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スティクス
物流子会社統合を機に拠点整備を加速
外販に対応した新情報システムも稼働
住宅住友化学メーカーのの東西積の水物流子会社ハウスは業が界合併で初しめて、て2007年4新築
月施に工現発足場しで発た。 そ生するれ廃棄以降、大型物 センタのゼロエミッションをーを相次い達で
メーカー系物流子会社の半世紀
住友化学は二〇〇七年四月に東西の物流子
会社「住化物流東日本」と「住化物流西日
本」を統合して「住化ロジスティクス」を設
立した。 その誕生までの軌跡は、日本のメー
カー系物流子会社の歴史を示す一つの雛形と
もいえる。
住友化学発祥の地、愛媛県新居浜の工場
(愛媛工場)で構内作業や輸送業務を担当す
る子会社として発足した「日進運輸」が住化
物流西日本の前身だ。 協力運送会社との共同
出資で一九五〇年に設立した。
これに前後して、住友化学は大阪と東京の
中継地で輸送を担っていた協力会社を子会社
化し、大阪に「双葉運輸」、東京に「正興運
輸倉庫」を設立している。 戦後復興期に安定
した輸送能力を確保するには、メーカーが自
らアセットを所有する必要があったのだ。
五〇年代後半に住友化学は石油化学事業
へ進出し、六五年には千葉県市原地区の石油
化学コンビナートに千葉工場が稼働する。 こ
れに先立ち、工場の物流業務全般を担当する
四番目の物流子会社として「泉葉運輸」を設
立した。
この四つの子会社で機能を分担する体制が
長く続いた後、九八年に最初の子会社統合が
行われた。 東西の中継地の業務を工場地区の
子会社へ集約し、それぞれ住化物流西日本と
住化物流東日本に改称した。
さらに次のステップで住友化学は、物流管
理組織の抜本的な再編に踏み切る。 〇三年四
月、住友化学の本社や工場の物流管理部門と
東西の子会社の企画管理部門を統合して「住
化物流」を設立。 同社を住友化学の物流統括
会社として位置づけた。 この時、東西の子会
社は各エリアで物流業務を担当する現業会社
として存続させた。
この時期に住友化学は三井化学との経営統
合の協議を開始している。 将来の統合を先取
りするかたちで、物流管理体制の一本化と子
会社の機能再編を実施した。 三井化学側でも
同様に一〇〇%子会社の三井化学物流を設立。
経営統合が実現した暁には、住化物流と三井
化学物流を統合させる予定だった。
だが、住友化学と三井化学の経営統合は結
局、物別れに終わる。 これに伴い住友化学は
再び物流管理組織の見直しを余儀なくされる。
〇四年六月に住化物流を改めて本社に吸収合
併した。 このときに本社物流部門の管理対象
領域を再編前よりも拡大した。 工場の物流管
理担当リーダーを本社の購買物流室(現物流
友化学の東西の物流子会社が合併して2007年4
月に発足した。 それ以降、大型センターを相次いで
立ち上げ拠点集約を進める一方、荷主との情報共有
や入出荷・配送の一元管理を実現する新たな情報シ
ステムを開発し、短期間で複数拠点に展開するなど、
事業基盤の強化を加速させている。
組織改革
住化ロジスティクス
物流子会社統合を機に拠点整備を加速
外販に対応した新情報システムも稼働
住化ロジスティクスの小林晃
社長
45 MAY 2010
部)と兼務にし、工場で製品の充填を終えた
後の?構外物流?を本社の物流部門が一元管
理する体制にした。 従来は製品をユーザーに
届けるまでを工場(事業部)ごとに管理して
いたため、中継地が別々に設けられるなど効
率が悪かった。 管理の一元化で拠点や輸送の
集約が可能になった。
この一元管理体制のもとで、東西の子会社
が中心となって中継地の集約や輸送体系の見
直しなど事業部門の枠を超えた物流効率化を
進めてきた。 こうした取り組みが住化物流の
解散からおよそ三年後の住化ロジスティクス
発足へとつながっていく。
矢継ぎ早に拠点整備を実施
住化ロジスティクスの小林晃社長は「フッ
トワークが軽く物流へ投資する際の経営判断
を親会社よりも素早くできる点が子会社の強
み。 統合によって規模が大きくなりその強み
を活かしやすくなった」と強調する。
実際、同社は発足以降、矢継ぎ早に大規模
な拠点整備を実施している。 まず〇七年六月
に千葉県袖ヶ浦市の椎の森工業団地内に大型
拠点「椎の森物流センター」をオープンした。
投資ファンドのラサールインベストメントマネ
ージメントが千葉県から用地を取得し、住化
