ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年3号
物流指標を読む
第15回 トラック運送事業者 大膨張時代の終焉

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む MARCH 2010  66 トラック運送事業者 大膨張時代の終焉 第15 回 ●トラック運送事業者数が40年ぶりの減少に ●背景に貨物量減、燃油高、低運賃の三重苦 ●向こう数年は減少傾向が続く可能性大 さとう のぶひろ 1964 年生まれ。
早稲田大学大学院修了。
89年に日通 総合研究所入社。
現在、経済研究部研 究主査。
「経済と貨物輸送量の見通し」、 「日通総研短観」などを担当。
貨物輸 送の将来展望に関する著書、講演多数。
〇八年度は二三〇者の純減  国土交通省資料によると、二〇〇九年三月三一 日現在のトラック運送事業者数は六万二八九二者 で、前年度(六万三一二二者)のそれを下回った。
新規参入事業者数が前年度(二二一八者)を三五 八者下回る一八六〇者にとどまったのに対し、退 出事業者数は二〇九〇者と過去最高であった前年 度(一六六三者)を四二七者上回ったため、差し 引きで二三〇者の純減となった。
事業者数の減少 は、一九六八年度以来実に四〇年ぶりのことであ る。
 業種別にみると、一般が二一五者減(五万七六 七二者→五万七四五七者)、特定が五〇者減(七六 一者→七一一者)とそれぞれ減少する一方で、特 積が八者増(二九二者→三〇〇者)、霊柩が二七 者増(四三九七者→四四二四者)と小幅ながら増 加になっている。
 ご承知の通り、一九九〇年十二月の貨物自動車 運送事業法の施行に伴い、需給調整規制が廃止さ れ、免許制から許可制へと移行するなど、参入規 制が緩和された結果、事業者数は大幅な増加が続 いていた。
 しかし、〇八年九月のリーマン・ショックを契 機とした世界規模の金融危機の拡大を背景に、わ が国経済が深刻な不況へと突入したことなどを受 けて、〇八年一〇月より、退出事業者数が新規参 入事業者数を上回るようになり、その結果、年度 全体でも事業者数は減少に転じた。
 退出事業者数が急増した主な理由を列挙すると、 第一に、未曾有の大不況下にあって、貨物量が大 きく落ち込んだことが挙げられる。
たとえば、〇 八年度の営業用トラック輸送量は、トン数ベース で前年度比四・一%減、トンキロベースで同二・ 四%減と大幅な減少になった。
第二に、燃料価格 の高騰を受けて、燃料油脂費が大幅に増加したこ とが挙げられる。
石油情報センターの統計によると、 〇八年度平均の軽油の給油所店頭現金価格(軽油 引取税、消費税込み)は、前年度比で六・八%増 となった。
そして第三に、デフレ経済下で運賃水 準が抑制されていたことが挙げられる。
日本銀行 の企業向けサービス価格指数をみると、〇八年度 平均の道路貨物輸送については、前年度比で僅か 〇・四%の上昇にとどまっている。
 そうしたまさに三重苦のなかで、トラック運送事 業者の経営状況がいっそう悪化したであろうこと は想像に難くない。
全日本トラック協会「経営分 析報告書─平成一九年度決算版─」によると、ト ラック運送事業者の売上高経常利益率(全体)は、 〇七年度においてすでに〇・一%まで落ち込んで いたが、〇八年度はおそらくマイナスに転じたので はないか。
なお、東京商工リサーチ調べでは、〇 八年のトラック運送事業者の倒産件数は前年比一 四三件増の四九二件となっているが、倒産理由の 六割弱が販売不振によるものであった。
 トラック運送事業者数は、今後数年間は減少し 続けるとみてよいのではないか。
貨物量がプラス に転じるのは当面先のことになるであろうし、デ フレ経済下では運賃の上昇も期待できない。
さら には、軽油価格についても世界的な需要拡大等を 背景に、今後上昇していく可能性が高いため、ト ラック運送事業者の経営状況はさらに悪化すると 国土交通省「貨物自動車運送事業者数の推移」 67  MARCH 2010 近い新規参入があった。
 なかには、トラックが好きだから、儲けを度外 視しても会社を経営したいという事業者がいない こともないであろうが、おそらくレアケースでは ないか。
 この難問に対し、ど真ん中の回答は導き出せな いまでも、考える上でのヒントらしきものはある。
