ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年3号
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「日々の現実と向き合い毎日手を打て」ハマキョウレックス 大須賀正孝 会長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2010  4  「これからもっと減るだろう。
これ まで真面目にやってきた運送会社が整 理されている。
倒産するのではなく、 今なら借金しないで済む、息子に継 がせて苦労させたくないと考えて廃 業している。
今の運賃では採算が合 わない、今後も改善される見通しが ないとなれば、誰だってそう考える」 ──それもデフレが原因ですか。
 「運賃が上がらないのは、デフレ以 外にも理由がある。
必ずしも新規参 入してきた業者が安い値段で仕事を 取っているわけではない。
それより も?水屋?(運送契約の斡旋業)だよ。
マッチングして手数料を取るだけだか ら、いくら安い運賃でも自分の懐は 痛まない。
その結果、大阪から東京 に運ぶのに三万円などというデタラメ な運賃がまかり通ってしまう。
それ でも水屋は一〇%の手数料を抜ける から、三万円が一万円だって赤字に はならない」  「運送会社にしても帰り荷を空で運 ぶより、油代だけでも稼ごうとして、 安い運賃でも受けてしまう。
そうな ると今度は安い運賃が一人歩きして いく。
今はそこにメスを入れる方法が ない。
路線ごとに最低運賃を設定す る。
あるいは水屋のマッチング料をパ ーセンテージではなくて、一回当たり いくらと決めるなど対策が必要だろ デフレとは何なのか ──現在の経済状況をどうご覧にな っていますか。
 「例えば今、一流メーカーのふとん カバーが五〇〇円で買える。
ところが それをクリーニングに出すと五五〇円 取られる。
別にクリーニング代が高い わけではない。
糊を付けてアイロンを かければ手間賃としてそれだけかか る。
それよりも買ったほうが安いと いうことになると、クリーニングの仕 事が成り立たなくなってしまう」  「ふとんカバーは中国や東南アジア など、人件費の安い国で作っている。
だから五〇〇円でも採算が合う。
た だし、メーカーは今まで一〇〇〇円 で売っていたものが五〇〇円になり、 利益は一〇〇円だったものが五〇円 に減る。
今まで通り社員の給料を払 えなくなってしまう。
日本で働ける 場所がそれだけ減ってしまうという ことだ。
デフレがそこまで来ているこ とを、日本の政治家たちは分かって いない」  「日本は人件費が高いという。
しか し人件費は下げられないよ。
賃金を 下げたら生活できなくなってしまうも の。
輸入品の関税を上げられればい いのだけれど、それをやれば世界中 からブーイングが起きる。
だとすれば、 残るは為替だ。
一ドル九〇円ぐらいの 円高をずっと放置したことが、今の ような状況を作ってしまった。
一ドル 一二〇円から一三〇円くらいになら ないと元には戻らない。
政府は円安 誘導すべきだよ」 ──今後の景気動向をどう予測しま すか。
 「将来のことは分からない。
もちろ ん予想はするけれど、当たるも八卦、 当たらぬも八卦だよ。
そんな予測を 当てにするのではなく。
リーマンショ ック以降、その前からだけれど、私 が社内でずっと言っているのは、まず は現実を見なさいということ。
今日 の現実がすべて。
その中でやれるこ とを考えなさい。
毎日、毎日、手を 打ちなさいと」  「いくらリーマンショックと言った って、景気が今日いきなりドーンと悪 くなったわけではない。
景気の変動と いうのは、徐々にやってくる。
毎日 手を打っていればちゃんとやれる。
そ うできないのはトップが仕事をしてい ないからだよ。
現実を見ずに、必要 な手も打たないでいれば、どうにも ならなくなるのは当たり前だ」 ──日本の運送会社の数が二〇〇八 年度に減少に転じました。
ハマキョウレックス 大須賀正孝 会長 「日々の現実と向き合い毎日手を打て」  不景気は急にやって来るわけではない。
確かに現状は厳しい。
先行きも明るくはない。
それでも経営者が日々の現実と向き合 い、毎日必要な手を打っていけば必ず道は拓ける。
それができ ていない会社は、経営者が仕事をしていないということだ。
(聞き手・大矢昌浩) 5  MARCH 2010 う。
帰り荷を自分で確保できる運送 会社など限られているのだから、そ うしないと運賃の値下がりに歯止め が利かない」 ──しかし荷主の立場で考えれば、運 賃は安いほうがいい。
マクロ的にも帰 り荷の確保ができて積載率が向上す るのは良いことです。
