ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年3号
特集
第5部 欧米物流大手のポートフォリオ戦略

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2010  30 期間にわたるマーケットの拡大を前提にしていた。
そのため世界的な物量の減少によって現在は大幅 な過剰供給に陥っている。
あまりの急速な変化に 各社のコスト削減も追い付かずにいるのが現状だ。
 世界金融危機を契機として、それまで市場で暴 れ回っていた投資ファンドの動きも停滞気味だ。
 危機前までは物流不動産はもとより、物流事業 の世界でも、TNTのロジスティクス部門や米大 手フォワーダーのEGLを買収したCEVAロジ スティクス有するアポロマネジメントを筆頭に、投 資ファンドの活動が目立っていたが、現在は鳴り を潜めている。
 グローバル・ロジスティクス業界は転換点を迎 えている。
従来のトレンドがどのように変わり、 今後どこに向かって進んでいくのか。
それを知る ために、今回の世界同時不況が欧米の物流大手各 社の経営に与えた影響を見ていくことにしよう。
 具体的にはドイツポスト、UPS、フェデックス、 TNT、キューネ+ナーゲル、ドイツ鉄道という 有力企業六社を対象に、各社の経営状況を整理し てグローバル市場の今後のトレンドを探ってみたい。
ドイツポスト ──主力のメール便事業が収益を下支え  売上規模七兆円。
全世界従業員数四五万人─ ─まさしく世界一のロジスティクス企業である。
民営化以降、果敢なM&Aとリストラを繰り返し て業績を拡大してきた。
そのスピード感と迫力は 圧倒的といえる。
 ロジスティクス(3PL)事業においては二〇 〇〇年にスイスのダンザス、〇六年に英国のエク セルを買収して基盤を固めた。
エクスプレス事業 規模拡大競争の転換期  二〇〇八年の世界金融危機によってグローバル・ ロジスティクス市場が規模の縮小に見舞われてい る。
エクスプレス(国際宅配便)、国際海上コンテ ナといった商品別・モード別市場がこぞって前年 割れしているほか、地域別では北米市場の低迷が 目立っている。
 これによって物流企業各社が大幅に業績を悪化 させているのは周知の通りだが、とりわけ米国に 本拠を構える会社、およびエクスプレス事業の売 上高比率が高い会社、具体的にはUPS、フェデ ックス、TNTの苦戦が目立っている。
 これら欧米のグローバル物流市場のメーンプレー ヤーたちは、欧州各国の郵便事業民営化と規制緩 和を引き金として、二〇〇〇年前後から活発にM& Aを繰り返し、急速に事業規模を拡大させてきた。
 その背景には、主要顧客である大手メーカーの グローバル化の進展と、船会社など輸送サービス の供給業者の再編による経営規模の拡大があった。
グローバルなワンストップサービスに対するニーズ の拡大、荷主に対する価格交渉力の確保、またも う一方の輸送キャリアに対する価格交渉力確保な どがM&Aによる規模拡大の目的だったと言える だろう。
 その結果、物流大手各社の連結売上高は今や、 最大手のドイツポストが約七兆円、二位のUPS が四・六兆円という規模に達している。
それに対 して日本勢は最大手の日本郵船が二・四兆円、日 本通運が一・八兆円であるから、差は歴然として いる。
 しかし、欧米各社による供給能力の拡張は、長 欧米物流大手のポートフォリオ戦略  グローバル・ロジスティクス市場の列強たちは世界同時 不況にどのような影響を受け、それにどう対応したのか。
その結果、市場競争はどう変化したのか。
ドイツポスト、 UPS、フェデックス、TNT、キューネ+ナーゲル、ド イツ鉄道という欧米の有力6社の動向からグローバル市場 のトレンドを探った。
オフィス・ジェイログ 長沼 大 パートナー 第部 特 集 31  MARCH 2010 では〇二年にDHLを傘下に収めた。
現在 ではエクスプレス事業と3PL事業のサー ビスブランドを「DHL」に統合して総合 的なロジスティクスサービスを全世界で展 開している。
 〇八年度は米航空貨物会社のポーラーエ アカーゴ・ワールドワイドの株式の四九% を取得する一方で、エクスプレス部門では 米国内の業務から撤退するという大規模 なリストラを行った。
また同年度、ドイツ 国内ではポストバンクをドイツ銀行に売却、 コアである総合ロジスティクス事業に集中 する戦略をとった。
