ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年11号
特集
環境物流で差をつけよう 欧州のマルチモーダル型物涜拠点

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

トラック・鉄道・内航を利用できる 洋の東西を問わず、物流センターの大多数は住宅 地から離れた場所に位慣する。
トラックが四六時中走 り回る物流センターが、住環境とは相いれないためだ。
地域住民の住環境を損なうことなく、大型物流センタ ー群を建設して、しかもそれまでさびれていた町を活 性化できないものか||。
そんなコンセプトのもとに、 北フランスに建設されたのがマルチモlダル型の物流 団地「デルタ3 」だ。
デルタ3 のアl ノ・ダマレイ営業部長はこう話す。
「付加価値の高い物流施設を作ることで、地域に長 期的な履用を生み出しながら、住環境を劣化させるト ラックの輸送誌を減らそうというのがわれわれの狙い だ。
そのために、トラック輸送、鉄道輸送、船舶輸送 の三つの輸送モlドが利用できる施設を建設した。
デ ルタ3 は三つの輸送モードを利用できる施設としては、 ヨーロッパで最大規模を誇る」 デルタ3 は、北フランスのノl ルH パ・ド・カレl 聞にあるドゥlジに位置する。
九0 年代に事業計画が 練られ、二OO 一年に建設がスタート。
二OO 三年 一二月に稼働した。
三O ヘクタールの敷地に、すべて が完成すれば合計で三凶万平方メートルの物流センタ ー群を擁することになる。
現時点で利用しているのは、日開明大工用品小売り リのロイ・マl リン(七万平方メートル)、子供用が ん具小売りのフナック・エベイユ・ジュl( 三万平方 メートル)、3PL 業者のゲフコ(四万五000 平方 メートル)の三社。
合計で一四万五000 平方メー トルを利用している。
その他にも利用者は未定ながら、 二カ所・計五万八000 平方メートルの施設が、こ の夏に完成した。
. 欧州のマルチモーダル型物涜拠点 北フランスで、トラック輸送偏重の物流のあり方に一 石を投じる試みが行われている。
鉄道、船舶の使い勝手 がい大型物流施設を建設し、トラック輸送量を減らし ていくという。
物流と環境保護という一見対立しそうな ニつの要素を両立できる物流施設が「デルタ3J だ。
(本誌欧州特派員横田増生) 「稼働から年半で、ほほ半分の施設いる。
六O%の工事が完成したことは胸を張実績だ。
加えて、フルタイムとパートタイて約一OOO人の一服用を生み出したことは、会からも高い評価を得ている。
施設がフば、トラック中心の施設を作ったときと八万五000 台分のトラック輸送を削減でさなるだろう」とダマレイ営業部長は説明もともと、ドゥlジがあるリl ル市には、市役所の 付近に老朽化した貨物拠点があった。
設を作ろうとした際、それまでの施設はなく、まったく新しいタイプの物流施設いう動きが、地元政府と民間企業の問かそして次の三つの基準をもとに、新しい候補地を探した。
一つはトラック・鉄道・の輸送モ1ドを利用できること。
二つ目はノl ルH パ・ド・カレl聞発着の貨物をさばくために工の近くに位置すること。
そして最後は今貨物の増加に対応できて、ヨーロッパのなれるような土地であること。
最終的にドゥl ジだった。
ドゥlジは、イギリス市場の入り口であるトンネルと、フランス最大の港湾施設でク港からそれぞれ約一00キロの位置にある。
プリツセルからは一三0キロ、パリからはこ00キロとい う距離だ。
「ドゥlジはイギリスと東西ヨーロッパ物流が交わる地点で、デルタ3が施設を作る場所とては最適と判断した」(ダマレイ営業部しかも、このドゥlジは、一九六0年代に閉鎖され た炭鉱跡地であり、デルタ3が開発を手掛けるまでは依然として当時のボタ山が残る休閑地だ3 のプロジェクトは、地域の環境に悪影響NOVEMBER2005 L(oGI ・BIZ 26 環境物流で差をつけよう 険の残っていたボタ山を節化するだけでなく、 産業の創出にも結びついている。
