ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年9号
特別レポート
港湾運送会社三六五社実態調査帝国データバンク

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

特別レポート  当社(帝国データバンク)の会社概要ファ イル「COSMOS2」で、二〇〇七年〜 〇九年の売上高、税引き後当期利益、資本 金、所在地、設立(創業)年月が判明して いる三六五社について調査分析を行った。
●「港湾運送会社」は、売上高のうち、港 湾運送の業務が当該会社の収入の最大比 率を占める会社。
ただし、倉庫業など周 辺物流業務と密接なため、売上高が最大 の業種でなくとも歴史的経緯から港湾運 送業が主業と認められる会社を含む ●売上高と利益は、その年の一月から十二 月までの間に決算した会社。
単位は百万 円。
百万円未満は切り捨てた。
なお、一 選定を公表した。
〇九年の売上高合計は七・四%減  港湾運送会社三六五社のうち、都道府県 別で最も本店所在地が多いのは、四八社の神 奈川県だった。
続く東京都、大阪府、兵庫 県ではそれぞれ四〇社があり、京浜三港と 阪神二港を擁する四都府県で全体の約四六・ 〇%を占めた(図1)。
 〇九年の三六五社の売上高合計は、前年 比七・四%減の約一兆七五二七億五七〇〇 万円。
税引き後利益額は同三三・四%減の 約二八九億七六〇〇万円(図2)だった。
景 気後退に伴う荷動きの低迷が影響したとみら れる。
 売上高トップの上組(神戸市、東証一部 部推測値を含む。
また、十二カ月未満の 変則決算の売上高は年換算した ●設立(創業)年は、原則として法人格が 成立した日としたが、歴史の古い会社は営 業を開始した年をとった  当社が港湾運送業を本格的に調査するのは 今回が初めて。
国土交通省が推進する「国 際コンテナ戦略港湾」政策の港湾運送会社へ の影響という観点から企画した。
国際コンテ ナ戦略港湾とは、国内主要港湾の中から一 〜二港を絞り込み、集中的に投資してアジア のハブ港を育成するという港湾政策。
国交省 は八月六日、「京浜港(東京港、横浜港、川 崎港)」と「阪神港(大阪港、神戸港)」の SEPTEMBER 2010  66  帝国データバンクは八月九日、「港湾運送会社三六五社実態調査」を 発表した。
港湾運送業界を対象とした市場調査は珍しい。
同調査から は、変化に乏しい業界の実態が窺える。
しかし、政府が集中的に投資を 行う「国際コンテナ戦略港湾」などの指定から外れた港では、今後企業 の淘汰・再編が起こる可能性もあるという。
調査担当者へのヒアリング に基づき、同レポートを加筆・再編集して掲載する。
港湾運送会社三六五社実態調査 帝国データバンク 67  SEPTEMBER 2010 上場)は、業界最大手として総合 物流企業に脱皮している。
第二位 の日新(東京・千代田区、東証一 部)は、総合物流企業として全国 に拠点を展開しており、第三位の 鈴与(静岡市)は、清水港を拠点 とする中部経済界のトップクラス 企業だ。
第四位の神鋼物流(神戸 市)は神戸製鋼所系列。
 これらに第五位の名港海運(名 古屋市、名証二部)、第六位の伊 勢湾海運(名古屋市、名証二部)、 第七位のアサガミ(東京・千代 田区、東証二部)、第八位の宇徳 (横浜市、東証一部)が、上場企 業として続いた。
 各上位企業は港湾荷役だけでな く倉庫業や陸運業なども手がけて おり、総合物流企業となっている が、売上高の規模別では、売上 高や税引き後利益の動向に大きな 違いはなかった。
 なお、京浜三港と阪神二港を 擁する東京都、神奈川県、大阪 府、兵庫県に本社を置く企業の売 上高合計は、前年比六・二%減 の約一兆一一二〇億九八〇〇万 円で全体の約六三・四%、税引き 後利益合計は同二二・四%減の 約二二三億五〇〇万円で全体の 約七七・〇%を占めた。
老舗企業ほど多角化進む  三六五社の資本金額合計は、九四二億三 六四五万七〇〇〇円となった(図3)。
