ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年9号
グローバルSCM
第4回 SCM部門の進化はどこまで来たか

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2010  70  日本の一般消費財メーカーのSCM部門は、 当初は物流管理部門に需給調整機能を持たせ るかたちで組織された。
「ロジスティクス部」 の誕生だ。
その後「SCM部」、さらに「S CM本部」に名称が変わり、組織が格上げさ れていくのに伴って、その管轄領域は調達や 生産管理にまで広がっている。
  SCM機能の配置とSCM組織  食品や日用雑貨品などの「CPG(Consumer Package Goods)」メーカーは、今世紀に入っ てから組織の巨大化が目立っている。
 一九九〇年代後半から続く低価格化は底を 打つ気配がない。
量販店やコンビニ、ドラッ グストアなどの組織型小売業の販売シェアの 増大は、近年ではプライベートブランド(PB) 強化という形で、ナショナルブランド(NB) メーカーに対する価格引き下げ圧力をますま す強くしている。
 その一方で日本の国内市場はこの先、人口 減少による規模の縮小を避けられないことが 明らかとなっている。
 その対応策として、CPGメーカーは規模 の経済性や他業種への進出を目的としたM& Aや多角化および海外進出を加速させている。
それに伴いメーカーの組織構造も複雑化して いる。
持株会社制度や事業部制の導入、機能 子会社設立による間接業務の集中化・専門化 の追及など、様々な組織改革が実施に移され ている。
 このような状況の中で、SCMの管理組織 はどのような変化を遂げているのであろうか。
 
咤達輿反イ砲弔い討蓮⊇祥茲ら定石とし て次のようにいわれてきた。
 「在庫問題を解決するには、複数部門間の 調整を行う必要がある。
そのためには、在庫 に関する三つの計画、すなわち需要・生産・ 供給の計画機能を一つの部門に統合し、か つ生産部門、営業部門との間で発生するコス ト・トレードオフの調整を円滑に進められる ように、その組織をトップ直下に配置する。
また統合化を広く社内外にアピールするため に組織名称を『SCM』とするのが望ましい」  本リサーチ(※注)では、SCMの組織形態 と在庫日数との関係についても調べている。
在庫監視機能、需要計画機能を持つ部署をS CM組織として位置付け、在庫に大きく影響 する生産計画機能、供給計画(物流拠点への 補充)機能のそれぞれが、社内にどう配置さ れているかについて、各社にインタビュー調 査を行った。
(※注)アビームコンサルティングが今年二月に発 表した「日本型SCMの将来」。
日本の一般消費 財(CPG)メーカーを対象にSCMの実態を調 査した。
本連載は同レポートをベースにしている。
 調査結果は、いくつかの興味深い傾向を示 した。
そのうち前号では、在庫の少ない「グ ループ1(在庫日数が一五日未満)」と在庫の 多い「グループ3(同三〇日以上)」の企業群 第回 アビームコンサルティング 経営戦略研究センター 次世代を拓く 日本型SCM が 梶田ひかる SCM部門の進化はどこまで来たか 4 日本型SCMが次世代を拓く 71  SEPTEMBER 2010 が共に、生産計画立案機能を「SCM部門」 以外の生産部門等に配置していることを述べ た。
 これに加えて今回の調査によって明らかに なったのは、SCM部門と調達部門との関連 である。
「グループ1」と「グループ2(在庫 日数二〇〜二五日未満)」の企業群では、S CM部門に調達を含める傾向が顕著に見られ た。
これは我々が調査前には予測していない ことだった。
組織の名称・ポジションと在庫日数  日本のCPGメーカーでは、九〇年前後か ら物流部門が在庫監視と需給調整を行う事例 が徐々に増えてきた。
それに伴い、従来の物 流部門との違いを明確に出すために、部門名 称を「ロジスティクス」とする企業が現れた。
さらに二〇〇〇年頃になると、物流と需給調 整の違いを明確化する目的で、組織名称を「S CM」に変更する事例が散見されるようになっ た。
 しかし今回インタビューを行った中堅以上 のCPGメーカー一八社の調査結果を見る限 り、SCM部門の名称や組織の社内的位置付 けと、その会社の在庫日数との間には明確な 相関は見られなかった(図1)。
 具体的には、SCM部門の名称に「SCM」 を用いている企業は一八社中八社(四四%)、 「ロジスティクス」あるいは「物流」としてい る企業は九社(五〇%)、その他の名称を用 いている企業は一社(六%)であった。