 現在の事業セグメント別の売上構成はメ ール事業二五%、エクスプレス事業二五%、 ロジスティクス・フレート部門五〇%と分 散化されている。
地域別売上高もEU六 五%、米国一九%、アジア太平洋十二%、 その他四%と、ライバルのインテグレータ ーと比較してバランスがとれている。
 しかし、同社の最大の収益源は今もドイ ツ国内の郵便を中心とするメール事業であ る。
〇八年度に同社はEBIT(支払金 利前税引前利益)で五億六七〇〇万ユーロ の赤字に陥った。
しかし、メール便事業だ けを見れば二二億五三〇〇万ユーロの利益 を計上している。
同部門の〇八年度の売上 高は一四三億九三〇〇万ユーロであるから、 利益率は一五・七%ということになる。
 同年度のエクスプレス部門は売上高一三 六億三七〇〇万ユーロで、リストラに伴う 特別損失などが発生したためEBITは二 一億四四〇〇万ユーロのマイナスだった。
エクス プレス部門の赤字をメール便事業の黒字で埋めた 格好だ。
 バランスの良い事業ポートフォリオが今回の不 況の影響を限定的なものにしたといえる。
さらに 〇九年度は大胆なリストラが奏功し、大幅な売上 減少にもかかわらず二〇億ユーロ近くの黒字にな ると予想される。
まさにV字回復で、ドイツポス トの底力を見せつけることとなりそうだ。
UPS ──米国景気の低迷で苦戦  米国最大の物流企業で、売上高約五一五億ドル、 利益率約一〇%を誇る高収益企業だ。
売上高の七 五%は米国業務が占めている。
また事業セグメン ト別では八〇%超を国内外のエクスプレス事業で 稼いでいて、同部門の利益率は約一八%にも達し ている。
それだけにサブプライム問題以降の米国 の景気低迷には大きな影響を受けている。
 グローバルな市場再編の波を受け、同社もまた 近年M&Aを重ねてきた。
米国では〇四年に米メ ンロー・ワールドワイド・フォワーディング、〇五 年にトラック運送の米オーバーナイトを買収し、サ プライチェーン・フレート部門を強化した。
しかし、 同部門が全体の売上高に占めるシェアは二〇%以 下で収益性も低い。
FEDEX ──主力のエクスプレス関連が低迷  〇八年度の業績は売上高が約三八〇億ドル、利 益率は五・三%だった。
日本での知名度は同じ米 国企業のUPSよりも上だが、業績的には劣勢で 図1 グローバル・ロジスティクス市場有力6 社の近年のM&A 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 ドイツポスト UPS FEDEX TNT K+N DB DHL買収 米キンコーズ買収 シェンカーを経営統合 TPGをTNTに社名変更 (蘭政府株式保有率19% に低下)、TNT ロジスティ クス業務からの撤退発表 独Gebr. Monkemoller 買収、独ACRロジスティ クス買収 英エクセル買収ポーランドのエクスプレス 企業買収、米オーバーナ イト買収 米バックスグローバル買 収 シェンカーセイノーとバック スグローバルの日本業務 統合、スペインでTIR買収 ブラジルでエクスプレス企 業買収、中国華宇 (Hoau)物流買収 中国DTWグループ買収、 ハンガリーで企業買収 米ポーラーエアカーゴの 49%の株式取得 ポストバンクをドイツ銀行 へ売却、米国内エクスプ レス事業から撤退 仏アロン買収ルーマニアでRomtrans 買収 フリッツを買収、米ファー ストインターナショナル銀 行買収、米メール・ボッ クス・エトセトラを買収 米メンロー・ワールドワイ ド・フォワーディングを買 収、シノトランスから中国 エクスプレス事業を買収 仏のノンコアビジネスを売 却、仏の物流会社買収 スウェーデンのウィルソ ン・ロジスティクスを買収 蘭Nether Cargo Services B.V.買収 米USCOロジスティクス 買収 株式上場、独政府株式 一部売却。
ダンザス買収 米エアボーン・エクスプ レス買収 独Pracht Spedition + Logistik買収 米アメリカン・フレートウ エイズ買収 中国DTW(大田集団) 買収、英ANC買収 HSBC Export Services 買収 中国でリテールセンター 業務 米CTIロジスティクスを買 収 MARCH 2010  32 ある。
ロジスティクス事業を売却してエクスプレス 事業に集中したTNTと比べても、売上高の成長 率は高いが利益率では大きく水をあけられている。