 資本金額第八位のリンコーコーポレーショ ン(新潟市、東証二部)は、日本海側で拠 点港を一、二港選定する「日本海側拠点港 湾」の有力候補とされる新潟港を拠点とし、 港湾埠頭を私有する全国でも数少ない企業。
 第九位の伏木海陸運送(富山県高岡市、 東証二部)は上場企業、第一〇位の国際埠 頭(横浜市)は、三菱商事の持分法適用会 社で横浜港の本牧に大型船の着岸が可能な水 深一七・五メートルの自社埠頭を私有する。
 資本金額の特徴としては、上組の資本金 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 順位 売上高 2007 年 商 号 2008 年2009 年 利益 売上高 前年比 利益 前年比 売上高 前年比 利益 前年比 195,712 13,018 206,422 5.5% 13,878 6.6% 205,307 -0.5% 13,072 -5.8% 132,893 1,660 139,249 4.8% 1,707 2.8% 121,344 -12.9% 588 -65.6% 91,311 156 93,758 2.7% -922 -691.0% 81,323 -13.3% 214 123.2% 57,091 502 62,490 9.5% 1,088 116.7% 60,217 -3.6% 397 -63.5% 53,917 2,596 53,455 -0.9% 2,553 -1.7% 47,490 -11.2% 2,174 -14.8% 40,803 1,658 42,139 3.3% 1,513 -8.7% 38,685 -8.2% 916 -39.5% 31,193 675 32,867 5.4% 416 -38.4% 32,113 -2.3% 140 -66.3% 30,096 1,369 31,927 6.1% 1,299 -5.1% 31,999 0.2% 1,331 2.5% 24,779 144 25,638 3.5% -202 -240.3% 24,041 -6.2% -80 60.4% 23,221 91 23,262 0.2% 91 0.0% 22,903 -1.5% 91 0.0% 1,135,137 33,907 1,180,989 4.0% 30,651 -9.6% 1,103,806 -6.5% 24,179 -21.1% 638,166 14,026 648,039 1.5% 11,767 -16.1% 590,461 -8.9% 4,480 -61.9% 62,390 738 64,406 3.2% 1,085 47.0% 58,490 -9.2% 317 -70.8% 1,835,693 48,671 1,893,434 3.1% 43,503 -10.6% 1,752,757 -7.4% 28,976 -33.4% (株)上組 (株)日新 鈴与(株) 神鋼物流(株) 名港海運(株) 伊勢湾海運(株) アサガミ(株) (株)宇徳 鈴江コーポレーション(株) 楠原輸送(株) 都道府県 神奈川 東京 大阪 兵庫 愛知 福岡 北海道 静岡 千葉 広島 その他 合計 社数 48 40 40 40 30 21 20 10 9 9 98 365 図1 図2 出所:帝国データバンク (単位:百万円) 出所:帝国データバンク 100 億円以上(40 社) 10 億円以上〜 100 億円未満(190 社) 10 億円未満(135 社) 合 計 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 順位 商 号 資本金(千円) 出所:帝国データバンク 図3 31,642,000 6,097,263 2,479,000 2,350,000 2,321,658 2,189,000 2,046,000 1,950,000 1,850,500 1,800,000 (株)上組 (株)日新 神鋼物流(株) 名港海運(株) (株)大運 アサガミ(株) 伊勢湾海運(株) (株)リンコーコーポレーション 伏木海陸運送(株) 国際埠頭(株) 11 〜 101 102 〜 354 355 〜 365 365 社合計 365 社平均 1 億円以上 1000 万円以上〜 1 億円未満 1000 万円未満 94,236,457 258,182 特別レポート SEPTEMBER 2010  68 第二位の日本と第三位の中国に挟まれている ことを利用しているためで、日本は地政学的 に劣後せざるを得ない。
