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SEPTEMBER 2010 50
青果物を適温で管理する
パルシステム生活協同組合連合会(以下、
パルシステム)には一都八県の一〇の地域生
協が加盟している。 会員生協の組合員の総数
は一二六万九〇〇〇人、売上高に相当する総
供給高は一九四四億七〇〇〇万円に上る(二
〇〇九年度実績)。
供給高の大半は無店舗販売が占めている。
組合員のライフスタイルに合わせ三つのタイプ
のメーンカタログを展開している。 パルシステ
ムが会員生協から商品の企画・開発やカタロ
グ作成、仕入れ、物流業務などの委託を受け
事業を運営している。
パルシステムは、一九九〇年に全国の生協
で初めて「個人宅配」を導入し、班単位での
共同購入が基本スタイルだった生協の宅配を、
個人でも利用可能なサービスに変えた。 二〇
〇七年には二人分を一カ所に届けるサービス
「ふれんどパル」も開始し、共同購入と合わ
せて三通りの利用方法を組合員が自由に選べ
るようにした。
購入形態に応じ、パルシステムが「セット
センター」で商品を通い箱に仕分けて会員生
協の配送センターへ届ける。 組合員が個人宅
配またはふれんどパルを選択した場合はすべ
ての商品を個人別にセットし、共同購入の場
合は原則としてグループごとにセットする。 た
だし冷凍品だけは品質保持のため共同購入で
も個人別仕分けを実施している。
セットセンターは温度帯別に設けている。
従来は大きく「生鮮(要冷)」と「常温」の
二つのタイプに分けていた。 生鮮のセンター
では冷凍品、冷蔵品および青果物を扱う。 冷
凍品の管理温度はマイナス二〇度、冷蔵品と
青果物はともにプラス五度という設定だ。 一
方、常温センターでは日用品・衣料品などの
ほか根菜類などの青果物も扱っていた。
生鮮センターを相模(神奈川県)、岩槻(埼
玉県)、新治(茨城県)の三カ所、常温セン
ターを杉戸(埼玉県)、稲城(東京都)、八王
子(同)の三カ所に置き、各センターでセッ
トした商品を冷凍・冷蔵・常温の三つの温度
帯別に六二カ所の配送センターへ輸送してい
た。
だが、青果物のオペレーションを冷蔵品と
同じ温度帯で行うのは品質保持の点で問題
があった。 商品は温度帯別に専用の通い箱で
組合員に届ける。 冷凍品にはドライアイスを、
冷蔵品には蓄冷剤を入れることで通い箱の内
部の温度を維持していた。
しかし、葉もの野菜などは本来、プラス一
〇度前後が適温で、プラス五度の低温では傷
みやすくなる。 一方、雨上がりに収穫したキ
ャベツと同じ通い箱に、牛乳や豆腐を入れる
と水滴や泥で商品が汚れるという悩みを抱え
ていた。
物流管理を主管する商品管理本部では四年
ほど前から、青果物の温度帯を冷蔵品と分け、
プラス一〇度でオペレーションする方法を検
今年6月に4温度帯の物流管理体制をスタートした。
青果物に適した温度帯を新たに設け、冷蔵品とは別
の通い箱に仕分けて組合員に届けている。 セットセ
ンターの作業工程を見直すことにより、収穫から配
達までの日数を1日以上短縮した。 組合員の購入点
数が二ケタ伸び、早くも成果が上がっている。
定温物流
パルシステム生活協同組合連合会
鮮度アップ狙い4温度帯管理を実現
青果物の収穫から配達までを1日短縮
51 SEPTEMBER 2010
討してきた。
組合員一人あたりの青果物のオーダー点数
はかつては平均三・二〜三・四点で推移して
いたが、最近では徐々に減り、三点を下回る
ようになっている。 「組合員にもっと利用し
てもらうために、青果物を冷蔵品と別にセッ
トして品質を強化する必要があった」と商品
管理本部の武田昇物流部生鮮物流管理2課
課長は説明する。
青果物専用の温度帯を新たに設定して四温