 〇五年以降、中国、英国、ハンガリーでエクス プレス事業関連のM&Aを行い、グローバル・ネ ットワークの強化を進めている。
しかし、UPS と同様に地域セグメント別売上高は、七〇%以上 を米国が占めている。
また事業セグメントでは九 五%以上をエクスプレス関連事業(特別積み合わ せ、スモールパッケージも含む)が占めるという 構成になっている。
 〇九年度はDHLの米国国内業務からの撤退を 受けてシェアを拡大した。
しかし、利益面では苦 戦を強いられている。
同社は〇八年度に景気後退 と燃料高騰の影響を強く受け、さらにパイロット の給与支払い問題などが発生したことから、それ まで九%前後だった利益率を五%台まで落として いる。
 航空機を使ったハブ&スポークスシステムを開発 し、画期的なビジネスモデルで成長を続けてきた 同社だが、ロジスティクス事業の売上高に占める シェアは五%未満と小さい。
ロジスティクス事業 の強化を図るライバルのドイツポストやUPSに対 し、同社がどのような競争戦略をとるのか今後の 展開が注目される。
TNT ──選択と集中でリスクが増加  オランダ郵政庁を前身とする国際インテグレー ターで、売上高の八〇%をEU域内で稼いでい る。
〇八年度の売上高は一一一億五二〇〇万ユー ロと他のインテグレーターと比べて規模が小さいが、 EBITは八億二〇〇万ユーロを確保している。
ドイツポストと同様に高収益のメール事業で、低 収益のエクスプレス事業をカバーしている状況だ。
 総合ロジスティクス企業を目指して、企業買収 を繰り返し業容を拡大してきたのもドイツポスト と同じだ。
しかし〇五年度に大きく戦略を転換した。
ロジスティクス部門を売却して業界を驚かせたの に続き、〇六年にはフレートマネジメント部門も、 仏有力フォワーダーのジオディスに売却。
エクスプ レスとそれに関連する陸上輸送に特化する選択と 集中を行った。
 その後、〇八年度まで売上高は順調に推移して いる。
しかし、利益率は〇六年度の十二%台から 〇八年度は七%台に低下している。
要因は他のイ ンテグレーター各社と同様、景気後退と燃料費の 高騰だ。
 選択と集中という同社の戦略は成果を上げてい る。
しかし、後に見る六社の業績比較の中では、 リスク分散の観点で事業ポートフォリオの狭さが 足下の業績に悪影響を及ぼしている点は指摘でき る。
キューネ+ナーゲル(K+N) ──バランスの良いポートフォリオ  スイスに本社を置く、フォワーディングを中心 としたロジスティクス企業である。
〇八年度の売 上高は約二一六億スイスフラン(一兆九〇〇〇億 円:一スイスフラン=八八円換算)、EBITは七 億三六〇〇万スイスフランでインテグレーターに匹 敵する規模を誇る。
 事業セグメントは海上フォワーディングが四 七%、そのほかエアーフォワーディング一八%、 図2 グローバル物流市場のシェア(2007 年) エアフレート上位5 社《市場規模 2090万トン》 DHL ドイツ鉄道シェンカー パナルピナ キューネ+ナーゲル 近鉄エクスプレス 11.90% 2,487,100 6.20% 1,295,800 4.50% 940,500 3.90% 815,100 2.30% 480,700 海上フレート上位5 社 《市場規模 2960万 TEU》 DHL キューネ+ナーゲル ドイツ鉄道シェンカー パナルピナ エクスペダイターズ 9.30% 2,752,800 8.80% 2,604,800 4.90% 1,450,400 4.20% 1,243,200 3.00% 888,000 コントラクト・ロジスティクス(3PL)上位5 社 《市場規模 2060 億ユーロ》 出典:ドイツポスト08 年年次報告書 DHL CEVAロジスティクス キューネ+ナーゲル ウィンカントン UPS SCM 6.40% 131.8 1.70% 35.0 1.40% 28.8 1.30% 26.8 1.30% 26.8 事業セグメント別の売上高シェア 地域セグメント別の売上高シェア 米国 EU アジア太平洋 その他 ドイツポスト 18.7% 65.9% 11.5% 3.9% UPS 75.0% na na 25.0% FEDEX 72.5% na na 27.5% TNT 3.1% 84.0% 11.8% 1.1% K+N 19.6% 65.8% 8.6% 6.0% ドイツ鉄道 6.0% 87.0% 6.0% 1.0% ドイツポスト