一月に、遠藤社長はマツダの生産 管理・物流本部長からマロックスに転じた。
 工場の操業に連動する職場では、マロック スも休業せざるを得ない。
そこで働く社員の 給与が下がる。
しかし同じ社内でも他の職場 は動いている。
不公平だ。
そこで間接部門 も含めてほとんどの従業員を、一〇日間休 業させることにした。
 就任早々の新社長のメッセージだった。
「無 理を聞いてもらったと思うが、先の見えない 状況の中で、皆で協力してがんばろうという 危機感、一体感を共有できた」と遠藤社長。
 続いてマツダの二大生産拠点の一つ、山口 県防府地区での部品倉庫面積の半減とトラッ ラック台数の三割削減も年度内の達成が見え てきた。
その結果、〇九年度決算では売上高 の減少こそ免れないものの利益は前年を上回 る減収増益になる見通しだ。
一〇年度にはマ ツダが本社工場を置く広島地区部品倉庫でも、 現場改善を実施する。
 しかし、この先も国内の物量回復は期待で きそうにない。
次の成長への活路は海外に求 めている。
マロックスは国内ではマツダの物 流の大部分を請け負っている。
これに対して 海外では、タイの合弁会社でマツダとフォード・ モーターの合弁工場が生産するKD(ノック ダウン)部品の輸出梱包、生産部品の集荷の 一部を行うにとどまっている。
 「タイでも日本と同様に仕事ができるよう、 実績を積んでいきたい。
そこで海外での会社 経営と人材の活用を学べば中国など他地域へ の道も拓けてくる。
それに備えて物流技術を しっかり向上させていく。
一番大変なときに 社長になったが、あとは上るだけ。
当社はま だまだ強くなる」と遠藤社長は意欲を燃やし ている。
           (梶原幸絵) ク台数の三割減という〇九年度の目標を掲げ た。
長年、製造現場で培った目で見ると物流 現場には効率化の余地はいくらでもあった。
庫内作業を合理化すれば社外や非正規社員の 手を借りなくても済む。
借庫も返却できる。
生産管理の技術を物流現場に適用し作業改善 を進めた。
 その一環で、マロックスが完成車にカーナ ビゲーションなどのオプション部品の取り付け を行う完成車の物流拠点「千葉流通センター」 では作業手順を大幅に変更した。
従来は一台 の車両を一人が受け持ち、部品を取り付けて いたが、作業工程を分解して各工程に作業者 を配置する流れ作業に改めた。
 車両の納期から逆算して各工程の作業時間 と順序、部品供給のタイミングを決める「計 画順序生産」を導入。
作業の難易度に応じた 人員配置が可能になった。
容易な作業工程に は繁忙期に応援の作業者を投入することもで きる。
千葉流通センターでの運用が安定すれ ば、他センターにも横展開する計画だ。
 トラック台数の削減ではマロックスと四九 社から成る輸送協力会で緊密に情報を交換し、 皆で協力して積載効率を上げる枠組みを作っ た。
マツダ以外の貨物にまで視野を広げ、マ ツダの専用便の空きスペースに他社の荷物を 取り込む一方で、協力会社の運行する他の荷 主のトラックにマロックスの荷物を混載し相 乗効果を狙った。
 一連の改革は期待通りの成果を上げている。
防府地区部品倉庫の面積は〇九年度末には目 標とする半減以上の集約を見込んでいる。
ト マロックス ──マツダと共にアジアに打って出る 「会社の基礎をしっかり固めた 上で将来像を描き、方向付けを していきたい」 遠藤健嗣社長 (単位:億円) 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1017 1095 911 06年度07年度08年度 過去3 年間の売上高推移。
08 年度上期は 急伸していたが、下期に急減速した MARCH 2010  18  「まさか環境がここまで悪くなるとは。
通常、 物流子会社というのは大きな利益を出すこと が難しいかわりに、大きな損失を出すことも 考えられないものなのだが」  こう語るのは三菱化学の一〇〇%子会社で ある三菱化学物流の白石秀典社長。
同社は二 〇一〇年三月期の決算で、創業以来初の営 業赤字となる見通しだ。
売上高も前期比マイ ナス八・六%の八〇一億円まで縮小する。
 それまで業績は順調に拡大してきていた。
一時は売上一〇〇〇億円にも手が届きかけた。
それが、ここにきて急ブレーキをかけられた 格好だ。
