ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年12号
ケース
メガネスーパー 単品管理

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2010  50 自前で物流センターを運営  大手メガネチェーンのメガネスーパーは全国 におよそ四〇〇の直営店を展開している。
各 店舗には常時二〇〇〇〜三〇〇〇点の商品 (メガネフレーム)を、一アイテムにつき一点 ずつ品揃えしている。
 同社の扱う商品には、大手メーカーから直 接仕入れてディスカウント販売する「ブランド 品」と、プライベートブランド商品を中心とす る「定番品」がある。
 ブランド品は、新製品の発売時に商品本部 のバイヤーが一括で仕入れ、標準的な商品構 成に地域性などを加味して店舗ごとに品揃え を決め配分する。
定番品は原則として売れた 分を補充する。
 メガネフレームの生産期間は三カ月と長く、 ブランド品のメーカーは半年または一年のサイ クルで新製品を出し、期中には追加生産を行 わないのが一般的だ。
そのため店が商品を補 充したくてもメーカーにはほとんど在庫がな い。
その場合には他店の在庫を当たるか、物 流センターに保管する在庫の中から似通った 商品を探すという方法をとる。
 同社の物流センターは本社所在地に近い小 田原市内にある。
ここ一カ所から全国の店舗 へ商品を供給している。
物流センターを開設 したのは二〇〇五年で、それ以前は本社内の 小規模な倉庫で定番品の入出荷・保管だけを 行っていた。
 主力商品であるブランド品についてはメー カーから各店舗へ直送していた。
物流センタ ーの開設とともに、ブランド品もすべてセン ターで荷受けして、センターから各店舗へ配 送するかたちに変えた。
 物流センター内には、フレームと一体で販 売するレンズの「集中加工センター」を設け ている。
同社の四〇〇店舗のうちおよそ三〇 〇店舗が、店内にレンズの在庫を持たず集中 加工センターにレンズの加工業務を委託して いる。
 また店内にレンズ加工機を備えている店で も、すべてのレンズを在庫しているわけでは ない。
店舗に在庫があるのは販売数量の多い 標準品だけで、遠近両用レンズやカラーレン ズなど、特殊なものは集中加工センターで加 工する。
 視力測定だけを店で行い、顧客の選んだ レンズの種類・材質および度数などのデータ を集中加工センターへ送り、加工指示を出す。
センターではデータをもとにコンピューター 制御による自動レンズ加工機でレンズを一枚 ずつカットし、でき上がったものを店に送る。
そして店でフレームにレンズをはめ込み商品 が完成する。
 加工済みレンズの店舗への配送はほぼ毎日。
従来はレンズとフレームを別便で配送してい た。
集中加工センターを物流センター内に移 設したことで、いっしょに梱包して店に送れ るようになり、配送費を削減できた。
またそ  今年8月に新たな発注システムを稼働させた。
物流 センターで撮影した商品の画像データをもとに、各 店舗が商品を選んで発注する。
従来の本部主導の在 庫補充を改めた。
同時に物流センターでは、発注情 報がロケーション番号で指示されるため、商品知識 のない人でも作業が可能になった。
単品管理 メガネスーパー 補充発注機能を本部から各店舗に分散 保管方法も見直して入出荷作業を効率化 51  DECEMBER 2010 れまでフレームの配送は週に一、二回程度だ ったが、頻度が上がりリードタイムも短くな った。
 物流センターは商品本部傘下の物流部が管 轄している。
庫内作業はすべて社員が行い、 店舗への配送業務だけを外部に委託している。
当初は全面的にアウトソーシングすることも 検討したが、レンズの加工に水を使用する特 殊な設備が要ることなどから断念し、自前で 建物を手当てした。
商品の選別は物流センターの役割  アウトソーシングが困難な理由は、設備面 だけでなく同社のセンター業務の特殊性にも あった。
 同社では店舗販売員が発注業務に時間をと られず接客に集中できるように、新製品を展 開した後の店舗への商品補充を基本的に商品 本部の主導で行ってきた。
本部のバイヤーが 各店舗の日々の売り上げ情報をもとに、どん なタイプ・色・価格帯の商品が売れるかを予 測して商品を店に送り込む。
 店側で独自に発注を行うケースもあるが、 その内容は「若者向けのファッショナブルなタ イプを一〇本」とか「三万円台の男性用を二 〇本」などの大まかな注文がほとんどだ。
そ れを受けて、何万ものアイテムのなかから適 切な商品を選ぶのは、物流センターの役割だ った。
