ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年9号
特集
解説 3PL導入で失った管理能力を取り戻す

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2010  44 3PL導入で失った管理能力を取り戻す  費用の妥当性やサービスレベルを評価できないため に、いたずらにコンペを繰り返す荷主が増えている。
3PLとの役割分担が曖昧で、経営に必要な機能が失わ れているケースも珍しくない。
安易なアウトソーシング が荷主企業の管理能力を弱体化させている。
「絶対評価」はないものねだり  
械丕未篳流子会社に支払っている料金は果たして 妥当なのか。
パフォーマンスは満足すべきレベルに達 しているのか。
荷主が客観的に評価するのは難しい。
運賃や倉庫賃料の単価なら相場を目安にすることもで きるが、包括的なアウトソーシングは比較の材料がな い。
ライバル企業の実績データを入手できたとしても しょせん参考資料止まりだ。
同じ業界でも会社が変わ れば物流の内容は違ってくる。
判断に窮した荷主が、 物流コンサルティング会社に評価を依頼することも多 い。
しかし、いかに経験豊富なコンサルタントといえ ども、その会社の物流コストやパフォーマンスに御託 宣を下すことなどできない。
 日通総合研究所の要藤洋文ロジスティクスコンサル ティング部主席コンサルタントは「結局のところ物流 は時系列のトレンドで評価するしかない。
我々にでき るのは、その会社に適したKPI(重要業績評価指 標)を設定し、ボトルネックを取り除いてKPIを改 善していくことであって、魔法のようなツールがどこ かに存在するわけではない」という。
 それでも荷主は拠り所を求める。
その最も手っ取 り早い手段がコンペだ。
リーマンショック直後から一 年ほどにわたり市場では物流コンペが頻繁に開催され た。
環境変化を受けて物流体制の再設計に乗り出す 荷主が増える一方で、最終的な委託先を変えるつも りはなく、契約料金の引き下げだけを狙った単価交 渉的なコンペも目立った。
 「実際、コンペを開催すれば高い確率で料金は落ち る。
コンペの開催を伝えられた既存の協力会社が、そ れまでの料金を堂々と提案するのは相当な勇気が要 る。
大抵は逸注することを恐れて、現状よりも安い 料金を提示する。
そのため毎年のようにコンペを繰り 返したり、物流部長が代わるたびにコンペを実施して いる荷主もいる」と要藤主席コンサルタントはいう。
 しかし、頻繁なコンペは手間がかかるだけでなく、 弊害も生む。
コンペの開催頻度や提案依頼書を見れ ば、その荷主の本気度はわかる。
当て馬的なコンペに は3PLも力を入れない。
一時的な単価のダウンと引 き替えに、有効な提案や競争力のあるサービスを遠ざ けることになりかねない。
 単価だけを念頭に置いた安易な管理が結局は高くつ くこともある。
3PLの契約は、どの業務をどのレベ ルまで委託するのかを明文化する必要がある。
「簡単 なことのようでも、現状を見渡す限りできているケー スは少ない」とプライスウォータハウスクーパース(P WC)の木村弘美ディレクターは指摘する。
 もちろん、入荷や検品、保管、流通加工、配送と いったオペレーションについては双方の合意の元に契 約書にそれが明記されている。
また受注や発注業務、 それ以上のSCMに関係する業務は一般に3PLに委 託できる範囲ではないので、荷主が責任を持つとい うコンセンサスがある。
 問題はその中間にある業務だ。
「管理業務や企画業 務の役割分担、責任の所在が、双方にとって完全な “エアポケット”になってしまっている」と木村ディレ クター。
3PLが必要に応じて管理業務や企画業務を 行えば当然コストがかかる。
明確な契約を結んでいな い場合には、そのコストを配送費や保管費に上乗せし て請求することになる。
荷主にとっては“見えないコ スト”で、それが後にトラブルのタネになる。
 図1はPWCが荷主と3PLの役割分担を整理した ものだ。
