2010年10月号
グローバルSCM
グローバルSCM
第5回 部門間のリレーションシップ
OCTOBER 2010 54
部門間のトレードオフを調整して全体最適
を実現することがSCM部門の役割だ。
そ れでは、営業、マーケティング、生産、物流 の各部門間には、どのようなトレードオフが 具体的に横たわっているのだろうか。
また各 社はそれをどのように乗り越えようとしてい るのか。
インタビュー調査を元に整理を行っ た。
コーディネーターとしてのSCM部門 在庫の最適化を実現するには、関連する部 署間でコスト・トレードオフの調整を行わなけ ればならない。
SCM部門がどれだけそれを 実現できているかを知るために、本リサーチ ではSCM部門と関連部門との関係性(リレー ションシップ)についても調査している。
ここでいま一度、食品や日用雑貨品などの 「CPG(Consumer Packaged Goods)メー カー」における在庫削減の歴史を振り返って みよう。
一九九〇年代に在庫削減に取り組み、それ に成功した企業では、物流部門が中心となっ て、まずは営業所と倉庫との分離を行なった。
そして在庫拠点を集約し、機能を高度化する ことで過剰在庫や欠品を目に見えるようにした。
この過程で物流部門は売れていないアイテ ムを洗い出し、営業部門およびマーケティン グ部門に対して、販売アイテムカットの要請 を行った。
同時に作りすぎの結果を見せつけられた生 産部門では在庫適正化意識が高まり、生産計 画サイクルを従来の月次から週次に短縮する ための変革がスタートした。
だが、この変革は必ずしもスムーズにいっ たわけではなかった。
当時の生産計画システ ムは工場別に異なっており、変革に向けた取 り組みの大半は工場長あるいは工場の生産計 画担当者個々人のモチベーションに多くを依存 していた。
そこで生まれた成功事例を、物流部門が他 の工場に横展開していくことで、はじめて全 社レベルの在庫削減が進んでいった。
このよ うな営業部門、生産部門との調整力が、在庫 削減の初期段階におけるキーファクターであ ることは間違いない。
それでは九〇年代に実施された先進企業の 取り組みから一〇年以上が過ぎた今、フォロ ワー企業はそれらのコーディネーションをどの レベルまで行うことができるようになったの だろうか。
物流部門からその名称と共に位置付けが強 化されたSCM部門は、さらなる調整能力を 発揮するようになったのか。
またSCM部門 は次に何をしようとしているのか。
我々はそ れをCPGメーカー各社へのインタビューに よって明らかにしようと考えた。
このうち調達機能に関しては、前号で示し たように、在庫の少ない企業群を中心に一八 社中六社がSCM部門内に調達部門を配して 第回 アビームコンサルティング 経営戦略研究センター 次世代を拓く 日本型SCM が 梶田ひかる 部門間のリレーションシップ 5 日本型SCMが次世代を拓く 55 OCTOBER 2010 いた。
その一方、二社は調達機能を機能子会 社内に配し、企業グループ全体での調達機能 の集中化を図っていた。
従って調達に関して日本のCPGメーカー は現在、「?集中化による購入価格低減」と「? 調達の機動力向上による在庫削減」の二つの 方向に進んでいるといえる。
今回はその他の部門との関係で、特に目立っ た傾向を紹介する(図1)。
物流部門──物流子会社問題が再浮上 日本のCPGメーカーのSCM部門は、多 くが物流部門を前身としており、物流との関 係は今でも深い。
SCM部門を「本部」とし ている企業でも、その傘下には物流管理機能 を配している。
物流管理の最大のミッションは物流ネット ワークの最適化である。
物流ネットワークの あり方は物流コストおよび適正在庫量を規定 する決定的な要因となる。
そして物流ネット ワークの骨格は拠点数によって決まる。
拠点 数を削減すれば明らかな在庫削減効果が見込 めることから、すでに多くの企業がそれを実 施している。
在庫日数の少ない企業群は、現時点で既に 極限レベルの拠点集約を済ませている。
それ に対して、いまだ削減余地の残っている企業 も多くある。
拠点削減には営業の同意が不可 欠であることが、その一因となっている。
もっともインタビューを行ったメーカーの目 下の関心事は、拠点削減よりもむしろ二酸化 炭素削減を目的としたネットワークの見直し にあった。
これにはインタビュー対象のほと んどが省エネルギー法の特定荷主、すなわち 年間輸送量が三〇〇〇万トンキロ以上である ことも影響していると思われる。
そして、環境対策と並ぶCPGメーカーの もうひとつの関心事は、物流子会社問題で あった。
一部のメーカーは物流子会社に、物流業務 のみならず、受注センター業務、デポへの供 給量の決定、さらには生産計画調整の役割な どを持たせている。
グループ全体での効率化 という観点から、物流子会社の担う機能を拡 張させてきた。
その一方で、「物流子会社化しているため にグループ全体としての業務効率化が進んで いない面がある。
今後はSCM部門の関与を 強化する」という企業も複数社存在した。
皮肉なことに、世間的にも優秀との評価を 受けている物流子会社を持つメーカーに、こ のような事例が目立っている。
実際その優秀 さゆえに本社内の物流管理をすべて物流子会 社に移管したが、最近になって改めてSCM 部門内に物流部門を復活させたという企業も 数社あった。
物流子会社をより効率的に動かすための仕 掛け作りも進められている。
たとえば従来は 下払いの車建て料金に管理料を上乗せして物 図1 SCM部門と関連部門との調整事項 SCM 部門のミッション 在庫適正化・SCMコスト低減 部門間調整事項──現時点での関心事 ●購買コスト低減 ●調達機動力向上 調達生産物流営業マーケティング ●生産計画サイクル 短縮化 ●製造ロットサイズ 可変化 ●最適工場生産 ●省エネ法対応 ●物流子会社 効率化 ●配送拠点削減 ●特売情報入力徹底 ●販売計画精度向上 ●販売アイテムカット の円滑化 ●新製品上市時の 連携強化 OCTOBER 2010 56 流子会社に支払っていた工場─デポ間の輸送 について、「個建てに料金体系を変更し、積 載率向上のために子会社の判断で多めに送り 込むことを防止した。