 背景には折からの不況があることはもちろ ん、親会社の経営方針の転換も大きく影響し ている。
親会社の三菱化学は、国内最大手 の総合化学持株会社である三菱ケミカルホー ルディングスの中核会社だ。
 事業の柱とする石油化学市場は国内需要が 縮小する一方で、中国をはじめとする新興市 場では、中東を中心とする産油国の化学メー カーが攻勢に出ており、安価な原料を基に製 造された製品との競争激化が必至だ。
 これに対して三菱化学は、石化事業におけ 一ずつだ。
三菱化学の荷物が減っていく以上、 それ以外の部分を伸ばしていくより手はない。
 「まず当面の目標はケミカルホールディング ス内の会社からの受託を目指す。
同じグルー プであるにもかかわらず、まだ付き合いのな い会社がかなりある。
当社の実力を認めても らえさえすれば、グループ内の企業に任せよ うというという流れに自然となるはず」  次に狙うのがグループ外の化学メーカーか らの受託だという。
やはりこれまで蓄積した ノウハウやアセットを活かすためには、同業 種の物流である方が望ましい。
既にこれまで 約一〇社からの大型受注を実現している。
 同社では現在、この四月から始まる三カ年 の経営計画を策定している最中だ。
そこでは 物量の急減によって達成を逃した売上高一〇 〇〇億円という節目の数字を改めて目標に掲 げることになりそうだ。
 「賃金やボーナスのカットをして従業員に我 慢を強いておきながら、その先の会社が描く ビジョンを見せないわけにはいかない。
今は我々 には未来があるという意志を示すことが、絶 対に必要だと考えている」    (石鍋 圭) る不採算分野から撤退し、機能商品やヘルス ケアなど付加価値の高い分野に集中投資をす るという方針を打ち出している。
既に〇八年 後半からABS樹脂事業、ポリスチレン事業、 合成樹脂や合成ゴムの原料となるスチレンモ ノマー事業、ナイロンの原料となるカプロラ クタム事業、塩化ビニール樹脂事業などから の撤退を相次いで表明している。
 三菱化学の石化事業からの撤退は、その輸 送のほぼ一〇〇%を請け負っていた三菱化学 物流の業績に直結する。
それに金融危機によ る物量の減少が加わり、二重苦の中での経営 を強いられている。
 白石社長が就任したのは〇九年四月。
まさ に動乱期の舵取りが任された。
 「今期はまず設備投資を極力抑えた。
次に どうしても賃金・ボーナスカットに協力して 貰わざるを得なかった。
しかしリストラはまっ たく念頭にない。
従業員を切って一時的に急 場を凌ぐことは簡単だ。
しかし我々の財産は 人しかない。
当社には高度な化学製品物流を 手掛けてきた人材が数多くいる。
こういう環 境だからといって身を縮めることばかり考え るのではなく、この人材を活用して何が出来 るかを考えるのが私の役目だ」  その一つが3PL事業の拡販の促進だ。
五 年ほど前から3PL事業には力を入れてきて おり実績を積んできた。
そのスピードをさら に加速する必要があると判断している。
現在、 同社の売上構成比率は三菱化学向け、三菱 化学を除く三菱ケミカルホールディングス内の 会社向け、一般の荷主向けがそれぞれ三分の 三菱化学物流 ──外販3PLに成長を託す 「安値合戦をするつもりは毛頭 ない。
人材と物流品質を武器 に勝ち残る」 白石秀典社長 三菱化学物流の売上高推移 940 (単位:億円) 920 900 880 860 840 820 800 780 760 740 806 851 865 922 877 801 04 年度 05 年度 06 年度 07 年度 08 年度 09 年度 見込み 特 集 19  MARCH 2010  化学大手の東ソーは二〇〇八年秋以降の需 要急減に対応するため、減産や一部のプラン トの操業停止を実施した。
その影響で物流子 会社の東ソー物流では、余剰人員が発生した。
多くは作業子会社や協力会社のスタッフだが、 すべて正社員だ。
同社の扱う貨物には危険物 も多く、法令や安全に関する知識とノウハウ が必要で、非正規社員は使っていない。
 現場スタッフの雇用維持を目的に昨年二月、 現場間のワークシェアリングに踏み切ること にした。
同社の佐伯哲治常務は「お互いが仕 事を給料も分け合うことで、一人も解雇する ことなく急場を凌ぐことができた。
優秀な熟 練工の方に残ってもらい、次につなぐことが できた」と胸をなで下ろす。
 しかし、実施は簡単ではなかった。
