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2010年7月号
特集

第4部 物流センター立ち上げのポイントピッキング設備導入の落とし穴吉原和彦 ロジスティクス・サポート&パートナーズ 副社長

JULY 2010  34 生産性が五倍になることも  今回のアンケート調査では、デジタル・ピッ キング・システム(DPS)とピッキング・カ ートが物流現場の生産性改善に役立つことが 証明された。
 特に顕著な結果が出ているのがDPSで、 導入している現場では一人一時間当たりの出 荷行数が平均四三・九行だったのに対し、導 入していない現場は一八・五行だった。
生産 性に約二・四倍もの開きが出ている。
 私のコンサルの経験でも、リストやハンディ ターミナルを用いたピッキングをDPSに変更 したら、生産性が五倍くらい上がった事例が ある。
DPSが生産性の向上には効果的であ ることは疑う余地がない。
 しかし、DPSを導入すれば確実に生産性 が上がるかと問われれば、答えは「NO」だ。
DPSを導入したことで、かえって生産性が 悪化してしまうというケースもある。
その現 場で取り扱っている荷物や納品先の特性を把 握し、正しい運用をしなければ、DPSも機 能を発揮してくれない。
 DPSの代表的な運用方法には二つある。
一つは、デジタル表示機が光って いる棚の前までピッカーが移動し、 表示されている数量の商品をピッ キングするというパターンだ。
一つ の商品をピッキングし終えて、ボタ ンを押すと次の商品の表示機が点 灯する。
 その棚の商品のピッキングが全て終了した ら、棚の「終了ボタン」を押し、次のデジタ ル表示機が点灯している棚の前まで移動して、 同じ要領でピッキングを繰り返す。
 もう一つは、担当するピッキングエリアが決 められているパターン。
ピッカーは移動せずに 一つの棚の前に張り付き、その棚のデジタル表 示機が光っている商品を、表示されている数 量だけピッキングする。
 棚の前にはコンベアを走らせている。
そこに 搬送されてきた折りたたみ式コンテナ(折り コン)にピッキングした商品を詰める。
投入が 終われば折りコンを次の棚のピッカーに流す。
 いずれの運用方法であっても、DPSが生 産性の改善に繋がっていない現場には、共通 点がある。
ピッカー、あるいは折りコンの流れ が詰まっているのだ。
 ピッカーが移動するパターンの場合、自分の 前の順番のピッカーがその棚の商品のピッキン グをしている間は待機していなければならな い。
その棚で大量のピッキングがある場合に は、次のピッカーの待機がそれだけ長くなる。
そしてピッカーの数が増えれば増えるほど、人 の滞留も増えてしまう。
 ピッカーごとに担当エリアを決めるパターン だと、今度は折りコンが滞留する。
特定の棚 の商品に注文が集中すると、そこで折りコン が詰まり、他のピッカーを遊ばせてしまう。
生 産性の大きなロスだ。
 このピッカーや折りコンの“詰まり”を解消 してDPSを効率的に使うには、オペレーショ ンを平準化する必要がある。
 DPSの利用を出荷頻度の高い“A”ラン ク商品に限定するというのも一つの手だ。
出 荷頻度の低いBランクやCランクの商品にまで DPSを導入してしまうことで、ピッカーの 作業量に大きな格差が生じ、先述のような理 由で失敗している現場が少なくない。
 出荷頻度が低い商品にもDPSを適用する には、それだけ棚スペース、作業スペースも多 くとらなくてはならない。
スペース効率が落 ちるだけでなく、ピッカーや折りコンの動線が 長くなるため、生産性は悪化してしまう。
固定設備というリスクも  このように考えると、そもそもDPSには 馴染みやすい現場とそうでない現場があるこ とに気付く。
例えば、大手量販店やスーパー などの物流現場にはあまり向かない。
商品ア イテム数が多く、入れ替わりも激しいため、ロ ケーションの管理や棚への商品補充に手間がか かる。
また特売などで物量が大きく変動する ため作業量の平準化も難しい。
 同じ小売業でもコンビニの物流センターであ れば比較的馴染みやすい。
取扱数が三〇〇〇 程度に限定されているうえ、量販店やスーパ ーほど物量の波動も大きくないので、DPS の効果がフルに発揮できる。
 荷主や取り扱い荷物が高頻度で変わる汎用 型倉庫への導入も難しいだろう。
DPSは基 本的に固定設備だ。
荷主が変わり、商品の種 類や特性が変われば、棚のレイアウトや保管ロ ピッキング設備導入の落とし穴 吉原和彦 ロジスティクス・サポート&パートナーズ 副社長 第 4部 物流センター立ち上げのポイント 35  JULY 2010 いた。
