ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年7号
特集
第3部 ベストプラクティスの現場に学ぶ【青山商事】ICタグを活用して絶対単品管理を革新

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

ハンガー物流を自動化  紳士服最大手の青山商事は今年二月、約一〇〇 億円を投じた自前の物流センター「千葉センター」 を千葉県千葉市に稼働させた。
同社ではスーツの型 くずれを防ぐため、工場出荷から店頭に陳列する までのプロセスを、商品をハンガーにかけた状態で ハンドリングしている。
そのために千葉センターの 延べ床約八〇〇〇坪の庫内には、天井から吊り下 げられたレールが全長約三一キロメートルにわたっ て張り巡らされている。
レール上のホイールにハン ガーを吊して、下りは傾斜四度を自重で滑り、上 りはモーターで搬送させている。
 そのホイール部分にHF帯(一三・五六Mhz) のICチップを搭載した(次頁写真)。
国内に先行 事例がなかったため、青山商事がドイツから輸入 してカスタマイズしたもので、単価は約六〇〇円。
これを千葉センターに十二万八〇〇〇個投入して、 庫内作業を自動化した。
 センターに入荷したハンガー商品をホイールにか けた時点で、商品のバーコード情報とICタグを紐 付けする。
それ以降の一連のプロセスは、ほぼ無 人で処理される。
二〇〇〇着のスーツをピッキング して店別に仕分けし、そのまま店頭に陳列できる 順序に並び替えて出荷するまで、二〜三時間とい うスピードだ。
 各店舗のその日の販売実績は毎日夜一〇時に本 部で集計され、翌日の納品指示情報が深夜にセン ターに届く。
これを受けてセンターでは朝六時まで に出荷準備を済ませる。
朝八時〜九時、店員が出 勤する前の無人の店舗に、ドライバーがバックヤー ド用のカギを開けて納品する。
納品時のセキュリテ ィ確保のため、ドライバー用のカギで店舗のバック ヤードエリアの扉を開けると、自動的に照明が点灯 し、同時にカメラが起動して納品時の映像を記録 する仕組みをセコムと共同開発した。
 従来、同社では店舗への納品が週に二回だった。
各店舗には三〇坪ほどのバックヤードを設けて安全 在庫を置いていた。
新センターの稼働を機に毎日納 品に切り替えることで、バックヤードの在庫を全廃 し、店舗の省スペース化を図った。
 「スーツ販売着数世界一」を誇り、全国に約七〇 〇店を展開する同社は、四七都道府県すべてでト ップシェアを握ることを経営目標に掲げている。
し かし、東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県では、 ライバルのAOKIやコナカの後塵を拝している。
 青山商事が広島県福山市に本社を置くのに対し、 AOKIとコナカはいずれも関東勢で地の利があ る。
青山商事は今後首都圏に集中的な出店攻勢を かけてシェア逆転を狙うが、ライバルたちも黙って はいない。
集客力のある駅前の店舗物件は奪い合 いが避けられないうえ、賃借料も割高だ。
そこで 店舗面積をロードサイド型店舗の標準サイズ、約一 五〇坪から一〇〇坪〜一二〇坪に小型化した都市 型の店舗フォーマットを新たに開発した。
物件の確 保が容易になり、賃借料を抑制できる。
 在庫を高回転させることで売り逃しを回避する ことも狙っている。
スーツ類はサイズ違いの店頭在 庫に欠品が増えると売れ行きが著しく鈍る。
もち ろん補充はするが、その商品の販売が終盤になる とセンター在庫も底をついてくる。
 同社の長谷川清秀執行役員IT・システム部長 は「サイズ違いの“歯抜け”が目立ってきた商品 を、いったん店舗から回収し、一揃いセットにし JULY 2010  24 ICタグを活用して絶対単品管理を革新  ICタグを使ってハンガーに吊した状態でハンドリング する衣料品の物流自動化に取り組んだ。
各店舗のその 日の売れ行きに合わせて翌日の開店前までに必要な商 品を補充する。
週2回から毎日納品に切り替え、店頭 のバックヤード在庫を解消。
店舗の省スペース化を進め て、首都圏への集中出店を加速させる。
 (大矢昌浩) アイテム数 最大約13万(絶対単品管理) 処理速度 2000着/ 2.5時間 施設 延べ床2万8000平米・5層建 設備 ハンガーレールシステム、ICタグシステム 作業員数 最大60人 投資総額 約100億円(土地代含む) 第 3部 ベストプラクティスの現場に学ぶ【青山商事】 て改めて店頭に陳列すれば、売れ残りを大幅に抑 制できる。
前から分かっていたことだが、これま では商品を仕分けて並べ替える作業に手間がかか り過ぎて実現できなかった。
千葉センターでそれを 可能にした」と説明する。
実用化に向け試行錯誤  創業当初から同社はスーツやジャケットなどの重 衣料で「絶対単品管理」を実施してきた。
同じア イテムでも商品番号とは別に通し番号を振って管 理している。
ウールなどの天然素材は一点ごとに 微妙な肌合いの違いが避けられない。
そうした品 質面に配慮したものだ。
 チェーンオペレーションの高度化はハイレベルな 在庫管理精度が基礎になる、という同社の経営思 想の表れでもある。
その商品がいつ誰の手によっ て、どう処理されたのか、絶対単品管理によって トレースできる。
トラブルが発生した場合にもすぐ に原因を特定できる。
そのおかげで同社の棚卸し 誤差は従来からゼロに近かった。
 ただし、それだけコストと手間もかかっていた。
データ量は膨大で、オペレーションには人手と時間 が割かれていた。
そのため絶対単品管理のツール となるICタグが登場すると、いち早く注目した。
関連の研究会に積極的に参加し、政府の補助制度 等も利用してICタグの実力を検証した。
 長谷川執行役員は「ベンダーの売り文句とは違 って、実際にはタグが重なっていたり、離れた距 離からでは読み取りミスが発生する。
商品が動い ている状態でも読み取り精度は落ちる。
実証実験 を繰り返した結果、課題だらけであることが分か った」という。
 そのために千葉センターでは、搬送をストップし た状態で一つひとつ至近距離からタグを読み取る 方法をとっている。
そこまでしてICタグの利用 にこだわったのは、それなしにはハンガー物流の自 動化が実現できなかったからだ。
 同じシステムをバーコードで構築すれば、読み取 り部分で頻繁にエラーが発生し、その修復に人手 を割かなければならない。
処理スピードが大幅に落 ちて、翌日開店前の 納品に間に合わなく なる。
夜間に大量の 作業員を動員して処 理すること自体、ス ピード、精度の点か らも現実的とはいえなかった。
 しかし、「我々の商売は今や物流の闘いになって いる」と長谷川執行役員。
同社にとって毎日納品 による高回転物流は首都圏戦略のカギとなる機能 だ。
将来の環境変化への対応力やコストメリット、 設備の信頼性など、様々な角度から検証を重ね、リ スクをとって大規模投資を断行した。
 千葉センターは施設全体がハンガー商品用の巨大 な自動倉庫といえる。
そのメンテナンスを考えると 開発陣は国内ベンダーで固める必要があった。
ホイ ールとレールは海外から調達するしかなかったが、 その他はすべて国産にこだわった。
 
