ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年3号
ケース
三井倉庫

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2010  42 3PL 三井倉庫 花王のパートナーとして国際物流を管理 KPIシステムで標準化・見える化を支援  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
完全なノンアセット型を志向  三井倉庫は二〇〇八年四月に花王からアジ ア地区の国際物流管理業務を受託した。
日本 およびアジア地区九カ国の生産・販売拠点間 でやり取りされる原材料や製品の輸出入を管 理する。
 花王はそれまで各国の現地法人に物流管理 業務を一任していた。
国ごとに独自の判断で フォワーダーや船社の選択が行われ、物流管 理の業務フローもまちまちだった。
グローバル サプライチェーンを効率化するためには、業 務の標準化や管理を一元化して、日本にいな がらアジア地区全体の物流の実態を把握でき る体制が必要だと判断した。
 ただし同社が単独でこれを実行しようとす れば、専門人材の育成や多大なシステム投資 が必要になる。
そこで3PLをパートナーと して共同で新体制の構築に取り組むことにし た。
そのパートナーに三井倉庫を選んだ。
 三井倉庫は二〇〇〇年代初頭から3PL 事業の強化を進めている。
当初は「LIT (Logistics Information Technology) 推進 部」という組織が事業の推進役だった。
元は 社内用業務管理システムの開発を担当してい た部門だ。
 同社の倉庫管理システム「SIMS」、フ ォワーダー業務管理システム「eForce」、 国際複合一貫輸送管理システム「EXIS」、 受注情報処理システム「コールセンターシステ ム」などはすべて同部が開発した。
そのノウ ハウを新規事業の開拓に活用することにした。
 そこから生まれたサービスの一つが通販サ イトへの出店者をターゲットにした「C─
味 NK」だ。
EC業者が運営する通販サイトの 背後で、C─
味稗裡砲出店者の受注システ ムや在庫管理、配送管理システムと連携をと りながら、出荷依頼から決済までを自動処理 する。
 通販サイトにオーダーが入ると、そのデー タがC─
味稗裡砲魴侏海靴峠佚梗圓亮注処 理や在庫管理システムに転送されると同時に、 運送依頼情報が協力運送会社に送られる。
そ の情報を元に協力運送会社が送り状を作成し、 出店者の在庫保管先に集荷に向かう。
 決済もC─
味稗裡砲管理する。
購入者が 代引きやコンビニでの決済、カード決済など の代金決済方法を指定するとそれに応じて、 必要な伝票を発行し、カード決済の与信管理 などを行う。
運送や決済に伴う一連の手数料 が三井倉庫の収入になる。
 海外から輸入した商品を国内の販売先へ供 給するまでのサプライチェーン全体を、荷主 に代わって管理するシステムも自社開発した。
これを3PL事業用システムとして位置づけ ている。
 このシステムは輸出入書類の作成や貨物 のトレーシングを行う「eDocTracer」、輸送 中も含め在庫を一元管理する「webSIMS / cyberSIMS」、および将来の在庫をシミュレ 情報システムを軸にしたノンアセット型3PL事業 を展開している。
2008年春に花王からアジア地区9 カ国を対象とする国際物流の管理業務を受託、各国 の業務フローを標準化して、日本にいながら各地の リードタイムなどの達成状況を監視できるシステム を構築した。
この取り組みをモデルケースとして新 規顧客開拓を狙っている。
43  MARCH 2010 ーションする「統合在庫システム」で構成さ れる。
 「SIMS」や「eForce」などの業 務システムから在庫数や通関・輸送の予実績 など必要な情報を収集して統合管理している。
海外や国内の拠点に在庫がどれだけあり、出 荷指示の出た貨物が通関・船積み・海上輸送 中などのうちどのステータスにあるかをいつ でも照会できる。
 このうち統合在庫システムではビジネスモ デル特許も取得している。
顧客のマーケティ ング情報(需要予測)や現在の在庫数を基に、 国内の配送センターの今後の在庫数をシミュ レーションして、海外工場からの輸送日数を 計算に入れたうえで在庫基準値を下回る前に 工場へ出荷指示を出す。
 同社はこれらの情報システムをベースに3 PL事業を展開し、事業規模の拡大とともに 〇七年に組織の強化を行った。
まず同年四月 に国内営業部に「3PL推進室」を設けてL IT推進部から3PL事業を移管した。
さら に〇八年四月には「3PL推進部」を新設。
国内・海外の枠に縛られない組織にするため 国内営業部の管轄下から外した。
 従来はLIT推進部が商品開発までを手が け、営業活動や事業の運営は支社や支店が担 当していた。
支社や支店は自らのアセットを 抱えている。
そのことが荷主に最適な物流を 提案するうえで制約になる可能性があった。
 このため3PL推進部で、商品開発から営 業、オペレーションまでをすべて主管する体 制に変えて、自社のアセットにこだわらない 完全なノンアセット型の3PLを志向する方 針を明確にした。
