ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年6号
物流不動産市場レポート
第28回 首都圏・近畿圏

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート JUNE 2010  84 る。
今後しばらくは大型施設の新規供給は限 定的であり、大型新築物件に対する需要が底 堅いことを考えると、大型マーケットの需給は 改善していくことが想定される。
 全般的な荷動きは回復基調にあるものの、企 業サイドの動きは依然鈍く、物流施設に対す るニーズもコスト削減を前提とした拠点の統廃 合の動きが中心となっている。
ただ、一方で ネット通販企業等の一部の業種では業績拡大 による物流拠点の新規開設等の動きがみられ ており、市場の拡大により今後物流施設市場 へ影響を与える可能性も考えられる。
 物流施設の投資市場をみると、二〇一〇年 三月に三菱商事の子会社であるダイヤモンド・ リアルティ・マネジメントが物流施設に特化し た不動産私募ファンドを組成した。
また、大 和ハウス工業が、来年前半を目標に物流施設 に特化した不動産投資信託(REIT)への 上場を目指す方針を発表する等の新たな動き がみられている。
さらに、リーマンショック以 降凍結していた開発計画が動き出すなど、マ ーケットの活性化につながる明るい材料もみ られている。
首都圏   需要の拡大が一服  今期(一〇年一月〜三月)の大型マルチテナ ント型物流施設の首都圏の平均空室率は、前 期(〇九年一〇〜十二月期)一・一ポイント 上昇し一五・三%となった(図1)。
今期は、 新規供給された一棟がテナント未定のまま竣 工し、既存物件からの大規模なテナント流出 もみられたが、前期同様に新築物件の空室消 化が順調に進んだことで小幅な上昇にとどま った。
前期は平均空室率が大きく改善し、大 型マーケットにおける需給改善の兆しが見られ たが、今期は需要の拡大に一服感がみられた。
 テナントの動きとしては、ネット通販等の一 部の企業を除いては企業の経営環境は厳しく 新規進出等の動きは少ないが、コスト削減を 目的とした統廃合による高スペック物件への 移転の動きが見られており、これにより大型 新築物件の空室消化が進んでいると考えられ 第28回 首都圏・近畿圏 コスト削減を目的とした拠点統廃合が活発化 一部の業種では新規開発へのニーズも増加 シービー・リチャードエリス総合研究所 鈴木公二 シニアコンサルタント 図1 首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 25% 20% 15% 10% 5% 0% 《空室率算出基準(調査棟数:50 棟)》 既存物件 2009 年3 月以前に竣工した物流施設 地域 千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、 延床面積 10,000 坪以上、 竣工 既竣工物件、 空室確認方法 ヒアリングによる、 建物形態原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企 画・設計された建物であること 10.1 9.4 9.8 5.5 4.9 10.4 5.0 4.6 3.1 5.6 9.5 9.6 8.1 4.3 4.2 5.1 8.4 8.9 7.7 4.0 6.8 6.8 16.4 18.0 14.5 15.0 13.6 10.3 12.0 16.3 19.9 14.2 15.3 8.3 6.8 8.8 4.9 5.6 5.3 4.5 5.1 3.3 3.1 9.1 8.2 8.6 7.5 5.8 3.1 11.7 ※今期首都圏で調査対象となった50棟については、上記算出基準により抽出 したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したもの ではない。
出所:シービー・リチャードエリス総合研究所 平均空室率 既存物件空室率    85  JUNE 2010  既存物件の空室率については、一・五ポイ ント上昇し八・三%となった。
全般的には既存 物件におけるテナントの動きは限定的であった ものの、賃貸の既存物件から自社の新築物件 に移転する大型テナントの動きにより大規模な 空室がみられたことが影響して三期ぶりに上昇 を示した。
 大型マーケット規模を示す稼働床面積(指 数)の推移をみると、大規模なテナント流出が 見られたものの、新築物件を中心に新規需要 が創出されたことで引き続き、僅かではあるが プラスでの推移となっており、今期もマーケッ トの拡大がみられている(図2)。
一方で、大 型マーケットの拡大は中小規模クラスからの集 約移転による需要が中心であることを考える と、今後中型クラス以下での二次 空室による需給の緩和懸念もある。
 賃料水準については、大型物件 で空室消化は順調に進んでいるも のの、コスト削減による移転が中 心であるため、テナントサイドが 求める賃料水準は依然厳しく、募 集、成約とも弱含みでの推移とな っている。
近畿圏 空室率が前期比二・一 ポイント改善  今期の関西圏の大型マルチテ ナント型物流施設の平均空室率 は、前期比二・一ポイント改善し、 一六・三%となっている(図3)。
今期も新規供給がみられず、一部 の施設で空室消化が進んだことで、小幅なが ら改善を示している。
 テナントサイドの動向としては、景気回復ま で様子見というスタンスが多く、設備投資意 欲の向上はみられないため全般的に動きは鈍 く、需要が顕在化しにくい局面が続いている。
 既存物件の空室率については、二・三ポイ ント上昇し一六・三%となっている。
今期は 既存物件では目立ったテナント流出がみられ なかったが、空室を抱えた新築物件が竣工後 一年を経過したことで既存物件となり、その 影響もあり僅かではあるが上昇する結果とな っている。
 需給動向を判断する材料として、稼働床面 積(指数)の推移をみると、今期は僅かな上 昇がみられたが、〇九年三月以降は概ね横ば いでの推移となっており、マーケットの拡大ス ピードは鈍化している(図4)。
図4 近畿圏の大型物流施設の稼働床面積(指数) 図2 首都圏の大型物流施設の稼働床面積(指数) 図3 近畿圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率 350 300 250 200 150 100 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% (2004/03=100) 350 300 250 200 150 100 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 2006 2007 2008 2009 2010 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 12 03 2006 2007 2008 2009 2010 《空室率算出基準(調査棟数:12 棟)》 既存物件 2009 年3 月以前に竣工した物流施設 地域 大阪府・兵庫県、 延床面積 10,000 坪以上、 竣工 既竣工物件、 空室確認方法 ヒアリングによる、  建物形態原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企 画・設計された建物であること 6.4 16.6 0.0 1.0 0.0 15.4 9.4 3.0 6.8 10.4 17.2 25.5 26.1 30.6 25.7 21.4 16.3 16.5 13.0 14.0 18.3 21.7 17.8 13.1 14.1 17.6 18.4 16.3 16.3 6.4 ※各期における稼働床面積の合計を2004 年3 月期を100とし指数化 ※各期における稼働床面積の合計を2006 年9 月期を100とし指数化 ※今期近畿圏で調査対象となった12 棟については、上記算出基準により抽 出したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したも のではない。
平均空室率 既存物件空室率 09 出所:すべてシービー・リチャードエリス総合研究所 ( 2006/09=100)  ネット通販ビジネス市場が拡大してい る。
先日、日経新聞の一面記事に楽天が 全国五カ所で大型物流拠点を新設すると の記事が載っていた。
注文があってから、 その日のうちに商品を届ける「即日配送」 を行える体制を構築するという。
 ライバルのアマゾンは、書籍を中心と した「お急ぎ便」等、既に即日配送シス テムを整備している。
どうやら、即日配 送という究極のリードタイムがネット通 販の競争条件の一つになろうとしている ようだ。
即日配送が ネット通販の競争条件に

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