ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年4号
特集
第4部 “荷主ミックス”で利益を生み出す

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2010  22 は期待されたほど定着していない。
同業種の荷主 同士で、かつ配送エリアが重なっていても、納品 先の受け入れ時間帯まで重複している場合には、 別に車両を仕立てなければならなくなり、積載率 が思うように上がらない。
施設や車両の使用時間 帯が重なれば設備稼働率も上がらない。
 その点で食品は一日のうち朝昼夜に消費シーン が分散されていて、同じ食品系荷主でも多様な業 態が混在しているため設備を有効活用しやすい。
ある低温物流会社は同じ物流センターに外食チェ ーンと食品スーパーを同居させて、車両の回転率 を高めている。
レストランとスーパーでは納品時 間帯が違うので同じ車両を使用できる。
 五割だった積載率を八割に上げても収入は一・ 六倍になるだけだが、車両回転数を上げることが できれば収入は倍掛けで増えていく。
つまり共配 事業は車両積載率よりもむしろ一日当たり車両を 何回転させることができるか、つまり車両回転数 に大きく左右されることがハッキリしてきた。
 車両回転率を向上できるのであれば、必ずしも 同業種同士である必要はない。
異業種同士の共配 では取り扱い貨物の特化によるサービス品質の向 上という利点はなくなるが、上手く荷主を組み合 わせることで配送コストの大幅な削減が期待できる。
 有力3PLのあるセンターでは、食品スーパー と機械メーカー、そして日用雑貨品卸を同じセン ターに入居させて異業種共配を実施している。
車 両を三回転以上させて配送費で利益を得ている。
これも“荷主ミックス”の工夫だ。
こうした3P L主導型の配送効率化は、中堅以下の物流会社に とって一つの方向性を示している。
 ただし、ターゲットは絞る必要がある。
付加価 事業性のカギは積載率より車両回転率  国内物流市場の規模は確実に縮小している。
日 本の名目GDPや荷主企業の売上高に占める支払 い物流費の比率などから、当社では国内運送市場 の規模を二〇〇七年度で約二五兆円と弾いている。
これがリーマンショックに襲われた〇八年度は約 二四兆円に縮小した。
〇九年度もさらに七〇〇〇 億円程度の縮小を見込んでいる。
 一方で、3PL事業の規模は本誌の市場調査(直 近は〇九年九月号に掲載)の通り、拡大を続けて いる。
単純なトラック輸送や保管だけの倉庫業な どの取り分はそれだけ減っていることになる。
と りわけ貸切輸送に比べて固定費負担の大きな路線 会社(特積み)の売上減少は今や壊滅的なレベル に達していると想像される。
 これに対応して全国規模の大手路線会社は業界 再編に動いている。
セイノーホールディングスは昨 年四月、西武ホールディングス傘下の中堅路線会 社、西武運輸を買収した。
同様に福山通運は昨年 一〇月に王子運送を子会社化している。
大手が中 堅を吸収するかたちの路線業界の再編は今後はさ らに加速するだろう。
 一方、地方の路線会社は共同配送シフトを強め ている。
業種や荷物を絞って条件に合う荷主にロ ーラー作戦をかけるかたちで、荷主数社レベルの 同業種共配をしかけている。
同業種共配は納品先 が重なるケースが多いため、積載率が向上し、ま た荷物を特化することで取り扱い品質も向上する という利点がある。
 しかし、現状では同業種共配が事業として広く 成立しているのは食品ぐらいだ。
他の商材の共配 “荷主ミックス”で利益を生み出す  今後景気が回復しても国内物流市場が元の規模に 戻ることはないだろう。
とりわけ地方は苦しくなる。
生き残るためには、競争のないニッチ市場を開拓する、 あるいは荷主から見えないところで利益を生み出す仕 組みを構築しなければならない。
物流業も頭で儲け る時代になっている。
中根治 ロジスティクス・サポート&パートナーズ専務 なかね・おさむ 1969年生まれ。
麻布大学卒。
外資系 製薬会社、中古書籍販売フランチャイズ チェーン、物流コンサルティング会社取 締役を経て、2005 年1 月、ロジステ ィクス・サポート&パートナーズ設立と 同時に同社の専務取締役に就任。
現在 に至る。
実務経験を活かした現場改善 や物流企業向け経営指導に豊富な実績 を持つ。
23  APRIL 2010 値を生むプロセスが、完成品の製造工程からサプ ライチェーンの川上と川下にシフトする構造変化 を﹁スマイルカーブ現象﹂と呼ぶ。