運営については、第三セクター方式がとられている。
投資金制の一二OO 位ユl ロ(四兆五OO 億円)のう ち、SNCF( フランス国有鉄道)やEDF( フラン ス電力会社)を筆頭にする民間企業が五五%を出資 して、ノード県やパ・ド・カレl 県、地元の商工会議 所などが残りの四五%を出資している。
デルタ3 では七人の社員が働き、事業の企画・運営 を担当する。
コンテナヤl ドの管理は別会社が行い、 そこでは約四O 人が働いている。
輸送モl ドごとにデルタ3 の利便性を見てみる。
ト ラック輸送では、幹線道路であるAl 、A 幻、A 却の三 本の高速道路が走っており、ヨーロッパ全域へとつな がっている。
内航輸送のためには、五五0 メートルの パl スを有する港があり、そのうち一一五0 メートルを 貨物の積み下ろしに使える。
ノl ルH パ・ド・カレー 聞は内陸水路網が発達しており、全長七00 キロメー トルのうち約二00 キロは大型船の航行も可能だ。
ド ゥl ジからもリl ル港を経て、ダンケルク港、ロッテル ダム港、アントワl プ港などの主要港に航行できる。
また施設内には七本の鉄道引き込み線が敷かれてい る。
一本の長さは七五0 メートル。
一日最大で凹O 本の貨物列車の発着が可能で、現在は一四本を連行 している。
新しい ニO 一O年にはフル稼働 特集 この施設内では三つの輸送モlドのうち、鉄道と内 航輸送の利用を恨逃するため、トラック一台当たりの 滞留時間を三O分に制限するルl ルが設けられている。
環境への配慮からトラック輸送を減らそうという考え は理解できるが、鉄道や内航にはトラックに比べ貨物 施設内には鉄道の引き込み線が 致かれている 北フランスに建設された マルチモー夕、ル型物流拠点「デルタ3J t弓調同一J 一DE一LTA' 三ーマ:F Z 冒 物流センターには、がん異小売り や3Pしが入居している の破揃や遅延などの輸送品質の而で雛点がある。
モー ダルシフトにこだわりすぎると、潜在的な利用者が二 の足を踏む可能性も.世・足できない。
ダマレイ営業部長は「この施設を利用するからとい って、必ずしも鉄道や内航輸送を使わなければならな いという規則はない。
トラック輸送一本で利用するこ とも可能だ。
ただし、トラック輸送だけなら、使える 施設は他にいくらでもある。
デルタ3 がマルチモl ダ ルの施設であるということは、営業においてプラスに 働くことはあっても、マイナスに働くことは少ない」 と指摘する。
例えば、利用者の一社である3PL 業者のゲフコの 場合、ここを拠点にして日系企業のヨーロッパの物流 を担当している。
デルタ3を使おうと決めたのは日系 企業側で、海上コンテナを中心にした物流体制を作り たいと考えていたからだ。
「そんな日系企業の考えとデルタ3 のコンセプトが 一致したために、3PL 業者であるゲフコの入居が決 まった。
輸送品質について言えば、パラ貨物は取り扱 わず、すべてがコンテナ貨物だ。
しかもトラック・鉄 道・内航ともにスワップ可能なコンテナを使っている ため、従来に比べると荷痛みは格段に少なくなってい る。
輸送時間の問題も、三つのモl ドから選べるので、 高速道路上の大事故や、自然災害が発生した際にも、 柔軟な対応が可能だ」(ダマレイ営業部長)という。
デルタ3 における先行する成功事例が評判となって、 現在、ヨーロッパの複数の企業から入居の打診を受け ている。
すべての工事が終わり、センターの入居者が 決まるのは二O 一O 年になる。
その時点で、このモl ダルシフト型の物流拠点は、ヨーロッパの物流にどの ような影響を及ぽすことになるのだろうか。
今後の動 きに注目が集まりそうだ。
図 27 L~G 卜BIZ NOVEMBER2005

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