法的な 規制やチームワークの問題があるため、シェ アできるのは同じ会社の類似の業務に限られ る。
そのために各作業プロセスの業務を棚卸 ししてシェアリングの調整をしていった。
 “シェアリング”は東ソー物流の経営のキー ワードでもある。
同社の〇八年度連結業績は 売上高は微減、経常利益は二六%の減少にと ちてしまうことを懸念した。
 合理化効果をシェアする仕組みを作ること で、そうした懸念を払拭した。
シェアリング 制度の下では、子会社・協力会社は合理化を しなければ損をすることになる。
今では年間 一〇〇〇件にも上る提案が現場から上がるよ うになったという。
 東ソー物流の取扱量は現在、ピーク時の八 五〜九〇%にまで回復してきている。
〇九年 年度の連結業績は売上高は微増、経常利益は 増益の見通しだ。
しかし、国内の物量が減少 傾向にあることには変わりはない。
 このため、今後の課題は海外展開、海運事 業の強化に置いている。
東ソー物流はグルー プの中の物流部門という位置付けで、グルー プ全体の物流を元請けとして管理している。
しかし、海外現地の物流と原料の海上輸送の 受託は一部にとどまっている。
 「グループの物流の中には未着手のテーマが 相当残っている。
特に海外と海運の伸びしろ は大きい。
一二年度には連結売上高五〇〇億 円、経常利益二〇億円に持っていけると考え ている」と佐伯常務は弾いている。
(梶原幸絵) どまった。
売り上げが急減した下期も黒字を 確保した。
金融危機に先立つこと数年前から 取り組んでいた合理化活動が効いている。
 改革は佐伯常務が東ソーから東ソー物流に 着任した〇五年に始まった。
まずは現場作業 の合理化だ。
東ソーの製造部門出身者から現 場のリフトマンまで、さまざまな経歴を持つ 人材を集めた「効率化推進チーム」を作り、 工場構内の現場で作業の徹底解析を行い、ム リ・ムダ・ムラを取り除いていった。
機械化 設備や空調施設の導入、騒音対策などを行い、 作業環境も改善した。
 五年間で一〇の作業現場で改善を実施し、 総額五億円を投資して設備を導入した。
結果、 それらの現場の要員を計三〇〇人から二〇〇 人にすることができた。
余った人員はすべて 別の現場に斡旋して雇用を維持した。
 合理化で浮いたコストはシェアリングした。
東ソーに還元すると同時に、東ソー物流と作 業子会社、協力会社間で分け合った。
その中 から一定の割合の金額は、必ず作業環境の改 善に活用するというルールを作った。
 「物流現場は典型的な3K職場だ、優秀な 人材が定着しにくいと言われているが、合理 化の成果の一部を作業員の待遇向上に振り向 けるという経営の仕組みを作ることで、好循 環が生まれる」と佐伯常務は説明する。
 それ以前から東ソー物流では合理化活動に 何度も取り組んできたが、ことごとく失敗に 終わっていた。
合理化に対する現場の反発が 大きく、協力を得られなかった。
子会社・協 力会社は、合理化で自分たちの売り上げが落 東ソー物流 ──雇用も合理化効果もシェアリング 「仕組みと発想を変えることで いい方向に流れていく。
当社の 取り組みは最先端とはいえなく とも、地に足を着けて着実にやっ ていくことが大事だと思う」 佐伯哲治常務 (単位:億円) 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 連結売上高(左軸) 単体売上高(左軸) 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 15.1 9.4 15.6 10.6 11.6 9.0 341 410 425 361 367 424 06年度07年度08年度 連結経常利益(右軸) 単体経常利益(右軸) 過去3 年間の業績推移。
合理化活動で 08 年度も持ちこたえた MARCH 2010  20  富士電機グループの富士物流は昨年六月、 「緊急損益改善委員会」を立ちあげた。
「緊急」 と「改善」の頭文字のK、リーマンショック 直後の〇八年十一月に開始した内部構造改革 の取り組みの第二バージョンという意味をこ めて略称を「K2」とした。
 
烹欧里發箸某遊鑒饌从、経費管理、倉庫 集約、TPS(トヨタ生産方式)合理化活動 の強化、などをテーマとした十一分科会を置 いた。