主にハイテク 産業の収益構造の変化を説明するのに用いられて いる言葉だが、同じことが物流業にも当てはまる。
 サプライチェーンの入口に位置する素材産業や 出口となる小売業においては、運賃単価や物流サ ービスに対するニーズはそれほど下がっていない。
しかし、サプライチェーンの中間で発生する在庫 保管や横持ち輸送などは、単価も下落しているし、 仕事自体が消滅する傾向にある。
 実際、国内の荷動きは〇九年中に底を打ったと 言われているが、倉庫業に関しては今年に入って も、回復の兆しが全く見られない。
できるだけ在 庫は持たないという考え方が荷主に定着し、単純 な保管に対するニーズは弱まっている。
構造的な 変化であるため、今後も保管ニーズが増加に転じ ることはないだろう。
物流業にもスマイルカーブ現象  物流会社も今後は営業ターゲットを、川上と川 下にシフトさせていくことになる。
ただし川上と 川下では、物流企業に求められる役割が大きく異 なっている。
3PLを評価する判断基準も全く違う。
 サプライチェーンの川上に位置するメーカーは、 物流アセットの所有を3PLパートナーに求めて いる。
必要な施設や車両設備を所有していること がパートナーの条件だ。
倉庫は賃貸、輸送もほと んど傭車に頼っているというノンアセット型では 相手にされない。
中間マージンを抜かれるだけで 付加価値がないと評価されてしまう。
 一方、川下の小売業は3PLに対し、商品の取 り扱いや取引条件として必要な物流サービスレベ ルを十分に理解していることを求める。
その業界 に特有の物流条件や納品ルールに対応できるオペ レーションが必要だ。
新たにパートナーを選択す る場合でも、同じ業種・業態の実績がない3PL は候補にすら挙げてもらえない。
 同じ3PLでも川上型と川下型ではビジネスモ デルが全く違う。
一つの物流会社が二つのニーズ を同時に満たそうとするのは現実的ではない。
3 PL事業の拡大を図る物流会社は、二つのうちど ちらのタイプを選ぶのか判断する必要がある。
 一般に中堅以上の路線会社やアセット型のメー カー系物流子会社は強みを活かせる川上型を選ぶ。
一方、中小の物流会社や、メーカー系物流子会社 でもノンアセット型の場合は、初期投資のいらな い川下型を選ぶほかない。
そのため川下型は競争 が激しく、料金の叩き合いになりがちだ。
 それでも、ハマキョウレックスやセンコーなどの 有力3PLは川下型で安定した利益を生み出して いる。
カギを握るのは情報だ。
川下物流は川上に 比べ波動が大きく、制約条件もたくさんある。
そ のオペレーションを有力3PLは情報力を駆使し て効率化している。
ノウハウを持たない物流会社 が川下の3PLに手を出しても、人件費負担で採 算割れして長続きはしないだろう。
 小規模荷主をたくさん集めるというアプローチ で汎用型センターを成功させている事例もある。
当初は既存荷主の物量減少による空きスペースを 埋める目的で、五坪〜一〇坪程度の荷主をセンタ ーに入居させた。
入居に当たってはその3PLの WMSを使い、作業も標準化されたオペレーショ ンで処理することを条件にした。
これが当たり、 小規模荷主専用センターを設置するほど拡大して いる。
通常なら物流会社に相手にされないレベル の小規模荷主は他に競合相手がいないため、料金 を叩かれることもなく採算性がいい。
 物流は相場商売の側面が強い。
特徴のないサー ビスは価格勝負になってしまう。
それを避けるには、 同社のように競争のないニッチ市場を開拓するか、 あるいは荷主から見えないところで利益を出す仕 組みを構築するしかない。
物流業はこれからます ます、頭で勝負する市場になっていく。
製造業のスマイルカーブ現象が物流に波及 現地工場 調達物流 拠 点 消費者 販売物流 顧客 (店舗購買) 顧客(直送) 品質要求高まり、 原価はむしろ上昇 大ロット化 頻度減 在庫圧縮 拠点集約 積載向上 頻度低下 販売競争激化 直送による経費上昇 従価契約の場合、売価下落による実質物流費が低下 物流企業の 経営力強化は必須課題 どちらへ向かうか? 「顧客にない資産や技術、ノウハウ を活かして、求める物流機能を提 供する」ことを目指す。
倉庫・車両 などのアセット、特有のノウハウに よる荷役、配送など機能重視の物 流体制を提供 メーカー志向3PL 「顧客が現在実施している作業を 物流企業がなりかわって提供す る」ことを目指す。
付帯作業の充実 や後方支援、 個人宅当日配送など サービス重視の物流体制を提供 小売志向3PL 特 集 トラック運賃 2010

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