全日本トラック協会が〇七年に実施した「トラッ ク運送事業の創業に関する調査」の結果がそれだ。
これは、全国の一般貨物運送事業者三八一社を対 象としたアンケート調査結果である。
以下に、い くつかポイントを抜き出してみよう。
 同調査の質問項目のなかに、「トラック運送事業 を開始した理由」というものがある。
その結果を みると、「経営者が独立、起業して設立した」が 五二・五%と過半数を占める一方で、「これまで荷 主企業として自家用トラック運送を行っていたが、 運送を事業化した」(一九・二%)、「これまで荷 主企業としてトラック運送事業者に運送委託をし ていたが、自社の事業としてトラック運送事業に 取り組みたかった」(一〇・一%)といった、荷主 企業の兼業や機能分社として設立したケースも約 三割ある。
そのほかでは、「もともとが物流会社 で、その子会社・関連会社として設立した」が十 一・一%となっている。
 また、「独立・起業したきっかけ」については、 前に勤務していた会社とは関係なく、創業者自身 の事業計画として創業したケースが四六・五%と 最も多い。
理由は不明であるが、「いつかトラック 運送事業をやりたい」という計画(夢か?)を実 行に移した人が意外に多いことが分かる。
ちなみ にそのほかの主な回答をみると、「会社の処遇・給 与が良くない」(一八・六%)、「会社が廃業・倒 産した」(九・三%)などとなっている。
 最も興味深いのは、創業前・創業後の事業収益 に関する認識についての質問である。
その結果を みると、トラック運送事業を開始するまでは、「儲 かる業界である」(七・五%)、「やりようによって 儲かる」(六〇・〇%)と認識していた創業者の割 合が、合計で約三分の二に及ぶ。
さらに、「トント ンの業界である」(二五・〇%)を加えると、実 に九二・五%の創業者が事業収益性は悪くないと 認識していたことが分かる。
 一方、実際に創業した後の認識についてみると、 「儲かる業界である」(一・二%)、「やりように よって儲かる」(三二・一%)と、儲けが期待でき る事業者は約三分の一にとどまり、「儲からない」 (三三・三%)とほぼ同じ割合になっている。
 この結果をベースに、あくまでも独善的に推測 してみると、新規参入事例においては、荷主企業 の兼業や機能分社のために物流子会社化したケー スや倉庫事業者等が兼業としてトラック運送事業 を開始したケースなども依然として多かろう。
し かし、トラック運送事業が儲かると勘違いして参 入した者もかなりの数にのぼるのではないか。
表 現が適当ではないかもしれないが、たとえばワン マン社長の下でトラック運送事業に携わってきた人 が、「あの社長でも儲かるのであれば、自分が経営 者ならばもっと儲かるのではないか」と勘違いし て飛び込んできた、などというケースも想定され る。
そして、彼らの多くは、実際には儲からない という厳しい現実に直面しているはずである。
予測されるからだ。
新規参入者の胸算用  ところで、以前、業界外の方々から、「トラック 運送事業者数はなぜ増加しているのか」あるいは 「なぜ儲からない業界に新規参入してくる者がい るのか」といった質問を受けることがしばしばあ ったが、正直、この質問に対してはいつも返答に 窮していた。
表向きには、「参入規制が緩和された から」ということになるのだが、いくら参入規制 が緩和されたところで、メリットが無ければ(言 い換えれば、儲からなければ)、事業に参入する 者はいるはずがないからだ。
〇八年度においても、 総数は減少したとはいえ、依然として二〇〇〇者 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 ’90 ’91 ’92 ’93 ’94 ’95 ’96 ’97 ’98 ’99 ’00 ’01 ’02 ’03 ’04 ’05 ’06 ’07 ’08 3,000 2,500 2,000 1,500 500 0 トラック運送事業者数と新規・退出事業者数の推移 1,000 新規事業者数 (右軸) 退出事業者 (右軸) (者) (者) トラック運送事業者数 (左軸) (年度)

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