 また、SCM部門が物流部門をベースにし て改組/分割されてきた企業は、一八社中 一七社(九四%)となっている。
ここから日 本のC P Gメー カーのSCMが物 流の管理範囲拡大 という形で進展し てきたことは読み 取れるが、部門の 名称と在庫日数に は、相関性は確認 できなかった。
 一方、組織ポジ ションについて、 SCM部門は、生 産─営業間でのコ ンフリクトを解消 するために、中立 的に双方を見て調 整を行えるトップ 直下に配置するこ とが有効であると されている。
 そのこともあっ てか、「S C M 」 という名称を用い ている八社中の六 社が、トップ直下 にSCM部門を置いている。
残りの二社もトッ プ直下とほぼ同様の性格を持つ経営企画部門 内に配置している。
 だが、営業部門内にSCM部門を設けてい る企業も、グループ1で一社、グループ2で二 社存在していることから、SCM部門の組織 ポジションと在庫日数についても相関性があ るとは言えない。
 つまり、これまで定石とされていた「SCM」 という部門名称、そして「トップ直下」とい う組織ポジションは、そうしなければならない、 というものではないと考えられる。
 もちろん、名称や組織ポジションを工夫す ることが全く無意味ということではない。
回 答企業の中には、「過去は物流部門で需給管 理の高度化に取り組んでいたが、進まないため、 それを切り離し、新たに設けたSCM部門に 需給管理機能を移管した」という事例もあった。
 そのように、社内意識改革を促す目的で 名称やポジションを活用することはできるが、 実際の在庫削減は名称やポジションよりもむ しろ、需給改革についてのトップの理解やそ れを進める人材、そして以下に述べるSCM 部門の管轄範囲が鍵になっていると考えられる。
「SCM本部」とその管轄範囲  今回の調査で「SCM」という言葉を部署 名に用いていた八社のうち六社が「SCM本 部」もしくはそれに類する部署名となっている。
図1 SCM 部門の組織ポジションと部門名称 c 2010 ABeam Consulting 在庫日数 グループ1 15日未満 グループ2 20 〜 26日未満 グループ3 30日以上 トップ(事業部) 直下経営企画部門内営業部門内生産部門内 3 (2) 0 (0) 1 (0) 0 (0) 6 (4) 1 (0) 2 (0) 0 (0) 3 (0) 1 (1) 0 (0) 1 (0) ※( )内は部門名称が「SCM」の数  ※表中の数値は2009年12月時点 SEPTEMBER 2010  72 そして「本部」形態をとる企業は、在庫の多 いグループ3には見られなかった。
 組織構造は企業により微妙に異なる。
それ を大まかにモデル化したものが図2である。
この図のパターン1に示した通り「SCM本部」 という名称を用いている企業に特徴的なのは、 その傘下に調達部門を置いている点である。
たしかに、いくら需要計画の精度を高めても、 原材料・資材の調達をそれに連動させない限 り、在庫は最適化しない。
 また需要計画策定から生産着手までの時間 を短縮するためには、調達も同じ部門内に配 した方が良いという判断も働いていると考え られる。
 もっとも、各社が計画サイクルを月次から 週次に短縮するタイミングで、SCM部をS CM本部に格上げしたわけではない。
九〇年 代に既に在庫削減を軌道に乗せて、現在はデ イリー生産に移行しているグループ1の企業群 にも、近年になってから「本部化」した企業 は存在する。
 つまり、生産をより柔軟に行うためには、 需要計画と購買計画のいっそう密接な連携が 必要であるということに気付き、その課題を 克服しようとするタイミングで、各社はSC M部門を本部化し、そこに調達機能まで持た せたということであろう。
 さらに今回調査を行った企業の中には、S CM本部の管轄範囲を調達以外にも拡大し、 生産部門までその配下としている企業が四社 あった(パターン2)。
このいずれの企業もグ ループ2に属しており、急速に在庫を削減し ている。
 
咤達揺門内に生産計画立案機能を集める だけでなく、生産部門ごとその配下に移すと いう大掛かりなBPR(ビジネス・プロセス・ リエンジニアリング)が行われているのである。
今回の調査対象企業が一八社に限られている ことを勘案すると、このような組織構造をとっ ている企業はかなり多いと推測される。
 興味深いことに、SCM部門長がIT部門 長を兼ねているケースも複数存在した(パター ン3)。
このことは、需給改革にIT活用が 切り離せないためというよりはむしろ、プロ セス簡素化を検討すると、IT再構築とSC M組織構造の再構築の双方が必要という結論 に行き着くためだと考えられる。
