ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年7号
ケース
イトーヨーカ堂 現場改善

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

「ヨーカドー式」の改善手法が定着  イトーヨーカ堂が二〇〇四年から実施して いるトヨタ流の現場改善が、協力会社に運営 を委託している物流センターに広く浸透して きた。
六年前に冷凍食品センターで適用した のを皮切りに加工食品、衣料、住居などへ対 象領域を拡大してきた。
〇八年度からは生鮮 センターの改善にも着手している。
 ヨーカ堂は一括物流センターの運営をすべ てアウトソーシングしている。
このためプロジ ェクトでは、外部の事業者に任せている現場 をヨーカ堂の改善担当者が指導することにな る。
半年から一年程度におよぶ期間中、改善 担当者は常駐に近いかたちで現場に張りつき、 生産性の向上を支援する。
 指導料は発生しない。
改善担当者の人件 費はヨーカ堂の持ち出しになる。
それでも委 託先とヨーカ堂の双方にメリットがある。
過 去六年間で約二五センターの現場改善を手掛 け、すべての案件で大幅な収支改善を実現し た。
累計のコスト削減金額は年間八億九〇〇 〇万円に上る。
こうして捻出した資金が、セ ンター運営の収支の悪化をうけたフィーの上 昇などを抑制する原資にもなっている。
 一連の取り組みを指揮するヨーカ堂の平賀 信年執行役員物流部長は次のように説明する。
 「どんどん売れた時代と違って、今は物量 を増やすとか、センター運営会社の売り上げ を伸ばすといったことが難しくなってきてい る。
センター運営の収支を改善するには経費 を削減するしかない。
ヨーカ堂が上から目線 でモノを言うのではなく、とにかく一緒にな ってウィン―ウィンの関係を築く。
そのうえ で、われわれにとって一気通貫の物流を実現 することをめざしている」  ヨーカ堂がトヨタ流の改善活動をスタート させたのは、〇三年に豊田自動織機に店舗作 業を改善するためのコンサルティングを依頼し たのが最初だ(本誌〇五年九月号既報)。
そ の後これを物流拠点でも展開しはじめた。
 ただし、トヨタの関係者から直接指導を受 けたのは〇五年まで。
以降はヨーカ堂の社内 で独自に改善活動を推進し、?イトーヨーカド ー式?と呼ぶ改善手法を確立した。
 店舗の作業改善プロジェクトを主導してい た平賀氏が〇六年九月に物流部長に就任した のを機に、物流部門として正式に「アウトソ ーシングのあり方を変える」と宣言した。
店 舗と物流部門が互いに自分たちの都合ばかり 主張しがちだった従来のやり方にもメスを入 れた(本誌〇七年六月号既報)。
 〇八年一月になると物流部の組織を見直し  協力物流会社に運営を委託している一括物流セン ターを対象に、トヨタ流の改善活動を展開している。
全国80カ所の物流拠点のうち約25カ所で作業改善プ ロジェクトに取り組み、累計で年間コストを9億円近 く削減した。
09年度に改善を実施した「習志野生鮮 センター」だけでも約6400万円のコスト削減に成功 している。
現場改善 イトーヨーカ堂 トヨタ流の浸透で物流費を年間9億円削減 委託先に専任担当者を常駐させて熱血指導 イトーヨーカ堂の平賀信年 執行役員物流部長 37  JULY 2010 た。
同部の下部組織である「物流業務改善プ ロジェクト」を「物流企画開発部」に改組し、 現場運営を担っていた「物流センター部」も 「物流運営管理部」に変更。
それまで以上に 現場を重視していく姿勢を鮮明にした。
 当初は三人だけだった作業改善の担当社員 を段階的に増員し、〇九年からは九人がほぼ 専任でこの業務に従事している。
九人はそれ ぞれに加食や衣料、TCなど得意分野を持ち ながら、同時にオールラウンダーとしてのスキ ルアップも図っている。
今年五月には、この 活動をスタートした当初から現場レベルで牽 引してきた服部功氏が「物流運営管理部」の 総括マネジャー(GM)に昇進した。
 ヨーカ堂の作業改善では、原則として、対 象となるセンター一カ所につきヨーカ堂から派 遣する担当者は一人だけ。
管理者である服部 GMなどが支援することはあっても、複数の 担当者を同じ現場に常駐させることはしない。
担当者同士でつるむことを避け、委託先の現 場とヨーカ堂の担当者が一緒になって改善に 取り組む環境をつくっている。