各分科会のリーダーは役員が務め、テー マに関係するメンバーがほぼ毎週会議で目標 と施策を検討し、経営会議に報告する。
 そこで決定した施策をエリア会議を通じて 徹底し、結果を分科会に吸い上げて見直す。
昨年十一月には分科会そのものの見直しも行 い、施策の重複した分科会の統合などで八分 科会にスリム化し現在も活動を続けている。
 同社の小林道男社長は、この一年の取り組 みをこう振り返る。
「〇九年四〜六月期の売 上高は二一・四%減、利益は赤字と、どん底 だった。
世界景気の影響を受けやすい最先端 の電子機器、電子媒体、精密機械の取り扱い が多いため、かなり急速に物量減少の波が来 た。
当社の歴史の中でこれほど物量が落ち込  「仕事のあると ころに人を充てる ことが基本。
その ために、業務のシ ンプルな部分につ いてはマニュアル を整備しておき、 高度な部分を固定 的な人員でやりき ることを徹底して いる。
また複数の 荷主の貨物のさま ざまな業務をこな せる多能工ももっ と必要だ。
そうし た施策をとること で、物量が増えて も人件費を抑制し ながら対応できる ようになる」と小 林社長。
 一〇年三月期 から三カ年の中期 経営計画では、最 終年度の目標数値 として売上高四〇 〇億円、営業利益十二億円、純利益六億円、 外販比率六〇%を打ち出した。
「これからは 全体のパイが縮小する中で競争が激化する。
力ある会社だけが伸びる。
当社には、その力 があると思っている」と、今回の不況対策を 成長の原動力にしたい考えだ。
 (梶原幸絵) んだことはない。
しかしこれをきっかけに物 量変動に影響を受けない体質を作ろうと、抜 本的な構造改革を進めてきた」  ゼロベースですべての経費を見直した。
な かには清掃業者に委託していたトイレ掃除を 自らやると申し出た支社もあったという。
そ の結果、固定費が一五%程度下がり、〇九 年一〇〜十二月期は、売上高が前年同期比八・ 五%減少したにもかかわらず、増益を達成し た。
一〇年一〜三月期は売上高、利益とも 予想より上ぶれする見込みだ。
 経費削減の中で最も効果の大きかったのは 倉庫費用と人件費だ。
倉庫については、利用 面積を一〇年三月期通期で前期比八・二%減 の七万八〇〇〇坪に減らし、賃借費用の削減 を見込む。
“貨物シャッフル”の効果だ。
自社 倉庫と長期契約の借庫に集約すると同時に、 首都圏などでは物量の波動に合わせて倉庫間 で貨物を移動し、柔軟に保管場所を組み替え るという工夫を行った。
 以前は支社単位またはセンター単位で収支 を管理していたため、利益が出ていれば多少 の空きスペースは見過ごされていた。
その一方、 近隣の倉庫では貨物が溢れ外部倉庫を借りる というムダが生じていた。
これを改め首都圏 全体で坪数を管理する体制に移行した。
 正社員の人件費も一〇年三月期は前期比四・ 六%減を見込む。
社員の再配置も進めた。
各 職場間の仕事の負荷の平準化を狙い、個々の 社員の負荷と業務内容を社員からの申告に よって登録することで、人事部門で負荷調整 をした上で異動を行っている。
富士物流 ──“貨物シャッフル”で倉庫費用を削減 「ショックで急激に切り詰めた あと、物量の回復にうまく対 応できてこそ本当の企業。
それ が合理化の仕上げといえる」 小林道男社長 売上高 営業利益 経常利益 純利益 9642 (▲8.9) 8508( ▲24.0) 38750( ▲7.5) 8174( ▲21.4) 851(4 ▲16.5) 8819( ▲8.5) 7992( ▲6.1) 3350(0 ▲13.5) 75( ▲81.8) 12( ▲97.2) 563( ▲55.4) ▲55( ─) 9(4 ▲38.2) 210( 180.0) 151( 1158.3) 40(0 ▲29.0) 69( ▲82.5) ▲3( ─) 514( ▲57.6) ▲67( ─) 7(0 ▲50.4) 206( 198.6) 141( ─) 35(0 ▲31.9) 10( ▲95.0) ▲83( ─) 103( ▲78.5) ▲65( ─) 1(0 ▲79.6) 96( 860.0) 59( ─) 10(0 ▲3.3) 10 年3月期 通期(見込み) 08 年10〜 12月期 09 年1〜 3月期 09 年3月 期通期 09 年4〜 6月期 09 年7〜 9月期 09 年10〜 12月期 10 年1〜 3月期(見込み) 図 08 年10〜12 月期からの連結業績推移(単位:百万円、カッコ内は前年同期比%) 特 集 21  MARCH 2010  
