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大型拠点へ販社と入居
タカラトミーは今年四月、首都高速湾岸線
の千鳥町インターから約一・五キロの距離に
位置する「プロロジスパーク市川?」(千葉県
市川市)内に新拠点「市川ロジスティクスセ
ンター」をオープンした。 延べ床面積が二万
七〇〇〇坪を超える五階建ての大型マルチテ
ナント型施設の二〜五階部分に物流子会社の
タカラトミーロジスティクスが入居し、グルー
プの物流管理業務を運用している。
ミニカーシリーズの「トミカ」や鉄道玩具
「プラレール」などのロングセラーを持つトミ
ーと、着せ替え人形の「リカちゃん」を生ん
だタカラが合併しタカラトミーが発足したの
は、今から四年余り前の二〇〇六年三月のこ
と。 シナジー効果を上げるため合併前から両
社は物流の機能統合に動いていた。
〇五年十一月にトミーの物流子会社「トミ
ー流通サービス」が「T2L」に社名変更を
行い(今年三月に再度「タカラトミーロジス
ティクス」へ変更)、同社へタカラの物流部門
を吸収するかたちで組織を統合した。
合併後はただちに物流拠点の集約に取りか
かった。 旧トミーは旧タカラとの合併が決ま
る前の〇五年四月に、それまでトミー流通サ
ービスが運営していた千葉県流山市など数カ
所の拠点を廃止し、3PL業者が運営する千
葉県舞浜市内の延べ床面積一万一〇〇〇坪
規模の流通センターに物流機能を集約して業
務のアウトソーシングに踏み切っていた。
一方、旧タカラは以前から物流業務を外部
へ委託しており、千葉県八千代市内の委託先
の倉庫を主要な物流拠点としていた。 合併後
の〇六年十一月にタカラトミーは八千代市の
旧タカラの拠点を撤収して舞浜流通センター
に在庫を集約し、物流業務をT2Lの管理下
に置いた。
だが舞浜流通センターは合併を想定して設
けた拠点ではないため、両社の物流機能統
合の受け皿としては規模が充分ではなかった。
オーバーフローした分は周辺に倉庫を手当て
して対応せざるを得なくなっていた。
品質面でも問題が生じた。 旧トミー時代か
ら舞浜流通センターには、メーカーの物流機
能だけでなく、グループの販社「ユーエース」
の物流機能の一部を集約していた。
小売り向けはリードタイムが短く、GMS
など取引先によっては受注した当日の午後六
〜七時半頃までにセンターへ納品しなければ
ならないケースもある。 商品の扱い数量が一
気に増えたことから出荷ミスも増え、ピーク
グループの物流基盤を強化するため販社や物流子
会社と合同でプロジェクトを組織し、今年の春、千
葉県市川市に大型の物流センターを開設した。 メー
カーと販社の物流業務を一体で運営して効率化を図
るとともに、店別仕分け機能の強化によってピーク
時の対応力と納品精度の向上を狙っている。
物流拠点
タカラトミー
グループの物流機能を新センターに集約
小売店の求める瞬発力と精度の向上狙う
タカラトミー販売の猪野貴士
物流情報企画部課長
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時にはしばしば業務が混乱に陥った。
玩具業界の競合メーカーは傘下の販社を通
じて、小売り側の要求する厳しい納品条件に
対応した物流体制の整備を進めている。 これ
に伍していくには販社も含めたタカラトミー
グループ全体としての物流基盤の確立が急務
だった。
グループで合同プロジェクト
この課題に対して同社は〇七年に三浦俊樹
常務を最高責任者とするプロジェクトを発足
させた。 プロジェクトチームがめざしたのは、
舞浜に代わるグループの物流プラットフォーム
を構築することだった。
出荷能力の高い物流センターを新たに設け
て、舞浜のセンターが担ってきたメーカーと
販社の物流を一体で運営する機能を引き継ぎ、
海外から商品を輸入して小売店へ販売するま
でを一元管理する。 これによって課題となっ
ている小売り向け物流の品質向上を図り、グ
ループ全体の物流を効率化するという内容だ。
新たな体制を二〇一〇年までに実現するこ
とを目標にし、プロジェクトの名称を「二〇
一〇年新物流体制プロジェクト」とした。 プ
ロジェクトには物流子会社のT2L(当時)
や〇七年四月に発足したグループ販社の持株
会社タカラトミー販売などがメンバーとして参
加した。 〇九年二月からは、家庭品業界から
T2Lの社長に就任した松田吉康氏がプロジ
ェクトチームのリーダーを務めている。
プロジェクトチームでは将来の市場拡大を
視野に入れ、グループの物流プラットフォー
ムの構築に必要な新物流センターの規模をお
よそ二万坪とはじいた。 また受注当日のセン
ター納品という最短のリードタイムに対応す
るために、GMSなどの物流センターへアク
セスのいいロケーションであることも要件に
入れて物件を探した。