そのため子会社は別の 貨物を確保し、トラック満載を図っている」 としている企業が二社存在した。
生産部門──最適化の進度に大きな格差 在庫削減にあたり、大きな壁となるのが物 流部門と生産部門とのコスト・トレードオフ である。
この壁は想像以上に大きい。
そのためか、前号でも紹介した通り、 二〇〇〇年以降に在庫削減に本格的に着手し た企業では、SCM本部内に生産部門を配す るという思い切った手を打つ例が目立つ。
そ して、そういった手法が実際に生産計画の週 次化や生産の都合による作りすぎの抑制に効 果を挙げている。
また需給に関連する生産部門の動きとして 近年目立つのが生産委託である。
飲料メーカー では夏場の繁忙期対策として、従来からパッ カーと呼ばれる充填メーカーに生産委託を行っ てきた。
パッカーの生産ラインを確保するこ とが、そのメーカーの繁忙期の生産能力に大 きく影響する。
そのためパッカーに対してメー カーは製造二週間前までの生産依頼を行って おり、そのことが需給管理サイクルの制約と なっている。
飲料以外のCPGメーカーでも生産委託は 急増している。
飲料のように充填のみといっ た委託のほか、自社の生産(包装)ラインに はない小分け包装への充填や梱包、あるいは 新規参入した商品群が自社の生産設備では作 れないための委託など、委託する業務の内容 も多様化している。
このような生産委託の増加はサプライチェー ンプロセスをより複雑にしている。
委託する 業務内容によって、その結果として生じる制 約も異なってくる。
だが、SCM部門にとって、そのことはさ したる問題にはなっていないようだ。
SCM 部門で立案する生産計画は、対象とする週に どのアイテムを何個生産すべきかということ であり、実際にどの生産ラインで何個生産す るかは生産部門で決定している場合が大半で あるからだ。
その他の生産部門に関連する検討事項につ いては、総じて企業による温度差が大きい。
たとえばブロック需給体制の下、複数工場 で同じアイテムを生産している場合の工場別 生産量の最適化について、すでに検討を終え、 工場間での調整を円滑に行えるようになって いる企業がある一方、工場別に供給エリアを 固定化しており、その最適化について当面は 検討する予定もないとする企業もある。
製造ロットサイズについても、生産部門が 過剰在庫を生んでしまう最も大きな要因では あるが、多くは「生産計画立案時に生産ロッ トサイズは固定化したままであり、需要に応 じて変動させる必要を感じている」という段 階である。
その一方で、「ライン別に経済ロット、最低 ロットを決め、その中で生産数量を変動させ ている」、「営業と情報を共有してロットサイ ズ適正化に取り組んでいる」という企業も存 在する。
この製造ロット問題については、さ らに積極的に「在庫削減を進めるためには、 製造設備まで見直すことを計画している」と いう企業もあった。
物流ネットワークと営業部門 前述のように、物流拠点の数は営業部門を SCMの取り組みにどれだけ巻き込めるかと いうことが大きなカギになる。
それではSC Mの観点から評価した場合に適切な在庫拠点 数とは一体いくつなのであろうか。
これについては、ブロック需給体制をとる かどうかでも考え方が異なってくるのであるが、 単純に「物流サービスレベルを守れる範囲内 で少なければ少ない方が良い」と誤解されて いることが多いため、若干説明を加えたいお きたい。
CPG製品は一般に運賃負担力に乏しい。
そのため拠点運営にかかる費用と輸送費のみ でコストを最小化するのであれば、ある程度 の拠点数が必要になる。
とりわけ一SKU (Stock Keeping Unit)当たりの販売量が大 きな製品は、商圏毎に生産拠点を設けること 日本型SCMが次世代を拓く 57 OCTOBER 2010 で輸送費を大きく下げられる。
ただし、生産拠点が分散すれば在庫リスク が高まる。
全体の在庫量が増えて、在庫の陳 腐化による廃棄や値引き販売による損失リス クが増加する。
運転資金もその分多く必要に なる。
したがって、生産拠点の数は、一回の生産 でできる在庫量、製造設備にかかる費用、そ して輸送費の三つの要素のトレードオフから 判断することになる。
このようなことから、単品種で大量に売れ るもの、たとえば清涼飲料、ビール、ポテト チップスなどのスナック菓子などについては、 生産拠点を商圏毎に設けるブロック生産が多 く採用されている。
今回調査した一八社中で は四社が全国を七つに区分したブロック制を 敷いていた。
明確なブロック制でなくても複数工場で同 一アイテムを生産している場合もある。
AB C分析でA分類されるような売れ筋商品につ いては、東日本と西日本でそれぞれ生産して いるといったケースである。
今回調査した中 では一八社中九社が特定製品について二〜四 工場で生産していた。
その逆もある。
ブロック制を敷く清涼飲料 やビールメーカーであっても、販売数量の少な いBC商品や、特定の製造設備が必要なもの については、生産拠点を絞ってブロックの枠 を超えた広域供給体制を敷いている。
したがって、CPGメーカーの実際の物流 フローは、製品によってブロック制のフローを とるものと、一製品一工場生産のフローをと るものが混在している。
これがベースとなり、 さらに顧客に約束した納品サービスを順守す るうえでの必要性から物流拠点の配置と数が 決まる。
全国七ブロック制で一ブロックに一工場な ら、物流センターは七カ所が最少値となる。
工場ごとに生産品目が異なり、必要なリード タイムが受注翌日納品である場合には、現在 の道路交通事情では、全国を五拠点でカバー できると言われている(図2)。
これらをベースとして、そこに営業部門の 要望を反映させていくことで必要な拠点数が 増えいく。
他社より短いリードタイム、緊急 納品への対応、また品薄品については営業所 で在庫を確保したいといった様々な営業上の 理由によって在庫の分散が必要になる。
しかし、得意先から業界標準以上の高い サービスレベルを要求されている場合にも、 その要求を満たすことだけが選択肢ではない。