 「だからといって、東京〜大阪が三 万円などという運賃がまかり通るよ うでは、これはもう商売ではないよ。
昔のように往きの運賃だけで利益が 出る値段ではなくなっている。
帰り荷 を確保して初めて成り立つ運賃になっ ているのだから」 ──運輸省時代のタリフは、実勢運 賃よりずっと高かった。
そこから何割 引するかという基準に利用されていま したが、今は最低運賃の公的な基準 が必要になっているということですか。
 「そう思うよ。
規制緩和するのもい い。
否定はしない。
しかしルールが守 られていないところに、まともな競 争はない。
今の法律では最低車両保 有台数は五台ということになってい る。
しかし営業許可を取る段階で五 台あれば、後から車両を減らしても 許可を取り消されるわけじゃない。
実 際にはトラック一台でも営業できる」  「そうした業者でも緑ナンバーであ る以上、事故を起こせば事業者用保 りに安く出したところは説明がつかな い。
見積もりの説明に納得のできな い3PLは荷主だって外しますよ。
セ ンターが動かなければ自分が困るもの。
たとえウチが負けても、実際に現場を 動かしてみたら提案通りにいかなか ったということになれば、次は指名 でウチに案件が回ってくる」 ──
械丕婿業も既存荷主は物量が 減っているはずです。
 「専用センターであっても、荷物が 減ったのであれば、空いたスペースに 他のお客さんを呼び込めばいい。
その ために常にお客さんとコミュニケーシ ョンをとっておく。
スペースが空いた ままではコストアップになってしまう ことを、お客さんが十分に理解してい れば了承はもらえる。
同時に、空いた スペースを埋めるお客さんに対する営 業活動も常にやっておく。
それもやっ ぱり毎日毎日のことなんだよ」 険が適用される。
その結果、業界全 体の保険料率がアップする。
そうし たことがアチコチで起きている。
車両 台数を最低五台と決めたのなら、そ れ以下は許可しちゃいけない。
安全 運行を守り、労務管理や環境対策な どルール通りにやっている運送会社が、 社長がハンドルを握る個人営業のよう な業者と一緒に競争させられたら堪 ったもんじゃない」 ──特別積み合わせトラック運送、い わゆる路線業の低迷も目立っています。
 「路線便市場は確実に縮小している。
不況で物量が減ったということだけ でなく、路線便をチャーターに切り替 える動きが加速している。
小売りが 流通センターを建てると、これまで路 線便で店舗に納品していたものがチャ ーターに切り替わる。
店舗納品もチャ ーターのルート配送に変わる」 ──エリア内の共同配送はどうでしょ う。
路線便と違って追い風が吹いて いるようですが。
 「エリア内の複数の出荷先から出る 荷物の情報を調整して一台の車両に 混載するのは、実際にはとても難し い。
共配が伸びているとすれば、複 数の荷主を一つのセンターに集約し て、そこから混載で配送するタイプの 共配だろう。
つまり3PLの汎用型 センターが起点になっている。
そのた め当社も現在、グループの近物レック ス(〇四年に買収した中堅特積運送 会社)の路線便ターミナルを多層階に して、上層階を3PL用のセンター として利用するかたちに改めようと している」 仕事はいくらでもある ──現在のハマキョウは減収増益基 調です。
 「減収は近物レックスが原因。
ハマ キョウ本体の3PL事業は相変わら ず伸びている。
新規案件も順調に増 えている。
しかも優良荷主ばかりだ。
これまでは物流費削減の必要性をそ れほど感じていなかった高収益企業 が不況に直面して3PLの導入に踏み 切っている。
今は良い仕事がいくら でもある」 ──しかし、コンペとなれば価格勝負 に出てくる3PLもいる。
簡単に儲 けさせてはくれません。
 「まともな荷主であれば本当にその コストで現場が回るのか、ちゃんと 判断するよ。
先日も医療器具メーカ ーのコンペで当社が落札したけれども、 ウチが一番安かったわけではない。
コ ンペでは荷主の担当者が各社にヒアリ ングを行う。
その時にウチは、どうし てその見積もりになるのか全て説明 できる。
ところが仕事が欲しいばか おおすか・まさたか 1941年、 静岡県浜松生まれ。
56年、北浜 中卒業後、ヤマハ発動機に入社。
青果仲介業などを経て、71年に 浜松協同運送を創業。
92年に「ハ マキョウレックス」に商号変更。
2001年、東証二部上場。
03年、 同一部昇格。
現在、ハマキョウレッ クス代表取締役会長。
本誌連載 をまとめた自伝的著書「やらまい か!」(ダイヤモンド社)を05年 に上梓している。

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