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37 DECEMBER 2005
四〇〇〇人のセールスドライバー
リレコの創業は一九二六年で、エリック・
ビジャールCEO(最高経営責任者)の祖父
が会社を立ち上げた。 フランス国内での活動
が中心であった同社が世界進出を始めるのは、
三代目のビジャール氏がCEOに就任した一
九九〇年代に入ってからだ。
ヨーロッパ各国でM&A(企業買収)を積
極的に仕掛ける一方で、ゼロから会社を立ち
上げるケースもあった。 九〇年代後半からは
アジアにも進出。 九七年の香港を皮切りに、
台湾、日本、タイ、韓国の順で会社を立ち上
げていった。
株式公開で手にした巨額の資金を使った
M&Aでのし上がってきたアングロサクソン
型の企業なのか、というイメージを抱くかも
しれない。 ところが、リレコは未上場企業で
あり、M&Aや新規立ち上げの費用は、主に
同社の内部留保や借り入れによって賄ってき
たという。
フランスをはじめ二一カ国に広がるグルー
プ全体の売り上げは一五億六一〇〇万ユーロ
(二一〇七億円)。 全世界で九〇〇〇人近い従
業員を抱えている。 そのうち約四〇〇〇人が
同社のセールスドライバーとして、世界中を
駆け回り、一日当たり一四万ケースの商品を
オフィスに届けている(いずれも二〇〇四年
の数字、以下同じ)。
リレコがカタログに掲載している商品は五
〇〇〇〜六〇〇〇アイテムで、そのうち約六
〇%がグループ共通の商品だ。 残りは各国の
需要に合わせた品揃えとなっている。 スリー
エムやヒューレット・パッカード、キヤノン、
エプソンなど大手メーカーの商品に加え、「イ
ンペガ」というオリジナルブランド商品も販
売している。
仏・文具通販リレコの自社物流戦略
北フランスに本社を置くリレコは、文具・オフィス用品のカタログ
通販業者で、ヨーロッパ最大手だ。 契約した法人顧客に対して、午後
六時までに注文を受けた商品を二四時間以内に送料無料で届けている。
すでに日本を含めた二一カ国に進出済みの同社が、同業他社との差異
化の柱としているのは、自社戦力による物流体制だという。
リレコグループのホームページ
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契約を結んだ企業から、インターネットや
ファクス、電話で注文を受ける。 午後六時ま
でに注文を受けた商品は、二四時間以内に自
社のセールスドライバーが配達する。 送料は
注文額にかかわらず無料だ。
翌日配達を実現するために、リレコではこ
れまで進出した各国で一、二カ所の物流セン
ターを稼働させてきた。 物流センターの総数
は二八カ所で、合計の延べ床面積は三一万平
方メートルに達する。
自社進出だけでなく、他国の同業他社と業
務提携を交わし、事業を展開している国もあ
る。 例えば、アメリカでは二〇〇一年に文
具・オフィス用品の小売り大手であるステイ
プルズと業務提携した。 ビジャールCEOは、
提携の狙いをこう説明する。
「当社のお客さんが海外に進出するにしたが
って、進出先でもリレコとの取引を継続した
いという声をいただくようになった。 その要
望にこたえるため、アメリカではステイプル
ズと業務提携した」
アメリカのほかにも、ロシアと東欧で二社、
アイスランドで一社と業務提携の関係にあるという。
フランスでの物流体制
進出国が増えたとはいえ、本国フランスの
法人が、グループ全体の三割近くを売り上げ
る稼ぎ頭であることに変わりはない。 二〇〇
四年の売り上げは四億五七二〇万ユーロ(六
一七億円)で、従業員数も二四〇〇人と他の
現法に比べ圧倒的に多い。 フランス法人は稼
ぎ頭であるだけでなく、グループ各社のモデ
ルとなるような事業を展開している。
現在、フランスでは二カ所に物流センター
を構える。 一つは西フランスのビラン・ラ・
ジュエルにあり、もう一つは東フランスのデ
ィジョンに用意している。 両センターの合計
延べ床面積は七万一〇〇〇平方メートルだ。
ルロン・ドメイヤー物流プロジェクト・マ
ネジャーは、フランス西部をカバーする物流
センターの建設地にビラン・ラ・ジュエルを
選んだ理由をこう説明する。
「まずは近くに多くのベンダーの工場があっ