物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 図2 ブロック生産と1製品1工場生産の場合の物流フロー 1製品1工場生産の場合 工場A 工場B 工場C 工場D 工場E 工場F 工場G 商圏A 商圏B 商圏C 商圏D 商圏E 商圏F 商圏G 物流 センター 物流 センター 物流 センター 工場A 工場B 工場C 工場D 工場E 工場F 工場G 配送 センター 配送 センター 配送 センター 商圏A 商圏B 商圏C 商圏D 商圏E 商圏F 商圏G ブロック生産体制の場合 図3 在庫拠点数と在庫日数 35 30 25 20 15 10 5 0 《在庫日数》 《ブロック当たり在庫拠点数》 1.0 3.0 5.0 7.0 9.0 11.0 13.0 15.0 OCTOBER 2010 58 を特需として計画に反映させるのではなく、 長年の経験からどれを特需として扱うかを判 断している企業がほとんどである。
規模の小さい特売は、出荷傾向から算出さ れる需要予測の範囲内に収まることが、その 理由である。
なかには特売情報を収集するた めの仕組みを持たずに、需給担当者が需要計 画に影響の大きいチェーン店の担当営業に個 別に連絡し、特売の有無や量を調べるという 方法を採っているケースも複数あった。
需要計画を販売計画を連携させて、すでに 販売計画ベースで需要計画立案を行っている という企業は、今回調査した一八社中一社し かなかった。
在庫の少ない企業の中にも、「販 売計画は努力目標的な意味合いがあるため、 精度向上の必要性は今のところ感じていない」 ところもある。
しかし「営業の販売計画精度向上に今年 度から取り組み始めた」、「まずは主力製品の 販売計画精度向上を図っていく計画である」、 「新製品・終売品についての販売計画精度向 上に努めているところであり、将来的には販 売計画全体に広げていきたい」というように、 販売計画の精度向上をSCM改革の次の施策 として掲げている企業も増加している。
販売計画の精度向上については、今のとこ ろ各社の考え方に明確な違いが見られる。
そ れが今後は欧米と同様にS&OPの方向に進 むのか、それとも特売情報の収集をベースと した日本的な需要計画立案が続くのか、動向 需要計画の精度向上に不可欠な特売情報の 収集には、各社がさまざまな工夫を行ってい る。
中には販促費の計算システムから自動的 に特売情報を収集できる仕組みを構築してい る企業もあるが、多くはシステムを使わずに、 ファクスや営業が独自で作成しているエクセル ファイルをメールの添付書類として需給管理 部門に送付する方法を採っている。
そのようにシステム連携がなされていない 場合には、営業マン全員に自分の得意先の特 売情報を入力させる仕組み作りが重要となる。
あるメーカーでは、需給計画部門と営業部 門間で人事ローテーションを行い、需給計画 部門出身者が配属された営業所内で特売情報 入力を徹底させるという方法で、全営業所の 特売情報入力の徹底を実現した。
地域営業内に特売調査の担当者を決めて、 その担当者が営業所内の特売情報を収集して SCM部門の需給担当者に連絡するという方 法を採っているところもあった。
その一方で、営業所単位で倉庫を設けてい る企業では、営業が特売情報を倉庫の供給担 当者にしか連絡せず、それが需給計画担当者 には伝わっていないというケースも存在した。
これらから、特売情報を確実に収集するに は、営業プロセスとの連携、そして人事施策 も含めた営業部門へのSCM啓蒙活動が有効 であるといえよう。
こうして集めた特売情報を需給計画部門は いったんふるいにかける。
すべての特売情報 営業部門がそうした得意先を説得して標準の 物流サービスに揃える、あるいはそのような 得意先との取引は行わないという選択肢もあ り得る。
図3は、食品メーカー一四社のデータから、 ブロックあたりの在庫拠点数と在庫日数の関 係を近似曲線で示したものだ。
ここでいうブ ロックとは主要品目を作っている工場数であ り、在庫拠点数には得意先指定倉庫を含めて いない。
同図が示すように、在庫拠点は少なければ 少ない方が、在庫も少なくなるという傾向が ある。
実際に在庫日数が一五日未満の「グルー プ1企業」では、すでに在庫拠点削減は完了 しているといってよい状況にある。
在庫拠点の多い企業において、拠点削減は 早期に本格的検討に着手すべき課題であろう。
ただし、それは営業部門との調整を要する項 目のなかでも、難易度において上位にあげら れるテーマとなる。
販売計画と需給計画の連携 欧米のCPG業界では「S&OP(セール ス&オペレーション計画)」として、販売計画 の精度向上と、販売計画と需要計画との連携 に関心が高まっている。
しかしながら日本の CPGメーカーの多くは、需要計画を販売計 画と切り離して立案している。
ここで問題と なるのが特売情報の把握である。
日本型SCMが次世代を拓く 59 OCTOBER 2010 が注目される。
アイテムカットとマーケティング部門 販売する製商品の決定および販売促進策は 在庫のコントロールに大きく影響する。
しか しながらインタビューした企業の大半は、「マー ケティング部門との連携は弱い」と感じており、 「次のテーマはマーケティングとの連携である」 とする企業も多かった。
SCMとマーケティングとの接点で最も重要 なのは、販売アイテムの削減である。
アイテム カットは在庫削減に最も効く施策である。
売 れ行きの悪いアイテムをカットすることにより、 在庫量を削減できるばかりではなく、保管コ ストも低減される。
加えて過去の多くの事例 から、取り扱いアイテムが絞られることによっ て営業活動が効果的になるため、品目削減に よる売上減の危険性はないといわれている。
インタビューを行った企業でも、多くは過 去にアイテム削減を実施したことがあった。
しかし、いったん削減した品目数をその後も 維持できている企業は存在しなかった。
