ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年10号
特集
Interview 「家電量販向け3PLで中国に進出する」三洋電機ロジスティクス 浅野 勉 社長ロングリーチグループ 吉沢正道 代表

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2010  20 「家電量販向け3PLで中国に進出する」  2000年に3PLを開始。
05年に株式公開。
そして今年、親会 社の株式売却で完全独立した。
10年越しの取り組みで外販比 率は既に6割以上に達している。
新たに株主となった投資ファ ンドのロングリーチグループの支援を受け、メーンとする家電 量販店向けセンター事業で中国市場に本格的に進出する。
物流は有望な投資セクター ──今回の入札に先立ち、三洋電機は二〇〇七年に 半導体事業の売却に動きました。
結局これは成立し なかったわけですが、そこにもロングリーチの名前が 出ていました。
ロングリーチグループ・吉沢正道代表「三洋電機さん には従来から様々なご提案をさせてもらっています。
半導体もその一つでしたし、他のノンコア事業につい ても我々のアイデアを投げかけてきました。
三洋電機 ロジの件もそうでした」 ──これまでのロングリーチの投資先を見ると、物流 事業とは縁はなかった。
吉沢「我々は四つの投資セクターを設定していますが、 その一つがビジネスサービス分野です。
とりわけ物流 は非常に有望な投資セクターだと考えて、ずっと注視 してきました。
しかし、物流が有望だといってもど こでもいいわけではなくて、やはり3PLに注目して いた。
その点で三洋電機ロジは魅力的でした」  「その一方で、三洋電機ロジの売り上げは今のとこ ろ国内がほとんどです。
そこにアジアの成長を組み 合わせる。
我々は日本土着のファンドですが、日本 本社の他に香港にも本社を置き、アジアにネットワー クを持っている。
また当社は各業界の専門家をアド バイザリーとして抱えています。
今回の三洋電機ロジ の案件では、ハイアール・アジアパシフィックのフィ ル・カーマイケル社長にお手伝いいただきました」  「我々は単に資金を提供するだけでなく、人とアイ デアまで含めて提供し、出資先と一緒に汗をかいて いくかたちで活動しています。
そのネットワークを活 かすことで、三洋電機ロジの今後の成長に貢献でき ると考えています」 ──今回のロングリーチの買付価格は一七五〇円で す。
M&Aの噂が世間に出回る前まで三洋電機ロジ の株価は七〇〇円台で推移していました。
倍以上の プレミアムというのは? 吉沢「もちろん投資家とすれば安く買えるのに越し たことはないのですが、妥当な値段だろうと思いま す。
利益に対する倍率やPBR(株価純資産倍率) を見れば、三洋電機ロジの株価がこれまで低く留め 置かれていたことは事実です。
上場企業で親会社が 過半の株式を握っている場合には、株式の流動性が 低くなるため、正当な評価が与えられていないこと がよくあります。
フェアな価格で購入することには 異論はありません。
今後の成長に、それだけの自信 を持っています」 ──一方、これは浅野社長に伺いますが、三洋電機 ロジの場合は従来から「脱・親会社」を掲げていま した。
今回のM&Aも既定路線だったのでしょうか。
三洋電機ロジスティクス・浅野勉社長「確かに資本 関係は別にして、事業会社として親会社に頼らない という考えは従来からありました。
当社は二〇〇〇 年から3PL事業に本格的に乗り出しましたが、そ の拡大に伴って三洋電機グループ向けの、いわゆる “内販比率”が下がってきた。
一〇年三月期の内販比 率は四〇%。
今期に入ってからは、さらにそれが三 六%程度まで下がってきている」  「つまり3PL化と同時に当社は事業会社としての 独立を志向してきて、さらに〇五年一〇月に上場し たことが大きなターニングポイントになった。
そこで 完全に自主独立で行くかたちができあがり、親会社 から人を受け入れることも一切なくなった。
親会社 から経営に口を挟まれたこともありません。
そのた め今回の株式売却にも驚きはありませんでした」 三洋電機ロジスティクス 浅野 勉 社長 ロングリーチグループ 吉沢正道 代表 21  OCTOBER 2010 三洋電機ロジスティクスの沿革 1971 年 1999 年 2000 年 2001 年 2005 年 2008 年 2010 年 1963年設立の三栄興産を社名変 更、三洋電機商品センターを設立 三洋電機ロジスティクスに社名変更 3PL事業を開始 大手家電量販店からセンター運営事 業を受託 ジャスダックに株式を上場 近鉄エクスプレスが資本参加。