廝唯咾叛御システムの開発は、フレームワーク ス(FWX)をパートナーに選んだ。
同社製のW MSを既存施設で利用していたことに加え、ヨド バシカメラやウォルマート向けでICタグの実用化 に実績があった点を評価した。
 福山市の青山商事本社に五〇坪程度の実験施設 を設けて、そこに小型システムを構築してシミュレ ーションを繰り返した。
「搬送中に商品同士がぶつ かり、商品にダメージを与えてしまうのを、どう防 ぐかという点に最も苦労した」とFWXの秋葉淳 一社長。
現場に張り付き課題を一つひとつ潰してい った。
稼働二カ月前にシステム改修を断行するなど 苦労はあったが、「世界にも例のないハイレベルな システムが出来上がった」と秋葉社長は胸を張る。
 既に安定稼働に入った千葉センターには現在、 連日のように視察団が訪れている。
青山商事の長 谷川執行役員は「このシステムは衣料品だけでな く、どんな荷姿の商品にも対応できる。
絶対単品 管理の可能性が大きく開かれた」と手応えを感じ ている。
25  JULY 2010 FWXの秋葉淳一社長 天井から伸びたレールをスーツが 踊るように搬送されていく 写真左は青山商事が店頭の靴販売 に利用している通常のIC タグ。
右 が今回導入したホイール型IC タ グ。
キャップの黒い部分にチップ とアンテナがシールドされている タグのリーダー。
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