「アイ テム数の上限を設けて新製品の発売時にはそ のアイテム数分の旧製品を廃番にする」とい う方策が一時期盛んになったこともあったが、 そのルールを今も続けているという企業は一 社もなかった。
むしろ近年は同業他社との提携や新規事業 進出などによりアイテム数を急増させている 企業が多く、「SCMシステム構築ができてい なかったら需給管理ができなかったと思う」 という見解も聞かれた。
それではアイテム数の管理は現在、どのよ うに行われているのであろうか。
販売アイテムについて、CPGメーカーの 多くは一年に二回、商品改廃頻度が多い清涼 飲料では月次で、マーケティング、営業、生 産などの部門からなる会議を開催して決定し ている。
最近になってようやく、その会議に SCM部門が出席するようになり、定期的に 販売中止の検討対象となるアイテムの提示を 行うようになったという状況である。
販売中止検討対象アイテムの選定基準は各 社によって大きく異なっている。
製造日から 賞味期限までの期間の三分の一を超えた商品 は納入させないという量販店の「三分の一ルー ル」を反映した「生産ロットサイズが賞味期 限の三分の一を越えた場合」というシンプル な基準や、「売り上げが二カ月連続で存在し ない、生産ロットサイズが販売量に比べて大 きい、年間販売量、納品先数、納品先の重要 度、滞留在庫量などを点数化して終売候補品 を選定」というものまで様々だ。
会議体でのアイテムカットの決定は、利害 関係が相反するためうまくいかない場合もあ る。
その対策として、会議体での決定ではな く、「終売決定権を経営企画部門に移管した ところ、うまくいくようになった」という企 業もあった。
終売が決定した製品の需給には各社各様の プロセスが採られているが、どの企業も概ね 営業部門と細かな調整を行っている。
二カ月 程前から営業との間で販売計画を詰め、営業 所別に在庫割り当てを行うなどして売り切る ように努めている。
しかしながら、「販売チャネルによっては終 売品でも販売期間中は最後まで在庫を切らす ことができないところもある」というように、 小売りとの間の商慣行がCPGメーカーの在 庫削減を阻害している。
新製品の需給管理 在庫廃棄の理由のうち大きいのが新製品の 需要予測の失敗である。
「在庫廃棄のうち三 割は新製品の予測ミス」、「在庫廃棄の原因の うち最も大きいのは新製品の予測ミス」という ように、複数の企業から新製品の需要予測向 上の必要性が指摘された。
販売開始月は営業が確保した棚の量から販 売量を類推できるためトラブルは少ない。
問 題は販売翌月である。
想定より売れ行きが鈍 く過剰在庫が廃棄に回ったり、あるいは売れ すぎて欠品となる。
新製品の需要計画プロセスは、各社とも類 似している。
八週間前に、まず初期配荷計画 の策定と資材手配を行い、営業が対外案内を 始める四週間前までの数値で生産量の確定を 行っている。
生産を委託する場合は、開始時 OCTOER 2010 60 日本型SCMが次世代を拓く 管理範囲を拡大している。
振り返れば、CPG業界にSCMという言 葉が広がり始めた当初は、管理範囲が川下側 に拡大していくことが想定されていた。
川上 との連携に注力していた自動車や電機などの アッセンブリー業界と比べ、CPG業界では 川上の制御は容易ではあるが効果もあまり見 込めないというのがその理由であった。
しかしながら現実は、川上側との統合化や 連携強化という方向で動いている。
川下との 連携が非常に困難であるというのがその背景 にあると推測される。
このようなことから次の段階、第三ステッ プとして期待されるのは、やはり川下への管 理範囲拡大だろう。
まずは川下に向かうフロー に位置する営業やマーケティングとの連携強化 である。
営業やマーケティングとの連携によ る在庫削減と効率化には、いまだ大きな変革 の余地が残されている。
いうように各社各様のやり方でリスク回避を 試みている。
一歩進んだ企業では、次のような方法を採っ ているところもあった。
まず初期配荷計画の 前に新製品の売れ行きを予め数パターン、シ ミュレーションする。
それぞれでのリスクを比 較検討した上で初回生産量を確定する。
このとき同時に、発売後の増減産を判断す るタイミングと基準を各部門で共有・合意し ておく。
各部門が発売前から同じシナリオを 策定し準備しておくことで、発売後の動きが 予想を外れた時にも迅速に対応できる対応を 整えておく。
現時点ではいずれの企業も新製品発売の決 定プロセスにおいて、SCM部門の関与は乏 しい。
新製品の需要予測プロセス改善は未だ 道半ばであり、多くは今後の課題である。
SCM管轄範囲拡大のステップ このようなSCM部門と関連部門とのリレー ションシップの動向から見えてくるのは、S CMの管理対象範囲が段階的に拡大している ということである。
第一ステップは需給管理の確立であった。
物流を中心に、生産機能のうち生産計画と、 営業機能のうち特売情報把握を統合すること で、過剰在庫と欠品の削減を実現する。
それ に続いて現在取り組まれている第二ステップ では、生産と調達を統合する方向でSCMが 期を早めて初回生産量を決定する。
大ヒット が予想される大型新製品の場合も、開始時期 を早める。
しかし一般に新製品の発売時点から二カ月 間の需要予測は通常の需給管理のプロセスで は対応できない。
過去の出荷データが存在し ないため、統計的な予測ができない。
予測ミスによる損失を防ぐため「新製品は 全国一斉販売から、販売地域を段階的に拡大 するように働きかけている」、「企画品につい ては期間限定から数量限定に変えている」と 梶田ひかる(かじた・ひかる) 1981年、南カリフォルニア大学OR理学修 士取得。
同年、日本アイ・ビー・エム入 社。
91年、日通総合研究所入社。
2001年、 デロイトトーマツコンサルティング入社(現 アビームコンサルティング)。
現在に至る。
電気通信大学大学院情報システム学科学 術博士。
中央職業能率開発協会「ロジステ ィクス管理2級・3級」のテキスト共同監修 のほかSCM関連の著書多数。
アビームコ ンサルティングHP http://jp.abeam.com 図4 SCM 統合範囲の拡大 今後強化の望まれる範囲 調達 生産 物流 営業 マーケティング 現状のSCM 統合範囲拡大の方向性 需給管理確立に必要な統合範囲