 ところがDPSが入っている現場は、レイ アウトやシステム変更が容易ではない。
大物の 商品を、それまで小物が置いてあった場所に 移したいと思っても、デジタル表示機が小物 用の間隔で設置されているため、そのままで は入れ替えできない。
 棚ごと組み替えるとなれば、付随する配線 やシステムも大々的に変更しなければならず、 相当な投資を迫られる。
結局、このセンター では変化に対応できないまま物量が増えてい き、一時は大混乱に陥ってしまった。
 ピースピッキングの生産性を上げたい場合に DPSは有力な選択肢になる。
しかし汎用性 という点でDPSは、カートピッキングやハン ディターミナルなどのマテハン、もしくはリス トピッキングにかなわない。
作業精度も落ち る。
カートやハンディなら、ピッキングと同時 にバーコード検品や、場合によっては重量検品 もできる。
 どのマテハンを現場に導入するかは、自分 のビジネスの特性などを考慮し、冷静に判断 する必要がある。
          (談) よしはら・かずひこ 一九六六年生まれ。
関西大学経済学部経済学科卒。
八 八年、大手食品卸に入社。
九八年、同社ロジスティク ス本部の設立メンバーとして本社に配属。
全国の物流 拠点の業務改善指導を行いながら、新センター(三拠 点)立ち上げ等を手がける。
二〇〇〇年、物流コンサ ルティング会社へ転職。
同社取締役を経て、〇五年一 月、ロジスティクス・サポート&パートナーズの設立メ ンバーとして同社副社長に就任。
ケーションを一か ら設計しなおさな ければならない。
 したがって、物 流会社がDPSを 導入する際は、荷 主との間で契約年 数に三年、あるい は五年といった縛 りを入れることが 多い。
 同じ特定荷主の 専用センターであ っても、運用開始 から時間を経るこ とで、次第に設備 が現場に馴染まな くなってくること も珍しくない。
 ある卸業者の物 流センターでは、 当初、小物から大 物まで全ての商品 にDPSを導入し ていたが、ビジネ スの拡大に伴いア イテム数や物量が 徐々に増えていき、 庫内レイアウトが 実態にそぐわない ようになってきて  物流センター業務の内、 出荷の割合は60 % 〜 70%を占めることが多い。
生産性向上の施策では、最 も構成比の高い出荷業務の 改善が最優先の課題となる  更に出荷業務の内訳をみ ると、ピッキング、特にバラ の構成比が高くなる。
この事 例ではバラピッキング、荷造 り(梱包)が最優先の取り組 み課題であった  このセンターではリストでのオーダーピッキング方式を採用している。
配送先ごとのピッキングである ため、移動時間が大きな構成比を占める。
その他いわゆる「取り置き」、リストと商品の照合作業(出荷 検品は出荷後に別途実施しているが)の構成比が高いことが分かる。
 システムやマテハン導入を検討する際には導入目的を明確にし、それぞれの導入メリットとデメリット を考えながら導入効果を最大にする。
商品を「取る」「台車に置く」に対してカートピッキング、デジタル ピッキング導入で効果があるとしたのは、取り置きの段階で両手を使用し、リストを適当な場所に「取り 置き」する機会が多かったため リストを取る 移動 探す 数える 商品を取る リストと商品の確認 商品を台車に置く リストにチェック 棚に商品を戻す ごみ捨て 手待ち、その他 計 作業構成比作業時間短縮のためのシステム、マテハン等 HHTピッキング ロケーションピッキング(ロケ変更) ロケーションピッキング、デジタルピッキング HHTピッキング/カートピッキング (カートピッキング/デジタルピッキング) HHTピッキング/カートピッキング/デジタルピッキング (カートピッキング/デジタルピッキング) HHTピッキング/カートピッキング 1.7 23.6 2 7.2 15.6 14.3 15.28 1.9 9.5 1.1 100 1.センターの総労働時間に占める各業務の割合 在庫管理 14% バラピッキング 21% 補充 3% 出荷 61% 返品 2% 入荷 7% 値付け 17% 仕分け 10% 荷作り 26% リストを取る 棚に商品 26% を戻す 2% 手持ち、その他 1% 探す 2% 数える 7% 商品を取る 16% リストと商品 の確認 14% 商品を 台車に置く 15% チェック 8% リストに ごみ捨て 9% 移動 24% その他 10% ケース ピッキング 11% 検品 11% 2.出荷(61%)の内訳 3.バラピッキング( 29%)の内訳 特集

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