 店舗の発注は電話やファクスでいったん本 部に送られ、本部から物流センターに伝えら れる。
センターでは注文が入ると、担当のス タッフが倉庫の棚に並んでいる商品を目視で 確認しながら、注文内容に合うイメージや価 格帯のものをピックアップし出荷していた。
 このような業務内容では外部委託どころか、 社内でも商品知識のある経験豊富な社員にし か業務を任せられないのが実情だった。
シス テム化も進まずコスト高になっていた。
 センター業務をベテラン社員に依存せず、 パートタイマーでもピッキング・出荷作業が できるように改善し、またシステム化によっ て効率アップを図ることは、同社にとって積 年の課題だった。
 一方、店舗からも本部主導による商品補充 について不満が出るようになっていた。
販売 傾向は店舗によって異なる。
本部主導による 送り込み方式で店舗ごとの需要にきめ細かく 応えるのは限界があった。
 店が独自に発注するケースでも「若者向け のファッショナブルなタイプ」といった抽象的 な表現では、店側の描く商品のイメージが物 流センターで商品を選別する担当者に正確に 伝わらないため、全くイメージの異なる商品 が店に届くことも少なくなかった。
 しかもメガネの購買スタイルは時代と共に 変わってきている。
これまで同社は自社販売 員による提案型の接客を?強み?としてきた。
しかし、昨今は顧客が自分で商品を選ぶ傾向 が強くなっている。
これに伴い顧客の好みに 合った色やデザインの商品をいかに品揃えで きるかが従来にも増して店の売り上げを左右 するようになってきた。
 こうした背景から同社では業務プロセスの 抜本的な見直しを決断した。
本部からの送り 込みに頼らず、店が自ら品揃えを判断して発 注を行う。
これに対して物流センターでは店 の発注情報をもとにベテランでなくても誰も がスムーズに商品を出荷できる体制を整える。
 これを実現するために「物流センターオー ダーシステム」の開発を行った。
店がシステ ムの端末から商品を発注し、発注情報をもと に物流センターへ出荷指示が出るシステムだ。
既存のソフトパッケージを基幹システムに連動 させる方法ではカスタマイズに費用がかかる ため、基幹システムに機能を追加する方法を とった。
 同社は商品をメーカーの符番した品番や色 番で管理している。
符番方法はブランドごと に異なり、同じ色を表わすのに数字を使うケ ースやアルファベットを使うケースなどまちま ちだ。
管理本部情報管理部の 近藤嘉彦部長 DECEMBER 2010  52 業は品番を目視で確認。
新製品が出て商品が 入れ替わると再度グループ分けを行い、ロケ ーションを変更するという手順だった。
 このやり方ではピッキングする際に作業者 がロケーションを覚えるだけで一苦労だった。
入荷作業の負荷も大きかった。
一定の期間を 過ぎても売れ残った商品は、在庫調整のため 店からセンターにいったん引き上げる。
また 店舗が閉店する際には一度に大量の商品がセ ンターに回収される。
 センターでは回収された商品の品質をチェ ックし、棚に入庫して再出荷に備える。
店か ら回収される商品はすべて一アイテムにつき 一点ずつ入荷するため、メーカーから納品さ れる商品と比べてオペレーションが著しく煩雑 となり、従来はグループ分けや棚へ入庫を行 うのにかなりの時間を費やしていた。
 入庫作業を効率化するために、新システム の導入を機に保管方法を固定ロケーションか らフリーロケーションに変えた。
入荷した商 品をグループ分けせず空いている棚へ無作為 に入庫して、品番を棚のロケーション番号に 紐付けておく。
ピッキング作業は品番ではな くロケーション番号を識別して行う。
この業 務フローなら商品知識のない社員やパートタ イマーにも作業を任せられる。
引き出し付き保管箱を開発  一アイテムにつき一点ずつ入荷する「一点 もの」の比重が多い実態を考慮し、これに  このため店が発注を行う際に品番だけ で商品を具体的にイメージするのは不可能 に近い。
欲しい商品の在庫がなく、似た 商品を発注したくても品番が特定できな い。
店舗の発注内容が大まかなのもここ に原因があった。
 そこで「物流センターオーダーシステム」 では、品番ごとに画像データの入った商 品マスターを作成して、店が画像を見て商 品を発注できるようにした。
 物流センターで一アイテムにつき四カッ トずつ撮影し、商品マスターと紐付けて 画像をデータベースに登録しておく。
店で はシステムの端末から光ファイバー通信網 を利用したWAN(ワイドエリアネットワ ーク)経由でサーバーのデータベースにア クセスし、商品の検索と発注を行う。