そ れでは、営業、マーケティング、生産、物流 の各部門間には、どのようなトレードオフが 具体的に横たわっているのだろうか。
また各 社はそれをどのように乗り越えようとしてい るのか。
インタビュー調査を元に整理を行っ た。
コーディネーターとしてのSCM部門 在庫の最適化を実現するには、関連する部 署間でコスト・トレードオフの調整を行わなけ ればならない。
SCM部門がどれだけそれを 実現できているかを知るために、本リサーチ ではSCM部門と関連部門との関係性(リレー ションシップ)についても調査している。
ここでいま一度、食品や日用雑貨品などの 「CPG(Consumer Packaged Goods)メー カー」における在庫削減の歴史を振り返って みよう。
一九九〇年代に在庫削減に取り組み、それ に成功した企業では、物流部門が中心となっ て、まずは営業所と倉庫との分離を行なった。
そして在庫拠点を集約し、機能を高度化する ことで過剰在庫や欠品を目に見えるようにした。
この過程で物流部門は売れていないアイテ ムを洗い出し、営業部門およびマーケティン グ部門に対して、販売アイテムカットの要請 を行った。
同時に作りすぎの結果を見せつけられた生 産部門では在庫適正化意識が高まり、生産計 画サイクルを従来の月次から週次に短縮する ための変革がスタートした。
だが、この変革は必ずしもスムーズにいっ たわけではなかった。
当時の生産計画システ ムは工場別に異なっており、変革に向けた取 り組みの大半は工場長あるいは工場の生産計 画担当者個々人のモチベーションに多くを依存 していた。
そこで生まれた成功事例を、物流部門が他 の工場に横展開していくことで、はじめて全 社レベルの在庫削減が進んでいった。
このよ うな営業部門、生産部門との調整力が、在庫 削減の初期段階におけるキーファクターであ ることは間違いない。
それでは九〇年代に実施された先進企業の 取り組みから一〇年以上が過ぎた今、フォロ ワー企業はそれらのコーディネーションをどの レベルまで行うことができるようになったの だろうか。
物流部門からその名称と共に位置付けが強 化されたSCM部門は、さらなる調整能力を 発揮するようになったのか。
またSCM部門 は次に何をしようとしているのか。
我々はそ れをCPGメーカー各社へのインタビューに よって明らかにしようと考えた。
このうち調達機能に関しては、前号で示し たように、在庫の少ない企業群を中心に一八 社中六社がSCM部門内に調達部門を配して 第回 アビームコンサルティング 経営戦略研究センター 次世代を拓く 日本型SCM が 梶田ひかる 部門間のリレーションシップ 5 日本型SCMが次世代を拓く 55 OCTOBER 2010 いた。
その一方、二社は調達機能を機能子会 社内に配し、企業グループ全体での調達機能 の集中化を図っていた。
従って調達に関して日本のCPGメーカー は現在、「?集中化による購入価格低減」と「? 調達の機動力向上による在庫削減」の二つの 方向に進んでいるといえる。
今回はその他の部門との関係で、特に目立っ た傾向を紹介する(図1)。
物流部門──物流子会社問題が再浮上 日本のCPGメーカーのSCM部門は、多 くが物流部門を前身としており、物流との関 係は今でも深い。
SCM部門を「本部」とし ている企業でも、その傘下には物流管理機能 を配している。
物流管理の最大のミッションは物流ネット ワークの最適化である。
物流ネットワークの あり方は物流コストおよび適正在庫量を規定 する決定的な要因となる。
そして物流ネット ワークの骨格は拠点数によって決まる。
拠点 数を削減すれば明らかな在庫削減効果が見込 めることから、すでに多くの企業がそれを実 施している。
在庫日数の少ない企業群は、現時点で既に 極限レベルの拠点集約を済ませている。
それ に対して、いまだ削減余地の残っている企業 も多くある。
拠点削減には営業の同意が不可 欠であることが、その一因となっている。
もっともインタビューを行ったメーカーの目 下の関心事は、拠点削減よりもむしろ二酸化 炭素削減を目的としたネットワークの見直し にあった。
これにはインタビュー対象のほと んどが省エネルギー法の特定荷主、すなわち 年間輸送量が三〇〇〇万トンキロ以上である ことも影響していると思われる。
そして、環境対策と並ぶCPGメーカーの もうひとつの関心事は、物流子会社問題で あった。
一部のメーカーは物流子会社に、物流業務 のみならず、受注センター業務、デポへの供 給量の決定、さらには生産計画調整の役割な どを持たせている。
グループ全体での効率化 という観点から、物流子会社の担う機能を拡 張させてきた。
その一方で、「物流子会社化しているため にグループ全体としての業務効率化が進んで いない面がある。
今後はSCM部門の関与を 強化する」という企業も複数社存在した。
皮肉なことに、世間的にも優秀との評価を 受けている物流子会社を持つメーカーに、こ のような事例が目立っている。
実際その優秀 さゆえに本社内の物流管理をすべて物流子会 社に移管したが、最近になって改めてSCM 部門内に物流部門を復活させたという企業も 数社あった。
物流子会社をより効率的に動かすための仕 掛け作りも進められている。
たとえば従来は 下払いの車建て料金に管理料を上乗せして物 図1 SCM部門と関連部門との調整事項 SCM 部門のミッション 在庫適正化・SCMコスト低減 部門間調整事項──現時点での関心事 ●購買コスト低減 ●調達機動力向上 調達生産物流営業マーケティング ●生産計画サイクル 短縮化 ●製造ロットサイズ 可変化 ●最適工場生産 ●省エネ法対応 ●物流子会社 効率化 ●配送拠点削減 ●特売情報入力徹底 ●販売計画精度向上 ●販売アイテムカット の円滑化 ●新製品上市時の 連携強化 OCTOBER 2010 56 流子会社に支払っていた工場─デポ間の輸送 について、「個建てに料金体系を変更し、積 載率向上のために子会社の判断で多めに送り 込むことを防止した。