 このように今回の調査で判明したことのひ とつとして、SCM部門の管轄する機能が拡 大する傾向にあることが挙げられる。
SCM 部門が単なる需給管理を超えた機能を管轄す るようになっているのである。
 なお、SCMと調達部門との関連について 一つ付け加えておきたい。
図2では調達部門 と簡単に記しているが、食品メーカーの場合、 調達の中身は大きく二つに分けられる。
一つ は原材料の調達であり、もうひとつは包材・ 資材の調達である。
 食品の原材料の中心となる農産物の調達は、 収穫時期が通常は年に一回しかない。
しかも、 天候に左右される、相場で価格が動くなどの 特徴がある。
輸入品も多く、近年は食の安全 確保のために、特定農場との契約、さらには グループ会社による農業への進出など、多様 な動きを見せている。
 このような原材料の手配は、一年から数年 先までの製品の供給能力や製造原価に影響す る重要な経営課題だが、そこに短期的な需要 動向を連動させようとしても制約が大き過ぎる。
 週次での需給計画に大きく影響するのは、 むしろ包材・資材の調達である。
これらの調 達は、概ね一カ月先位までの予測を包装材料 メーカーに出し、実際に生産で使用する日の 三日前に発注するといった形態をとる。
 このように原材料と資材では、調達の特性 図2 SCM本部の典型的組織パターン パターン1 調達とロジスティクスを管轄(2社) パターン2 調達・生産・ロジスティクスを管轄(4社) パターン3 
咤達揺門長がIT部門長を兼務(4社) SCM本部 SCM本部IT 部門 SCM企画 調達 ロジスティクス SCM本部 SCM企画 調 達 生 産 ロジスティクス ※SCM部門内の組織構造はパターン2またはそれ以外 本部長が兼務 c 2010 ABeam Consulting 73  SEPTEMBER 2010 日本型SCMが次世代を拓く が異なるため、食品メーカーでは担当部署を 分けているケースが多く見られる。
 今回の調査で、SCM本部の傘下に調達部 門を設けていた企業では、そこで原材料と資 材の双方をカバーしているケースと、資材の みのケースが、ほぼ拮抗していた。
本リサー チは調達部門にフォーカスしたものではなかっ たため、その理由についてのインタビューは 行っていない。
今後の調査が望まれる。
 いずれにせよ、日本のCPGメーカーのS CM部門は、本部という位置づけとなり、そ の管理範囲に調達も含めるようになってきて いる。
これはSCMがサプライヤー側に拡張 してきたことの現れであろう。
SCMはそも そも流通全体での効率的・効果的なモノの流 れを目指すものである。
とりわけ日本市場に おいては、販売先との連携に限界のあること から、管理範囲拡大の方向が調達先へ向かう のは自然な流れであろう。
 調達先との連携は、自動車・電機業界が先 行している。
またCPGにおいては、その商 品特性上、自動車・電機とは異なる調達の難 しさもある。
今後、CPG業界における調達 連携がどのようなものになっていくのかにつ いては、継続的な調査が必要であろう。
持株会社制度とSCM組織  本リサーチでは、持株会社制度におけるS CMの諸機能配置についても調べている。
近 年、持株会社制に移行するCPGメーカーが 増加している。
本リサーチの調査対象とした 企業でも一八社中四社が持株会社制を採用し ている。
 持株会社制を導入している企業はいずれも 物流子会社を持ち、事業横断で物流業務の集 中化を行っている。
それに加え、業務集中化 によるコスト低減を目指し、事務業務もシェ アード・サービス・センター(SSC)とし て別会社化している。
 
咤達裕’修砲弔い討六夕卉羯絢劼、事業 別に配置している。
同様の傾向は、持株会社 制をとる企業のみではなく、事業部制をとっ ている場合にも見られる。
 
咤達裕’修鮖業別に分けるか、それとも  物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、日 本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説明 だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタントの 心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描写。