17%の株式を取得して2 位株主に ロングリーチグループによる株式公開 買付で三洋電機グループから独立 ロングリーチグループの概要  2003 年設立の独立系投資ファン ド。
日本と香港に本社を置き、アジア を対象とした投資案件を手がける。
こ れまでの投資先は日本マクドナルド、 海底ケーブルのOCC、サイバードホー ルディングス、台湾の安泰商業銀行 など。
ファンド規模は約800 億円。
吉 沢正道代表はモルガンスタンレー証券 出身で、アドバイザリーボードには、オ リックスの宮内義彦会長やグリーンヒ ル・ジャパンの堀田健介会長などが 名を連ねる。
──過去一〇年の三洋電機ロジを振り返ると、外販 拡大と株式公開を急ぐ余り、かなりの無理をしてき た、利益の出ない外販を内販の儲けでカバーしてきた ように見えるのですが。
浅野「確かにかつては外販の利益率のほうが低かっ た。
しかし今は内販と外販で、利益率はほとんど変 わりません。
ご承知のように三洋電機グループ自体、 非常に厳しい状況が続きましたので、それだけコス ト削減要請も強かった」 ──今回のM&Aと並行して、パナソニックは三洋電 機を完全子会社化しました。
これに伴って、三洋電 機ロジをパナソニックロジスティクスと統合するとい う可能性はなかったのでしょうか。
浅野「少なくとも私たちは、なかったと思っていま す。
というのも当社とパナソニックロジではビジネス モデルが全く違う。
先ほどお話した通り、当社は既に 上場し外販中心の会社になっている。
一方、パナソ ニックロジさんは内販が大半で未上場です。
これを単 純に統合しても、ほとんどシナジーは期待できない」 ──同じ家電業界の物流子会社同士を統合すればメ リットはありそうに思いますが。
浅野「確かに家電業界全体を考えた時には、物流子 会社を再編して物流プラットフォームを作るという方 向性はあり得るし、そうした動きがこれから実際に 出てくるとは思います。
しかし、当社とパナソニック ロジさんという組み合わせは考えにくい」 ──逆に三洋電機向けの仕事を奪われてしまう可能 性は? 浅野「これは傲慢に聞こえるかも知れませんが、ベン チマークした結果を見る限り、当社がコスト面やサー ビス面で他社に負けるとは思えない。
とりわけ三洋 電機グループに対しては在庫管理も含めて内部に深く 入り込んで業務を担っています。
我々の仕事をそう 簡単に他社が代替できるとは考えていません」 ──社名は当面変更しないと聞いていますが、三洋 電機の冠をとってしまえば、他の家電メーカーの仕事 を受託するハードルは低くなりそうです。
浅野「昔はそうした制約もあったとは聞いています が、今はほとんど問題ではなくなっています。
実際、 二年ほど前から当社はソニーさんから国内物流の委 託を受けている。
『三洋電機ロジスティクス』とペイ ントされた車両がソニーさんの拠点に入っていくこと にも抵抗はなくなっています」 ──今後の成長シナリオは具体的にどう描いています か。
浅野「今年四月に事業開発本部を新設しました。
ホー ムセンターや資材卸などを中心に新規開拓営業を開 始しています。
もう一つは海外事業です。
従来から アウト・イン、海外の工場から国内市場までの国際 一貫物流は手がけてきましたが、それに加えて中国 国内の3PL事業を本格的に立ち上げます。
日本で 手がけている家電量販店向けの流通センター事業を 中国国内でも展開します。
当面は日系の荷主さんに なりますが中長期的には現地の荷主を取り込んでい きたい。
中国の3PL事業ではロングリーチさんの支 援にも大いに期待しています」 吉沢「やはり我々の役割は、全く新たな絵を門外漢 の我々が勝手に描くことではなく、事業会社が持っ ている有効なプランを現実のビジネスに落とし込むと ころの実行だと考えています。
今後は我々の顧客ベー スを三洋電機ロジさんに繋げていくサポートをしてい きますし、また中国事業では我々が持っている現地 政府や要人とのリレーションシップを活用してもらえ るはずです」 ロングリーチグループ 吉沢正道代表 三洋電機ロジスティクス 浅野勉社長 特集さよなら物流子会社

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