 藤岡圭執行役員3PL推進部長は「顧客 のパートナーとしてサプライチェーン全体を俯 瞰的に見て最もいい手段を提供するのが3P Lの本来の役割。
そのためには(組織上も) 自社のしがらみをすべて取り払う必要があっ た」と説明する。
各国の業務フローを標準化  新体制の下で3PL推進部が最初に取り組 んだのが花王の国際物流だ。
花王から依頼さ れたのは、花王といっしょにアジア地区の物 流を効率化する仕組みを構築し、花王の代わ りに物流業務を管理すること。
 国ごとに異なる業務フローを標準化し、花 王がサプライチェーンを管理するうえで必要な 情報をいつでも見えるようにし、さらにそれ を分析し改善提案を行うという内容だ。
まさ しく三井倉庫がめざす3PL事業のコンセプ トそのものだった。
 花王はアジア地域の活動全体を統括する日 本のヘッドクオーター「グローバル担当」と、 その管轄下に国別の「エリア担当」を置いて、 アジア地域の物流を管理している。
 三井倉庫も、これに準じた組織体制を整 えた。
3PL推進部の「SCMセンター」に 「グローバル担当」を置き、アジア各国の三井 倉庫の現地法人の社員を「3PLのエリア担 当」と位置付けた。
藤岡圭執行役員 3PL推進部長 社内用 業務 System 独自の3PL システム“ASPIRE”で生産から販売に至るまでの物流を一元的に管理 統合在庫 (将来在庫照会、シミュレーション) eDocTracer (トレーシング・書類作成) webSIMS/cyberSIMS (広域在庫管理) C-LINK (決済支援) EC Site ASPIRE(3PL システム) 発注在庫輸出 荷捌輸送 輸入 荷捌在庫配送受注決済 SIMS eForce EXIS eForce KPI システム SIMS コール センター システム 顧客向け APS System ※統合在庫はビジネスモデル特許取得 MARCH 2010  44  〇八年六月に日本で両社の共同プロジェク トを組織し、まずは物流工程の標準化から取 り組んだ。
花王はアジア各国の販売・在庫状 況に応じて毎日の生産計画を見直し、効率よ く供給する体制を目指している。
しかし国に よって物流工程がバラバラでは管理が複雑に なり、柔軟な生産計画の見直しに対応できな い。
このため標準化する必要があった。
 具体的にはコンテナ貨物のドレージ輸送、 輸出入通関および海上輸送のプロセスの標準 化を三井倉庫が3PLとして担当した。
もと もと花王には、これらの業務フローとして標 準的に定めたものがあった。
そこで三井倉庫 のグローバル担当がアジアの各拠点へヒアリン グに行き、標準フローと比較しながら実際の 業務の流れや情報システムの使い方などの把 握を行った。
 さらにどの点が標準と異なりその原因は何 か、どんな改善を行えば無駄な工程を省ける かなどについて、日本と現地を何度も往復 し、花王のグローバル担当と話し合い、国情 の違いなども考慮してフローの見直しを行っ た。
この作業を国ごとに進め、およそ一年か けて新しい標準フローを作成した。
 業務の標準化とともに、花王と3PLの三 井倉庫、そして各国の現場オペレーションを 担当する協力物流会社の役割分担を整理した。
それまでアジア各国で花王の現地法人のスタ ッフ(エリア担当)が担当していた生産・販 売拠点の物流管理業務は三井倉庫へ移管した。
取り組んだ。
 三井倉庫ではそれ以前から3PL業務を 管理するツールとしてKPIを運用してきた。
顧客の要望に応じて積載率、リードタイムな どの指標をKPIとして設定し、数値に基づ いて現場のパフォーマンスを評価する。
 ただし従来は3PLを主管する支店がKP Iをエクセルベースで個別に運用していたに 過ぎなかった。
業務の主管を支店から3PL 推進部へ移行したのに伴い、KPIをインタ ーネットで動かしグローバルに管理するシステ ムを開発した。
 各国の拠点でデータを収集・入力してイン ターネット上のデータベースに蓄積し、日本 や各国の拠点でも情報を閲覧できるようにし た。
業務実態の?見える化?だ。
 このKPIシステムを花王の物流管理で初 めて導入した。
コンテナの積載率やドレージ 輸送、通関、船積み、海上輸送などの各工 程にかかる時間、発地から着地までのトータ ルの日数などをKPIの指標に選び、それぞ れの目標を設定した。
花王側のスタッフはSCMの企画など上流工 程の業務に専念する体制にした。
 運送や通関の手配など日常的な管理業務は 三井倉庫の3PLエリア担当が代行し、同社 の指示で各地の協力運送会社や通関業者、船 会社などが実際の業務にあたる。
国ごとに違 っていた協力会社への業務委託内容も一律に した。
 協力会社の選定も三井倉庫が入札を代行す る。
コンピューターシステムや輸送能力、運 賃レートなどの定性・定量評価項目のメニュ ーを設け、それぞれ内容に応じて予め評価ポ イントを決めて、点数をつけていく方法をと る。
 どの評価項目を採用するか、評価ポイント の配分をどうするかは花王のヘッドクオータ ーと相談し、現地の意向も反映させて決める。
これを元に三井倉庫が採点を行い、合計点の 高い物流会社を選ぶ。
 