 本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) ¥1,890(税込) 2005年3月発行  白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます!   本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか──ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) ¥1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」  湯浅和夫 著 (かんき出版) ¥1,575(税込)  2005年2月発行  物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
 本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
SEPTEMBER 2010  74 日本型SCMが次世代を拓く 業界における物流子会社およびSSCは、後 者の事務センター的存在に移行するという流 れが自然だと感じられる。
 しかしながら、グローバルで見ると、「FM C G(Fast Moving Consumer Goods)」と 呼ばれる、きわめて動きの速い消費財を扱う 世界的メーカーには、本社にSCM戦略企画 機能を設け、さらにリージョン、国それぞれ にその具体的な管理を行うSCM組織を設け るという、三階層のSCM管理体制をとって いる企業が多い。
 持株会社制を採る日本のCPGメーカーは いずれも海外売上高の増加を狙っていること から、今後は海外事業の拡大に伴い、SCM 管理体制も欧米型の組織構造に変えていくこ とになるのか、あるいは日本企業独自の組織 構造を今後も維持するのか、興味のあるとこ ろである。
自販機、業務店など)が異なる事業のSCM は、無理に統合するより、個別に対応したほ うが管理しやすいという判断は理解できる。
 それでも調達については、四社中二社がグ ループ全体での統合化を行っている。
異なる 事業間で同じ原材料や類似する包装資材を調 達している場合には、集中化による調達コス ト削減効果が見込まれる。
集中化により業務 効率を上げることで浮いた時間やリソースを、 商品開発時点における原材料や包材の仕様検 討に振り向けて、戦略購買を進めようとする 動きもある。
 またSCM企画機能についても、一社を除 き、他はグループ横断で行う体制をとっている。
 このような調達機能、SCM企画機能の配 置の違いが、各社のSSCの位置付けにも、 そのまま反映されている。
そのSSCがグルー プ横断で検討すべきスタッフ機能を備えた機 能会社なのか、単なる業務効率化を狙った事 務センター的存在なのかという違いとなって、 それが表れている。
 物流子会社はもともとグループ業務を集中 化して効率化を図るという目的で設立され ていることが多く、その意味では後者と類 似点がある。
また、CPG以外の業種では 二〇〇〇年代に入ってからSSCに集中化さ れた受注センター業務が、食品業界において は一足早く九〇年代から物流子会社に移管さ れて集中化されている。
 このような経緯からすると、日本のCPG 全社で統合すべきかは、判断の分かれるとこ ろであろう。
実際、過去には集中化に取り組 んだが、事業ごとの違いが大き過ぎるため、 可能な範囲でSCM業務の標準化を行った後 で、現在は事業別で行うかたちに戻している というケースもあった。
 生産プロセスやリードタイム、外注工場の使 用方法などの生産形態や販売形態(小売業態、 梶田ひかる(かじた・ひかる) 1981年、南カリフォルニア大学OR理学修 士取得。
同年、日本アイ・ビー・エム入 社。
91年、日通総合研究所入社。
2001年、 デロイトトーマツコンサルティング入社(現 アビームコンサルティング)。
現在に至る。
電気通信大学大学院情報システム学科学 術博士。
中央職業能率開発協会「ロジステ ィクス管理2級・3級」のテキスト共同監修 のほかSCM関連の著書多数。
アビームコ ンサルティングHP http://jp.abeam.com 図3 持株会社とSCM部門 パターン1 事業会社別にSCMを構築 (2社) パターン2 事業会社別にSCMを構築 ただしSCM企画と調達は集中化 (1社) パターン3 事業会社の1つにSCM機能を集中 調達機能は機能会社に集中 (1社) 持株会社 事業会社 A 事業会社B SSC SCM SCM ( 物流子会社) 事業会社 A 事業会社B 機能会社 SCM SCM c 2010 ABeam Consulting SCM企画 調達 物流子会社 事業会社A 機能会社 調達 事業会社B SSC ( 物流子会社) SCM 持株会社 持株会社

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