 改善活動の時間帯なども、ヨーカ堂の都合 ではなく、常に相手の事情に合わせるように している。
改善の進捗状況を関係者に伝える 報告書は、先方の現場長が上司に伝えやすい ことを第一に考えて作成する。
 ヨーカ堂の服部GMは、「われわれはストッ プウォッチなどを使った現場作業の分析や改 善指導ばかりをやっていると思われているか もしれない。
しかし、そうではない。
何より も数字に基づく議論を徹底的にやる。
まず現 場を診断して、解決すべき課題を数値分析で 浮き彫りする。
そのうえでセンターの所長さ んの問題意識も確認しながら、現場改善の具 体的な手法を教えていく」と強調する。
 運営を外部委託している物流センターで業 務の進め方に細かく口を出す作業改善は、と もすればパートナーとの信頼関係を傷つけか ねない。
事前に経営レベルで会社同士の取り 組みとして合意してはいるものの、実際にプ ロジェクトをスタートしてみると難航するケ ースも少なくない。
これを何とか軌道にのせ、 結果につなげていくことがヨーカ堂の改善担 当者の役割だ。
収支の厳しいセンターを対象に  作業改善プロジェクトの対象となるセンタ ーは、毎年、ヨーカ堂の物流部門が選定して いる。
収支の悪化などでニーズがあることに 加え、あるカテゴリーの中でモデルセンターに なりうるか、首都圏から近いか、会社同士の 取り組みとして協力を得られるか、といった 条件を見極めながら対象物件を決める。
 作業改善プロジェクトを本格化した当初は、 主に加工食品の共配センターなどを対象とし ていた。
生鮮部門は収支が比較的安定して いたことから除外されていたのだが、近年は、 荷主サイドの物流施策の見直しによる物量の 減少などに悩まされるようになっていた。
 そこで〇七年一〇月から「川越生鮮センタ ー」(埼玉県川越市)の作業改善プロジェクト 取引先・センター運営事業者・店舗のすべてを巻き込み一気通貫の物流を構築 物流の構図 取引先 海外商品 検品会社 コスト削減 経費削減 収益増加 生産性UP コスト削減/センター作業改善 出荷量増/取引先拡大 利益貢献利益貢献 定時納品 庫内作業 店舗配送 センター 通路マスター 一気通貫 物流構築 ギフト家電サービス 配達・宅配 ネットスーパー 使用料/フィー 配送 直輸入 店舗 料率低減 販売に適した選択 カート納品 ハンガー納品 キャリー納品商管〜ストック場 ストック場〜売り場 作業計画 品出し作業 店内物流 発注提案システム 品減り削減 ロス削減 店舗作業改善 値入改善値入改善 物流重点行為をやり遂 げた時のゴールイメージ イトーヨーカ堂の服部功物流 運営管理部GM JULY 2010  38 を実施した。
同センターの運営事業者である ニチレイロジグループのロジスティクス・ネッ トワーク(以下、ロジネット)と共に一〇カ 月間の活動を展開し、約七八〇〇万円の年間 コスト削減に成功した。
 そして〇九年三月から「習志野生鮮センタ ー」(千葉県習志野市)でもプロジェクトをス タートさせた。
ヨーカ堂がヨークベニマルと共 同で運営している仙台センターを除けば、ヨ ーカ堂にとって最大規模の拠点で、運営事業 者は川越センターと同じロジネットだ。
 先に改善を実施した川越センターでは、車 両の燃料費の高騰をカバーするために、まず ロジネットからヨーカ堂にサーチャージの相談 を持ちかけた。
これに対してヨーカ堂が、「燃 料費の値上がり以上にコスト削減の成果を出 しますよ」と逆に提案したことが作業改善プ ロジェクトにつながった。
 一方、習志野センターで作業改善をやるこ とになった経緯は少し違った。
川越センター の改善に着手した当時、習志野センターを取 り巻く事業環境は悪くなかった。
ところがそ の後、物量が急減して事態が一変した。
 〇七年九月にヨーカ堂の「葛西青果センタ ー」が稼働したことで、習志野で手掛けてい た青果関連事業の九割がなくなった。
その半 年後にはセブン&アイグループの外食事業の 仕事が同事業の物流体制の見直しで流出。
従 来は生鮮として扱っていたマグロ・カツオの 業務も、ヨーカ堂が業務区分を冷食扱いに変 属し、顧客企業の改善指導などに自ら携わっ ていた。
しかし、そんな松崎所長もヨーカ堂 担当者の指導による「2S(整理・整頓)」 や「見える化」の徹底ぶりには、「ここまで やるのか」と驚かされたという。