そのため子会社は別の 貨物を確保し、トラック満載を図っている」 としている企業が二社存在した。
生産部門──最適化の進度に大きな格差 在庫削減にあたり、大きな壁となるのが物 流部門と生産部門とのコスト・トレードオフ である。
この壁は想像以上に大きい。
そのためか、前号でも紹介した通り、 二〇〇〇年以降に在庫削減に本格的に着手し た企業では、SCM本部内に生産部門を配す るという思い切った手を打つ例が目立つ。
そ して、そういった手法が実際に生産計画の週 次化や生産の都合による作りすぎの抑制に効 果を挙げている。
また需給に関連する生産部門の動きとして 近年目立つのが生産委託である。
飲料メーカー では夏場の繁忙期対策として、従来からパッ カーと呼ばれる充填メーカーに生産委託を行っ てきた。
パッカーの生産ラインを確保するこ とが、そのメーカーの繁忙期の生産能力に大 きく影響する。
そのためパッカーに対してメー カーは製造二週間前までの生産依頼を行って おり、そのことが需給管理サイクルの制約と なっている。
飲料以外のCPGメーカーでも生産委託は 急増している。
飲料のように充填のみといっ た委託のほか、自社の生産(包装)ラインに はない小分け包装への充填や梱包、あるいは 新規参入した商品群が自社の生産設備では作 れないための委託など、委託する業務の内容 も多様化している。
このような生産委託の増加はサプライチェー ンプロセスをより複雑にしている。
委託する 業務内容によって、その結果として生じる制 約も異なってくる。
だが、SCM部門にとって、そのことはさ したる問題にはなっていないようだ。
SCM 部門で立案する生産計画は、対象とする週に どのアイテムを何個生産すべきかということ であり、実際にどの生産ラインで何個生産す るかは生産部門で決定している場合が大半で あるからだ。
その他の生産部門に関連する検討事項につ いては、総じて企業による温度差が大きい。
たとえばブロック需給体制の下、複数工場 で同じアイテムを生産している場合の工場別 生産量の最適化について、すでに検討を終え、 工場間での調整を円滑に行えるようになって いる企業がある一方、工場別に供給エリアを 固定化しており、その最適化について当面は 検討する予定もないとする企業もある。
製造ロットサイズについても、生産部門が 過剰在庫を生んでしまう最も大きな要因では あるが、多くは「生産計画立案時に生産ロッ トサイズは固定化したままであり、需要に応 じて変動させる必要を感じている」という段 階である。
その一方で、「ライン別に経済ロット、最低 ロットを決め、その中で生産数量を変動させ ている」、「営業と情報を共有してロットサイ ズ適正化に取り組んでいる」という企業も存 在する。
この製造ロット問題については、さ らに積極的に「在庫削減を進めるためには、 製造設備まで見直すことを計画している」と いう企業もあった。
物流ネットワークと営業部門 前述のように、物流拠点の数は営業部門を SCMの取り組みにどれだけ巻き込めるかと いうことが大きなカギになる。
それではSC Mの観点から評価した場合に適切な在庫拠点 数とは一体いくつなのであろうか。
これについては、ブロック需給体制をとる かどうかでも考え方が異なってくるのであるが、 単純に「物流サービスレベルを守れる範囲内 で少なければ少ない方が良い」と誤解されて いることが多いため、若干説明を加えたいお きたい。
CPG製品は一般に運賃負担力に乏しい。
そのため拠点運営にかかる費用と輸送費のみ でコストを最小化するのであれば、ある程度 の拠点数が必要になる。
とりわけ一SKU (Stock Keeping Unit)当たりの販売量が大 きな製品は、商圏毎に生産拠点を設けること 日本型SCMが次世代を拓く 57 OCTOBER 2010 で輸送費を大きく下げられる。
ただし、生産拠点が分散すれば在庫リスク が高まる。
全体の在庫量が増えて、在庫の陳 腐化による廃棄や値引き販売による損失リス クが増加する。
運転資金もその分多く必要に なる。
したがって、生産拠点の数は、一回の生産 でできる在庫量、製造設備にかかる費用、そ して輸送費の三つの要素のトレードオフから 判断することになる。
このようなことから、単品種で大量に売れ るもの、たとえば清涼飲料、ビール、ポテト チップスなどのスナック菓子などについては、 生産拠点を商圏毎に設けるブロック生産が多 く採用されている。
今回調査した一八社中で は四社が全国を七つに区分したブロック制を 敷いていた。
明確なブロック制でなくても複数工場で同 一アイテムを生産している場合もある。
AB C分析でA分類されるような売れ筋商品につ いては、東日本と西日本でそれぞれ生産して いるといったケースである。
今回調査した中 では一八社中九社が特定製品について二〜四 工場で生産していた。
その逆もある。
ブロック制を敷く清涼飲料 やビールメーカーであっても、販売数量の少な いBC商品や、特定の製造設備が必要なもの については、生産拠点を絞ってブロックの枠 を超えた広域供給体制を敷いている。
したがって、CPGメーカーの実際の物流 フローは、製品によってブロック制のフローを とるものと、一製品一工場生産のフローをと るものが混在している。
これがベースとなり、 さらに顧客に約束した納品サービスを順守す るうえでの必要性から物流拠点の配置と数が 決まる。
全国七ブロック制で一ブロックに一工場な ら、物流センターは七カ所が最少値となる。
工場ごとに生産品目が異なり、必要なリード タイムが受注翌日納品である場合には、現在 の道路交通事情では、全国を五拠点でカバー できると言われている(図2)。
これらをベースとして、そこに営業部門の 要望を反映させていくことで必要な拠点数が 増えいく。
他社より短いリードタイム、緊急 納品への対応、また品薄品については営業所 で在庫を確保したいといった様々な営業上の 理由によって在庫の分散が必要になる。
しかし、得意先から業界標準以上の高い サービスレベルを要求されている場合にも、 その要求を満たすことだけが選択肢ではない。