ロジスティクス専用施設を建設した。
敷地面積三万二五〇〇平方メートル。 三
階建て延べ床面積五万一〇〇〇平方メートル
の倉庫で、主に住友化学の千葉工場の合成樹
脂製品を保管し、国内および海外向けに出荷
を行っている。 保管能力は四万五〇〇〇トン
で合成樹脂の倉庫としては最大級の規模だ。
千葉工場は、かつては中継地に製品の在庫
を持ってユーザーへ配送していたが、近年で
は在庫を撤収し、工場から直送する形に変え
ている。 大口ユーザー向けだけでなく小口オ
ーダーも二〇トントレーラーに積み合わせて出
荷し、中継地で方面別に積み替えて配送する
方法をとっている。 これによって中継地の在
庫の偏在を解消した。
その一方、在庫の集約に伴って工場側では
保管能力を増強する必要に迫られた。 樹脂製
品は銘柄ごとにさまざまなグレードがありアイ
テム数が多い。 アイテム数の増加とともに工
場の保管スペースだけでは足りなくなり、外
部の営業倉庫を借りて不足を補ってきた。
その数が次第に三十カ所以上にも膨らみ、
工場周辺だけでなく九十九里浜あたりの遠方
にまで保管場所が分散するようになった。 出
荷の際には品揃えのため複数の倉庫へ集荷に
回らなければならない。 倉庫間の横持ちが発
生し、輸送効率は著しく悪化した。
これを改善するために設置したのが椎の森
物流センターだ。 同センターに分散していた
在庫の集約を行い、外部倉庫の数を半分に
減らした。 倉庫間の横持ち輸送が大幅に減り、
コスト削減に大きな成果をあげた。
椎の森物流センターには一日当たり入荷車
両が約五〇台、出荷は最大で一二〇台のトラ
ックが積み降ろしに来る。 通常これだけの数
量の入出荷がある倉庫では、荷役の順番を
待つ車両の長時間滞留がしばしば問題になる。
同センターの開設に当たっての課題の一つだ
った。
保管スペースを確保するのに、建物は多層
階にせざるを得ない。 しかし多層階倉庫では、
エレベーターなどの縦持ち搬送の能力によっ
て出荷能力が制約を受けてしまう。
この弱点を克服するため、トラックが上層
階まで自走できるランプウェーを設けた。 ト
ラックを各階の荷捌きエリアまで進入させて
荷台の両側からフォークリフトで荷役を行う。
一つのフロアで同時に五台分の積み降ろし作
フォークマンがハンディターミナ
ルで完了を入力
トラックが各階の荷捌きスペース
まで侵入して積み降ろし作業を
行う
各階のプラズマディスプレイに車
両の状況を表示
ランプウェーを併設した椎の森
物流センター
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業ができる。
車両誘導システムで待ち時間ゼロ
出荷作業に合わせてタイミングよく車両を
誘導するための情報システムも構築した。 事
前に車番と出荷指示データを紐付けておき、
ドライバーの携帯電話にサーバーから音声で
指示を伝え構内を誘導する。 JALインフォ
テック製の「音声対応システム」をカスタマイ
ズしたものだ。
まず荷主からの出荷指示をもとにバーコー
ド入りの輸送伝票を作成して、事前に運送会
社に送る。 運送会社では、センターへ積み込
みに行くドライバーに伝票を渡す際に、伝票
のバーコードをスキャンして車番を入力する。
これにより、車両と紐付けた出荷指示データ
が音声対応システムのサーバーに登録される。
センターに到着したドライバーは、事務所
へは寄らず、運転席から手持ちの携帯電話で
サーバーを呼び出し、車番を入力して積み込
みの受け付けを済ませる。 順番が来ると、サ
ーバーがドライバーの携帯電話をコールして入
場するフロアを音声で指示する。
センターの各階には大型プラズマディスプレ
イが設置してある。 トラックの車番・出荷先、
「予約」、「待機」などの状況が表示される。 フ
ォークリフトの作業者は、構内に何台の車両
が待機しているか一目でわかる。
フォークマンは一台分の積み込みが終わる
たびにハンディターミナルで「完了」を入力
する。 これを合図に次の積
み込み順のトラックの表示が
「予約」から「待機」に変
わる。 掲示板の表示を見て、
フォークマンは該当する車番
の出荷準備を開始する。
これと同じタイミングで、
順番待ちしているドライバ
ーの携帯電話にサーバーか
ら入場の指示が伝えられる。
ドライバーが携帯電話で「了
解」の合図を送るとディスプ
レイの表示が「待機」から
「入場」へ変わり、各フロア
で入場してきた車両の誘導
を行う。