度帯での管理を実現するために、商品管理本
部は物流体制の再構築に動いた。
具体的には、冷凍品専用のセットセンター
を一カ所新設し、そこに既存の生鮮センター
で処理している冷凍品の保管・仕分け業務を
集約。 余力の生まれた生鮮センターで冷蔵品
と青果物を別のカテゴリーに分けてオペレーシ
ョンを行うという計画を立てた。
しかし、青果物を一つのカテゴリーにまと
めること自体が容易ではなかった。 根菜類な
ど、もともと常温で管理していたものは同じ
青果物でも葉もの野菜とは適温が異なる。 実
験によって、ジャガイモをポリ袋に入れプラス
一〇度の通い箱にセットすると結露を起こし、
ジャガイモが汗をかいた状態になることがわ
かった。 結露を防ぐ袋の開発など、通い箱の
中を青果物に最適な温度帯に保つ研究に二年
余りを費やした。
別々にコールドチェーン構築
その成果をもとに〇八年九月からおよそ一
年をかけて、東京地区の会員生協の六つの配
送センター向けに実験運用を行った。
この間の昨年二月に冷凍品専用のセットセ
ンター「南大沢センター」(東京都)が完成し
た。 同センターには、同時にオープンした菱
食の「八王子南大沢低温DC」が併設されて
おり、二つのセンターが連携し業務を行う。
菱食のDCはパルシステムの二週間分の供
給量にあたる在庫の保管能力を持つ。 パルシ
ステムのベンダーは菱食のDCに商品を納品。
菱食がパルシステムのオーダーに基づいてDC
からセットセンターへコンベアで商品を搬送し
て入庫する。 その時点で仕入れが計上される
という仕組みだ。
セットセンターには保管スペースを一日分
の供給量の三割弱程度しか設けていない。 菱
食はセット作業の進捗に合わせて毎日七回〜
八回に分けて商品を入庫する。 これによりセ
ットセンターの在庫を従来より抑制できた。
この南大沢センターに相模・岩槻・新治
の三センターの冷凍品の物流業務を集約した。
さらに今年六月、三センターで冷蔵品と青果
物の作業を別々に行う体制が整い、四温度帯
物流を全面的にスタートした。
三センターでは冷蔵品と青果物の入荷口を
分けて、一時保管場所の温度をそれぞれの適
温に設定している。 配送センターへの輸送も
別便を仕立てている。 その上で通い箱に蓄冷
剤を入れるタイミングを商品ごとに設定する
ことで、別々のコールドチェーンを実現した。
冷蔵品は従来通り保冷車で輸送し、配送セ
ンターで蓄冷剤を入れる。 これに対し青果物
はセットセンターでピッキングを終えた後に蓄
冷剤を入れ、常温の一般車両で輸送する。 輸
送中に野菜が蓄冷剤によって冷凍障害を起こ
さないように通い箱のふたは開けたままにし
ておく。 こうすることで通い箱の中を冷蔵品
よりも高いプラス一〇度前後の温度に保つこ
とができる。
青果物の蓄冷剤をセットセンターで入れる
のは、配送センターの負荷を軽減する狙いも
ある。 配送センターでは、配送ルート別の仕
分け・積み込み作業のほかにドライアイスや
蓄冷剤を通い箱にセットする作業も行ってい
る。 三温度帯から四温度帯へ管理が細かくな
ることによって、一件のオーダーに対し必要
な通い箱の数は最大で三個から四個に増える。
その分、配送センターの業務負荷も増す。
そこで新たに発生する業務のうち青果物の
蓄冷剤をセットする作業をセットセンターで代
行することにした。 このため相模・岩槻・新
商品管理本部の武田昇
物流部生鮮物流管理2課課長
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治の三センターに、組合員から回収した蓄冷
剤を洗浄し急速冷凍する設備を整備した。
またセンターでは作業の小口化に対応して
ピッキングラインの改修工事も行った。
セットセンターのピッキングは、コンベア上
を流れる通い箱のバーコードをシステムが自動