特に欧州〜アジア間 のコンテナ輸送の場合は、日本が各航路の終 点・起点になるのでハブ港にはなりえない。
 日本がハブ港を持つのであれば、まずは日 本海側港湾や瀬戸内海沿岸港湾から釜山港な どに貨物が流出しないよう、高速道路や鉄道 と港湾との結節や、内航海運業の育成、各種 港湾使用料金などの抑制・低減策などが必要 である。
 中でも港湾運送事業法は、戦後の荷役の 混乱を抑制するために一九五一年に制定され、 事業者の乱立やダンピングを防ぐのに一定の 効果を上げたと思われるが、港湾運送事業法 が適用される指定港湾は〇九年九月末現在で 九三港もあり、指定港湾では港湾労働者の福 利制度などの分担金を荷主が負担する制度と なっている。
これは国際競争上、大きなマイ ナスとなっており、港湾労働者の保護と港湾 整備は分けて考えるべきだろう。
 また、港湾運送会社で上場している企業は 十三社に過ぎない一方、「港湾運送事業」を 営む企業は、倉庫業者なども含め〇九年三月 末現在で全国に九一四社もあり(検数、鑑定、 検量事業を除く)、乱立気味である。
国際コ ンテナ戦略港湾などハブ港の指定から外れた 港湾のみを拠点とするような港湾運送会社は、 取扱荷物の減少などで淘汰再編されることも ありえるだろう。
がズバ抜けて大きい一方、資本金一億円未満 の会社が大半を占めていることが挙げられる。
今後、物流の連続性の向上や、必要な設備 投資金額などを鑑みると、資金の調達も含め た業界再編が求められよう。
 一方、三六五社の平均業歴は五九年とな った。
他業界に比べて市場への新規参入・退 出が非常に少なく、平成以後に設立されたの は、わずか一四社だった(図4)。
 三六五社のうち、最古参は天野回漕店(静 岡市)の一八〇〇年(寛政十二年、図5)。
清水港と御前崎港を拠点としている。
第二位 は鈴与で一八〇一年(享和元年)。
第三位は 上組の一八六七年(慶應三年)で、神戸港 の東部、すなわち「上方」に位置していたこ とが、現商号の由来となった。
 大正以前に設立(創業)された企業の一社 平均の売上高は一〇〇億円超と、設立が旧 い会社ほど売上高は大きい。
逆に歴史が浅く なるにつれて売上高は減少する。
旧い企業ほ ど倉庫業、陸運業など周辺業務にも進出して 多角化しているのに対し、地方港所在の若い 港湾運送企業は、石炭積み出しなど衰退産 業に依存していたり、地方港が戦後の高度経 済成長期に整備されたため、後背地からの集 荷に限りがあることなどが原因と思われる。
ハブ港以外では淘汰再編の可能性  韓国が空と海でそれぞれハブ港(仁川空港 と釜山港)を擁しているのは、GDP世界 ? ? ? ? ? ? ? ? ? 順位 図4 図5 設立時期 平均売上高 創業年 商 号 所在地 売上高 1800 1801 1867 1872 1873 1873 1877 1880 1882 1884 9,395 81,323 205,307 3,829 2,839 10,154 17,648 5,671 1,604 1,062 出所:帝国データバンク 出所:帝国データバンク 静岡県静岡市 静岡県静岡市 兵庫県神戸市 神奈川県横浜市 神奈川県川崎市 兵庫県神戸市 兵庫県神戸市 兵庫県神戸市 神奈川県横浜市 兵庫県神戸市 (株)天野回漕店 鈴与(株) (株)上組 (株)ホンマ (株)村山商店 (株)大森廻漕店 (株)後藤回漕店 ニッケル.エンド.ライオンス(株) 白鳥運輸(株) (株)丸亀組 11,245 6,799 3,149 1,340 大正以前(56 社) 昭和戦前期設立(48 社) 昭和戦後期設立(247 社) 平成以後設立(14 社)

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