 幸いセンター管理者のこうした姿勢は、現 場でプロジェクトに関わっていたロジネット側 の担当者にも徐々に浸透していった。
当初は 「誰かがやってくれるだろう」と他人事のよう に構えていた人たちの態度が時を経るごとに 変わった。
その後は、改善手法の勉強や、現 状の数値分析などを重ねていった。
 作業改善プロジェクトでは、最初にヨーカ 堂の担当者が基本となる?改善設計図?とも いうべき資料を作成する。
その前提となるの が現場の生データだ。
ヨーカ堂の物流部門は、 同社以外の荷物も扱っている一部の汎用セン ターを除けば、全国で展開している一括物流 センターの運営状況や経営データをすべて詳 細に把握している。
これが数字で議論すると きの材料になる。
 習志野センターで改善に着手してから約三 カ月後の五月八日に「キックオフ」のための 更した結果、習志野から出ていった。
 相次いで既存業務を失い、習志野センター の収支は一気に悪化してしまった。
この事態 を危惧したヨーカ堂が、ロジネットに作業改 善プロジェクトの実施を提案した。
全員参加に徹底的にこだわる  しかし、同じロジネットが運営する川越セ ンターの先行事例を有しながら、習志野セン ターの作業改善プロジェクトの立ち上がりは 決して順調ではなかった。
〇九年二月にヨー カ堂から提案を受けて、翌三月には改善活動 に着手したものの、スタートからしばらくは 活動が一向に軌道に乗らなかった。
 その最大の理由は、センターを運営するロ ジネット側の体制が固まらなかったためだ。
ロ ジネットの松崎健司習志野物流センター所長 は当時をこう振り返る。
 「ヨーカ堂さんからはプロジェクトの専任担 当者を一人に決めてくれと何回も言われてい た。
しかし、私は専任を決めなかった。
一人 をリーダーに決めてしまうと、その人間だけ の活動になってしまって意味がないと思った からだ。
最終的に報告書をまとめる担当者は 絞るとしても、改善活動そのものは何として も全員参加でやりたかった」  松崎所長は、このプロジェクトが始まる約 一年前に習志野センターに着任していた。
そ れ以前はニチレイロジグループの3PL事業 会社であるロジスティクス・プランナーに所 ロジスティクス・ネットワー クの松崎健司習志野物流セン ター所長 39  JULY 2010 に手間がかかっていた。
 実際に作業時間を計測してみたところ、ト ラックへの積み込みに一台あたり平均四五分 かかっていた。
これに対して、すでに改善プ ロジェクトを完了していた川越センターでは、 この作業が平均二五分で済んでいた。
三〇分 の差は、入荷検品や店別仕分けなどの作業を センター内のどこでやるかで生じていた。
 それまで習志野センターでは「その場集積」 が当たり前だった。
しかしこれは後工程を担 うドライバーの負担を度外視することで成り 立っており、ドライバーは長距離のカート搬 送を強いられていた。
そこでプロジェクトで は、出荷バース付近にカートを集める新しい 方法を検討しはじめた。
 試すべき選択肢は複数あったが、「失敗し てもいいから実際にやってみよう」というヨ ーカ堂の方針にもとづいて試行錯誤を繰り返 し、より生産性を高められる手法にたどりつ くことができた。
 ロジネットで構内作業の改善リーダーを務 めた伊藤和夫氏は、「当初は﹃その場集積﹄ じゃなければダメだと思い込んでいた。
この 会合が関係者を集めて催された。
この時点で すでに詳細な活動計画と、それに基づくコス ト削減の見込みもできあがっていた。
構内作 業の見直しで三六三万円を削減、配送業務で 四八〇〇万円削減、そして事務業務で二四 三万円減らす。
合計で年間コストを約五四〇 〇万円削減するという目標だった。
「その場集積」を「バース前集積」へ  こうしてプロジェクトは実践段階へと移行 した。
キックオフで掲げた目標の内訳を見る と、コスト削減は配送業務の見直しが大部分 を占める。
だがその実現には、構内作業の改 善が前提条件になっていた。
具体的には、セ ンター内でのカートの集積方法が、このプロ ジェクトの最大のポイントだった。
 ヨーカ堂の生鮮センターにおける業務フロ ーは基本的にシンプルだ。
まず仕入れ先が納 品してくる商品の入荷検品を行なう。
次にこ れをカート単位で店別に仕分ける。
最後に決 められた出荷エリアにカートを集積し、これ を配送ドライバーがトラックに積み込んでいく。
これらの業務を、いかに効率よくこなせるか でセンターの生産性が決まる。