械丕未箸靴討了旭譱匕砲呂△まで花王の 代行者の立場で、身内にも私情を挟まず入札 に臨む。
三井倉庫の現地法人が花王から受託 していた業務を入札によって失ったケースさ えあるという。
それでも藤岡部長は「3PL として信頼を得るためにはそれもやむをえな い」と割り切っている。
達成状況をグローバルに管理  
P I( 重要業績評価指標: Key Performance Indicator)システムの構築にも 3PL推進部の池田明郎 SCMセンター室長 45  MARCH 2010 担当が分析し、目標に達していない項目があ ればその原因を探り、花王に対し改善策を提 案する。
 
械丕命篆壁瑤涼單通析今咤達優札鵐拭室 長は「単に見える化するだけでなく、重要な のはその先。
改善のためにどうするべきかを いっしょに話し合い実行することがこの取り 組みでわれわれに最も期待されていることだ」 と強調する。
海上運賃情報も公開  
烹丕匹納集する「時間」や「量」など のデータだけでなく、生の運賃情報も花王に 提供している。
三井倉庫が花王の代行として 船会社と地域別に海上運賃の交渉を行い、そ の内容をデータベース化し、セキュリティを確 保した上で花王に公開している。
 海上運賃は国際物流のトータルコストのな かでも大きな比重を占める。
運賃情報を公開 することによって花王は、リードタイムとと もにコストも考慮に入れて生産計画や在庫計 画を柔軟に見直し、サプライチェーンを最適 化することができる。
新商品を企画する際の 原価計算もやりやすくなる。
 一般に荷主が3PLに業務をアウトソーシ ングする場合には、一括委託によるコスト削 減を期待するケースが多い。
しかし、単なる 丸投げでは一時的にコストは下がっても効果 が長続きしないことがある。
 三井倉庫が花王から受託した3PLは短期 的コストの削減よりも、コスト効率を継続的 に向上していくことを狙っている。
それには 荷主と3PLの二人三脚が不可欠だ。
 
械丕未箸靴道旭譱匕砲蓮荷主の業務を標 準化してサプライチェーンの管理を容易にし、 さらにKPIをツールとした見える化によっ て改善点を見つけやすくすることに務めてい る。
そのためには手の内を開示することも厭 わない。
 一方で花王のヘッドクオーターは、各現地 法人の責任者に対して繰り返し改革の意義を 説いている。
国情の異なる複数の国の業務を 標準化し管理体制を見直すことは、現地にと って大きな改革を意味する。
すんなり協力が 得られるとは限らない。
3PLが業務を遂行 しやすい受け入れ体制を作ることに荷主とし て配慮しているのだ。
 三井倉庫では花王と構築した今回のアウト ソーシングの枠組みを?グローバル3PLモデ ル?と位置付けている。
これを新規顧客の開 拓に活かす。
拠点ごとのコスト削減ではなく グローバルな視点で全体最適化を図ろうと考 えている企業がターゲットだ。
 藤岡部長は「SCMをうまく組み立てる ために、海外で起こっていることが日本でも きちんとわかるようにしたいと考えている荷 主にとって、われわれのノンアセット型3P Lモデルは説得力を持つはず」と自信を持っ ている。
(フリージャーナリスト・内田三知代)  国際間のサプライチェーンを管理するうえ で特に重要なのはトータルリードタイムだ。
日 数を短くするというだけでなく、安定してい ることが望ましい。
リードタイムがしばしば 変わると商品の供給計画が立てにくくなって しまう。
従って、リードタイムの日数ととも に安定性がKPIになる。
 輸送システムや通関システムなどの業務シ ステムで管理する実績データを各地でKPI システムに入力して、日本やアジア各国の三 井倉庫と花王の担当者で情報を共有する。
さ らに収集したデータを三井倉庫のグローバル 各エリア(国・地域) グローバル3PL 事例紹介 三井倉庫 グローバル 3PL 顧客 グローバル SCM 顧客 タイ 三井倉庫 タイ 顧客 上海 三井倉庫 上海3PL 顧客 日本 三井倉庫 日本3PL 実物流会社 実物流会社 船 社 船 社 実物流会社 実物流会社 船 社 船 社 実物流会社 実物流会社 船 社 船 社 ・・・ ・・・ グローバル

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