センターでは積み込みの待
ち時間を三〇分以内に抑え
ることを目標に、同システ
ムを導入した。 実際には出
荷の多い時間帯でも待機場
に二、三台並ぶ程度で、待
ち時間はほとんどゼロに近い
という。 倉庫の集約による
横持ち輸送の解消とあわせ
車両の回転数アップに大き
な効果があった。
椎の森物流センターに続
いて今年二月には愛媛の新
居浜地区に「愛媛ロジステ
在庫・履歴
在庫照会
入出荷実績管理
輸送情報設定(物流テーブル)
システム全体構成
関係会社荷主EDIグループ外貨会社荷主EDIグループ(各社システム利用) 荷主
外部接続荷主
・入荷予定登録
・出荷予定登録
・在庫照会
入荷指示
入荷実績
出荷指示
出荷実績
入荷指示
入荷実績
配送指示
配送実績
出荷指示
出荷実績
入荷指示
入荷実績
出荷指示
出荷実績
配送指示
配送実績
EDIサーバー
EXPLANNER/Lg
在庫管理対象配送(在庫管理対象外)
在庫情報
在庫情報
在庫情報
在庫情報
入荷・入庫
マスタ
各種マスタ
棚卸
棚卸
入荷報告
入荷確定
出庫・出荷
出荷予定登録
引当
ピッキング
出荷確定
伝票出力
出荷
出荷予定登録
配車
配送確定
伝票出力
入荷実績
出荷実績
在庫情報
物流費計算システム
データ蓄積・分析ツール
インターネット回線経由で直接操作
A社、A社関係会社(SAP R/3利用) A社関係会社(各社システム利用) B 社C社D社E 社FAX/TEL
庫内
庫内管理
庫内移動
入荷予定登録
47 MAY 2010
EXPLANNER/Lgに取り込む。 荷主
ごとにシステムがまちまちでも同じ仕組みで
データを処理できる。
外部委託の倉庫では配送業務だけを受託し
ているケースもある。 開発のベースとなった
パッケージソフトは倉庫管理用のシステムで、
そうしたケースは管理対象に含まれていなか
った。 そこで配送指示についてもシステムで
処理できるよう機能を追加した。
また業務内容によっては標準的なデータ項
目ではカバーできない項目も出てくる。 この
ためEDIサーバーで変換したデータをEX
PLANNER/Lgへ取り込む際に、必要
な項目を付加するためのテーブルを新たに設
けた。 あらかじめ設定した条件をもとに出荷
日を算出したり、品目によって出荷や輸送に
伴う付帯業務についてのメッセージを伝票に
記入することができる。
入荷・出荷・配送実績や在庫情報は更新時
にEDIでリアルタイムに荷主に送り、双方
で情報を共有する。 出荷業務は「予定」、「引
き当て」、「ピッキング」、「出荷確定」という
メッシュでステータスを管理し、進捗状況を把
握・共有できる。 オーダーの変更がある場合、
ステータスが「予定」の段階なら荷主側でE
DI画面から修正入力を行うこともできる。
このシステムでは、EDIを導入していな
い荷主ともインターネットを経由して情報の
共有が可能だ。 荷主に入荷・出荷予定データ
をweb端末で入力してもらい、荷主側のw
eb画面で入出荷実績や在庫情報を見ること
ができる。
またサーバーに蓄積された入荷・出荷・配
送実績データをもとに物流費の計算やデータ
の分析を行う機能も持たせた。 データ分析ツ
ールは同社の事業所で過去の入出荷履歴の参
照などに活用する。
新システムを複数拠点にスピード展開
この新物流システムを昨年春に関東地区の
自営の三拠点と外部委託の拠点五カ所へ導入
した後、さらに今年に入って稼働した愛媛と
市川の倉庫でも同じシステムを運用している。
短期間に複数の拠点に展開することで、業務
の標準化をスピーディに実現した。 荷主の入
出荷オーダー件数の七割がEDIやwebに
よりデータ化され、業務処理の効率化も進ん
でいる。
新物流システムはマスター登録するだけで、
ほかの拠点へ容易に運用を拡大できるメリッ
トがある。 既存の荷主に導入を働きかけたり、
さらに新規顧客開拓にも活用していく考えだ。
今後はセキュリティを確保したうえで実績
データ蓄積分析ツールを荷主に開放すること
も検討している。 鴨田公博システム開発室担
当室長は「蓄積されたデータを戦略的に使い
たいというニーズがいずれ出てくるはず。 課
題はいろいろあるが実現をめざしたい」と話
している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
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