ロジスティクス エクスプレス メール 51% 25% 26% UPS 米国国内事業 国際パッケージ サプライチェーン&フレート 61% 22% 17% FEDEX エクスプレス グラウンド フレート サービス 64% 18% 13% 5% TNT エクスプレス メール 60% 40% K+N コントラクトロジスティクス エアー 鉄道道路 海上 32% 18% 13% 46% ドイツ鉄道 DB バーン DBシェンカー シェンカーロジスティクス DBNetze 36% 14% 44% 5% 図3 特 集 33  MARCH 2010 鉄道・道路輸送十三%、コントラクト・ロジステ ィクス(3PL)二二%と分散化されている。
地 域セグメントもEU六六%、北米二〇%、アジア 太平洋九%、その他五%とバランスが良い。
 この地域セグメント/事業セグメントの分散化 によって、同社は景気後退期でも好業績を維持す ることに成功している。
もともとインテグレータ ーと違ってエクスプレス事業を持たず、また米国 事業の規模が相対的に小さかったことから、景気 後退の影響が小さかったことに加え、コントラクト・ ロジスティクス業務の強化も業績に大きく貢献し ている。
 〇八年度だけでもコントラクト・ロジスティクス 部門はサムスンやエアバスなど数多くの有力荷主 を獲得している。
また仏アロン・グループの買収 など事業強化のための組織再編も積極的に行いな がら事業領域と営業地域の拡大を図っている。
近 年は旧ソ連から独立したCIS諸国や中央アジア 向けなどを強化している。
ドイツ鉄道(DB) ──欧州中心の事業展開が功を奏す  旧西ドイツと東ドイツの国鉄が九四年に統合し て民営化した鉄道会社で、〇八年度の売上高は三 三四億五二〇〇万ユーロ、EBITは一八億七〇 〇万ユーロで、JR東日本と同等以上の規模を有 している。
 近年は物流事業の強化を進めている。
グループ 会社であった物流大手のシェンカーを〇二年に経 営統合した後、〇五年には米大手フォワーダーの バックスグローバルを買収。
他にもスペイン、ルー マニアなどで企業買収を行い、事業領域、事業エ リアとも拡大させている。
 事業セグメント別売上高は旅客鉄道のDBバー ンが三六%、貨物鉄道のDBシェンカーが一四%、 DBシェンカーロジスティクスが四四%、その他 六%となる。
売上高としてはロジスティクス部門 が最大だが、利益面では鉄道部門の貢献が大きい。
 地域セグメントではドイツ六四%、その他のE U二三%、米国六%、アジア太平洋六%、その他 一%となっている。
 同社もキューネ+ナーゲルと同様に、景気後退 の影響を強く受けたエクスプレス事業をもたず、 米国の事業規模が大きくなかったことが業績の低 下を抑える要因であったと考えられる。
ポートフォリオで業績に明暗  図4〜図6は〇二年度から〇五年度までの四年 間、〇五年度から〇八年度までの四年間、そして 〇六年度から〇九年度までの各四年間における、 各社の成長性・収益性のポジショニングの変化を 示している。
 このうち各社の〇九年度の業績は、第3四半期 までの業績結果をもとに〇九年度の通期決算を予 測したもの。
各社とも〇八年度より売上高で一〇% 〜二〇%の減収、税引前利益は一〇%から五〇% の減益になるという見通しになっている。
 図4・5から、二〇〇〇年代に入り市場再編が 本格化してから世界同時不況に見舞われるまでの 〇二〜〇八年七年間における各社の経営状況を分 析すると、その前半と後半では以下のように推移 したと評価できる。
ドイツポスト 成長性:向上 収益性:低下 UPS TNT FedEx K+N ドイツ鉄道 ドイツポスト 16 14 12 10 8 6 4 2 0 0% 20% 40% 60% 80% UPS TNT FedEx K+N ドイツ鉄道 ドイツポスト (%) (%) 8(%) 7 6 5 4 3 2 1 0 -30% -20% -10% 0% 10% 20% UPS TNT FedEx K+N ドイツ鉄道 ドイツポスト 12 10 8 6 4 2 0 -2 0% 20% 40% 60% 図4 02年度〜05年度のポジショニング 《収益性 06 年度》《収益性 09 年度(見込み)》 図5 05年度〜08年度のポジショニング 図6 06年度〜09年度のポジショニング(見込み) 《02〜05年度成長率》 《05〜08年度成長率》 《06〜09年度成長率(見込み)》 《収益性 08 年度》 MARCH 2010  34 特 集 SやFEDEXと同様、メーン市場偏重の収益性 であるため、今後の注力を必要とする市場である。