物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 物流 センター 図2 ブロック生産と1製品1工場生産の場合の物流フロー 1製品1工場生産の場合 工場A 工場B 工場C 工場D 工場E 工場F 工場G 商圏A 商圏B 商圏C 商圏D 商圏E 商圏F 商圏G 物流 センター 物流 センター 物流 センター 工場A 工場B 工場C 工場D 工場E 工場F 工場G 配送 センター 配送 センター 配送 センター 商圏A 商圏B 商圏C 商圏D 商圏E 商圏F 商圏G ブロック生産体制の場合 図3 在庫拠点数と在庫日数 35 30 25 20 15 10 5 0 《在庫日数》 《ブロック当たり在庫拠点数》 1.0 3.0 5.0 7.0 9.0 11.0 13.0 15.0 OCTOBER 2010 58 を特需として計画に反映させるのではなく、 長年の経験からどれを特需として扱うかを判 断している企業がほとんどである。
規模の小さい特売は、出荷傾向から算出さ れる需要予測の範囲内に収まることが、その 理由である。
なかには特売情報を収集するた めの仕組みを持たずに、需給担当者が需要計 画に影響の大きいチェーン店の担当営業に個 別に連絡し、特売の有無や量を調べるという 方法を採っているケースも複数あった。
需要計画を販売計画を連携させて、すでに 販売計画ベースで需要計画立案を行っている という企業は、今回調査した一八社中一社し かなかった。
在庫の少ない企業の中にも、「販 売計画は努力目標的な意味合いがあるため、 精度向上の必要性は今のところ感じていない」 ところもある。
しかし「営業の販売計画精度向上に今年 度から取り組み始めた」、「まずは主力製品の 販売計画精度向上を図っていく計画である」、 「新製品・終売品についての販売計画精度向 上に努めているところであり、将来的には販 売計画全体に広げていきたい」というように、 販売計画の精度向上をSCM改革の次の施策 として掲げている企業も増加している。
販売計画の精度向上については、今のとこ ろ各社の考え方に明確な違いが見られる。
そ れが今後は欧米と同様にS&OPの方向に進 むのか、それとも特売情報の収集をベースと した日本的な需要計画立案が続くのか、動向 需要計画の精度向上に不可欠な特売情報の 収集には、各社がさまざまな工夫を行ってい る。
中には販促費の計算システムから自動的 に特売情報を収集できる仕組みを構築してい る企業もあるが、多くはシステムを使わずに、 ファクスや営業が独自で作成しているエクセル ファイルをメールの添付書類として需給管理 部門に送付する方法を採っている。
そのようにシステム連携がなされていない 場合には、営業マン全員に自分の得意先の特 売情報を入力させる仕組み作りが重要となる。
あるメーカーでは、需給計画部門と営業部 門間で人事ローテーションを行い、需給計画 部門出身者が配属された営業所内で特売情報 入力を徹底させるという方法で、全営業所の 特売情報入力の徹底を実現した。
地域営業内に特売調査の担当者を決めて、 その担当者が営業所内の特売情報を収集して SCM部門の需給担当者に連絡するという方 法を採っているところもあった。
その一方で、営業所単位で倉庫を設けてい る企業では、営業が特売情報を倉庫の供給担 当者にしか連絡せず、それが需給計画担当者 には伝わっていないというケースも存在した。
これらから、特売情報を確実に収集するに は、営業プロセスとの連携、そして人事施策 も含めた営業部門へのSCM啓蒙活動が有効 であるといえよう。
こうして集めた特売情報を需給計画部門は いったんふるいにかける。
すべての特売情報 営業部門がそうした得意先を説得して標準の 物流サービスに揃える、あるいはそのような 得意先との取引は行わないという選択肢もあ り得る。
図3は、食品メーカー一四社のデータから、 ブロックあたりの在庫拠点数と在庫日数の関 係を近似曲線で示したものだ。
ここでいうブ ロックとは主要品目を作っている工場数であ り、在庫拠点数には得意先指定倉庫を含めて いない。
同図が示すように、在庫拠点は少なければ 少ない方が、在庫も少なくなるという傾向が ある。
実際に在庫日数が一五日未満の「グルー プ1企業」では、すでに在庫拠点削減は完了 しているといってよい状況にある。
在庫拠点の多い企業において、拠点削減は 早期に本格的検討に着手すべき課題であろう。
ただし、それは営業部門との調整を要する項 目のなかでも、難易度において上位にあげら れるテーマとなる。
販売計画と需給計画の連携 欧米のCPG業界では「S&OP(セール ス&オペレーション計画)」として、販売計画 の精度向上と、販売計画と需要計画との連携 に関心が高まっている。
しかしながら日本の CPGメーカーの多くは、需要計画を販売計 画と切り離して立案している。
ここで問題と なるのが特売情報の把握である。
日本型SCMが次世代を拓く 59 OCTOBER 2010 が注目される。
アイテムカットとマーケティング部門 販売する製商品の決定および販売促進策は 在庫のコントロールに大きく影響する。
しか しながらインタビューした企業の大半は、「マー ケティング部門との連携は弱い」と感じており、 「次のテーマはマーケティングとの連携である」 とする企業も多かった。
SCMとマーケティングとの接点で最も重要 なのは、販売アイテムの削減である。
アイテム カットは在庫削減に最も効く施策である。
売 れ行きの悪いアイテムをカットすることにより、 在庫量を削減できるばかりではなく、保管コ ストも低減される。
加えて過去の多くの事例 から、取り扱いアイテムが絞られることによっ て営業活動が効果的になるため、品目削減に よる売上減の危険性はないといわれている。
インタビューを行った企業でも、多くは過 去にアイテム削減を実施したことがあった。
しかし、いったん削減した品目数をその後も 維持できている企業は存在しなかった。
「アイ テム数の上限を設けて新製品の発売時にはそ のアイテム数分の旧製品を廃番にする」とい う方策が一時期盛んになったこともあったが、 そのルールを今も続けているという企業は一 社もなかった。