 従来の習志野センターでは、センター内に あらかじめ設けた各エリアに出荷待ちのカート を集めていた。
社内で「その場集積」と呼ぶ やり方である。
しかし、このやり方では、商 品の仕分け作業そのものは手早くこなせても、 ドライバーが配送車両にカートを積み込むの ドライバーによる積み込みが早い「バース前集積」による作業 リーフ商品 総菜 鮮魚(製品・原料) 精肉(原料) 和風デイリー 和風デイリー洋風デイリー 洋風デイリーリーフ商品 精肉 (加工肉・玉子) 青果青果 DAS コンテナ置き場 構内入口 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 DAS コンテナ置き場 構内入口 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 事務事務 リーフ商品 リーフ商品 入荷検品場 リーフ入荷検品場入荷検品場 総菜 鮮魚 精肉 塩干 総菜 精肉 鮮魚 (原料) 精肉 (加工肉・ 玉子) 入荷検品場 入荷検品場 店別集積場 精肉 和風デイリー 洋風デイリー リーフ商品 青果 リーフ商品 洋風 デイリー 和風 デイリー 習志野生鮮C:その場集積川越生鮮C:バース前集積 正味作業 31% 付帯作業 30% ムダ 39% 正味作業 71% 付帯作業 8% ムダ 21% 平均バース接車時間 川越C→25 分 習志野C→45 分 変更前 その場集積 レイアウト変更による積み込み時間短縮 変更後 バース前集積 その場集積は バース前集積と比較して ドライバーの 歩行導線が長く 接車時間も長い 出荷 店別出荷集積 入荷検品 入荷 店別仕分 他センターの作業 入荷 入荷 旧・習志野センターの作業 入荷検品&出荷 店別仕分&その場集積 入荷検品&出荷 JULY 2010  40 送便の台数を減らすことで、こちらも計二〇 〇〇万円以上のコスト削減に成功した。
 こうした見直しには当然、納品時間の変更 など店舗との調整が欠かせない。
そのために ヨーカ堂の改善担当者とロジネットの担当者 は一緒になって店舗に出向き協力を要請した。
ロジネットで配送業務の改善リーダーを務め た金子大輔氏はこう説明する。
 「私としても以前からピストン便や統合便を やりたい気持ちは持っていた。
だが実現でき ずにいた。
今回はヨーカ堂さんの担当者が店 舗の方々に粘り強く交渉してくれたことが大 きかった」。
これは金子氏自身が配送トラック に同乗し、細かい時間調整や配送ルートの工 夫などを繰り返した成果でもあった。
 こうした改善策は、結果的に配送ドライ バーの残業時間の削減にもつながった。
従 来、習志野センターのドライバーの出勤時間 は、一律で午前四時だった。
この条件自体は 他の生鮮センターとさほど変わらない。
だが 習志野センターでは、最終便の荷降ろしや次 の業務の準備のため、ドライバーの終業が午 後二時から三時になっていた。
この部分の業 時間的な余裕はなかった。
従来は車両への積 み込みに平均四五分かかっていたため、二回 転目は開店時間に間に合わなかったのだ。
 「その場集積」を「バース前集積」に改め、 さらに配送面でも多くの工夫を重ねたことで、 それが可能になった。
結局、毎日六コースで ピストン配送を実現し、半日契約で運用して きた傭車を計六台分減車。
二六六四万円のコ スト削減を達成することができた。
 配送便の統合も大きな成果につながった。
一日に三便ある店舗への配送便のうち、物量 をまとめられる案件の中から、第二便(セン ターを午前十一時に出発)と第三便(同一四 時発)を統合し、いわば?二・五便?として 十三時に出発する便を新たに仕立てた。
店舗 によっては、二便で運んでいた商品の一部を 三便にまわす許可も取りつけた。
こうして配 やり方を崩したら業務が回らなくなるという 不安が、私にも周囲にもあった。
だが新しい レイアウトを実際に試してみて﹃バース前集 積﹄の良さを理解できた。
結果が伴ったこと で、最初は批判していた人たちも前向きに考 えてくれるように変わった」と振り返る。
 新しいレイアウトを明確にするため、床に は「2S」の考え方に基づいてラインを引き、 頭上には配送先の店舗を記した表示物を配置。
ロジネットが庫内作業を委託している三協商 事とも協力ながら、「作業者に優しい現場を 実現する」ための工夫を重ねていった。
