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イー・ロジットクラブ通信
《第1 回》
物流センターの運営は、作業者のモチベー
ションによって支えられているといっても過
言ではない。 その点で「サンリオディストリ
ビューションセンター(以下、サンリオDC)」
は、業務改善・効率化のみならず、作業者
に対する適性かつ公正な評価を可能にする独
自の管理法を構築し、さらには生産性の向上
へと結びつけた希少な事例といえる。
サンリオDCは、かつて東京の越中島と立
川の二カ所に分散していたセンターを町田市
に統合した施設で、二〇〇一年九月に稼働
した。 その際、業務フローの全面的なリニュ
ーアルが図られ、小物仕分けソーターを始め
とする大規模な自動化設備や無線ハンディタ
ーミナルの本格的な活用が決定された。
ただし、季節変動に対応するためにフレキ
シブルなシステムにする必要があったことに
加え、ぬいぐるみから書籍、小物など、形状
にバラツキの多いサンリオ商品の特性上、全
面的な機械化は向いていないという判断から、
機械で処理できる作業の自動化を進める一方
で、マンパワーを主体とした作業も残す効率
重視の方針をとった。
マンパワーに重点を置いたシステム構成で
ある以上、センター運営面では作業者の業務
管理が最優先課題だった。 同社では、かねて
から、作業者の実績や能力を数値化できれば、
より適正な評価体系が確立できるはずだと考
えていた。 そのために「作業者の能力を立証
するデータの収集方法」そして「作業量だけ
ではない公平な評価方法」を開発することが
課題だった。
そこで無線ハンディを活用して、作業員個
人ごとの実績データを収集し、長年の課題で
あった明確な評価基準の策定へとつなげてい
った。
例えばピッキング作業では、作業内容(仕
分ける物の種類)とその精度(ミス率)、時
間(処理タイム)をリアルタイムに検出し、
これらの実績データを評価基準とした。
MARCH 2010 82
物流コンサルティングのイー・ロジットと通販物流が主催する研究
会「イー・ロジットクラブ」では、先進物流センターの見学会を定期
的に行っている。 その成果を本コーナーで紹介する。 第一回の舞台は、
サンリオの自社物流センターだ。 無線ハンディターミナルの活用に独
自の工夫が見られた。
サンリオ ディストリビューションセンター
無線ハンディで個人生産性まで評価
ピッキング作業は、無線ハンディと台
車を使用する。 出荷ラベルを出荷用
カートンに貼り、ラベルのバーコード
を読み取ると、作業指示がハンディ画
面に表示される
指定の商品をピッキングし、バーコー
ドをスキャン検品してカートンに収め
る。 カートンが満杯になったら一工程
が終了する。 この時、事前に設定され
た一工程の作業時間と実作業を対比
することで◎○△×の判定が出る
ピッキングミスを行うと、無線ハ
ンディの画面に「取り間違い」と
表示される。 作業者は、その場で
正しいピッキングに改めることに
より、ミスを残したまま出荷でき
ない仕組みにしている
作業の?大変さ?を指数化
もっとも、各作業員が処理した伝票数や時
間を把握するだけでは、適正な評価はできな
い。 オーダーの内容や仕分ける商品の重量や
大きさによって一ピックにかかる作業負担は
大きく異なるからだ。 そこで一時間あたりの
作業を標準係数化して作業の「大変度指数」
を策定することにした。
具体的には、伝票発行数(アイテム数=行
数)、SKU(ピッキングした商品個数・回
転数)、カートン数(処理量と嵩)、オーダー
件数の四点を評価項目に取り、それぞれの基
礎ポイントを以下のように設定した。
●一行 ‥ ‥‥‥‥‥‥一ポイント
●一SKU‥‥‥‥〇・五ポイント
●一カートン‥ ‥‥‥五ポイント
●一オーダー‥ ‥‥‥五ポイント
例えば、その作業が三〇〇行、五〇〇S
KU、三〇カートン、一〇オーダーであった
場合、(三〇〇×一)+(五〇〇×〇・五)+
(三〇×五)+(一〇×五)=七五〇ポイ
ントとなり、これを所用時間の一・五時間で
割ると、一時間当たり五〇〇ポイントになる。
これがその作業の大変度指数だ。
さらに、この指数を使った作業評価を、分
かりやすい形で作業員に表示する必要があっ
た。 そのために、作業実績を◎○△×の表記
で、以下の四ランクに分けて評価することに
した。
●一三〇%以上‥ ‥‥‥‥‥ ◎(二点)
●一〇〇〜一二九% ‥ ‥‥ ○(一点)
●七一〜九九% ‥ ‥‥‥‥‥ △(〇点)
●七〇%以下‥ ‥‥‥‥‥‥(マイナス一点)
ピッキング作業開始時に無線ハンディ画面
に、その作業を何分で終了すべきかが表示さ
れる。 そして作業の終了時に、◎○△×の採
点が改めて表示されるという仕組みだ。 作業
者はゲーム感覚で楽しみながらピッキングを
行うことができる。
また作業者に伝えられるのは、◎○△×の
みだが、この評価に対応した点数を個人の生
産性として、パート・アルバイトの能力評価
や実績管理にも反映させた。
このような無線ハンディの活用法により、
感覚や処理量だけではない作業者の能力(生
産性)に基づいた公平な評価法を確立するこ
とができた。
パートたちの間には、些細な作業ミスでも
曖昧にしない気持ち、能力起点のモチベーシ
ョン向上といった気風が定着し、センター全
体の運営にとって非常に大きな効果を得るこ
とができたという。
一連の物流機能のリニューアルによって、
サンリオDCにおける作業生産性は従来と
比較して二〇%〜三〇%向上した。 なかで
もピッキング作業の生産性は五〇%以上向
上したという。 いわゆる「L M S(Labor
Management System)」の成功事例として
評価できるだろう。
83 MARCH 2010
イー・ロジットク
ラブは、イー・ロジ
ットの角井亮一代表
(以下写真)が主宰
する物流研究会で、
物流人材の育成や人
脈づくりに磨きをかけたい企業七五社が参加し、
研修会やセミナー、現場見学会、ニュースレ
ターの発行、会員同士の情報交換会など活発
な活動を行っている。
入会金は五万二五〇〇円、月会費は
八〇〇〇円で、会員企業に対しては角井代表
を始めとしたイー・ロジットのコンサルタント
による無料相談会や同社の主催する研修講座
の割引制度などの特典も設けられている。
同クラブへの入会を検討する企業を対象とし
た無料説明会も東京と大阪で随時開催してい
る。 同説明会の参加者には角井代表の?最新
セミナーテキスト(定
価三〇〇〇円)と?
最新セミナー講演C
D(定価一万円)が
プレゼントされる。
イー・ロジットクラブ活動報告
■無料説明会の日程(東京と大阪で同時開催)
三月二三日(火)一五:〇〇〜
四月十三日(火)一五:〇〇〜
(上記日程以外の個別説明にも随時対応)
■問い合わせ先電話番号
東京:〇三─五八二五─一七二〇 担当/清水
大阪:〇六─四三〇八─八九七七 担当/宮野
■URL: http://www.e-logit.com/seminar/
elogitclub.php
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