むしろ近年は同業他社との提携や新規事業 進出などによりアイテム数を急増させている 企業が多く、「SCMシステム構築ができてい なかったら需給管理ができなかったと思う」 という見解も聞かれた。
それではアイテム数の管理は現在、どのよ うに行われているのであろうか。
販売アイテムについて、CPGメーカーの 多くは一年に二回、商品改廃頻度が多い清涼 飲料では月次で、マーケティング、営業、生 産などの部門からなる会議を開催して決定し ている。
最近になってようやく、その会議に SCM部門が出席するようになり、定期的に 販売中止の検討対象となるアイテムの提示を 行うようになったという状況である。
販売中止検討対象アイテムの選定基準は各 社によって大きく異なっている。
製造日から 賞味期限までの期間の三分の一を超えた商品 は納入させないという量販店の「三分の一ルー ル」を反映した「生産ロットサイズが賞味期 限の三分の一を越えた場合」というシンプル な基準や、「売り上げが二カ月連続で存在し ない、生産ロットサイズが販売量に比べて大 きい、年間販売量、納品先数、納品先の重要 度、滞留在庫量などを点数化して終売候補品 を選定」というものまで様々だ。
会議体でのアイテムカットの決定は、利害 関係が相反するためうまくいかない場合もあ る。
その対策として、会議体での決定ではな く、「終売決定権を経営企画部門に移管した ところ、うまくいくようになった」という企 業もあった。
終売が決定した製品の需給には各社各様の プロセスが採られているが、どの企業も概ね 営業部門と細かな調整を行っている。
二カ月 程前から営業との間で販売計画を詰め、営業 所別に在庫割り当てを行うなどして売り切る ように努めている。
しかしながら、「販売チャネルによっては終 売品でも販売期間中は最後まで在庫を切らす ことができないところもある」というように、 小売りとの間の商慣行がCPGメーカーの在 庫削減を阻害している。
新製品の需給管理 在庫廃棄の理由のうち大きいのが新製品の 需要予測の失敗である。
「在庫廃棄のうち三 割は新製品の予測ミス」、「在庫廃棄の原因の うち最も大きいのは新製品の予測ミス」という ように、複数の企業から新製品の需要予測向 上の必要性が指摘された。
販売開始月は営業が確保した棚の量から販 売量を類推できるためトラブルは少ない。
問 題は販売翌月である。
想定より売れ行きが鈍 く過剰在庫が廃棄に回ったり、あるいは売れ すぎて欠品となる。
新製品の需要計画プロセスは、各社とも類 似している。
八週間前に、まず初期配荷計画 の策定と資材手配を行い、営業が対外案内を 始める四週間前までの数値で生産量の確定を 行っている。
生産を委託する場合は、開始時 OCTOER 2010 60 日本型SCMが次世代を拓く 管理範囲を拡大している。
振り返れば、CPG業界にSCMという言 葉が広がり始めた当初は、管理範囲が川下側 に拡大していくことが想定されていた。
川上 との連携に注力していた自動車や電機などの アッセンブリー業界と比べ、CPG業界では 川上の制御は容易ではあるが効果もあまり見 込めないというのがその理由であった。
しかしながら現実は、川上側との統合化や 連携強化という方向で動いている。
川下との 連携が非常に困難であるというのがその背景 にあると推測される。
このようなことから次の段階、第三ステッ プとして期待されるのは、やはり川下への管 理範囲拡大だろう。
まずは川下に向かうフロー に位置する営業やマーケティングとの連携強化 である。
営業やマーケティングとの連携によ る在庫削減と効率化には、いまだ大きな変革 の余地が残されている。
いうように各社各様のやり方でリスク回避を 試みている。
一歩進んだ企業では、次のような方法を採っ ているところもあった。
まず初期配荷計画の 前に新製品の売れ行きを予め数パターン、シ ミュレーションする。
それぞれでのリスクを比 較検討した上で初回生産量を確定する。
このとき同時に、発売後の増減産を判断す るタイミングと基準を各部門で共有・合意し ておく。
各部門が発売前から同じシナリオを 策定し準備しておくことで、発売後の動きが 予想を外れた時にも迅速に対応できる対応を 整えておく。
現時点ではいずれの企業も新製品発売の決 定プロセスにおいて、SCM部門の関与は乏 しい。
新製品の需要予測プロセス改善は未だ 道半ばであり、多くは今後の課題である。
SCM管轄範囲拡大のステップ このようなSCM部門と関連部門とのリレー ションシップの動向から見えてくるのは、S CMの管理対象範囲が段階的に拡大している ということである。
第一ステップは需給管理の確立であった。
物流を中心に、生産機能のうち生産計画と、 営業機能のうち特売情報把握を統合すること で、過剰在庫と欠品の削減を実現する。
それ に続いて現在取り組まれている第二ステップ では、生産と調達を統合する方向でSCMが 期を早めて初回生産量を決定する。
大ヒット が予想される大型新製品の場合も、開始時期 を早める。
しかし一般に新製品の発売時点から二カ月 間の需要予測は通常の需給管理のプロセスで は対応できない。
過去の出荷データが存在し ないため、統計的な予測ができない。
予測ミスによる損失を防ぐため「新製品は 全国一斉販売から、販売地域を段階的に拡大 するように働きかけている」、「企画品につい ては期間限定から数量限定に変えている」と 梶田ひかる(かじた・ひかる) 1981年、南カリフォルニア大学OR理学修 士取得。
同年、日本アイ・ビー・エム入 社。
91年、日通総合研究所入社。
2001年、 デロイトトーマツコンサルティング入社(現 アビームコンサルティング)。
現在に至る。
電気通信大学大学院情報システム学科学 術博士。
中央職業能率開発協会「ロジステ ィクス管理2級・3級」のテキスト共同監修 のほかSCM関連の著書多数。
アビームコ ンサルティングHP http://jp.abeam.com 図4 SCM 統合範囲の拡大 今後強化の望まれる範囲 調達 生産 物流 営業 マーケティング 現状のSCM 統合範囲拡大の方向性 需給管理確立に必要な統合範囲