たこと。 さらに田舎であるため、土地代と人
件費を安く抑えることができたこと。 そして
国内の最大消費地であるパリから車で二時間
という距離にある点が魅力だった」
一方、ディジョンに第二物流センターができたのは二〇〇一年のことだ。
「フランス全土で二四時間配送が可能になっ
たのは、第二センターが稼働してからだ。 そ
れまでは、第一センターに近いフランス西部
の受注締め切り時間は午後六時、距離の離れ
た東部や南部に関しては、締め切りを午後四
時、午後二時に設定せざるを得なかった。 現
在は、九五%の注文に対して二四時間以内で
の配送を実現している」(ドメイヤー氏)
顧客からの注文は、いったんパリの北にあ
る同社の情報センターに集められ、そこから
各物流センターへ流れる。 センターでは注文
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が入り次第、五五〇人の作業員がピッキング
や梱包といった作業をスタートする。 センタ
ー内には一時間で一万個の貨物を二〇〇カ所
の配送先に仕分ける物流機器などが備え付け
られている。 センター内の作業員はすべて自
社戦力で、繁忙期の一月や九月には短期契約
の作業員も加わり、約八〇〇人の陣容となる。
物流センターを出発した商品は、四四カ所
のデポ兼営業所に横もち輸送する。 この部分
だけ外部のトラック運送業者を使っている。
デポからは、約四〇〇人の自社セールスドラ
イバーを使って、契約先の企業へ商品を配送
する。
物流こそコアコンピタンス
成熟した文具・オフィス用品の分野では取
扱商品でライバル企業と差別化するのは容易
ではない。 そこでリレコでは物流を自社戦力
で展開することで顧客満足度を高めようとし
ている。 ただし、物流業務に傾注し、資源や
人を投入するほど固定費の比率は高まるため、経営における柔軟性を失うというリスクが生
じる。 実際、同社ではフランスの従業員二四
〇〇人のうちセンターの作業員とセールスド
ライバーを合わせると、三分の一を超える八
〇〇人強が物流に携わっている。
日本でもほぼ同じ業態の通販業者が、コス
ト削減を狙って、センター業務の一部を外部
に委託したことがあった。 リレコには今後も
物流業務を外注化する意向がないのだろうか。
「物流に関しては、これからも自社でやって
いく。 顧客へのサービスやコストの面でも自
社でやった方がいい。 3PL業者から出てく
る提案書ではコストが安くなっていたとして
も、実際に安くなるのかどうかはやってみな
いとわからない。 当社は物流を外部に任せる
ことができないほど重要な業務であると位置
づけている。 コストの問題以上に大切だ」(ド
メイヤー氏)
日本での営業エリア拡大が課題
グループ各社はフランスでの取り組みをモ
デルにして事業を展開しているものの、必ず
しも全てを真似しなければならないわけでは
ない。 商品の品揃えの決定や物流体制のデザ
インは、各国の経営陣の判断に委ねられてい
る部分が多いという。
「フランスは、あくまでコンサルタント的な
役割を果たしている。 とはいえ、全社共通の
ERPソフトとしてSAPのソフトを導入し
ているため、必然的に同じような営業体制や
物流体制になる」と同社のグレゴリー・リナ
ール人事部長は説明する。
日本では二〇〇一年春に営業を開始した。
同社にとっては一七カ国目の進出だ。 二〇〇
四年の売上高は、三五〇万ユーロ(四億七二
五〇万円)で、従業員は一〇〇人強。 都内に
本社を構え、神奈川県秦野市に物流センター
を置く。 現在のところ、営業エリアは首都圏
に限定している。
「首都圏の次は関西・中部地方へと営業エ
リアを広げていき、五年、一〇年かけて、全
国展開を目指したい。 そうなると、物流セン
ターは現在の秦野ではなく、静岡あたりがい
いのかなと考えている」(リナール部長)
リレコは今後も、東欧やアジアなどへの進
出を続けると同時に、現存の各国の物流体制
の手直しも行いながら、さらに業容を拡大し
ていく考えだ。 (
本紙欧州特派員
横田増生)
リレコの商品カタログ。 商品アイテム数は
5000〜6000に上る
ルロン・ドメイヤー物流プロジェク
ト・マネジャー
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