そこに示されているのはマクロ的な項目で、 荷主によって定義するメッシュの大きさは変わってく 解 説 45  SEPTEMBER 2010 るが、通常は管理業務だけでも一〇〇近い項目を契 約前に整理する必要があるという。
ソーターが壊れた 場合に3PLと荷主のどちらが負担するのかといった レベルまで、具体的に取り決めを結んでおかないと、 何かが起きる度に場当たり的な協議を繰り返すことに なってしまう。
 荷主企業の多くは、それまで自分たちが日常的に処 理していた管理業務や企画業務を重要な機能だと認識 していない。
そのため管理・企画機能を担保する視点 を欠いたまま3PLを導入してしまう。
一方の3PL 側も明確な契約を結んでいない以上、管理・企画業務 に対する意識は薄い。
気が付けば必要な機能がポッカ リと抜け落ちた物流ができあがっている。
 しかも荷主はアウトソーシングの導入に伴って物流 管理組織を大幅に縮小する。
場合によっては解散し てしまう。
これは日本企業特有のことであるようだ。
 アビームコンサルティング経営戦略研究センターの 梶田ひかるマネージャーは「アウトソーシングの進ん だ欧米でも本社物流部門をなくしたという例は聞い たことがない。
通常、グローバル企業であれば本社に CLO(最高ロジスティクス責任者)を置き、さらに リージョンと国レベルの三階層に物流管理組織を設け ている」という。
 それに対して日本では、CLOはもちろんのこと、 本社物流部門を持たない企業が今では大手メーカーに も珍しくない。
物流子会社に機能を移管する場合に は、いっそうその傾向が顕著になる。
しかし、どれ だけ優秀な子会社であっても、本社と法人格を分けれ ば制約は出てくる。
 昨年九月、ソニーは機構改革で生産・物流・調達・ CSプラットフォーム生産本部に物流部門を新設し た。
二〇〇〇年に物流子会社のソニーロジスティック ス(現ソニーサプライチェーンソリューション=SSC S)に物流管理機能を移管してから約一〇年ぶりに 本社物流部門を復活させたことになる。
 さらに今年六月には、物流部門長の江連淑人取締 役にSSCSの社長を兼務させた。
SSCSは世界 中から部品を調達してソニーグループの各地の工場や 事業所に販売する商社機能を備えた物流子会社で、現 在ソニーグループが進めているグローバル規模のコスト 構造改革を加速させることが、一連の機構改革の狙 いと考えられる。
物流軽視が弱体化を招いた  家電や自動車業界において今やグローバル・ロジス ティクスは決定的に重要な競争条件となっている。
ま た従来は国内完結型だった産業でもアジア事業の比率 が高まり、グローバル規模の最適化が新たな経営テー マに浮上している。
日本企業の多くが改めてロジス ティクスを見直す必要に迫られている。
 ところが現在の荷主企業には、それを管理する組 織もなければ人材もいない。
かつては先進的なロジス ティクスで知られていた企業でも、いったんノウハウ の継承が途絶えてしまえば、それまでの蓄積が失われ るだけでなく、改めて現状把握から着手しなければ ならない。
アウトソーシングの進展が荷主企業の管理 能力を弱体化させる結果を招いた。
 日本企業が物流を軽視していることは現在の組織 体制や専門人材の待遇にもはっきりと表れている。
物 流の最高責任者はCLOどころか執行役員がせいぜ いで通常は部長止まりだ。
リーマンショックを契機と したビジネス環境の変化は、物流パートナーの再評価 だけでなく、荷主企業の管理体制のあり方にも再考 を促している。
特 集 3PL市場 2010 日通総合研究所の 要藤洋文ロジスティク スコンサルティング部 主席コンサルタント 図1 委託する業務範囲の明確化 荷主での対応 物量業務委託先での対応 PWC 資料より 入荷検品 発注受注 配送 クレーム 対応 問合せ 問合せ 配送状 況問合 せ対応 入庫 保管 出庫 流通 加工梱包出荷配送 返品回収廃棄 業務によって 実施者が異なる 配送 状況 確認 物流情報管理 拠点配置計画立案 業務管理 出荷先 業務改革提案 コスト管理 輸配送計画立案 リスク対応 PWCの木村弘美 ディレクター

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