識別し、バーコードと紐付けられた受注情報
をもとにピッキング指示をラインの棚にデジタ
ル表示する。 作業員
はこれに従い棚から商
品を取って通い箱に投
入するというやり方だ。
従来は機械でバー
コードを読む際にスト
ッパーで通い箱を一時
停止させていた。 だ
が冷蔵品と青果物の
ピッキング作業を分け
ることで、一件当た
りのピッキング点数は
減り、作業時間が短
くなる。 一時停止さ
せる仕組みではピッキ
ング作業のスピードに
通い箱の搬送が追い
つかず、手待ち時間
の発生する恐れがあ
った。 このため通い
箱を停めずにコンベア
速度の自動制御によ
そのあとで青果物のセットを行うスケジュール
を組むことによって、青果物の収穫から配達
までのリードタイム短縮が可能になった。
パルシステムでは青果物の大半を産地から
直接仕入れている。 従来、産地では青果物を
収穫の翌日にセンターへ納めていた。 センタ
ーにはセット作業日の前日の午後五時〜十一
時にかけて入荷する。 入荷の翌日にセットし
て配送センターへ輸送し、翌々日に組合員へ
配達する。 このスケジュールだと収穫から配
達までに三日かかる。
日数を短くするために、入荷をセット日の
前日ではなく、当日の朝七時〜午後四時の時
間帯に変更し、セット作業の開始時間を午後
五時に設定した。 これによって収穫から配達
までを一日短縮し、より新鮮な青果物を組合
員に届けることができるようになった。
ってバーコードを読み取る方法に変え、ピッ
キングラインのスピードを速めた。
入荷をセット作業当日へ変更
今回の取り組みでは、生鮮センターで冷蔵
品と青果物のオペレーションを分けるにあた
り、作業スケジュールをどう組むかが最大の
ポイントだった。
冷凍品と冷蔵品の二カテゴリーだけに分け
て、青果物を冷蔵品と同じ温度帯で扱ってい
たときは、午前九時に冷凍品のセット作業を
開始し、午後から段階的に冷蔵品と青果物の
作業へ切り替えるというスケジュールだった。
セット作業は全アイテムが入荷してからで
ないとスタートできない。 冷蔵品には日配品
など当日に製造・加工して納品するものが多
く、午前九時のセット作業開始までにすべて
の入荷を終えるのは難しい。 このため冷凍品
の入荷作業を前日に済ませておき、冷凍品か
ら先にセット作業を行う手順にしていた。
冷凍品を南大沢へ移した後の新体制では、
冷蔵品を先にセットするスケジュールを組んだ。
そのために入荷時間を早め、午前〇時から八
時頃までを冷蔵品の入荷・検品作業にあてた。
ただし北海道の根釧地区で製造する牛乳など
一部の商品はこの時間までに入荷が間に合わ
ないため、セット作業の開始時間を従来より
も一時間遅らせ、午前一〇時のスタートにし
ている(新治センターは十一時スタート)。
こうして冷蔵品のセット作業を先行させて、
産地・メーカーから組合員までの流れ
産地・メーカー
セットセンター
配送センター
組合員
産直青果(岩槻センター、相模センター、新治センター)
冷蔵品(岩槻センター、相模センター、新治センター)
冷凍品(南大沢センター)
ドライ品(杉戸センター、稲城センター、八王子センター)
入荷・
検収
商品
仕分け
セット
出荷
各地の地域生協
が計62カ所の
センターを運営
4温度帯による配送
ガイドランプの
点灯している箱
にピッキングし
た商品を投入す
る
棚の入庫口に冷
蔵品と青果物の
アドレスを紙の
色を変えて表示
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至近距離にある西部青果センターで補完して
いる。 一部の産地のパック詰め作業を代行し、
同時に検品も済ませてしまう。
西部青果センターはもともと相模センター
のセット業務を補うために設けた拠点で、青