だが条件を満たす場所に二万坪の規模の庫
復を確保するのは容易ではなかった。 このた
めいったんは構想を修正し、メーカー物流の
機能はそのまま舞浜に残し販社物流の専用拠
点を新たに整備する方針に切り替えて計画を
進めた。
ところが、この修正案もリーマンショック
のあおりを受けて計画半ばで白紙にもどって
しまう。 壁に突き当たっていたとき、絶好の
ロケーションに大型物流施設のプロロジスパ
ーク市川?が着工された。 再び当初の通りの
構想センターを新設する道が開けた。
タカラトミーグループは同施設の四フロア分、
およそ一万八〇〇〇坪の床面積を確保し、今
年の五月からセンターの稼働を開始した。 四
フロアのうち二〜三階をタカラトミーの卸向
け入出荷基地に、四〜五階をユーエースの小
売店向け入出荷基地に使用している。 タカ
ラトミーロジスティクスが管理運営にあたり、
庫内作業は西多摩運送に委託している。
タカラトミーは市川以外に栃木と大阪の尼
崎にも物流拠点を構えている。 商品別に在庫
拠点を分けているが、全商品のうち七割は市
川から全国へ出荷する。 またユーエースの物
流拠点は市川の一カ所だけ。 別の販社が扱う
テレビゲームなどの商品を除き、グループの物
流機能の大半がこのセンターに集約されたこ
とになる。
プロロジスパーク市川?はフロアごとに入
居企業が異なるケースを想定して設計され、
建物の両側に設けたランプウェーでトラックが
各階へ自走できる構造になっている。 タカラ
トミーグループのように複数のフロアを使用す
る場合も、全フロアで入出荷を独立して行え
る。 多層階倉庫でありながら平屋倉庫と同様
の荷役体制がとれる。
海外の工場から調達した商品は海上コンテ
ナのままランプウェーで二階・三階へ入荷す
る。 卸向け商品はそのまま二・三階からケー
ス単位で出荷する。 ユーエースを経由して販
売する商品は、後付けで設置した垂直搬送機
で四階へ搬送する。 ユーエースが他メーカー
から仕入れる商品は直接四階へ入荷する。 四
階ではパレットで保管し、ケース単位のオー
タカラトミーロジスティクス
の松田吉康社長
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ダーは四階から出荷、ピース単位のオーダー
は五階へコンベアで搬送し、店別に仕分けて
出荷する。
センターの設備・業務フローの設計や情報
システムの開発はプロジェクトチームが担当し
た。 マテハンシステムの構築はダイフクに委
託し、倉庫管理システム(WMS)はインフ
ォア製のパッケージを大幅にカスタマイズして
導入した。 投資金額は合わせて十二億円。
プロジェクトの中心メンバーの一人、タカ
ラトミー販売の猪野貴士物流情報企画部課長
は「小売り向けフロアでピーク時にも取引先
の求めるサービス水準に対応できる瞬発力を
いかにつけるかが、ハード・ソフト両面で開
発の最大のポイントだった」と強調する。
二万アイテムを店別仕分け
小売り向けフロアでは二万アイテムの商品
を保管し、毎日一〇〇〇〜一五〇〇の店舗
別に仕分けて出荷する。 入荷検品はすべて四
階で行う。 ハンディターミナルに入荷予定情
報を呼び出して検品し、入庫ラベルを発行し
て指定されたロケーションへ入庫する。
このとき新製品についてはウエイトチェッ
カーでケース単位とピース単位の重量・容積
を計測し、WMSに登録しておく。 後の出荷
工程で店別仕分け・梱包をする際にこのデー
タを活用する。
ピッキング作業は一五〇店舗を一バッチと
し、バッチごとに総数ピッキングをしてから
商品がストックエリアに搬送されてくると、
ソーターのインダクション(投入口)で作業者
がケースに貼付されたラベルや通い箱のバーコ
ードを読み、バッチナンバーと商品コードを識
別する。 これにより四階と五階で行われた総
数ピッキングのデータと、これから行う店別
仕分けの連携をとる。
作業者はケースや通い箱から商品を取り出
して、インダクションの端末画面に指示され
る数量ずつソーターのトレイに投入しながら、
画面上でピッキング総数の消しこみを行って
いく。 ピッキングミスがあった場合はこの段
階で商品の数に過不足が生じるため、ミスを
発見できる。
投入の指示は「まとめ数」の単位で出る。
一つの商品のオーダー(まとめ数)が三点の
店と二点の店と一点の店があった場合、まず
三点の店の分から指示が出て作業者は一つの
トレイに三点ずつ投入、次に二点の店の指示
が出て二点ずつ投入する、という具合に作業
を進める。 このやり方にすることで、作業者
が一オーダーごとに投入点数を確認しないで
済む。
ソーターで店別に仕分けられた商品を各シ
ュートで作業者がコンテナに投入する。 事前
に登録された商品の重量・容積データをもと
に、コンテナの内容量が七〜八割に達すると
シュートのランプが点灯して満杯になったこ
とを知らせる。 作業者は新しいコンテナと交