 実際、各社は中国系物流企業の買収やハブ拠点 の建設など、経営環境の悪化にもかかわらず、同 エリアに対する投資の手は緩めていない。
そこに 中国系企業の台頭も加わることになるため、アジ ア地域における物流企業の競争環境は今後さらに 激しくなるものと予想される。
 日系ロジスティクス企業もまた、今後は事業領 域と事業エリアのポートフォリオをグローバル規模 で形成していく必要があるだろう。
しかも、現地 で一から事業を構築するというアプローチでは、 買収攻勢をかけてくる欧米大手には太刀打ちでき ない。
スピードにはスピードで立ち向かうしかな いわけであるが、その場合に日系企業が直面する 最大の課題は、海外で買収した企業をマネジメン トをできる人材の不足だと考えられる。
 これだけITや荷役機器などが発達した現代に おいても、ロジスティクスのオペレーションには人 的要素が強く残っている。
現場で働くスタッフ一 人ひとりの能力向上が、ロジスティクス事業の大 きなテーマであることは今後も変わることはない。
しかし、ことグローバル競争においては、マネジ メント層の強化がそれ以上に大きな課題となるこ とを認識して、対応策を講じる必要がある。
TNTを加えた三社は、成長率・収益率とも低下 させたが、欧州系で3PL事業のシェアが大きい 残りの三社は相対的に堅調だったといえる。
 しかし、〇二年度〜〇九年度というスパンでは 大きく様相が変化する。
成長率は全社が低下し、 うち三社はマイナス成長に陥った。
ただし利益率 はキューネ+ナーゲルが「維持」、ドイツポストと ドイツ鉄道は「向上」させている。
 このうちドイツ国内の鉄道部門の収益が大きい ドイツ鉄道を除いた五社について、利益率の比較 を行ってみると、利益率を維持・向上できた二社 と他の三社との違いは、事業と地域の両セグメン トのバランスの違いによるものであることが分かる。
 詳しい分析は割愛するが、地域セグメントにつ いてはメーン市場への依存が売上高の七〇%を超 えているかどうかが実績の分かれ目となった。
アジア市場はドイツポストが先行  ここで一つ意外だったのは、成長市場といわれ るアジア地域の収入が成長を支えたと明確に確認 できたのはドイツポストのみであったことである。
各社ともアジア市場における売上高は既に一六〇 〇億円以上にも上っているが、ドイツポスト以外 の五社においては、日系物流企業などと比べても 事業規模は小さい。
 ドイツポストの〇八年度のアジア太平洋地区の 売上高は約八〇〇〇億円で、前年から一〇・一% 伸びた。
同期、欧米地域ではマイナス成長であり、 アジア太平洋地区の売上伸長が、企業全体の成長 を支えた格好だ。
 またTNTも六・九%と高い伸びで、特に中国・ 台湾は一四・一%の高成長であった。
しかしUP  ロジスティクス・フレート部門の業績伸長、E Uハブ整備など積極的な投資活動が成長を支えた 一方、米国国内市場からのリストラにより収益性 はマイナスであった。
TNT 成長性:低下 収益性:低下  エクスプレス事業が景気後退、燃料費高騰など の影響を受けて低成長、低収益であった。
メール 事業の増収増益でもカバーできなかった。
UPS 成長性:低下 収益性:低下  米国内の事業が大半を占めるため、景気後退、 燃料費高騰などで成長率、利益率ともに低下。
と くにフレート部門が低迷した。
FEDEX 成長性:低下 収益性:低下  
妝丕咾汎瑛佑吠胴馥盪業が中心のため景気後 退、燃料費高騰などで成長率、利益率ともに低下。
特殊要因としてパイロット給与支払問題もあった。
キューネ+ナーゲル 成長性:維持 収益性:向上  
釘佞砲ける3PL事業(コントラクト・ロジ スティクス事業)が拡大した。
また買収による事 業拡大と鉄道利用の増加も収益率向上の要因とな った。
ドイツ鉄道 成長性:維持 収益性:向上  企業買収による事業拡大が成長率維持の要因と なった。
また鉄道部門の高収益が収益率向上を支 えた。
 こうして見ると米国系インテグレーター二社に ※〇九年十二月現在の業績で算出。
文中の為替レートは 一ユーロ一三〇円、一ドル九〇円で換算

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