 ブランド名・型・色・素材などの条件 を設定して商品の画像を一覧で画面に呼 び出し、そのなかからイメージに合うもの を選んで発注する。
店に発注を任せるこ とで、物流センター側では商品を選別する 工程を省くことができる。
 発注方法の変更に合わせて、物流セン ターでの保管方法やオペレーションも大幅 に見直した。
 従来は保管棚のロケーションを固定して いた。
商品をブランド名・型番などによ ってグループに分け、アルファベット順に 並べてロケーションを決定。
ピッキング作 店舗の端末で画像を検索し発注4カットずつ撮影保管箱で1点ものを管理 引き出しに5アイテム保管バーコードで入出庫作業レンズ加工装置も設置 53  DECEMBER 2010 む方法にして作業を簡略化した。
 保管箱の導入により、一点ものだけで最大 十二万点、ロットものを含めると一五万点ま で保管が可能になった。
ICタグ導入も計画  ゆくゆくはバーコードの代わりにICタグを 活用して個品別の管理を実施する考えだ。
棚 卸の際にタグを一括で読み取って作業を効率 化する。
さらに同じアイテムの商品でも個品 単位で入出荷日を管理して在庫期間を詳細に 把握するとともに、ケア用品などの使用期限 管理にも活かしていく。
 新システムの運用は今年八月にスタートし た。
画像データの登録が済んだものからオペ レーションを切り替え、最終的にすべての商 品を店舗の端末で発注できるようにする。
 ただしこのシステムでは店の発注情報から そのまま物流センターに出荷指示が出ないよ うにしている。
発注情報は物流センターと同 時に商品本部にも送られ、バイヤーのチェッ クを受ける。
発注内容によってはバイヤーが 調整を行ったうえで物流センターへ出荷指示 を出すケースもある。
 システム開発を担当した管理本部情報管理 部の近藤嘉彦部長は「店によっては色や価格 帯の偏った発注をしたり、特定の商品に人気 が集中する恐れもある。
どこまで店に任せる べきかが(開発に当たり)最大の焦点だった」 という。
 このため出荷情報と各店舗の売り上げ情 報から店舗別の在庫情報をシステムで管理し、 店から発注がかかった時点で在庫に過不足が なく発注数量が適切かどうかをバイヤーが判 断できる仕組みにした。
 新システムの稼働によって、物流センター に店の欲しい商品がなくても他店に在庫があ れば、店舗間の移動によって補充することも 容易にできるようになった。
物流部の木村幸 治物流センター課長は「売れる店に商品を回 すことで在庫が活性化し販売ロスをなくすこ とができる。
物流センターをそのための(情 報の)中継地として機能させていきたい」と 話す。
 このシステムを今後は店舗発注だけでなく 仕入れにも活かすことを検討している。
メー カーから送られるサンプルからセンターで画像 データを作成し、人気投票を行うことで店の 意見を仕入れに反映させる。
近藤部長は「そ こまでやって初めてこのシステムは本当の効 力を発揮する」と見ている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 適した保管箱の開発も行った。
紙製の保管箱 で引き出しが六つ付いている。
引き出しの手 前から奥へ仕切りを入れて五つの区画に分け、 一つの区画に一アイテムずつ商品を保管する。
一つの箱に三〇アイテムまで保管できる。
 この保管箱を棚に並べてロケーション番号 をふる。
ロケーション番号では?どのゾーン の何列目・何段目の棚にある保管箱の何番目 の引き出しの手前からいくつ目の区画?かま で細分化して表示する。
 区画ごとにロケーション番号のバーコードシ ールを貼り、入出庫の際にこのバーコードと 商品の個装(ビニール袋)に貼ったバーコー ドシールを交互に読んで作業を行う。
 入庫時に作業者は、入庫するゾーンを選び ハンディターミナルでゾーン内の空いている棚 (区画)を探す。
表示された番号の棚に商品 を入庫し、バーコードを読んで棚番号と商品 を紐付けるだけで入庫処理が完了する。
 出庫の際は、発注情報の商品番号をシステ ムでロケーション番号に読み替えハンディター ミナルにピッキング指示を出す。
作業者は番 号の棚から商品を取り、バーコードを読んで 出荷情報を作成する。
 新製品など一アイテムがまとまった数で入 荷する商品(ロットもの)は、保管箱の引き 出しに区画を設けず一つの引き出しに最大で 一五個まで保管する。
ロケーション番号も引 き出しごとに符番する。
保管効率を上げ、入 庫時に一五個のうち一個だけバーコードを読 物流部の木村幸治物流センタ ー課長

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