換し、満杯のコンテナをコンベアで次の梱包
種まき方式で店別に仕分ける。
一つのアイテムのピッキング総数がケースの
入り数よりも多い場合には、ケースとバラに
分けてピッキングする。 例えば一ケース二四
個入りの商品のオーダーが一バッチでトータル
六〇個あったとすると、二ケース(四八個分)
と端数の十二ピースにトータルピッキングのデ
ータを分けて作業する。
フロアも異なり、ケース単位の総数ピッキ
ングは四階で、端数の総数ピッキングは五階
で行う。 どちらも作業方法は基本的に同じ。
無線ハンディターミナルにバッチと作業ゾーン
を入力し、画面に指示されたロケーションと
数量に従って行う。
四階のケース単位の作業では、一アイテム
のピッキングが終了するたびに、次工程の店
別仕分けの際に必要なバッチナンバーやJA
Nコード、入り数などの印字されたラベルを
一ケースずつ貼付する。
五階のピース単位の総数ピッキングでは、
一アイテムの総ピース数を通い箱にピッキング
する。 その都度、通い箱のバーコードをハン
ディターミナルで読んでデータを紐付けておく。
四階と五階でケース単位とピース単位の総
数ピッキングが終了すると、バッチごとにコ
ンベアで五階のピース仕分けソーターのストッ
クエリアに搬送し、ソーターで種まき(店別
仕分け)を行う。 ソーターはシュート数が一
五〇あり、二台のソーターが一バッチで三〇
〇店舗分を仕分ける。
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GMS用の納品ラベルを自動作成し、コンテ
ナの中に投入する。
梱包ラベルには、コンテナ内の商品の容積
をもとに最適サイズの梱包箱が指示してある。
梱包場の作業者は指示されたサイズの箱を選
んで、梱包ラベルに記された顧客ごとの仕様
などを確認しながら作業を行う。 梱包が終わ
ると箱に荷札や納品ラベルを貼付して運送会
社別の仕分けラインへ流す。
アイテム数の比率で一%にも満たないが、
竹馬やフラフープ、大きなぬいぐるみのように
ソーターのトレイに乗らない商品もある。 こう
した商品はコンベアが自動分岐して専用のピ
ッキングエリアへ運び、別に作業を行う。 定
型品との同梱が可能なものはピッキングの後、
梱包場への搬送指示が自動的に出る。
また値札の貼付を希望する取引先に対応し
て、商品のバーコードを読み値札を発行する
ラインも設けてあり、ピッキング終了後に該
当するコンテナはこのラインへ搬送される。
スペック以上の処理能力を実証
このようにセンターでは、玩具の特性や取
引先のさまざまな要望に合わせて業務フロー
が設計され、自動的に必要な工程へ作業指示
が出る仕組みになっている。 また各工程の作
業の進捗をWMSで一元管理し、作業場ごと
に設けたパネルで作業者が他の工程や別のフ
ロアの作業の進捗状況を随時確認できるよう
にしている。
ピース仕分けソーターは一日に最大三五万
ピースの処理能力で設計してある。 稼働から
一カ月後にこれを上回る物量を処理し、シス
テムの瞬発力を実証した。 八月にセンターの
すべてのシステムが完全稼働し、ミスピック
率を一〇万分の一以下に抑えることを目標に
作業の精度向上に力を入れている。
タカラトミーグループは市川ロジスティクス
センターの稼働による集約の効果や業務の効
率化などにより、今年度に三億円の物流コス
ト削減をめざしている。
タカラトミーロジスティクスはタカラトミー
の物流部門の位置づけで物流コスト削減に責
任を負う。 同社の松田吉康社長は「センター
の稼働率を高めることがコスト削減には最も
効果的。 重要なのは個々の作業の生産性を上
げるよりも、機械を止めずに全体の作業がス
ムーズに流れるようにすることだ。 バッチの
計画やタイムチャートの作成を工夫して業務
フローを整理し、それに合った人の配置を行
っていきたい」と話す。
来年には二・三階のメーカー物流エリアの
WMSも新システムに統一される。 現在はメ
ーカーと販社が二・三階と四・五階でそれぞ
れ別々に在庫を持っている。 今後はグループ
一体で物流業務を運営する強みを活かし、販
社がタカラトミーから仕入れる分を無在庫に
するなど、より効率のいいやり方を検討して
いく考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代)
工程へ送る。
コンテナには仕分けの前にバーコードで店
名を紐付けておく。 梱包場へ搬送するコンベ
ア上でバーコードを読んで梱包ラベル、荷札、
?ウエイトチェッカーで計測?2個ずつトレイに投入
?通い箱のバーコードに総数ピッキン
グデータを紐付け
?インダクションでバーコードを読み
店別仕分け
?1台で150 シュート
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