果物の仕入れなどを担当する専門の子会社が
運営している。 新体制への移行に伴いセット
業務を相模に集約したことに対応し、西部青
果センターをパック詰めやカット野菜の加工を
行う専用の拠点(小分けセンター)に転用し
た。 二つのセンターの機能を分け、小分けセ
ンターを経由する品目を増やすことで全体の
効率化を図っている。
セットセンターには六本のピッキングライン
があり、各ラインで二五〇アイテムまで処理
できる。 一間口に一アイテムを割り当て一六
のゾーンに作業を分けている。 同じラインで
冷蔵品と青果物の作業を続けて行うため、ゾ
ーンごとに棚の入庫口に紙の色を変えて冷蔵
品と青果物の二つのアドレス表を表示してい
る。 アドレス表に記された品名と商品を目視
で確認して補充を行う。
ピッキングラインでは、コンベアのガイドラ
ンプを点灯させることで、商品を投入する通
い箱をピッカーに知らせる。 各ゾーンのピッカ
ーは棚のデジタル表示を見て商品を取り出し、
ランプの点灯している箱に投入する。
従来はピッキングの後に二人一組で内容検
品を実施していたが、現行の作業スケジュー
ルでは時間的に余裕がないため内容検品を
廃止し、新たに数量検品システムを導入した。
ピッキングラインの最後尾で作業者が通い箱
の商品の点数を数え、端末に表示された数と
照合する。
ただし数量検品システムでは、ピッカーの
投入ミスを発見できても棚への入庫ミスまで
はチェックできない。 棚へは当日にセットす
る分しか入庫しないため、入庫ミスがあった
場合にはピッキング終了時に数量に過不足が
生じる。 この時点で修正を行うことになる。
新体制のスタートとともに青果物のアイテ
ム数は従来の九〇から一五〇へ一気に増えた。
同じ品目で入り数の違うものや産地限定品も
あり、目視による確認だけでは棚へ補充する
際にミスが起こりやすくなった。 実際、六月
はセットミスがやや増えている。
パルラインの吉川竜二相模センター所長は、
「見た目では区別しにくい商品が増えて作業
に負荷がかかっている。 わかりやすい表示方
法などを提案して(パルシステムと)いっし
ょに改善を進めていきたい」と話している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
一部の青果物については収穫から入荷まで
の時間をさらに短縮し、当日の朝に収穫した
ものをセンターへ入荷してセットし、翌日に
組合員へ届ける企画も実現した。 完熟に近い
状態で収穫することで濃厚なうまみを感じて
もらうのが狙いだ。 トマトやキャベツなど毎週
一〇品目程度を対象に「産直いきいき品質」
と表示して六月から実施している。
鮮度アップの効果は直ちに現れた。 六月は
青果物の購入点数が前年比で一七%増と大幅
に伸びた。 センターではこうした鮮度にこだ
わったリードタイムの短い商品の企画を想定
して、青果物の入荷作業とセット作業の時間
帯を設定しているため、今後「産直いきいき
品質」の品目が増えても現行のスケジュール
で対応できるという。
セットミス防止が課題
セットセンターの入荷・検品・ピッキング
作業はパルシステムの物流子会社「パルライ
ン」に委託している。
青果物は産地で販売単位にパック詰め(小
分け)されて入荷する。 入荷作業のあとに一
点ずつ傷みなどがないか検品を行い、冷蔵品
のセット作業が終了したピッキングラインから
順次、棚への入庫作業を開始する。
入荷が前日から当日に変わったことで、セ
ット作業開始までの一連の作業を短時間で行
わなければならなくなった。 負荷軽減のため
三つのセンターのうち相模センターの業務は、
パルラインの吉川竜二
相模センター所長
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