錬烹鼻焚電気工業)から物流子会社のO KIロジスティクス(OLC)に二〇〇八年 四月に赴任した安岡敏一社長のミッションは 明確だった。
外部流出費を含めたグループの 物流コストの一〇%削減と企業体質の強化だ。
 ここ数年のOKIは業績の低迷に苦しんで いる。
〇八年一〇月には不振の半導体事業を 売却、情報通信とプリンター事業に注力する 選択と集中を実施し、並行してグループ全体 最適の視点に立った収益体質の改善に取り組 んでいる。
物流コスト削減もその一環だ。
 安岡社長は以前に社長を務めたグループ会 社二社のうち、一社では外販をゼロから五〇% に拡大、もう一社では過去最高業績を挙げた 実績がある。
OLCでも構造改革に取り組み、 矢継ぎ早に成果を上げてきた。
 その一つが間接部門へのABC(活動基準 原価計算)の導入だ。
従業員が行う各業務の 工程にかかる時間、労力を分析して実態を把 握し、業務の無駄を削いだ。
技術畑出身の安 岡社長にとって、現場で働く従業員の作業工 程・時間を把握するのは当然のことだった。
 「ABCの導入には多少の作業負荷はかか るが、それによって客観的な、しかも非常に  「これ以上売上高が落ちるようであれば、 もう一段の改革が必要になるだろう。
現場の 生産性は上がっている。
あとは物量が伸びれ ば成長軌道に乗ることができる」  そのために必要なのが外販の拡大だ。
現在 は一〇%弱に過ぎない外販比率を三〇%に引 き上げる。
メーカーの物流子会社として培っ たスキル、OKIの貨物というベースカーゴを 生かしたコスト競争力を武器にする考えだ。
 なかでも重量のある精密機器の取り扱いに 期待を寄せている。
OKIのATMや自動券 売機で実績を積んできた。
安岡社長は「精密 関係で重い物であれば、品質・コストともに まず負けないと自負している。
外販を伸ばし て業績を回復させ、親会社に貢献していきたい」 とビジョンを描いている。
    (梶原幸絵) 具体的な数字で業務の実態をみることができ る。
物流会社の間接部門も同じだと確信した。
事実、仕事に必要な合理的な人数を算出でき るようになった」と安岡社長はいう。
 実態を把握した上で業務の標準時間を設定 し効率的に仕事を行うようにすれば、人件費 を適性化できる。
これまで外部に委託してい た業務を内部に取り込むこともできた。
物流 現場でもこうした生産管理の技術を応用し、 倉庫の生産性を三〇%向上させた。
 陸送では輸送ルートを詳細に分析。
幹線輸 送を整理・統合して路線を大幅に削減した。
これを生かして〇八年秋から協力会社の選定 にビッドを導入し、ボリュームメリットと競 争原理の導入で一定の合理化効果を上げた。
 グループの物流再編にも取り組んでいる。
在庫型拠点を統合して通過型拠点に転換、倉 庫の生産性を向上し、OKIの工場からの出 荷物流で横持ち輸送費を二割、グループ会社 との倉庫・事務所の共有スペースを四割、指 示/手配工数を一割削減した。
今後は工場か らのダイレクト出荷も検討していくという。
 一連の改革は成功を収め、目標としていた 物流費の一〇%削減を達成することができた。
「改革を始めた当初は達成について懸念する 声も多かった。
ところがそれができたことで皆、 自信がついたと感じている」と安岡社長。
 しかし、改革の途上では景気の急減速とい う予期せぬ事態と直面することに。
OLCの 売上高は〇八年度、前年度比一〇%程度減 少している。
〇九年度はOKIの半導体事業 売却の影響を除いても三〇%減の見通しだ。
OKIロジスティクス ──生産技術者を社長に起用 「コスト削減と高品質な物流の 提案を粛々と実行していく。
1 つひとつの積み重ねでOKIに貢 献する」 安岡敏一社長 製品納品主体拠点 通過型拠点の構築例。
提案能力を事業拡大に生かす システム系工事・保守主体拠点 OKI製品工場 顧 客 支所 輸送P 通過型拠点 (輸送Pへ移設) 再構築 OKI製品工場 顧 客 支所 輸送P 輸送P 通過型拠点 (G企へ移設) 再構築 保守系 G企 輸送P 物流 センタ 物流 センタ 物流 センタ 物流 センタ

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