計画を上回るコスト削減を達成  庫内の見直しにメドをつけたことで、キ ックオフの時点で最大の効果を見込んでいた 配送改善も可能になった。
習志野センターは、 施設から六キロ圏内の至近地に納品先のイト ーヨーカ堂の店舗を数多く抱えている。
本来 であれば車両をピストン回転させて、一台で 複数の店舗をまかなえるはずだった。
 ところが現実には、配送業務を終えて戻っ てきたトラックを再び次の店舗に向かわせる ロジスティクス・ネットワー クの金子大輔氏 ロジスティクス・ネットワー クの伊藤和夫氏 大きなコスト削減をもたらした配送改善の考え方 配送費を削減するためには 車輌台数を減らす 積載率を上げる 単価を下げる 店舗混載 便統合 センター間コラボ ピストン配送 他業務と連携 運行の効率化 残業代削減 高速代の削減 積載率を上げる稼働率を上げる値下げ 41  JULY 2010  もちろんヨーカ堂の改善担当者のスキルア ップも欠かせない。
各人に何ができて、何が できないのかを「実力診断シート」で項目別 に評価し、その内容は社内の掲示板で閲覧で きるようにしてある。
徹底して互いを評価し あいながら、社内研修などではこうした情報 に基づいて技量の底上げを図っている。
 服部GMは、「私は?自分原因説?という 考え方を大切にしている。
良い教えなのに伝 わらないとしたら、それは自分に原因がある と考えるべきだ」という。
「われわれの改善 では必ず現場の若手を育てる。
楽はさせない けれど一生懸命やった人たちは必ず評価する。
この活動では平賀も私も熱血主義。
結局はそ れが一番なんじゃないかと思っている」  こうしたヨーカ堂サイドの?熱意?は、パ ートナー企業の経営層にも着実に伝わってい るようだ。
ロジスティクス・ネットワークの 立石孝社長は〇九年一〇月に催された習志野 センターの「まとめ報告会」に出席して、「現 場の社員のコスト意識が高まっていることに 驚かされた」と率直に語る。
 目先のコスト削減を追いかけながら、作業 改善のプロセスの中で人材を育てる。
「見え る化」のために表示物を作ること一つとって も、実はそこで工夫することを通じて担当者 の意識を変えようという狙いがある。
ヨーカ 堂の現場改善が成果を上げている本当の理由 は、こうした点にこそ見出されるべきなのだ ろう。
  (フリージャーナリスト・岡山宏之) を作成する。
改善をスタートした当初はヨー カ堂の担当者が作ったものを一方的に示して いた。
しかし現場の作業員たちはまともに見 てくれない。
より実践的な「作業書」を作業 者と一緒に作ることに腐心してきた。
 また、作業改善を継続するためには、ム ダを見る眼を養わなければならない。
そのた めに「パトロール」という行為を大事してい る。
毎日、同じ時間、同じルートで現場を歩 く。
そうすることで些細な異変にも気づくよ うになる。
特定の目的のために活動していた ときに見えなかったムダが見えてくる。
務はすべて残業扱いで、運送事業者にその都 度、割増料金を支払っていた。
 今回、車両への積み込み時間を短縮できた ことを受けて、一部のドライバーの出勤時間 を四時半へと三〇分遅らせることにした。
こ れによって業務終了の定時も三〇分延び、残 業扱いの時間帯が減った。
これだけでも年間 五〇〇万円以上の削減につながった。
 センターではほかにもデジタル・アソー ト・システムの作業動線の変更や、近隣セン ターとの配送業務の相互補完も試みた。
二四 時間スイッチを切ってはいけないと思い込ん でいた冷凍機の省エネ利用にも踏み切った。
 最終的には、キックオフ時に想定していた 五四〇〇万円を大幅に上回る計六三七〇万円 のコスト削減を達成できた。
「行き詰まったこ ともあった。
しかし現場の人たちが、ここで 削減できないのなら他でどうにかならないの かと工夫を凝らして乗り切ってくれた」と松 崎所長は満足そうに目を細める。
改善活動で育った人材が現場を変える  作業改善をより効果的で永続性のあるも のにしていくため、ヨーカ堂の物流部門が何 よりも大切にしているのは?人材の育成?だ。
誰にでも理解できるシンプルな手法の積み重 ねで改善を進めながら、活動を通じて人を育 てていこうとしている。
 改善プロジェクトでは、ヨーカ堂の担当者 と現場の担当者が一緒になって「標準作業書」

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